あぁ!?脱いだら凄いんだぞこっちは!(うすほそ) 作:あげ竹輪
もう収集がつかなくなってきたなこれ
どうすんだ?助けて!キヴォトス大好き!
「ありゃ?空いてる...」
扉側から声が聞こえた。
椅子に座ってゼリー飲料を飲む私はその体勢のまま動くことができずにそちら側を向く。
「あ」
ホシノさんだった。
私がいることを予想してなかったのか一瞬驚いたような顔になったあと、またふにゃふにゃの笑顔に戻った。
「あれぇ、メイちゃん誰かと食べに行くんじゃなかったの?」
「あっ、えっと違くて」
のらりくらりと私にゆっくり近づいてくるホシノさんに私は少し恐怖を覚えた。
心做しか心臓がいつもよりもうるさい気がする。
「うーん、そっかそっかぁ。やっぱりおじさんとご飯行くの嫌だったかぁ」
「ちがっ!?そうじゃないです!」
再び悲しそうにし始めたホシノさんが私の顔色を伺いながら近づく。
怒っている訳では無いのは頭ではわかっている。
分かっているんだけど私の身体は思うように動かず、持っていたものを机に滑り落としてしまった。
べちゃ、という半固形が落ちた音と容器から少し溢れてしまった中身が見える。マスカット味。薄黄緑のゼリーが床に零れている
「いいんだよ?信頼関係は一朝一夕でできるものじゃないんだからさ〜」
「本当に、違くてっ」
何かがおかしい?いや、ホシノさんがおかしい訳ではない。
からかい含みの発言だってことも理解はしてる。でもなにかどんどん苦しくなっていく。
どうして__ああ、そうだった。
薬、飲んでないんだった。
効能がどうだったかなんて覚えてないけど少なくとも今は薬がないから不安定になっている、という情報だけが私に残っていた。
そういえば誘いを断った時にも動悸がしていたような気がする。今となってはその時にもう私の心は乱れていたのかもしれない
焦点が安定しない。手足も震え始めた。
長くなくて床に固定していなかった宙に浮いている足が地面に
着いた時、平衡感覚がわかんなくなって前のめりに倒れてしまった。
ただ私の体は硬い床に触れることはなく
「わわっ、大丈夫?」
ホシノさんに抱えられた。
本来ならばここで「ごめんなさい、嘘をついてました」
と言えれば全て解決するのだろう。でもそれが出来ない
身動きが取れない。そんな状態があの時を思い出してしまいそうで...
いや、思い出してしまって、何も出来なくなった。
ホシノさんはきっと私の敵じゃない。悪いことはしてこないなんてことは知っている。
知っているし、あの時も親身になって聞いてくれた。だけどそんなのは今の私に言い聞かせても変わらないんだ。
だって、あの時だって友達だと思っていたから
目眩がする。体に血が巡らない。
呼吸が上手くできていないのが体を反響して耳に入る音で聞こえて理解する。
このまま意識が無くなってしまえばだいぶ楽だな、って思う。
「聞こえてる!?やっぱり体調悪かったんじゃ」
喋らないで欲しい。もう誰も分からない。
必死で隠し通した結果がこれなんだったら最初から仲良くならなければよかったのかもしれない
「...個人間の確執じゃないなら...外的要因...身体...」
この後はどうなるんだろう。やっぱり死んじゃうのかな。
.......それもいいかもしれない。
一周まわって冷静になってきたかも。
むしろ今居なくなれば大体が丸く収まるんじゃないだろうか。
いや、むしろ死んだ方がマシと思われることをされるのかもしれないけれど
今思えば味が分からなくなったとかじゃないだけあの人たちは優しかったんじゃないかって思う
食事の楽しさが全てなくなるから生きる活力を失っちゃうとかよく話であったし。
「...ちょっと荒療治だけど...ごめんね」
頬に手を添えられた感覚がした。
良かった。このまま折って終わらせてくれるのかな。
__あれ、でもそんなことしてくれるような出来事、あったっけ。
まぁなんでもいいや
最期にお姉ちゃんに会って謝れなかったのは悔いだけど、印象は最悪にしておいたから大丈夫かな
心配して来たのに暴言吐かれて、理由も説明しないで
きっと腹を立てて私のことを嫌っているだろう。
会わせる顔がないなら会わなければいい。なんて単純な答えだ
そのまま身を任せ、私の意識は___
「メイちゃん!」
大声によって引き戻された。
「あ、れ....」
「メイちゃん。私の目を見てね」
言われるがままに見る。まだ目は滲んでるし焦点はブレブレしているけど輪郭は若干わかるからそれを見る。
さっきと雰囲気が違うような気がする。
さっきも優しかったけど、今は芯があるような気がする?そんな感じがした
「...うん。大丈夫」
「身体は動く?」
「い、いえ...うごかない...です」
「そっか。...じゃあ、次は、これ。何本?」
多分指が何本たっているかってことだと思う。
「....さん?」
「...うん。ありがとう。.....ちょっと手、借りるよ」
肩の力が無くなってぷらんとしている手を軽く握られた。
小さい頃、熱を出した時にお姉ちゃんがずっと手を握ってくれたことを思い出した。
「1本ずつ、私の手を握ってみて。まずは、親指」
パーのままで動かない私の手を動かす。全部を一気にしようとして強ばるだけだったのを見て「ゆっくりでいいからね」と言ってくれた。
「...そう、次は、人差し指」
「中指....薬指....小指.....うん、完璧だよ」
そう言われた時、身動きを妨げていた見えない鎖のようなものがゆっくりと解かれていく感覚がした。
それによって意識もちょっとずつ視界も戻ってきた
「戻った?」
「...はい。ご迷惑をお掛けして_」
と謝ろうとした時、また雰囲気が変わった。
「えぇ?いいよいいよ〜、そんな謝られてもおじさん困っちゃう」
やっぱりどこか掴めない人かもしれない
”ただいま〜!ホシノ、メイ、遅くなってごめん”
「おかえり先生、メイちゃんは仮眠とらせたよ。....それと、ごめんね。」
”?どうかしたの?”
「聞いちゃった。本人から、さ。先生が隠すのもちゃんと正当な理由があったんだね」
”っ、...そうだね。やっぱりホシノに隠し事は難しかったかな”
「いやいや、むしろ怪しかったよ?隠すならそれなりにもっと努力しないとね〜」
”誰かみたいに?”
「...それはずるいんじゃない?...まあそれは置いておいて」
「多分、そろそろ根本の解決をしなきゃいけないんじゃない?」
”....そうだね。本来なら知っている人だけでちょっとずつ進めるつもりだったけど。ホシノ、手伝ってもらってもいい?”
「それも穏便に動ける人だけ、ね。そりゃあ中々人が集まらないわけだ。...良いよ。こっちも協力してくれそうな人は見つけてるからさ」
元々こんなに続くはずがなかったんですけど多くの人が見てくれたおかげで書けています