あぁ!?脱いだら凄いんだぞこっちは!(うすほそ) 作:あげ竹輪
「__はい、取り敢えずの処置は完了しました。このまま医務室.....いえ、貴方の家まで連行いたします。」
そう言って私を持ち上げたセナ先輩は外に向かって歩く。
誰も見ていないから良いけど流石にお姫様抱っこはちょっと...って言える雰囲気でもなかったのでされるがままにされる。
「ほんとにすみません、セナ先輩...放課後なのに呼んじゃって」
電話した瞬間「今どの辺ですか?直ぐに向かいます」と言ってくれた先輩は本当に機械なんじゃないかと思う人も現れるくらいに表情が変わらないし、声色も一定だ。
だけど、誰よりも怪我人に配慮してくれる、優しい人だ。
まず初めの瞬間に対処したのも私ということで、ある程度事情を知っているからこそ私に連絡をする、ということなのだと思います。
後輩....今はもう違いますが、まだメイさんは私のことを先輩、と呼んでくださり、その度に戻ってきてくれるのではないかという期待をしてしまう自分が少し恥ずかしいのです。
いつかまた、元気な姿で帰ってきてくれる日が来るのではないか、と。
メイさんを後ろのストレッチャーに乗せ、固定した後に「揺れるので少々我慢してください。」と言い、私は運転席に戻ります。
そのまま車を走らせ、メイさんの現住所まで送り、私も中に入りました。事情を聞くためです。
「なぜ、また食べてしまったのですか」
様子が治まった後、極めて落ち着いた声を心がけながらそう問いました。
あの事件以降、メイさんの口は封の開いていないもの、加えて固形のものを受け付けないようになっています。それを改善した方がいいのは納得なのですが、治療の目処が立たず、点滴、飲料、その他ゼリー等の液状に近いもので生活をしてくださいと現状維持をするために言ったはず。
「ごめんなさい...先生と当番の子がご飯食べに行くって言ってて...」
「いいなぁ、私もって思っちゃったの。」
羨ましくなっちゃったんだ。と笑って言います。
「...配慮が欠けていました。メイさんが謝ることはありません。人間の3大欲求のうちの一つが禁止されているようなものですから、その様な感情になる事は決して悪いことでは無いのです。しかし」
「その場で対処できる状況でのみお願いします。周りに人がおらず、さらには身動きが出来ない状態であると大変危険ですので」
私がシャーレの部屋に着いた時、メイさんはうつ伏せの状態で固まっていました。よく見ると指先だけは細かく震え、地面には消化がほとんどされていない咀嚼後の塊がひとつ、2つとあり、辺りには吐瀉が撒かれていました。
「あ.....セナせんぱい...ごめんなさい...また頼っちゃって..」
と少し嘔吐きながら話す彼女に「今は喋らなくても結構です。」とだけ話し、その細い上体を起こしてから清掃をします。
汚れてしまった床、未だ残っている包装紙の中にあるパン、そして自分の嘔吐現象で汚れてしまっている服。
それらを片し、予め持ってきていたメイさんの着替えを着せ、自宅まで連れていきました。
...少々、細工はしました。先生には連絡済みの上で受け入れてくださいましたがその当番さんが気付くかどうかは分かりません。
どうか良い方向に事が運ぶことを祈るばかりです。
「...私がいなくなってから、なにか変わりましたか?」
「特には......いえ、違いますね。事情を知る者は以前よりも少し増して感情のコントロールが出来ずに漏れ出ている時があります。」
話題に出すことができなく、その話題を何気もなしに耳に入ったマコト議長がその場いた全員を黙らせるほどの圧を出したことが後輩づてに伝わりました。その後は「...すまなかった。気にしないでくれ」と通常に戻ったようですが少なくともトリガーになっていることは確実です。
「申し訳ないことしたなぁ...特にお姉ちゃん。」
「「嫌い!二度と関わらないで!」...だっけ。...はぁ...」
確かに医務室のベットの上であの時フウカさんに放った言葉はおおよその内容があっています。
___ですが、私はその言葉が嘘なことを、フウカさんを守るための自分についた嘘であることを知っています。
「本当のことを、話すつもりは__」
失言でした。
身体を震えさせて叫ぶメイさんを受け入れます。
「じ、じゃあお姉ちゃんに言うんですか!?お姉ちゃんのお弁当が原因で食べ物たべれなくなっちゃったってお姉ちゃんに言えると思うんですか!!?」
発言に間違いはありません__が、語弊があります。
ですが全てを話したとしてもフウカさんが傷つくことは確実であるので隠し通すことを決めたメイさんを手伝うと言ったのは他でもない私なのですから。
叫ぶのになれていないメイさんが咳をして酷使した喉を抑えます。
私はその背中を撫で謝罪をしました。
「...申し訳ありません」
「大丈夫ですよ、私も取り乱しちゃって....でもちょっとお願いが」
「今日はもう体力が無くて、寝るまでお願いしてもいいですか?」
嘔吐にはかなりの力を使ってしまうのでそのせいでしょう。
「それくらいで贖罪ができるのであれば、是非。」
元々そのつもりであったので承諾をします。
お風呂はさらに体力を使用してしまうので濡れたタオルで体を拭きます。何時でも被っている帽子を取り外した場所にある2対の内1つがへし折れて断面が見える角に痛み止めを塗り、その身体を布団に寝かせました。
時々聞こえてくる呻き声を手を握ることでしか対処出来ない私の未熟さを呪いながら、意識は沈みました。
”メイはね、ゲヘナとトリニティ間での試験的な交換留学生に選ばれた1人目だったんだ。”