あぁ!?脱いだら凄いんだぞこっちは!(うすほそ) 作:あげ竹輪
「マコト先輩、お客さんが来てますよ」
イロハにそう告げられ、入っていいぞと言い放す。おそらくこの時間帯ならあいつであろう。そう警戒することもあるまい
「こんにちは〜!給食部デリバリーでーす!」
「あ!メイ先輩だ〜!」
時計の針は昼の3時頃を示している。愛清メイはクーラーボックスを抱えて万魔殿に入ってきた。
「キキッ、息災だったか?メイ」
「あっマコト先輩!もちろん元気ですよぉ」
元気に挨拶を返してくる。こいつは万魔殿のメンバーでは無いが、全員から歓迎されているのはなかなか珍しい事態であろう。
それもそのはず。こいつの特技は...
「じゃん!今日のおやつです!」
「わぁ!!プリンだぁ〜!!」
なんとこいつは我らが万魔殿のアイドル、イブキの胃袋を掴んでいるのだ。これは手強い。なんて強力な手札を持っているのだ。
だからこそ風紀委員会などに持っていかれないために、名誉万魔殿メンバーとして扱っている。
「おや、今日は別の種類もあるのですね。これは...抹茶?」
「そうなんです、先日マコト先輩から融通してもらった百鬼夜行の方から貰った茶葉が残ってたので作ってみました!」
口に合うかどうかは分かりませんが...と渡してきたそれを受け取り、食べる。
「ほう、悪くない。」
苦さの中にしっかりとした芯のある抹茶の旨味があり、くどくない。
なかなかにレベルの高い味で思わず美味いと言ってしまいそうだったが威厳を保つために感情をセーブしそう言うと
「マコトせんぱいいじわる!美味しいならちゃんと美味しいって言わなきゃダメ!」
と言われてしまい慌てて訂正をした。
幸いメイから貰ったプリンと「さっきも言った通り、マコト先輩のおかげで作れたんですから、気にしてませんよ」とすぐさまフォローに回ってくれたメイのお陰で機嫌は治ったが、危なかった。もう少しでイブキに嫌われてしまうところだった...
「あれ?なんですか、この紙」
私の机に置かれた文書が気になったのか、そう言ってきた。
「ん?ああ、トリニティとの交換留学の依頼だ。正直に言えば全くもってやりたくは無いな。」
そう言うとメイは「えー?」と驚き、
「勿体ない!トリニティに行けばこの辺にない料理方法とか食材があって、色々発見しやすいんですよ?」
給食部らしい意見だった。だがそれを加味しても誰かを行かせるような事はしたくないのだが...それにトリニティの事だ。何か裏があるに違いない。そう思って断りの連絡を取ろうとして置いておいた書類だった。
「これ、私が行ってもいいですか?」
それについては断ったが、その後に話した「トリニティに行けたらもっと美味しいもの作れそうなんだけどなぁ...」と呟いた小声をイブキが聞き逃さなかったのか、
「!もっと美味しいもの!?...マコトせんぱい、私からもおねがいします!」
と言われたのですぐさま了承した。
イブキから言われてはしょうがないだろう。皆そういうはずだ。
ある程度以上の信頼のあるメイならばどこぞの風紀委員に任せるよりもゲヘナに利益がいくらか入るであろう。戦闘も平均よりは出来るであろうし、ゲヘナであることは絶対に話すなと釘を刺しておいた。
「キキッ、...それでは愛清メイ!トリニティに潜入し、有益な情報を持ち帰ってくるのだ!」
この楽観的な判断を、未来永劫忘れないであろう。
「___は?」
この羽根付きは何を言っている?
「患者を運んでいる最中、激しく嘔吐をしていた中に未消化の昆虫が約23匹程見つかりました。また中には死後硬直では無い動きをしているものも見つかり、恐らくは___
「頭部から出血していた元を辿ると、一対の角が折れ、その欠片は只今捜索中であり___
気づけば、私は携えた銃を構えることもなく震え上がる拳をそのつらつら喋る口に叩き込む....前に後ろから抑えられた。
「__マコトちゃん。冷静でない限り
運び込まれた救急室の外に連れていかれた私とサツキは話す。
「...私だって。...私だって感情に任せて動きたいわよ。...でも、トップがそれをしてちゃ示しがつかないでしょ!?」
その通りだ。何よりも冷静でなければいけないのは私だった。
イロハも然り。イブキに至っては泣き出してしまっているのが扉越しに伝わっている。
「わたしが、おねがいしたから、先輩は怪我しちゃったの...?」
そうでは無い。と言いたいが物理的に離れている私は言葉に出来ず中にいる奴らがイブキを慰めているのが聞こえた。
そうだ。イブキのせいでは無い。
「全て私が原因だ。それ以外に異論などあるまい」
サツキは複雑そうな顔をしていたが、反論してこないあたり事を理解したのであろう。
メイが起きた。伝言によると「私のための復讐はしないでほしい」との事だった。
どこまで行っても人の為。昔話した目標を破綻させない為に配慮をしてくれたのだ。あまりにも優しすぎる。身に余るほどだ。
もちろん、メイの思いを汲み取り、万魔殿はそれに反する行動は絶対にしないと誓おう。そう伝えておいてくれ。
それと、風紀委員には絶対に伝えるな。いいか?
今回はサツキが近くにいたから暴走は免れたが、他は?
ゲヘナの暴を担うヒナが暴れたら?何処かでヒソヒソ暮らしている個人企業の何でも屋が暴走したら?
誰がそれらを止めると言うのだ。いいか、絶対に話すんじゃないぞ。あいつは仲間を増やしすぎている。
それと、これをアーカイブに残すとするなら消しておいた方が吉....いや、議長命令だ。完全に削除しろ。
「なにせこれから行う計画はだれの意思も介入していない...」
「ただの、八つ当たりだからな。」
アリウスに裏切られ、爆発の渦に飲まれた時、私の心にあったのは怒りではない。
同じように私を信じ、裏切られ傷付けられた彼女と少しでも同じ気持ちになれた、という喜びであった。
関わる奴全員曇ってるなぁ。