あぁ!?脱いだら凄いんだぞこっちは!(うすほそ) 作:あげ竹輪
”__ってことで、メイ、お願い...”
セナさんに強制的に連行されて行った先生。なんでこうなったかって言うと....
今日の当番が先生で、受け答えがいつもよりもふわふわしていてそれが疑問に思ったセナさん。
「最後に休んだのはいつ頃ですか?」
というと、先生は指を1つ折り、2つ折り......そのまま止まった。
そうだね...昨日までだいぶ激務だったからね....
昨日しか私は残れていないけど3日間ずっと作業をしていた先生が体調が怪しくなるのは仕方ないだろう。
助けを求める声を無視し、セナさんを見送る...前に1つ頼み事をされた。
”せ、せめて今日依頼しようと思っていたのだけでも伝えてもらっていいかい...?”
自分が動けなくなることをわかった先生が代わりに出張して欲しい、との依頼だった。
私はそれを了承し、行こうとしたのだけど...
すぐさま先生を仮眠室にぶち込んだセナさんが戻ってきて「送迎します。少々お待ちください」と言ってきた。
子供じゃないんだぞ!?と思ったけど優しさを無下には出来なかったのでそれを甘えることにした。
別にゲヘナも治安が悪いとはいえそんな頻繁に事件なんて...ね?
「到着です。私は一旦シャーレに戻りますので、何かあればまた連絡を」
と言ったあと私を送ったセナさんは車を走らせていった。
ビル街を歩き、目的地のインターホンを鳴らす。
少し壊れているそれを押すのに手間取ったけど、しっかり鳴ってくれて中にいる人がこっちにやってくる気配がした。
「いらっしゃい...あれ、先生は居ないんだね。」
と聞かれたので事の顛末を話すと
「そう...じゃ自業自得だ。...さ、入って」
少し笑った後、促してくれたのでお邪魔しますといって靴を脱ぎ、その事務所の中に入った。
少し古びたソファに案内され、
「はい...お茶請けとかは用意できないから、ごめんね」
と言われ、コップをもらったので感謝と、別に大丈夫だということを伝えた。
お菓子とか出されても食べられないので本当に大丈夫なんです...
「あ〜!メイちゃん来てるなら言ってくれればいいのに〜」
後から帰ってきた2人のうち、ムツキさんが私の方を向いて「久しぶり〜!」と言ってきた。
「お久しぶりですムツキさん!...それと」
私はムツキさんの影に隠れてる人に目線を向け、こう呼びかける。
「はい、ハルカちゃん。
座っている自分の膝を手のひらで叩き、ここに座るように促す。
「__っ!」
おずおずと私に近づき、恐る恐るしゃがみこむその身体を脇腹から掴み、私の膝に乗せる。
「久しぶりだねハルカちゃん。元気してた?」
「はいっ!送って貰った物資のお陰で」
恥ずかしがりながらも話すハルカちゃんが可愛くて、つい撫でてしまう。
「くふっ、やっぱり犬みたーい!」と笑うムツキさん。
カヨコさんも心做しか少し笑っているような気がする。
うん、アニマルセラピーってやつだね
ハルカちゃんに獣耳とかは着いてないけどもしあったらすごい速度で動いていたと思う。主に羞恥で
まあ今の状態でも充分可愛いので良いでしょう!
昔の私に良くやった!といってやりたい。
まだまだ小さい頃、私とハルカちゃんは出会った。学校は違ったけど、どこかの路地裏で。
嬉しそうに道端の草を眺める姿がとても印象に残って、自分から話しかけたんだ。
それから私たちの交流が始まり、学園を離れてからも出張!給食部デリバリー(仮)で便利屋まで通い、食事を提供したり、話したりした。
お陰で私も学園から離れちゃったけど友達もツテも出来た。打算はなかったけど結果とてつもない恩恵があったことは確実。
だからこそハルカちゃんは幸運を寄せる招き猫...いや、招き犬?なのだ。
「まだ社長が帰ってきてないから、しばらく待つかも」と言われた。時間を確認して大丈夫なことを伝え、暫し談笑の時間があり、その中で昨日先生と一緒に徹夜した疲れが出てだんだんと目が下がり、首が上下し始めた。
「メイさん...眠たいのなら寝ても大丈夫ですよ。私がしっかり支えますから!」と言ってもらったのでそのまま睡魔に身を任せる。
そういえば飼い犬の脚の匂いがポップコーンとか誰かが言っていたっけ...
ハルカちゃんからポップコーンの匂いはしないけどまた別の、ほのかに土と草の匂いが残る、柔らかいハルカちゃんらしいいい匂いがした。
「寝ちゃったね。」
体制を変えて私の膝に頭を乗せ、ヘイローが消えたメイさんをみてカヨコさんが言いました。
私がまだ小さい頃、周りと馴染めずに除け者にされていた頃、ふと気づくとメイさんが私に話しかけてくれていました。
「何をしているの?」と。
雑草を見ています、と答えると大抵の人は私を変な目で見てその場で立ち去っていきます。でも、メイさんは違いました。
「え?良いじゃん!どんなところが好き?」
肯定するどころか、それに興味を持って私と会話をしてくれました。
それから度々その路地裏で会うことがありましたが、アル様と出会い、学園を離れてからもう会うことがないと思っていました。
「こんにちは〜!給食部でーす!」
突然昔聞いた声が事務所の外から聞こえた時は心臓が飛び出るかと思いました。再会はないと思いこの期間を過ごしていましたから。
アル様含め、皆さん突然の来客に困惑し、警戒をしていましたが、
「あ、あの...多分、私の友達なので安全だと、思います」というと嬉々としてメイさんを事務所にあげました。
そこで持ってきてくださったとても久しぶりに食べる栄養価の高い食事はとても美味しくて、私は涙を流しながら食べました。
これまでの食事に不満を持ったことはないです。ですが、誰かの優しさ、温かみというものを貰ったことが少なかったので気持ちが溢れ、制御が出来ませんでした。
それを見たメイさんは私の背中を摩りながら「ゆっくりでいいから、ね?」といって、ずっと待ってくださいました。
止めどない涙を流しながら、私は彼女への気持ちが変わっていくのを、確固たるものになっていくのを感じました。
「...前よりも、軽い、です。それに...」
「細くない?ゲヘナにいた時よりだいぶ痩せてるよっ」
安らかに眠るメイさんの体を見ると、ぶかぶかの服で隠されていますがそれを絞ると昔よりもさらに細くなった腕、足がムツキさんによって発見されました。
シャーレではあまり給与などがないのでしょうか?...いえ、アル様が信用している機関、そんなはずはありません。
それにまだ便利屋に対する物資提供が定期的に行われています。アル様が「こんなに送られて、恩返しをする方法がないじゃない!?」と頭を抱えていたのが印象的で、つまるところお金の問題ではないのは考察できました。
でも、何故...?
ふと、被ったままのメイさんのベレー帽が邪魔になることに気付いた私はそれをそーっと持ち、机に置きました。
その時
「__えっ」
私にはそれがありません。なので欠けることに対してどんな痛みが伴うのか、はたまた神経が繋がっているかどうかなどは知りません。
ただ、そこには歪になった断片に赤黒の瘡蓋が形成していました。
2人もそれに気付いたのか息を飲んでいます。
誰が、こんなことをやったんでしょうか。
アル様に害をなすものは全て許しません。ですが、
メイさんを害した者も、全て許しません。
許さない
許すつもりもありません。
もし、いや....それでも。どんな理由があろうとも
絶対に。
深い思考に陥った私はそれを口にしていたのかカヨコさんが私の方に手を置き、
「ハルカ。力入りすぎ。メイが起きちゃうでしょ」
気づけばメイさんを撫でる手が強ばり、危うく爪を立ててしまうところでした。
「これ、アルちゃんに言った方がいいのかな...」
「...一旦、私たちで抱えよう。先生にも説明して、それで大事になるなら、その時には....」
社長が帰ってきた時、2人は眠り、ほか2人はそれを見ているだけという稀有な状況に「な、何やってるのよ...?」と困惑していた。
「んーん、なんでもない!」
スランプ
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