船内では、封鎖線突破の興奮がようやく落ち着きを取り戻し始めていた。
依然としてハイパードライブの故障という問題は抱えているものの、ひとまず通商連合の追撃を振り切ることには成功している。
その功労者とも言える一体のアストロメク・ドロイドが、ブリッジへ呼び出されていた。
外装は砲撃の煤や焦げ跡で黒く汚れているが、その小さな機体には誰もが感謝の視線を向けている。
パナカは、そのドロイドをアミダラ女王の前へ案内した。
「実によく出来た優秀なアストロメク・ドロイドです、陛下。このドロイドのお陰で船も我々も救われました」
女王は静かに頷き、R2ユニットを見下ろす。
「立派な働きでした。製造ナンバーは?」
近くにいた者が機体を確認する。
「R2……D2とあります陛下」
女王は優しく微笑んだ。
「ありがとうR2-D2」
「♪ ~」
R2-D2は嬉しそうな電子音を鳴らし、小さく身体を揺らす。
その愛らしい反応に、周囲の空気も自然と和らいだ。
アミダラ女王は侍女へ視線を向ける。
「パドメ。綺麗に磨いてやりなさい、感謝の気持ちです」
「♪ ~」
R2-D2はさらに上機嫌な電子音を響かせる。
一方、パナカは女王へこれからの方針について切り出した。
R2-D2が整備を受け始める中、女王は静かに問い掛ける。
「相談とは?」
その問いに答えたのはクワイ=ガンだった。
「陛下のお許しを得て、辺境の惑星タトゥイーンに向かいたいと思います。通商連合の支配が及ばない星でございます」
パナカはすぐに異論を唱える。
「自分は同意致しかねます陛下……」
しかし女王は、その言葉を穏やかに制した。
「わたくしの判断をお信じあるように」
その一言で、船内の方針は決まった。
目的地は辺境惑星タトゥイーン。
危険な賭けではあるが、今の彼らには他の選択肢はなかった。
その頃。
船内の整備区画では、パドメとウィクリフたちがR2-D2のボディを磨いていた。
焼け焦げた外装を専用クロスで丁寧に拭き取りながら、ウィクリフは苦笑する。
「いやはや……ターボレーザーの弾幕でここまで煤塗れになるなんてな」
R2-D2は嬉しそうに電子音を鳴らしながら身体を回転させる。
パドメも柔らかな笑みを浮かべた。
「このドロイドのおかげで私たちは助かった。本当に感謝しないとね」
「そうですね。えっと……」
ここでウィクリフは改めて侍女の名前を尋ねようとする。
「パドメよ」
「パドメさんか……俺はウィクリフ。それと彼女たちは」
ウィクリフが紹介すると、戦術人形たちも順番に名乗っていく。
「グローザよ」
「クルカイ……」
「ビヨーカだよ!」
「アンドリスと申します」
「ミシュティ……むにゃzzz」
自己紹介の途中だというのに、ミシュティは立ったまま船を漕ぎ始めた。
その様子を見たクルカイは、無言のまま軽く足を振り抜く。
「自己紹介中に寝ないの!」
「いっ……引っぱたかなくてもいいのに……」
眠気で涙目になりながら頬を押さえるミシュティ。
その光景にパドメは思わず吹き出しそうになる。
「……彼女たちはいつもこうなの?」
ウィクリフは慣れたように肩をすくめた。
「ミシュティの寝ぼけ、サボり癖にクルカイがお灸をすえるのはデフォなんだ」
「そういうこと」
クルカイは悪びれる様子もなく短く答える。
グローザたちも特に驚いた様子はない。
どうやら日常茶飯事らしかった。
そんな和やかな空気の中、廊下の向こうから大きな足音が近付いてくる。
ひょこっと姿を現したのは、大柄なグンガン族だった。
「ハイドゥ! ごめんね? ユーたち誰? 名前は?」
ウィクリフは笑みを浮かべながら答える。
「ウィクリフだ。こっちはグローザにクルカイ、ビヨーカにアンドリス、そして眠そうにしているのがミシュティ。んで、こちらの侍女はパドメさん」
パドメも軽く会釈した。
「よろしく」
グンガン族は満面の笑みで胸を張る。
「ミーはジャージャー・ビンクス」
その名前を聞いたパドメは少し驚いたように目を見開く。
「……あなたグンガン?」
ナブーには人間だけでなく、水中都市に住むグンガンという種族も暮らしている。
両者の交流は決して多くはない。
だからこそ、ここでグンガンと出会うとは思っていなかった。
ジャージャーは大きく頷いた。
「ハハン。ミー、グンガンであってるよ」
「それがどうしてここに?」
ジャージャーは身振り手振りを交えながら、大袈裟に語り始める。
「よくわかんない。ミーの一日は森の朝食で始まったのね。それがドカン! もうちょいで死ぬとこをジェダイに救われて、バンッ! ……で、ここにいる。ハッ……そりゃあね怖い怖い目に遭ったよ」
あまりにも勢い任せな説明だったが、要約すればジェダイに命を救われ、そのまま同行しているということらしい。
クルカイはジャージャーをじっと見つめる。
彼の動きや仕草を観察した末、一つの結論に達した。
「あなた……よくドジを踏みやすいって思ってる?」
「アハァ……ミー、とんでもなくドジ踏みやすいみたいなのね」
本人も自覚しているらしい。
その答えに、ビヨーカは思わず笑いをこらえ、アンドリスも口元へ手を添える。
グローザは呆れ半分といった表情でジャージャーを見つめていた。
一方、ウィクリフは心の中で苦笑する。
(まぁジャージャーのドジはある意味悪運が悪いのやら良いのやらわからないからな。原作でもジャージャーのドジ属性は災害レベルだし……)
本人に悪気は一切ない。
だが、その一つひとつの失敗が、とんでもない騒動へ発展する。
前世で映画を見ていた頃から、ある意味では最も予測不能な人物だった。
そんなことを考えながら、ウィクリフは磨き終えたR2-D2の頭部を軽く叩く。
すっかり綺麗になったR2-D2は、満足そうな電子音を鳴らしながらくるりと一回転した。
船内には、束の間ではあるが、戦争の最中とは思えない穏やかな笑い声が響いていた。
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ハイパースペースを抜けたナブー・ロイヤル・スターシップの前方に、一つの黄褐色の惑星が姿を現した。
青と緑に彩られたナブーとは対照的な、乾いた砂漠の世界。
生命の気配すら乏しく見えるその惑星を見つめながら、操縦士が静かに告げる。
「あれがそうだ。タトゥイーンです」
ブリッジの正面スクリーンには、惑星表面が拡大表示される。
広大な砂漠の中に点在する小さな集落。
その一つを確認したオビ=ワンが前方を指差した。
「居留地があります」
クワイ=ガンはすぐに判断を下す。
「町の外に降りてくれ。無用な注意を引きたくない」
現在のスターシップは、通商連合に追われる身だ。
目立つ場所へ降りれば、不必要な噂や通報を招く危険がある。
操縦士は機首をわずかに傾けると、居留地──モス・エスパから少し離れた岩場へ進路を変更した。
やがて船体は砂煙を巻き上げながら静かに着陸する。
ハッチが開くと、乾いた熱風が船内へ流れ込んできた。
ナブーの穏やかな風とはまるで違う。
焼けつくような熱気と、細かな砂が肌を打つ。
ウィクリフは思わず顔をしかめた。
「……暑いな」
前世で映像を見ていた時はそこまで感じなかったが、実際に立ってみると想像以上だった。
見渡す限り砂と岩ばかり。
植物らしい植物もほとんど見当たらない。
「これがタトゥイーンか……」
そんな感想を漏らしながらも、ゆっくりしている暇はない。
スターシップが飛べなければ、ここから先へ進むことはできないのだから。
ほどなくしてオビ=ワンとウィクリフは、損傷したハイパードライブジェネレータの点検を始めた。
船体内部には焦げた配線や変形したフレームが至るところに残っている。
封鎖線突破の際に受けたダメージは、想像以上に深刻だった。
ウィクリフは工具を片手に内部を覗き込み、小さく息を吐く。
「これは酷いな。あの封鎖線の弾幕を受けてなお飛び続けられただけでも奇跡だっていうのに……」
ジェネレータ内部のコイルは焼き切れ、主要ユニットもひび割れている。
応急処置でどうにかなる損傷ではなかった。
オビ=ワンも静かに首を横へ振る。
「流石に交換しなければダメだ。既存の修理パーツだけじゃ直せない」
ジェダイである彼は機械技術の専門家ではない。
それでも、この損傷が修理の域を超えていることくらいは容易に理解できた。
そこへクワイ=ガンが整備区画へ姿を現す。
二人の表情を見るだけで、状況が芳しくないことを察したようだった。
「どうだ。直せそうか?」
オビ=ワンはジェネレータの外装を軽く叩きながら答える。
「ハイパードライブジェネレータがイカレてます。変えないと……」
ウィクリフも補足する。
「完全にお手上げだ」
クワイ=ガンは腕を組み、しばらく黙り込む。
タトゥイーンは共和国の辺境。
純正部品を扱う正規施設など期待できない。
修理するには、どこかで代替部品を調達するしかない。
だが、それも容易ではないだろう。
しばらく考え込んだ末、クワイ=ガンは低い声で呟く。
「面倒なことになりそうだ。慎重にな、フォースがトラブルを感知させている」
その言葉にオビ=ワンも静かに頷いた。
「私も感じます、マスター」
フォースを持たないウィクリフには、その感覚は分からない。
だが、二人の表情を見る限り、ただの予感では済まない何かが待ち受けているのだろう。
クワイ=ガンは踵を返しながら最後に指示を出した。
「みんなに通信禁止を徹底しておけ」
通信を傍受されれば、通商連合へ居場所を知られる可能性がある。
ここでは目立たず、静かに行動することが何より重要だった。
クワイ=ガンが去った後、整備区画にはしばし静寂が訪れる。
ウィクリフは壊れたジェネレータを眺めながら苦笑した。
「……こりゃ、この星に長く滞在しそうだ」
その言葉にオビ=ワンも小さく苦笑する。
本来なら部品を調達し、すぐにコルサントへ向かいたい。
しかし、この星で待ち受けるのは、ただの修理だけではない。
銀河の運命を大きく変える一人の少年との出会いが、もうすぐそこまで迫っていた。
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ハイパードライブジェネレータの損傷は、もはや応急修理ではどうにもならない。
新たな部品を調達するしかないという結論に達し、クワイ=ガンはモス・エスパへ向かう準備を進めていた。
同行するのはジャー・ジャー・ビンクスと、修理で功績を挙げたR2-D2。
辺境の町とはいえ、人目につく人数は少ない方がいい。
最低限の人員で情報収集と部品探しを済ませるつもりだった。
船のタラップを降りると、乾いた砂漠の熱気が一行を包み込む。
照りつける二つの太陽の光は容赦なく降り注ぎ、慣れない者には歩くだけでも体力を奪われそうだった。
ジャー・ジャーは早くも両腕で顔を覆いながら情けない声を上げる。
「アー……ミーのお肌、紫外線に弱いのね」
そんな彼を横目に、クワイ=ガンは苦笑することなく歩き出そうとした。
その時だった。
背後から慌てた声が飛んでくる。
「お待ちください!」
振り返ると、パナカが足早に駆け寄ってくる。
その後ろには、ウィクリフ、グローザ、クルカイの三人が並んでいた。
クワイ=ガンは事情を察したようにパナカを見る。
「どうしました?」
パナカは軽く一礼すると、女王からの伝言を伝えた。
「陛下がこの侍女を連れて行くよう命じられました」
その言葉に、クワイ=ガンの表情が少しだけ険しくなる。
彼が視線を向けた先には、侍女姿のパドメが控えていた。
もちろん、その正体がアミダラ女王本人であることを知っているのは、パナカたちごく一部だけである。
だからこそ、この提案はクワイ=ガンにとって受け入れ難いものだった。
「いくら女王の命令でもお断りだ。此処の居留地は危険すぎる。ましてや君もだ」
その言葉はパドメだけではない。
ウィクリフにも向けられていた。
通商連合から逃れてきたばかりの子供を、治安の悪いモス・エスパへ連れて行く理由はない。
しかし、ウィクリフは一歩前へ出る。
「マスタークワイ=ガンの言うことも分かる。だけど、機械にある程度詳しい人間を連れた方が楽だと思うよ。餅は餅屋って言うし」
ジェネレータの損傷を確認したのは自分でもある。
必要な部品を見極める上で、自分が同行した方が役立つ可能性は高い。
それに、ファブリケーターを修復した経験や、幼い頃から父の整備工房で培ってきた知識は、こういう場面でこそ生きる。
その隣では、グローザが静かに口を開いた。
「私たちは指揮官の護衛でもあり、侍女の護衛でもある。問題ないと思うわ」
彼女の表情には迷いがない。
クルカイも無言のまま頷き、周囲へ警戒の視線を巡らせる。
二人にとって最優先なのは、ウィクリフの安全。
その任務に揺らぎはなかった。
しかし、それでもクワイ=ガンは首を横へ振る。
「……それでも危険すぎる」
彼が危惧しているのは、単なる治安の悪さではない。
この星に降り立ってから、フォースが告げる微かな違和感。
まだ正体は掴めない。
それでも、何かが起ころうとしている予兆だけは感じ取っていた。
ウィクリフには、その感覚を知覚することはまだできない。
クワイ=ガンとオビ=ワンが時折見せる、理由を説明できない確信のようなものを、不思議そうに見ているだけだった。
沈黙が流れる。
すると、それまで静かにしていたパナカが一歩前へ出た。
「そこを……曲げて。陛下はこの星に興味がお有りです」
女王が辺境の惑星を自ら見たいと望んでいる。
その願いを無下にするわけにもいかない。
パナカ自身、本心では危険だと理解している。
それでも、女王の意思を尊重したかった。
クワイ=ガンは小さくため息をついた。
ここまで頼まれては、これ以上押し切るのも難しい。
やがて諦めたように肩を落とす。
「……仕方ないな。逸れるんじゃないぞ。町だけでなく、外も危険だからな」
その言葉に、パドメは安堵したように微笑む。
ウィクリフも「ありがとうございます」と軽く頭を下げた。
グローザとクルカイはすぐに二人の前後へ位置取りを変える。
護衛対象が増えたことで、自然と警戒態勢も変化していた。
R2-D2は楽しそうな電子音を鳴らし、ジャー・ジャーは「人数が増えると安心なのね!」と無邪気に喜ぶ。
こうして、部品探しへ向かう一行は、
ジェダイ・マスターのクワイ=ガン、
グンガン族のジャー・ジャー・ビンクス、
アストロメク・ドロイドのR2-D2、
侍女のパドメ、
そしてウィクリフ、グローザ、クルカイという顔ぶれで、砂漠の彼方に広がるモス・エスパへ歩き始めた。
彼らはまだ知らない。
この町での出会いが、銀河全体の未来を大きく変えることになるという事実を。
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砂漠を吹き抜ける熱風に砂が舞う。
モス・エスパへ続く道を歩きながら、クワイ=ガンは辺境惑星タトゥイーンについて説明していた。
「入植者は皆、水を作っている。この星に固有の種族もいくらかは居るがね。この手の港町はお尋ね者や犯罪者には天国だ」
共和国の法も及ばず、ハットが実質的な支配者となっている世界。
ここでは金と力が物を言う。
その説明を聞いたパドメは周囲を見渡しながら呟く。
「そうね……」
ウィクリフも苦笑した。
「お約束といやお約束だな」
映画で何度も見た景色。
だが実際に歩いてみると、その治安の悪さは画面越し以上に肌で感じられる。
異星人たちが怒鳴り合い、怪しげな露店が軒を連ね、路地裏には見るからに危険そうな者たちが屯している。
ジャージャーは早くも居心地が悪そうに身体を縮こませた。
「嫌だな、ミーここ好きじゃない」
ウィクリフは苦笑しながら前方を指差す。
「ハハッ……おっと、気をつけろ」
「えっ? アゥ……ウンチ踏んじゃったよ……」
忠告は一歩遅かった。
ジャージャーは盛大に何かを踏み抜き、情けない悲鳴を上げる。
「うわぁ……」
ビヨーカなら笑っていたところだろう。
クルカイは呆れたように肩を落とし、グローザはため息をつくだけだった。
「本当にドジね……」
そんな小さな騒ぎを挟みながら、一行はやがて目的の店へ辿り着く。
看板こそ古びているものの、店の周囲には無数の機械部品やドロイドの残骸が積み上げられていた。
クワイ=ガンが店内へ足を踏み入れると、羽音を立てながら一人のトイダリアンが飛んできた。
『いらっしゃい!』
『何かお探しで?』
クワイ=ガンは用件を切り出す。
「J327型ヌビアンの部品はあるかね?」
店主は目を輝かせる。
「あーへぇへぇ、ヌビアンね。なら腐るほどあるよ! 『小僧、どこにいる』
その言葉を聞きながら、ウィクリフは店内を見渡した。
(ワーォ。ほとんどジャンク品だが、整備士にとって一種の宝の山だな……!)
壊れたドロイドの腕。
分解されたエンジン。
各種センサーや配線。
普通の人にはガラクタでも、整備士から見れば再利用できる部品の山だった。
R2-D2も興味深そうに電子音を鳴らす。
「ドロイドが必要なものを教える」
その時だった。
店の奥から、一人の少年が姿を現す。
『遅いじゃねえか』
『掃除してた』
『店番してろ。客が来たんだ』さぁーてと、裏へご案内しよう。さあ、欲しいもの見てくれ! へっへっへ」
ワトーはクワイ=ガンを裏のジャンク置き場へ案内し始める。
その途中、店内を物珍しそうに見回すジャージャーへ釘を刺した。
「何にも触るんじゃない」
「ムゥ……」
ジャージャーは不満そうに頬を膨らませる。
クワイ=ガンの視線が外れた隙に、小さくあっかんべぇをしてみせた。
その様子を見たウィクリフは苦笑するが、その視線は自然と目の前の少年へ向いていた。
(アナキン……本物だ)
画面越しでは何度も見てきた。
だが今、目の前には未来のダース・ベイダーとなる少年が立っている。
その時だった。
隣にいたグローザが小さく首を傾げる。
「指揮官?」
ウィクリフが我に返るより早く、アナキンがグローザたちを見つめながら目を輝かせた。
「お姉ちゃんたち、天使なの?」
「えっ?」
グローザだけでなく、クルカイも思わず聞き返す。
「天使?」
アナキンは無邪気な笑顔で頷いた。
「天使だよ。宇宙船のパイロットが話してるの聞いたんだ。宇宙で一番美しい生き物だってさ。住んでるのはアイエゴの月だと思うな」
グローザは少しだけ照れたように視線を逸らす。
「面白い坊やね。何でそんなことまで?」
アナキンは嬉しそうに答える。
「貿易商人や星間パイロットの話をよく聞いているからさ。僕もパイロットなんだ、いつか此処から大宇宙に飛び立って行く」
その夢を聞いたパドメは思わず笑みを浮かべた。
「パイロット? アナタが?」
「うん。生まれた時からね」
その返答には、不思議と自信が満ちていた。
パドメは続けて尋ねる。
「キミ、此処にはいつからかしら?」
「うんと小さい頃から。三歳頃からかな? ママと僕はガーデュラ・ザ・ハットに売られたけど、ガーデュラがポッド・レースの賭けに負けて手放した」
パドメの表情が曇る。
思わず口をついて出た。
「奴隷なの?」
すると、隣のグローザが静かに制する。
「パドメ、その言葉は不適切よ」
「あっ……ごめんなさい」
パドメはすぐに頭を下げた。
アナキンは優しく笑う。
「気にしてないよ。僕はアナキン。よろしくね」
その様子を少し離れた場所から眺めていたウィクリフは、心の中で苦笑した。
(めっちゃ空気だな俺……)
その直後だった。
店の隅に積まれていた待機状態のピット・ドロイドを見つけたジャージャーが、興味本位で近付いてしまう。
「これ何なのね?」
不用意に鼻の部分へ触れた瞬間──。
「オーウ!? な、何よ!?」
ピット・ドロイドが勢いよく起動し、ジャージャーは飛び上がる。
騒ぎを聞きつけたクルカイがすぐに駆け寄った。
「ジャージャー!? アナタ、何かやらかしたの? クワイ=ガンに言われたじゃない、不用意に触るなと!」
ジャージャーは慌てて首を横へ振る。
「ミー、何もしてないよ!? それよりそいつ捕まえて!」
暴れ回るピット・ドロイドを見ながら、ウィクリフは落ち着いた様子で歩み寄る。
「落ち着け二人とも。ピット・ドロイドは鼻がスイッチだ」
そう言うと、起動したドロイドへ近付き、鼻のスイッチをもう一度押す。
「プシュッ」
軽い作動音と共にピット・ドロイドは再び折り畳まれ、何事もなかったかのように待機状態へ戻った。
その手際にアナキンは目を丸くする。
「君すごいね。よくピット・ドロイドのスイッチが鼻だってわかったね?」
ウィクリフは少し照れ臭そうに笑う。
「まぁ、実家がドロイド修理を生業にしてるから機械にはある程度詳しいんだ。君ほどじゃないけどな。あぁ、そうだった。俺はウィクリフ。呼びやすい名はクリフだ。よろしくな」
「うん! よろしく、クリフ!」
少年は満面の笑みで手を差し出した。
ウィクリフもその手を握り返す。
それは、後に銀河の歴史を大きく揺るがす二人の、最初の出会いだった。
EP.1を書き終わったら、EP.1とEP.2の空白期間のエピソードを執筆しようと思います。読者の皆様はどれがいいですか?
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戦術人形たちとの日常
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父の仕事の手伝いでカミ―ノへ向かう
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コルサントへ軽い家族旅行