幼なじみが今日も可愛い   作:浅風境

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第二話 初恋は終わらない

 

 

 

 

「おっす、おはよう琴葉」

 

朝一番に聞こえてくるこの声が好きだ。

……なんて。

前世の私が聞いたら笑うだろう。

 

だって前世の私は男だった。

 

 

朝霧琴葉は前世の記憶を持っている。

 

……なんて言うと、さぞ劇的な人生を送ってきたように聞こえるかもしれないけれど、実際はそんなこともない。

 

 

沢山勉強して、ようやく入れた理系の国立大学。

「これからが本番だ」と思っていたのに、キャンパスライフもろくに送れないまま、私の人生は終わってしまった。

 

おそらく交通事故が原因で、気づいた頃にはこの世界で朝霧琴葉として生きていた。

 

 

 

記憶は七歳くらいまでに少しずつ戻ってきて、今では「前世」と「今世」の区別も自然につくようになった。

 

 

けれど、当時はとても混乱していた。

記憶がはっきりする前は、誰のか知らない記憶が恐ろしくて、戻った後は前世の家族にはもう会えないことも、男として生きた人生が終わったことも、悲しくて。

 

 

でも、人間というのは案外慣れる生き物らしい。

十五年も女の子として生きていれば、鏡に映る自分にも違和感はない。

 

今の私は女の子だ。

 

……ただ、前世の私が消えたわけでもない。

 

だから恋愛だけは、今でも少し難しい。

 

 

物思いにふける私の後ろから、聞き慣れたキーホルダーの音が聞こえた気がして振り返ると、いつものように鞄を肩に掛けた彼が、笑顔で挨拶をしてきた。

 

 

私は少しだけ頬を緩めながら返事をする。

 

「おはよ、悠人」

 

何年も一緒にいるんだから、いい加減慣れてもいいんじゃないか、と思うくらいに心が弾む。

 

小学校三年生からの付き合い。

腐れ縁と言えば腐れ縁。幼なじみと言えば幼なじみ。家も近いし、私も悠人も同じ中高一貫校に進学した。

 

気づけば毎日のように一緒にいる。

 

一緒にいるのが当たり前すぎて、隣に悠人がいない日なんて考えたこともない。

 

「今日の数学、確か小テストあったよな」

 

「そうだけどさ、なんか自信ありそうな雰囲気だすじゃん」

 

「今回の範囲はちゃんと授業聞いてたし、結構できる気がするんだよね」

 

「じゃあ勝負する?」

 

「負け確の試合はしない主義なんだよなあ」

 

「ふふん」

 

つい私が得意げに胸を張ると、相変わらずだなぁ、と苦笑する彼。

その笑顔を見ているだけで安心する。

 

こんな何気ない時間を、彼はどれくらい大事に思っているんだろう。

 

……まあ、聞く勇気なんてないけど。

 

 

まったく困る、本当に困る。

小学校三年生から六年も一緒にいるのに、どうしてまだこんなに好きなんだろう。

 

 

こんな距離で何年も一緒にいるけど、昔みたいに肩を組んでふざけ合うには、もうお互い少し大人になりすぎた。

 

でも今さら、よそよそしくするのも変だ。

だから結局、男友達みたいな距離感のまま。

 

そのくせ、ふと目が合うだけで心臓はうるさい。

 

精神年齢という概念は、どうやら彼の前ではなくなるらしい。前世を合わせれば三十歳を超えているはずなのに。

 

恋愛に関しては、中学三年生の女の子以下だ。

 

「そういえばさあ」

 

「ん?」

 

「髪切った?」

 

ちょっと気にしてたことを、

彼は何気なく聞いてくるらしい。

 

「……2センチくらいね」

 

「似合ってるぞ」

 

嬉しい。

 

「……別に、感想なんて聞いてないし」

のに、思わず顔を逸らしてしまった。

 

 

……さっきの評価は訂正しよう。

ミジンコ以下だ。

私の恋愛力は、クソザコ極まっている。

神様はどうやら、知能と恋愛力を等価交換したらしい。

 

 

いつもそうだ、本当はもうちょっと素直に反応したいのに、ちょっと彼に褒められただけで、体は全然言うことを聞いてくれない。

前世では、こんなので照れるなんて想像もしなかった。

 

いや、そもそも恋人なんていなかったから比較もできないんだけど…。

 

とにかく。

私の初恋は、小学三年生から少しも終わってくれないのだ。

 

 







え?TS要素が薄いって?
もうメス堕ちしてんじゃねえかって?
すいません許してくださいなんでもしますから(何でもするとはいってない)

正直に答えると、メス堕ちに関してはいずれ投稿するであろう過去編にあります。プロットは出来上がってます。TS要素は今後頑張ります。プロットはありません。
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