友達、だったとは思う。向こうがどう思ってたかは分からないが。
特にどこと戦争だの奪い合いだのするでもなく、いい感じの島に根を下ろして小さな国にして、そのまま中立国としてどこにも手を出さずどこにも手を貸さない姿勢で居続けた。
そして、魔神戦争が終わった時、俺は隣国だったモンドの属国となることを選んだ。民たちがどんな反応をするか正直不安だったが、俺の友人であるバルバトスに刃を向けるような奴はいなかったから安心した。
そうして、俺はその龍──トワリンと出会った。
少なくとも俺は会話を楽しんでたとは思う。俺だけな気がしてちょっと不安だったけど。
言ってもあいつはバルバトスの眷属で、何を1番とするかと言ったらそりゃバルバトスになる訳だから俺のことは多分よく喋るうざい同僚とかって思ってたかもしれない、うん、多分。
でも嫌われてはなかったと思う。嫌われてたら近づくことすら出来なかったんじゃなかろうか。
それに、そんなこと言ったら某北風さんの方がもっとコミュニケーション難しかったし絶対友人ではない、多分。
まぁ、そんな具合でなんだかんだバルバトスの眷属生活を楽しんでた。
この時までは。
詳しいことはよく分からないが、とりあえずカーンルイアが悪いことは分かる。
溢れ出したアビスに、モンドを襲う巨大な魔龍。
俺の国は、酷い被害を受けた。
あんなに綺麗だった島は見る影もない。そこらじゅうアビスの気味の悪い紫で染まってて、悲しくなった。
沢山の民が死んだ。
逃げるために、守るために、生きるために藻掻いた彼らは、等しく漆黒に飲まれた。助けられなかった。
俺に出来ることは、放棄することだけだった。
数少ない生き残りを連れ出して、俺はありったけの力を込めて島を破壊した。
放っておいたら、あそこが新しい厄災の起点となるかもしれなかったから、全部海に沈めるしか無かったんだ。
それからは、正直覚えてない。
ただひたすらに、アビスの敵を倒し続けたぐらいだ。
意識もかなり朦朧としていたと思う。立ってるのか座ってるのか転がってるのか何度分からなくなったことか。
どれぐらい戦ったか、いつの間にか厄災はほとんど鎮まっていた。
少なくとも、耐えきった。生き延びた。勝ったとは言い難いが、生きてるだけずっとマシだ。
でも、一つだけ懸念があった。
トワリンのことだ。
魔龍との戦いで、酷い傷を負ったように見えた。様子が心配だったから、きっといるであろう場所まで体を引きずった。
そういえば、バルバトスはどこに行ったのだろう。また眠ってしまったのだろうか。無理もない。
やっと辿り着いた先で、トワリンは身を潜めていた。
魔龍の毒がトワリンを苦しめているようだった。
魔龍の毒…アビスの力は、完全にどうにかすることは出来ないが、時間をかければほとんど無くすことは出来る、はずだ。
だから、少しでも楽にしてやろうと手を伸ばした。
その時、強い衝撃とともに体が浮いて、そのまま崩れ落ちた。
僅かに動かせる顔を後ろに向ければ、モンドの民が数人、そこにいた。
…いや、違う。あれはアビスだ。モンド人に化けてるんだ。
本当に悪趣味な奴らだ。モンド人はずっと俺を、俺たちのことを忌み嫌っていたとその口で言い、俺を傷つける。封印すると言う。
よりにもよって、トワリンの目の前で。
あぁ、駄目だ、違うトワリン、コイツらはお前たちの民じゃない。風の国の子どもたちじゃない。
魔龍との戦いで疲弊し、毒に蝕まれた今のトワリンは、きっと正常な判断が出来ない。きっと奴らはそれを狙ってやってるんだ。
………もう、動けない。手が届かない。
ごめん、トワリン、こんな事になってしまって。
奴らに引きずられて、どんどん距離が離れていく。
それから、意識は持たなかった。
***
それは、少し先の未来の話。
モンドに自由の風が吹き、風神と金髪の異邦人がアビスの毒を消し去った時。
「バルバトス」
「ん?なんだい、トワリン」
「…我らの友が封じられている場所に、心当たりは無いか?」