ゾンビVSテロリストVS原作知識持ち転生者   作:カロ(ハーメルン)

3 / 7
第3話

 

 

「……いったか」

 

 ベランダをヒュゥと通り抜けた風。森を焦がす炎に温められているよう。

 

「ハァ、嫌になるぜ」

 

 真横にいる彼が。

 

「あの人たち……なんなんですか」

 

 私たちを襲ってきた、ヒトの姿をしたナニカ。しばらく部屋をうろつくと、他の物音に引かれたのかこぞってどこかへ去っていった。

 

「……さあな。だが、人間じゃねえってことは確かだ」

 

 お互い静かに呟きながら、遠くで校舎を照らす赤をぼうっと。

 

 

「……」

 

 これはきっと、夢じゃない。

 あの恐ろしい音が。声が。衝撃が。

 目の前でおきた現実だと、無理やり刻み込んでくる。

 

「(なんで……なんで)」

 

 昨日まではいつも通り。

 みんなと遊んで、寮で美味しいご飯を食べて、友達と一緒に勉強会を。

 

「……」

 

 なんでこうなったの。なんでこんな目にあわないといけないの。

 空を覆う、真っ黒な煙。

 ズッシリと重く。

 

「……」

 

 これはきっと、夢じゃない。

 

 それでも──どうしようもなく、悪夢だ。

 

 

「──はァァァ……佐々木」

 

「……え?」

 

 隣で、ぼそりと何か。

 

「俺の名前だ……佐々木さん、と呼べ」

 

 急に。

 

「佐々木、さん……」

「あぁ」

 

 視界の端で頷く。

 

 じわりと揺れる炎。

 

「ぁ……わたしのなまえ」「待て」

 

 そういえば、自分も伝えていなかった。だから。

 食い気味に止められる。

 

「え?」

「それは言うな」

 

 正面をぼんやり向いていた彼が、こちらを鋭く。

 怖い顔。

 

「……な、なんで」

 

 わけがわからない。名前を伝えるだけ。

 

「……後悔するぞ?」

 

 脅すように、恐れるように。

 佐々木さんはググ…と立ち上がり、部屋の中へ消えていこうとする。

 

 何を考えているの。

 

 わからない。

 

 ただ──

 

 

「──斉藤、優希」

 

 伝えたかった。

 

「お前……意外と押しが強いんだな」

 

 反対を向いたまま、ピクッと驚いたように。

 

「お前じゃなくて、優希です」

 

 念のためもう一度。決して、ムッときたわけじゃない。

 

「はいはい……分かりましたよ、優希様」

 

 どこか諦めたような声色で、佐々木さんは軽くそう返した。

 

 

 

 

 私たちは、人がたくさんいる校舎の方へ行くことに決めた。この悪夢から脱出するために。ほんとはベランダから一歩も動きたくなかったけど。

 

 やつらからひっそりと身を隠して廊下を進み、時には花瓶や小物を投げておびき寄せる。

 知能が低く、耳はとてもいい。佐々木さんがコソコソとそう教えてくれた。

 

──ハァッ、ハァッ

 

 階段付近は彼らが多すぎて、通ることは出来ない。

 二人とも思わずヒッと悲鳴を出して見つかってしまい、離れ離れになったことも。

 

 床や壁にはところどころにおびただしい血痕や、ヒトの一部がグチャグチャに散らばっている。

 その色、その匂い、そのカタチ。気分は最悪で、吐き気が治まらない。何回もオェ゙ェ゙…と吐いた。

 

──ハァッ、ハァッ

 

 作動停止していた職員用エレベーター。管理室でキーを探し出し、なんとか二人で復旧させた。

 

 永くながく感じた恐怖を経て、とうとう──

 

 

──ハァッ、ハァッ、ハァッ

 

「(こ、これに乗って一階に……もうすぐ、こんなところから……!)」

 

 下からノロノロと上昇してくるランプ。

 ドクドク荒ぶる鼓動を眼前の希望で抑え込む。

 

「クソッ……遅ぇ……!」

 

 カチカチカチッと、すでに光っているボタンを押し続ける佐々木さん。

 

 張りつめたココロ。薄暗い周囲をチラチラ。

 

──ハァッ、ハァッ、ハァッ

 

「(大丈夫、大丈夫、だいじょうぶ、だいじょうぶ、だいじょう──)」

 

 

──チンッ

 

 エレベーターが……!

 

 僅かな光が、ドアの隙間から。

 

 

──ヴァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!

 

 死角になっていた曲がり角から、大きなバケモノが。

 

「キャァァァァァッ!?」

「ヒィッ!?」

 

 大きなおおきな腕を引きずって、ダンダンダンッ!

 ふたつのあたま。

 ふたつの口から、ビチャビチャと。

 

「いやぁぁぁッ! はやくぅ……!」

「はやくッはやくッはやくッ!!」

 

 スローモーションみたいに開くドア。

 こわい。

 だめ、ダメ。

 

──グイャァ゙ァ゙ァ゙ッ!!

 

 バケモノが、大きなうでをふりかぶる。

 もう、まにあわな──

 

 

──めのまえに、バケモノのからだ。

 

「……ぇ」

 

──ドンッッ!!

 

 ソレと勢いよく、ぶつかった。

 

 なにが。

 

 グルグルと床を跳ね、壁にバンッ!と打ち付けられる。

 

 なんで。

 

 パニックの中、全身の激しい痛みだけが。そう……特に、せなかの──

 

 

「──さっきは言わなかったが、ソイツらがなんなのかを知っている」

 

 佐々木さんの声が、遠く。

 バケモノの足音が、ギシ…ギシ…とこちらに。

 

「お前ら生徒がもう助からないことも」

 

 あのとき……ベランダで最後に話したような声色で何かをいっている。

 ぼやけた視界、エレベーターが少しずつ閉ざされていく。

 

「じゃあな、優希……お前の分まで、せいぜい生きてみるさ」

 

 光がフッと消えた。

 

 なにもわからない。

 この状況も。この痛みも。息のしかたも。

 

 それでも。

 

 

──ギシ…ギシ…ギシ…

 

 アイツは、かまわず近づいてくる。

 ボタボタと唾液を垂らして。

 

「ぁ……」

 

 わたしは動けない。口をはくはくさせながら、心臓がギュッと掴まれていてうごけない。

 

──ア゙ア゙ア゙ィ……

 

 ニタリと嗤ったような気味悪い音があたまに響く。

 ビチャリッと顔に唾液が。

 

「ぅ……ぁ」

 

 なんで。

 なんでこんなにゆっくり。なんでこんなにながく。なんでこんなめに。なんで、なんで。

 

 グパァ…とひらかれた、ふたつのおおきなくち。

 

 いたそうな歯が、わたしのかおに、めりこ──

 

 

──ドスッ!! ガンッッ!!!

 

「……ぁ」

 

 バケモノで覆われていた視界がいきなりパンッと。

 

「おいッ! 大丈夫かッ!?」

 

 ずっと、ずっと、なにがおこっているかわからない。

 

 わからないけど。

 

 

 手を差し伸べてくる木刀を持った男子が、わたしを救ってくれたことだけは──ハッキリとわかった。

 

 

 

 

 




※見切り発車。需要があれば続きます。

ご覧いただきありがとうございます!嬉しい……!
良いな~と思ってくださった方は、よろしければ☆評価やお気に入りをお願いします……!

蓮くんがびっくりするほど空気ですが、カットよりこっちの方が読みやすいのかなと……?次回きっと登場します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。