ゾンビVSテロリストVS原作知識持ち転生者 作:カロ(ハーメルン)
「さ、さっきはその……ありがとう」
背後からぽつり。
「あぁ」
慎重に進みながら、伝う冷たい汗。
「渡辺くん、だよね?」
近くの足音は三人分。遠くの物音は無数。ドクッドクッと鳴る自分の心音も鮮明に。
「……あぁ」
未だ気分は地獄。朝から尋常じゃない苦痛と吐き気。気づけば外はやつらまみれ。
視界がぼんやりと揺らぐ。尖って感じる犬歯をギリィッと嚙み砕いた。
「私……同じ二年、の……」
いやに鋭い音が、あたまにズキズキと。彼女の消え入りそうな声でさえ。
「知ってる」
斉藤優希。同じクラスになったことはないが。
その命を助けられただけでも。
「そ、そっか」
なぜか力はみなぎる。咄嗟にやつらの頭をガンッと叩き割れるほど。
あのグチャリとした感触は、今もこの手に。
「……」
ぼやけるのに、するどい。おもいのに、かるい。
心あたりは……最悪なのが、ひとつ。
もうオレはおわりかもしれない──
でも、これでいい。
「ヒッ……!?」
──ガンッッ!!
斎藤がいる。おわるまえに、ココをでる。
*
目の前でバサバサッ…と黒い鳥が飛び去っていった。
つられてスッと目を向ける。
「……ッ!」
──あれは、あの二人は。
木刀を持ったパジャマ姿の男子と、制服を着た女子。
「(きっと……いや、絶対そうだ!)」
渡辺冬也と斎藤優希。
そろそろとこちらに歩いてくる。
沈む曇天の絶え間を縫って、一筋の光がキラリ。
「(あぁ、良かったッ!!)」
ザワザワとした胸騒ぎの中、ずっと渦巻いていた不安。それでも、いつかくると信じていた。
彼らがいれば、物語が始まる。希望が生まれる。
「(ほんとに……ありがとう)」
斎藤が辿ってきた道は、僕とは比べられないほど凄惨で。
渡辺が抱えてきたモノは、耐えがたいほどの苦痛で。
そう、だから。だからこそ──
ひどくひどく胸苦しい。
二人を追いかける重たい暗雲は、僅かな光さえ覆い隠すように黒々と。
口を開けて待っているのは恐怖と別ればかり。
この後、すぐだって。
「(──そ、そうだッ! それどころじゃないッ!)」
バッと弾かれたように湧き出る焦燥。安心してるヒマはない。同情してるヒマはない。
一体何のために……!
ビクビクしながら周りを見る。ゾンビは……いない。大丈夫。
ゴクッと固唾をのんだ。小刻みに揺れる手足で慎重に木を降りていく。
彼らが進む明るい歩道。
草深い森を進むより音を出しにくく、スッと開けた視界。校舎まではグネグネの一本道で迷うこともない。
ゾンビを避ける上で正しい選択。
──ッ……ッ……
テロリストさえいなければ。
血の気がサァ…と引いた。森の闇をかき分けて進む。
はやく、はやく。
押し潰される圧迫感でダッと駆け出す。
「ハァ……ハァッ」
タイミングは寮から脱出して少し経ったころ。
一度殺されでもしていなければ、鉢合わせて当たり前。
──ザッ……ザッ……
凍えるほど無機質な音が近づいてくる。
現実、幻聴。わからない。
でも、ソコにいることだけはたしか。
──ザッ…ザッ…ザッ…
「(あぁッ……ダメだ、ダメだ……!)」
害虫を踏みにじるようにブチッと命が奪われる。
冷酷なキカイ。
殺される、ころされる。
にげなきゃ。かくれなきゃ。アレから。いますぐ──
──サァ…と優しい光が、揺れた草木の隙間から。
淡く言葉を交わす斎藤と渡辺。フッとほころぶ、ほんの微かな笑み。
失っていた感情を嚙み締めるように。壊されたココロを癒すように。
「(ぁ……だ、だめだッ)」
ドンッドンッ!と心臓を打ちつける。
あれはだめだ。
血に濡れちゃ、ダメだ。
生き残るため……それとは異なるナニカ。
目の前の光に思わずグッと手を伸ばす。そして、かすれた声で叫んだ。
「こっちだッ──」
──パァンッ! パパァンッ!!
耳を突き裂く重い破裂音。
「……ぇ」
これは。この冷たい音は。
ナニカがガラガラと崩れ落ちていく。息ができない。
深緑の闇で覆われる。前に進めない。しんじたくない。
じわじわ真っ黒に染まるあたま。
「(ああッ……あああああ──)」
──ガサッ、ガサッ!
闇を押しのけて現れたパジャマ。
「……人、か?」
苦悶の表情でグッと頭を抑えながら。
「と、冬也くん? ……え」
続いて顔を出す制服。オロオロと困惑しながら。
「ぁ」
渡辺と、斎藤。
こっちを見てる。めのまえにいる。うごいてる。
ポカンと開いた口のまま、ゆっくりと現実をみる。
──生きてる。
*
「転校したばっかで……災難、ですね」
暗い声でぽつり。
「うん……二人もね」
ここの生徒で災難じゃない者なんていない。
「あぁ」
渡辺──トウヤがぼそり。
トウヤとユウキ。ほんとうに、生きていてよかった。
歩いているのは明るい道。
あの後ジッとやり過ごし、脅威は回避できた。銃声も二人に向けたものじゃない。
そもそも、なんで撃った……?
原作とのズレ。
「蓮先輩は、どうして森に?」
そういえば、とユウキ。
どうして。説明するには難しい。
一応考えていたけど。
「ちょっと寝坊しちゃって……ここを走ってる時に、爆発が起きたんだ。そしたら──」
原作知識のことは明かさない、そう決めた。
物語の進行自体を変えるべきじゃない。目指すのはトゥルーエンド。
そんなもの、すでにないかも──やめろ。
そのために、トウヤたちをころし──ヤメロ。
*
あちこちグチャグチャに破壊された学校が、眼前に。
「え……?」
横から震えた声。
一体、なんなんだ。ココでなにがおきて──ぐわんとブレる校舎。
「フゥッ……ハァッ」
あれから地獄は変わらず。むしろひどく。
こみあげる吐き気。ギリィッと嚙み砕く。
「……大丈夫か、トウヤ」
心配のにじむ小声。
「あ、ぁ」
大丈夫。まだ、だいじょうぶ。
だいじょうぶなふたりが、ココから出るまでは。
──ァ゙ァ゙ァ゙
校門の手前、ぼけっと佇む白い布。
あっちを向いてる。この近くにはヤツだけ。
ボウボウと広がる赤い炎が視界の端でぶわり。
進めば校舎。
きっと、安心できるばしょが。
もうろうとしていた頭が、すこしだけスッと。
森の影を飛び出し、ヤツの背後へ──
「ッ……!」
すぐ後ろで、誰かが息をのんだ。
──パァンッ……!
*
「ぁ」
ザクロが爆ぜた。
なんで。
ふらふらとゆれるカラダ。
どうして。
糸がきれたように、ドサッと崩れ落ちる──
──白い布。
熱を包んだ風がビュゥ…と森の中。
見開いたままの目を、ゆっくり横に。
今にも飛び出しそうだった冬也くんの腕を。
どこか苦しげな蓮先輩が。
ガッシリと──強く、強く引き留めていた。
※見切り発車。需要があれば続きます。
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色々と限界っぽい2人の回でした。
学校に戻ってこれましたね!これからきっと会話が増えてくれる……はず。
あとコロコロ視点変わっちゃってますが、大丈夫ですか……?