ゾンビVSテロリストVS原作知識持ち転生者   作:カロ(ハーメルン)

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第4話

 

 

「さ、さっきはその……ありがとう」

 

 背後からぽつり。

 

「あぁ」

 

 慎重に進みながら、伝う冷たい汗。

 

「渡辺くん、だよね?」

 

 近くの足音は三人分。遠くの物音は無数。ドクッドクッと鳴る自分の心音も鮮明に。

 

「……あぁ」

 

 未だ気分は地獄。朝から尋常じゃない苦痛と吐き気。気づけば外はやつらまみれ。

 視界がぼんやりと揺らぐ。尖って感じる犬歯をギリィッと嚙み砕いた。

 

「私……同じ二年、の……」

 

 いやに鋭い音が、あたまにズキズキと。彼女の消え入りそうな声でさえ。

 

「知ってる」

 

 斉藤優希。同じクラスになったことはないが。

 

 その命を助けられただけでも。

 

「そ、そっか」

 

 なぜか力はみなぎる。咄嗟にやつらの頭をガンッと叩き割れるほど。

 あのグチャリとした感触は、今もこの手に。

 

「……」

 

 ぼやけるのに、するどい。おもいのに、かるい。

 心あたりは……最悪なのが、ひとつ。

 

 もうオレはおわりかもしれない──

 

 

 でも、これでいい。

 

「ヒッ……!?」

 

 

──ガンッッ!!

 

 斎藤がいる。おわるまえに、ココをでる。

 

 

 

 

 目の前でバサバサッ…と黒い鳥が飛び去っていった。

 

 つられてスッと目を向ける。

 

 

「……ッ!」

 

──あれは、あの二人は。

 

 木刀を持ったパジャマ姿の男子と、制服を着た女子。

 

「(きっと……いや、絶対そうだ!)」

 

 渡辺冬也と斎藤優希。

 そろそろとこちらに歩いてくる。

 沈む曇天の絶え間を縫って、一筋の光がキラリ。

 

「(あぁ、良かったッ!!)」

 

 ザワザワとした胸騒ぎの中、ずっと渦巻いていた不安。それでも、いつかくると信じていた。

 彼らがいれば、物語が始まる。希望が生まれる。

 

「(ほんとに……ありがとう)」

 

 斎藤が辿ってきた道は、僕とは比べられないほど凄惨で。

 渡辺が抱えてきたモノは、耐えがたいほどの苦痛で。

 

 そう、だから。だからこそ──

 

 

 ひどくひどく胸苦しい。

 

 二人を追いかける重たい暗雲は、僅かな光さえ覆い隠すように黒々と。

 口を開けて待っているのは恐怖と別ればかり。

 

 この後、すぐだって。

 

「(──そ、そうだッ! それどころじゃないッ!)」

 

 バッと弾かれたように湧き出る焦燥。安心してるヒマはない。同情してるヒマはない。

 一体何のために……!

 

 ビクビクしながら周りを見る。ゾンビは……いない。大丈夫。

 ゴクッと固唾をのんだ。小刻みに揺れる手足で慎重に木を降りていく。

 

 彼らが進む明るい歩道。

 草深い森を進むより音を出しにくく、スッと開けた視界。校舎まではグネグネの一本道で迷うこともない。

 

 ゾンビを避ける上で正しい選択。

 

 

──ッ……ッ……

 

 テロリストさえいなければ。

 

 血の気がサァ…と引いた。森の闇をかき分けて進む。

 はやく、はやく。

 押し潰される圧迫感でダッと駆け出す。

 

「ハァ……ハァッ」

 

 タイミングは寮から脱出して少し経ったころ。

 一度殺されでもしていなければ、鉢合わせて当たり前。

 

──ザッ……ザッ……

 

 凍えるほど無機質な音が近づいてくる。

 現実、幻聴。わからない。

 

 でも、ソコにいることだけはたしか。

 

──ザッ…ザッ…ザッ…

 

「(あぁッ……ダメだ、ダメだ……!)」

 

 害虫を踏みにじるようにブチッと命が奪われる。

 冷酷なキカイ。

 

 殺される、ころされる。

 にげなきゃ。かくれなきゃ。アレから。いますぐ──

 

 

──サァ…と優しい光が、揺れた草木の隙間から。

 

 淡く言葉を交わす斎藤と渡辺。フッとほころぶ、ほんの微かな笑み。

 失っていた感情を嚙み締めるように。壊されたココロを癒すように。

 

「(ぁ……だ、だめだッ)」

 

 ドンッドンッ!と心臓を打ちつける。

 

 あれはだめだ。

 血に濡れちゃ、ダメだ。

 生き残るため……それとは異なるナニカ。

 

 目の前の光に思わずグッと手を伸ばす。そして、かすれた声で叫んだ。

 

「こっちだッ──」

 

 

──パァンッ! パパァンッ!!

 

 耳を突き裂く重い破裂音。

 

「……ぇ」

 

 これは。この冷たい音は。

 

 ナニカがガラガラと崩れ落ちていく。息ができない。

 深緑の闇で覆われる。前に進めない。しんじたくない。

 

 じわじわ真っ黒に染まるあたま。

 

「(ああッ……あああああ──)」

 

 

──ガサッ、ガサッ!

 

 闇を押しのけて現れたパジャマ。

 

「……人、か?」

 

 苦悶の表情でグッと頭を抑えながら。

 

「と、冬也くん? ……え」

 

 続いて顔を出す制服。オロオロと困惑しながら。

 

「ぁ」

 

 渡辺と、斎藤。

 こっちを見てる。めのまえにいる。うごいてる。

 

 ポカンと開いた口のまま、ゆっくりと現実をみる。

 

 

──生きてる。

 

 

 

 

「転校したばっかで……災難、ですね」

 

 暗い声でぽつり。

 

「うん……二人もね」

 

 ここの生徒で災難じゃない者なんていない。

 

「あぁ」

 

 渡辺──トウヤがぼそり。

 トウヤとユウキ。ほんとうに、生きていてよかった。

 

 歩いているのは明るい道。

 あの後ジッとやり過ごし、脅威は回避できた。銃声も二人に向けたものじゃない。

 

 そもそも、なんで撃った……?

 原作とのズレ。

 

「蓮先輩は、どうして森に?」

 

 そういえば、とユウキ。

 どうして。説明するには難しい。

 一応考えていたけど。

 

「ちょっと寝坊しちゃって……ここを走ってる時に、爆発が起きたんだ。そしたら──」

 

 原作知識のことは明かさない、そう決めた。

 物語の進行自体を変えるべきじゃない。目指すのはトゥルーエンド。

 

 

 そんなもの、すでにないかも──やめろ。

 

 そのために、トウヤたちをころし──ヤメロ。

 

 

 

 

 あちこちグチャグチャに破壊された学校が、眼前に。

 

「え……?」

 

 横から震えた声。

 一体、なんなんだ。ココでなにがおきて──ぐわんとブレる校舎。

 

「フゥッ……ハァッ」

 

 あれから地獄は変わらず。むしろひどく。

 こみあげる吐き気。ギリィッと嚙み砕く。

 

「……大丈夫か、トウヤ」

 

 心配のにじむ小声。

 

「あ、ぁ」

 

 大丈夫。まだ、だいじょうぶ。

 

 だいじょうぶなふたりが、ココから出るまでは。

 

 

──ァ゙ァ゙ァ゙

 

 校門の手前、ぼけっと佇む白い布。

 

 あっちを向いてる。この近くにはヤツだけ。

 ボウボウと広がる赤い炎が視界の端でぶわり。

 

 進めば校舎。

 きっと、安心できるばしょが。

 

 もうろうとしていた頭が、すこしだけスッと。

 

 森の影を飛び出し、ヤツの背後へ──

 

「ッ……!」

 

 すぐ後ろで、誰かが息をのんだ。

 

 

──パァンッ……!

 

 

 

 

「ぁ」

 

 ザクロが爆ぜた。

 

 なんで。

 

 ふらふらとゆれるカラダ。

 

 どうして。

 

 糸がきれたように、ドサッと崩れ落ちる──

 

 

──白い布。

 

 熱を包んだ風がビュゥ…と森の中。

 見開いたままの目を、ゆっくり横に。

 

 今にも飛び出しそうだった冬也くんの腕を。

 どこか苦しげな蓮先輩が。

 

 ガッシリと──強く、強く引き留めていた。

 

 

 

 

 




※見切り発車。需要があれば続きます。

ご覧いただきありがとうございます!嬉しい……!
良いな~と思ってくださった方は、よろしければ☆評価やお気に入りをお願いします……!

色々と限界っぽい2人の回でした。
学校に戻ってこれましたね!これからきっと会話が増えてくれる……はず。
あとコロコロ視点変わっちゃってますが、大丈夫ですか……?
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