ゾンビVSテロリストVS原作知識持ち転生者   作:カロ(ハーメルン)

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第5話

 

 

「狙撃!?」

 

 思わず大きな声。ハッとして口を抑える。

 見通しのきかない草木の陰。

 

「それは……森で見たやつらの仲間?」

 

 蓮先輩が神妙につぶやいた。

 やつら。銃をもってる人たち──ほんと、わけわかんない。ぜんぶ。

 

「さぁな」

 

 銃声が聞こえたらしい冬也くん。私たちは全然だったけど。

 

「……」

 

 なんで銃を?

 アイツら……蓮先輩のいうゾンビを倒すため?

 森で撃たれてた死体は生きていた子?それともゾンビ?

 彼らは味方なの?

 

──ハァッ、ハァッ

 

 グルグル渦巻く疑問と不安。

 

 そもそも先輩は味方?

 冬也くんはなにを隠しているの?

 

──ハァッ、ハァッ、ハァッ

 

 グルグル。ぐるぐる。

 

「(また……裏切られるの?)」

 

 キュッと首を締め付ける真っ黒な糸。

 薄まるくうき。こわい。

 

 私は──なにをしんじればいいの?

 

 

「──優希」

 

「ッ!?」

 

 急にハッキリ名前を呼ばれて、ビクッと肩が弾む。

 

「な……なに?」

 

 おそるおそる冬也くんの方を見た。彼の分かりづらい顔が、ちょびっとだけへにょりと。これは……心配、なのかな。

 

「……蓮」

 

 そのまま先輩に視線を送る。どうしたんだろう。

 

「う、うん。つまり──」

 

 ゴクッと喉を鳴らして、こちらから露骨に目をそらす先輩。

 

「──パンツ、脱いでもらっていい?」

 

 

 え?

 

 

 

 

 焼け落ちた黒い森を、ザッザッと早足で進む。

 メラリと揺れる残り火は、僕の頬に刻まれた紅葉みたいに真っ赤。

 

「さ、先に言ってくださいよ」

 

 背後から息巻くこもった声。

 

「……ご、ごめん」

 

 言ってはいたんだけど。しかも原作でユウキがしてたことで……まぁ、うん。

 本来、すでに彼女は孤独。いまと状況が全く違う。結局謝るしかない。

 

 ヒンヤリ湿ったこの布は、あたりの焦げついた匂いをさらに激化させる悪臭を放つ。多分ユウキも……これ以上はダメだ。

 

──パキッ

 

 煙でぼやける世界。赤熱する枝を踏みつけた。

 よく見れば、すすに紛れて人影がそこかしこに転がっている。

 

「裏門なんかよく知ってましたね」

 

 どこか勘ぐるような声色。まずい。

 熱い汗が顎からポタリと。

 

「……夏休みで、時間はあったから」

 

 折りたたんだソレを口と鼻にグッと押し当てながら、煙に巻く。

 頭がクラクラする。吐きそうだ。

 

「……」

 

 周囲は未だ燃え盛り、通るだけで命が脅かされる。

 しかし、ここを抜けるしかない。

 

 ゾンビやテロリストを気にしなくていいのは助かるが。

 

 

──ヴゥ゙ゥ゙ッ!!

 

「ッ!?」

「キャァァッ!?」

 

 いきなりガバッと起き上がった黒焦げが、ユウキに掴みかかる。

 

──こういうヤツを除いて。

 

 キュッと縮む心臓。知っていたのに。

 

「う、らぁッ!」

 

 すぐさまゾンビの横っ腹をドカッと蹴り飛ばす。

 

「ッ!」

 

 先頭を進んでいたトウヤが駆けつけ、倒れたヤツの頭をグチャッ!と叩き潰した。

 

「ぁ……あり、がとう」

 

 腰を引いてカタカタ震えるユウキ。罪悪感がチクリ。

 

 グロテスクに散ったソレは、目に入れないように。パンツをもっと汚すことになる。

 

「ハァッ、ハァッ……急ぐぞ」

 

 せきを切ったようにワラワラと起き始めた死体。

 幸いやつらは他よりトロい。こちらは三人もいる。

 

──救ってしまったものは、もう仕方がないんだ。

 

 きっと、大丈夫。

 

 

 

 

 森に囲まれた鈴風高校。

 生い茂った木々にひっそりと隠されたその裏門は、テロリストどころか多くの生徒も知らない。校舎見取り図に存在しない闇深い場所。

 

──パリンッ……バキィッ

 

──エ゙ァ゙ァ゙

 

 校内からかすかに聞こえてくる音。

 

──ダダダァンッ……

 

──ゃぁぁ

 

 蔓延した恐怖の中、かすれた悲鳴がまじる。

 

「どう、する」

 

 トウヤのこわばった声。

 学校はすでに地獄だった。

 

「まだ……生きてる人はいる、よ」

 

 影のある表情で、自分に言い聞かせるように。

 彼女の悪夢は始まったばかり。

 

「……いこう」

 

 暗がりにフッと足を踏み入れる。まるでバケモノの口に呑み込まれるみたいに。

 

 僕らは闇へと消えていった。

 

 

 

 

 校内1F。

 いたるところに散らばるガラス片や血痕、そして……死体。充満する生々しい鉄の匂いがツンと。

 

 先生や生徒の多くが体育館で殺された。

 ゾンビパニックに紛れて必死に逃げ出した生存者たち。校舎に身を隠すものは、下階ではゾンビ、上階ではテロリストに怯え息を殺している。

 

「あ、あの。トイレ、いい?」

 

 薄っすら青ざめたユウキがぽつり。

 

「あぁ」

 

 気を付けろ。そう言ってスッと壁に寄るトウヤ。

 チラチラ周りを警戒しながら、僕も頷く。

 

「(もしかして……アレか?)」

 

 セーブも一時停止も存在しない。事態はいつだって流れるように。

 逃したフラグはきっと、二度と戻らない。

 

「……蓮」

 

 ふとトウヤが声をかけてきた。壁にグッと背を預ける彼。すました顔の裏に隠されているモノが、じんわりと。

 

「オ゙レは……フゥッ」

 

 アミットウイルス感染の進行段階はステージIV。本来ならゾンビに転化していないとおかしい状態。

 適応者である彼は、その抵抗力で未だ生命を維持している……首の皮一枚に過ぎないが。

 

 

「オレは──おまえを、しんじている」

 

 目を閉じたまま、真っ直ぐ。

 蛍光灯も点いていない薄暗い廊下を、ぼんやりと照らす曇天の影。

 

「トウヤ……?」

 

 いきなり告げられたソレ。一体なにを。

 

「だから──」

 

 

──バゴンッ! ガンッ!!

 

「キャァァァァッ!?」

 

 大きな衝撃音とユウキの悲鳴。

 

「クソッ!」

 

 バッと弾かれたように、すぐさまトイレへ飛びこむトウヤ。

 急いで、中へ。

 

 

──へたりと腰を落とすユウキと、モップを振り下ろした姿勢でギュッと目をつぶった女子。

 

「(あぁ……彼女だ)」

 

 胸の内を大きな安堵がジワリ。

 

 学校で初めて出会うキャラ。

 体育館での惨劇を、校舎に広がった悪夢を、生存者グループの情報を。なにも知らないプレイヤーに伝える役目を背負った女子。

 

「…………」

 

 ピタリと時が止まったような静寂。

 四人とも、その場を動かない。

 

 サイドを編み込んだシニヨンヘアの彼女が、ゆっくりと目をひらく。

 

 ぼんやりユウキを視界に。さらに横──

 

 

「ぇ……ヒィッ!? イヤァァァァッ!?」

 

──血濡れのパジャマ、ぬらりと滴る赤黒い木刀。

 

 我を忘れてダッと駆け出した彼女。

 ポカンと固まるユウキ、咄嗟に頭を抱えて苦しむトウヤ。

 

「(……ってまずいッ!)」

 

 こんなはずじゃ。

 またズレが。

 だめだ、だめだ。

 

 

 彼女を逃がすわけには、いかない。

 

──ガシッ

 

 その華奢な身体を無理やり抱きとめた。

 

「いやッ、いやぁッ!」

「大丈夫! ほら、大丈夫だッ!」

 

 がむしゃらに暴れる。

 こんな大声、ゾンビも集まってきてしまう。

 

「やだッ、やめてぇッ!」

「生徒だ! こ、こっちを見て、ほらッ!」

 

 バクバクと鳴り始めた心臓。

 まずい。はやく。

 

「い……いやッ……!」

「だいじょうぶ、こっちを……ひとだよッ」

 

 じんわりと濡れた瞳を縋るように見つめて、語りかける。

 

 次第にその焦点が、こちらに。

 

「ぁ……ひ、と?」

 

「そう、大丈夫……後藤……後藤蓮だ」

 

 人差し指をシーと立てながら、静かに名乗る。

 

「あ……あ、あッ」

 

 ツゥ…と彼女の頬を伝う、美しく透き通った涙。

 

 

「──めいッ……松本、萌衣……でずッ」

 

 

 

 

 




※見切り発車。需要があれば続きます。

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ついに4人パーティですね!
誰が話しているか、分かりにくかったらすみません。それと1~4話もちょこちょこっとだけ変えてます!
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