ゾンビVSテロリストVS原作知識持ち転生者 作:カロ(ハーメルン)
「狙撃!?」
思わず大きな声。ハッとして口を抑える。
見通しのきかない草木の陰。
「それは……森で見たやつらの仲間?」
蓮先輩が神妙につぶやいた。
やつら。銃をもってる人たち──ほんと、わけわかんない。ぜんぶ。
「さぁな」
銃声が聞こえたらしい冬也くん。私たちは全然だったけど。
「……」
なんで銃を?
アイツら……蓮先輩のいうゾンビを倒すため?
森で撃たれてた死体は生きていた子?それともゾンビ?
彼らは味方なの?
──ハァッ、ハァッ
グルグル渦巻く疑問と不安。
そもそも先輩は味方?
冬也くんはなにを隠しているの?
──ハァッ、ハァッ、ハァッ
グルグル。ぐるぐる。
「(また……裏切られるの?)」
キュッと首を締め付ける真っ黒な糸。
薄まるくうき。こわい。
私は──なにをしんじればいいの?
「──優希」
「ッ!?」
急にハッキリ名前を呼ばれて、ビクッと肩が弾む。
「な……なに?」
おそるおそる冬也くんの方を見た。彼の分かりづらい顔が、ちょびっとだけへにょりと。これは……心配、なのかな。
「……蓮」
そのまま先輩に視線を送る。どうしたんだろう。
「う、うん。つまり──」
ゴクッと喉を鳴らして、こちらから露骨に目をそらす先輩。
「──パンツ、脱いでもらっていい?」
え?
*
焼け落ちた黒い森を、ザッザッと早足で進む。
メラリと揺れる残り火は、僕の頬に刻まれた紅葉みたいに真っ赤。
「さ、先に言ってくださいよ」
背後から息巻くこもった声。
「……ご、ごめん」
言ってはいたんだけど。しかも原作でユウキがしてたことで……まぁ、うん。
本来、すでに彼女は孤独。いまと状況が全く違う。結局謝るしかない。
ヒンヤリ湿ったこの布は、あたりの焦げついた匂いをさらに激化させる悪臭を放つ。多分ユウキも……これ以上はダメだ。
──パキッ
煙でぼやける世界。赤熱する枝を踏みつけた。
よく見れば、すすに紛れて人影がそこかしこに転がっている。
「裏門なんかよく知ってましたね」
どこか勘ぐるような声色。まずい。
熱い汗が顎からポタリと。
「……夏休みで、時間はあったから」
折りたたんだソレを口と鼻にグッと押し当てながら、煙に巻く。
頭がクラクラする。吐きそうだ。
「……」
周囲は未だ燃え盛り、通るだけで命が脅かされる。
しかし、ここを抜けるしかない。
ゾンビやテロリストを気にしなくていいのは助かるが。
──ヴゥ゙ゥ゙ッ!!
「ッ!?」
「キャァァッ!?」
いきなりガバッと起き上がった黒焦げが、ユウキに掴みかかる。
──こういうヤツを除いて。
キュッと縮む心臓。知っていたのに。
「う、らぁッ!」
すぐさまゾンビの横っ腹をドカッと蹴り飛ばす。
「ッ!」
先頭を進んでいたトウヤが駆けつけ、倒れたヤツの頭をグチャッ!と叩き潰した。
「ぁ……あり、がとう」
腰を引いてカタカタ震えるユウキ。罪悪感がチクリ。
グロテスクに散ったソレは、目に入れないように。パンツをもっと汚すことになる。
「ハァッ、ハァッ……急ぐぞ」
せきを切ったようにワラワラと起き始めた死体。
幸いやつらは他よりトロい。こちらは三人もいる。
──救ってしまったものは、もう仕方がないんだ。
きっと、大丈夫。
*
森に囲まれた鈴風高校。
生い茂った木々にひっそりと隠されたその裏門は、テロリストどころか多くの生徒も知らない。校舎見取り図に存在しない闇深い場所。
──パリンッ……バキィッ
──エ゙ァ゙ァ゙
校内からかすかに聞こえてくる音。
──ダダダァンッ……
──ゃぁぁ
蔓延した恐怖の中、かすれた悲鳴がまじる。
「どう、する」
トウヤのこわばった声。
学校はすでに地獄だった。
「まだ……生きてる人はいる、よ」
影のある表情で、自分に言い聞かせるように。
彼女の悪夢は始まったばかり。
「……いこう」
暗がりにフッと足を踏み入れる。まるでバケモノの口に呑み込まれるみたいに。
僕らは闇へと消えていった。
*
校内1F。
いたるところに散らばるガラス片や血痕、そして……死体。充満する生々しい鉄の匂いがツンと。
先生や生徒の多くが体育館で殺された。
ゾンビパニックに紛れて必死に逃げ出した生存者たち。校舎に身を隠すものは、下階ではゾンビ、上階ではテロリストに怯え息を殺している。
「あ、あの。トイレ、いい?」
薄っすら青ざめたユウキがぽつり。
「あぁ」
気を付けろ。そう言ってスッと壁に寄るトウヤ。
チラチラ周りを警戒しながら、僕も頷く。
「(もしかして……アレか?)」
セーブも一時停止も存在しない。事態はいつだって流れるように。
逃したフラグはきっと、二度と戻らない。
「……蓮」
ふとトウヤが声をかけてきた。壁にグッと背を預ける彼。すました顔の裏に隠されているモノが、じんわりと。
「オ゙レは……フゥッ」
アミットウイルス感染の進行段階はステージIV。本来ならゾンビに転化していないとおかしい状態。
適応者である彼は、その抵抗力で未だ生命を維持している……首の皮一枚に過ぎないが。
「オレは──おまえを、しんじている」
目を閉じたまま、真っ直ぐ。
蛍光灯も点いていない薄暗い廊下を、ぼんやりと照らす曇天の影。
「トウヤ……?」
いきなり告げられたソレ。一体なにを。
「だから──」
──バゴンッ! ガンッ!!
「キャァァァァッ!?」
大きな衝撃音とユウキの悲鳴。
「クソッ!」
バッと弾かれたように、すぐさまトイレへ飛びこむトウヤ。
急いで、中へ。
──へたりと腰を落とすユウキと、モップを振り下ろした姿勢でギュッと目をつぶった女子。
「(あぁ……彼女だ)」
胸の内を大きな安堵がジワリ。
学校で初めて出会うキャラ。
体育館での惨劇を、校舎に広がった悪夢を、生存者グループの情報を。なにも知らないプレイヤーに伝える役目を背負った女子。
「…………」
ピタリと時が止まったような静寂。
四人とも、その場を動かない。
サイドを編み込んだシニヨンヘアの彼女が、ゆっくりと目をひらく。
ぼんやりユウキを視界に。さらに横──
「ぇ……ヒィッ!? イヤァァァァッ!?」
──血濡れのパジャマ、ぬらりと滴る赤黒い木刀。
我を忘れてダッと駆け出した彼女。
ポカンと固まるユウキ、咄嗟に頭を抱えて苦しむトウヤ。
「(……ってまずいッ!)」
こんなはずじゃ。
またズレが。
だめだ、だめだ。
彼女を逃がすわけには、いかない。
──ガシッ
その華奢な身体を無理やり抱きとめた。
「いやッ、いやぁッ!」
「大丈夫! ほら、大丈夫だッ!」
がむしゃらに暴れる。
こんな大声、ゾンビも集まってきてしまう。
「やだッ、やめてぇッ!」
「生徒だ! こ、こっちを見て、ほらッ!」
バクバクと鳴り始めた心臓。
まずい。はやく。
「い……いやッ……!」
「だいじょうぶ、こっちを……ひとだよッ」
じんわりと濡れた瞳を縋るように見つめて、語りかける。
次第にその焦点が、こちらに。
「ぁ……ひ、と?」
「そう、大丈夫……後藤……後藤蓮だ」
人差し指をシーと立てながら、静かに名乗る。
「あ……あ、あッ」
ツゥ…と彼女の頬を伝う、美しく透き通った涙。
「──めいッ……松本、萌衣……でずッ」
※見切り発車。需要があれば続きます。
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ついに4人パーティですね!
誰が話しているか、分かりにくかったらすみません。それと1~4話もちょこちょこっとだけ変えてます!