やっぱりキャラを喋らせる方が書きやすいですね。心情描写ムズカシィ
◇トーカの視点◇
「おまえら! この
冒険者ギルドの本日の獲物の展示スペースで、ルーカスさんという男の冒険者がエールを片手に叫んでいる。
「誰が倒したのー?」
「我らが期待のルーキーマコトだ! もう、
「「「「「おー!!」」」」」
酒場では冒険者たちがジョッキを片手に持って大騒ぎしている。どうやら、このことを理由にして宴会を開くようだ。
そんな大きな死体に冒険者たちが興奮している中で、そのオーガを倒した私たちは隅で夕飯を食べていた。
「疲れた。もう寝たい」
(今日は色々なことがありましたからね......)
マコトくんはいつもの串焼き屋のベンチに腰かけながら愚痴を漏らした。
どうやら早く休息をとりたいらしいが、彼の寝る場所はギルドの休憩室なのだ。
こんな騒ぎの中じゃ、寝たくても寝れないだろう。
どうして、こんなことになったのかそれは今日の日中にまで遡る。
◇
大森林にて私たちは日課のゴブリン狩りに来ていた。
ゴブリンはステータスの低いマコトくんでも安定して狩れる魔物だ。私を装備しなくても倒せるそれは彼の貴重な収入源となっていた。
本日の収穫は、20匹。
あとは奥の誰もいないところで私を装備しての鍛錬(急激なステータスの変化に慣れるため)をして、帰り道に角ウサギを狩って、いつも行く串焼き屋に納品しようと私たちは考えていた。
その時、彼の『危険探知』スキルが反応した。
すぐさま『隠密』スキルを発動し、静かに周りを観察していた私たちは冒険者らしき人たちが
剣士と魔法使いと僧侶の3人パーティ。皆若く、ベテランの冒険者ではなさそうだった。
「あいつらか」
戦っていたのはマコトくんにいつも絡んでくるジャンのパーティーだった。
どうやらオーガの討伐の依頼を引き受けたらしいが通常よりも巨大なオーガが現れピンチになっているらしい。
恐怖のためか、それとも焦りか、オーガから逃げようとしても彼らは上手く逃げれていない。このままではオーガに追いつかれるだろう。
「エミリー!」
そんな時、ジャンが、僧侶の女の子の手を引いて走った。
「ちょっと! 私は!」
残された魔法使いの女の子が悲鳴を上げる。どうやら、ジャンは僧侶の子が大事なようだった。
あ、魔法使いの子が転んだ。そこにオーガの手が伸びていく。
(危ない!マコト!)
(うん、わかっている)
念話で心の中で会話しながら彼女とオーガの間に私たちは入った。
「水魔法・
彼は信仰している神様から貰ったという短剣を振るって初級の水魔法を使った。
オーガの両目に、氷の刃が突き刺ささった。
ギャアアアアアア! とオーガが叫び、目を押さえて苦しむ。
彼は女神の短剣を構えた。
「おい、早く逃げろ」
「え、え、あ、ええ?」
女の子は、まだ混乱しているようなので、手を貸して立ち上がってもらい逃げてもらった。
こんなオーガ、私の力であれば大したことはないが女の子に私の力がバレるわけにはいかないのでここから離れてもらう。
「よろしくお願いします。トーカさん。」
(任せんしゃい)
私を引き抜いた彼はオーガの首を一刀両断した。
◇
「今日はヒーローだな」
串焼き屋の大将さんがマコトさんにいう。
「疲れた。もう寝たい」
「まあ、いいじゃないか。何か飲むか?」
「酒はさんざん飲まされたんで、水ちょうだい」
「あいよ」
彼はグラスに注がれた水を氷魔法で冷やしながら飲み、酔いを醒ました。
「ねえ、ここいい?」
ふいに、横から声をかけられた。さっき助けた魔法使いの女の子だ。
「ご自由にどうぞ」
マコトさんが言うと魔法使いの子が、隣に腰掛ける。
赤毛に赤目、釣り目で気が強そうな印象を受けるが凄い美人だ。耳がとがっているのでエルフだろうか?
「おじさん、何かカクテルってある?」
「あいよ」
彼女はお酒を頼むとマコトさんと話し始めた。
「今日はありがとう」
「どういたしまして」
「私、ルーシーって言うの。マコトは命の恩人だわ」
「気にしなくていいよ。ギルドからは報酬が出たし。神様への『貢献ポイント』も溜まったから」
マコトさんは寿命が1週間くらい伸びたらしい。でも、この騒ぎからもうオーガとは当分戦わなくていいや。と言っていた。
「でも、すごいわ。あなたブロンズランクの魔法使い見習いでしょう? あの大鬼を一人で倒すなんて」
「ラッキーだったよ」
「私なんて、上級魔法が使えるのに、全然、役に立たなかった……」
ルーシーさんは上級魔法が使えるらしい。すごいな、上級魔法を使える人は珍しくこの町では数える程しかいないだろう。
「そりゃ、凄いね。俺のスキルと交換して欲しいよ」
「ちがうわ! 私、スキルは強いけど、全然使いこなせてなくて。どうやったら、あんなに早く魔法を発動できるの? あれって無詠唱よね?」
「熟練度が50以上なら無詠唱ができるよ」
「それは知ってるけど、そこまで上げるのがどれだけ大変か……」
「俺、魔法をゼロから覚えてから1年3か月だよ?」
「はあ? う、嘘でしょ!?」
「いや、だって異世界から来たし」
「異世界人……。1年前にやってきた勇者の仲間たちね」
「いや、勇者の仲間ってわけじゃ……。たしかにクラスメイトだけど」
強力なスキルを保持しているマコトさんのクラスメイトたちは、有名人になっているらしい。各国で、要職についているものも多く、若干、この世界のパワーバランスを崩しているそうだ。
「やっぱり異世界のひとって凄いのね!」
「あ、あの……」
目をキラキラさせたルーシーさんは身体を近づけて囁いてきた。
「私とパーティを組まない?」
顔が近い。女の子、しかも美人に近づかれたマコトさんは慌ててる。
いつも冷静な彼がどもっているのは珍しい。酔うと、スキルを使うのが面倒だからと『明鏡止水』スキルを使ってないのだ。
「ちょっと、ルーシー? 何を勝手に決めてるのよ!」
誰かの声でマコトさんは我に返った。ジャンのパーティにいた、僧侶の女の子だ。隣にジャンもいる。
「なによ、エミリー」
「なによ、じゃないでしょ! あなた、最近わたし達のパーティに入ったばっかりじゃない!」
「それがなに? 私を見捨てて逃げたパーティーに用はないんだけど」
ルーシーさんは僧侶の女の子と言い合いを始めた。
「なあ、ルーシー。さっきは悪かったよ。ただ、どうしても2人一緒には助けられなかったんだ」
「それはあんたらがデキてるからでしょ。頼りにならないリーダーは要らないわ」
「あんた、何様のつもり!」
「うるさいのよ、ビッチが。私がパーティに入って、不安になったからジャンを誘惑して抱いてもらったんでしょう? 夜は二人で消えてたもんね」
「馬鹿なこと言わないで!」
私には少し刺激の強い内容で二人は言い争っている。というかジャンくんは好きな女の子の方を優先してしまったのか。
助けられた方はいいかもしれないが、じゃなかった方はそりゃ恨むでしょう。
「おーい、なに騒いでるんだ」
「なになにー、喧嘩?」
ベテラン冒険者のルーカスさんと受付嬢のマリーさんが、騒ぎを聞きつけやってきた。
「酔っ払いのケンカですよ」
「はい、はい。エミリーとルーシーは離れた離れた」
マリーさんが慣れた感じで、一触即発の二人の間に入る。
「ジャン。おまえ、マコトに言いたいことがあったんじゃないのか?」
ん? そうなの?ルーカスさんの言葉にジャンに意識を向ける。
もじもじとしていた彼だったが、
「す、すまん! マコト! 今日は助けてくれてありがとう!」
深く頭を下げられた。
どうやら男らしいところはあるようだ。パーティー内の色恋沙汰に関しては擁護できないが。
「ああ、別に」
「なんていいやつなんだ……」
「マコトさん! 私からもありがとう。ジャンの言ったことは、許してあげて」
「マコト! 罵倒してやりなさい! この役立たずどもに」
「あんたは黙ってて、ルーシー!」
そうだね。ルーシーさん、その言葉ブーメランになっていますよ?
「マコト、ジャンのことはこれでいいか?」
「いいも何も、最初から気にしてないですよ」
「まあ、気にしてないならいい。新人同士、今後は仲良くしてくれ」
とルーカスさんがまとめた。
「ジャンのことは、これでいいだろう。ところでルーシー?」
「な、なに?」
「おまえ、マコトとパーティ組むのか?」
「そ、そうよ!」
話が最初に戻った。ルーシーさんはマコトくんとパーティーを組むのだと言っているが肝心のマコトくんは難色を示している。
「マコト、パーティ組むのか?」
「うーん、俺は
「ええ!? そ、そんな」
「あはっ! 振られてるー」
ちょっと、エミリーさん?煽らないでください。
「な、なんで! 私じゃだめ?」
「マコト、今後も冒険者としてやっていくには、魔法使い見習いが単独ソロはきついと思うぞ。」
「俺はのんびりやりますよ。しばらくはブロンズランクでいいんで」
「いや、今日おまえが倒したオーガはブロンズじゃ倒せない魔物なんだが……」
「あと、やっぱり俺はステータスが低い魔法使い見習いですし。ルーシーさんもきっとがっかりしますよ」
マコトさんはそういって
マコトさんのそのステータスを見てその低さに彼らは驚くが、さらに驚くことを見つけた。
「筋力は無い、体力は無い、魔力は無い、ただ魔法熟練度だけは馬鹿みたいに高いんだよな。」
「ええええ! 魔法熟練度:90!? あ、頭おかしい……」
ルーシーさんがマコトさんを変態を見る目で見た。
「使える魔力が少ないんだから、使い方を工夫するしかないだろ。」
「だから、オーガをわざわざ水辺まで誘い出して倒したんだな。」
オーガは私の力をごまかすために水辺に誘い込んで倒したということになっている。
「そういうわけで、ルーシーさん。別の人を当たってくれ。」
「ちょ、ちょっと待って! 私は気にしないから!」
マコトさんは彼女の申し出を断ろうとしたが彼女は食い下がった。
「考え直して、マコト! 私の『炎魔法:王級』スキルは、きっと役に立つから。」
「『王級』ってすごいな。」
どうやら、相当なレアスキルを持っているらしい。マコトくんは悩み始めた。
「ルーシーを入れてくれるパーティなら、他にもいっぱいあるんじゃないの?」
「い、いや、私くらいになると入りたいパーティは自分で決めるから。」
ルーシーさんは目をそらす。
「何言ってるのよ、あんた。どこのパーティでも1ヶ月と持たずに、追い出される厄介者で有名じゃない。」
「うるさいわね、さっきから!」
「本当のことでしょ!」
どうやらルーシーさんには何か問題があるらしい。
マリーさんが二人の喧嘩をみてジャンとエミリーを私たちの席から離す。
「こいつ、スキルは強いんだが、まだ使いこなせてなくてな。なかなか、一つのパーティに定着してないんだが、マコトと一緒なら安心な気がするんだよ。」
「俺、魔法使い見習いだよ?」
「大丈夫よ! 一緒に、修行しましょう!」
マコトくんはまだ迷っているようだった。なので私も意見を出すことにする。
(マコトくん、私はいいと思いますよ)
(トーカさん.......それはどうして?)
念話で話しかけると返事が返ってきた。
(仲間というのは大切です。人は一人では何もできませんから)
(一人じゃないでしょう、トーカさんもいます)
(それでもです。私以外にも頼れるような仲間はいた方がいいでしょう)
私は彼に仲間がいた方がいいと思うのだ。
確かに私の力を使うときの彼であればここいらの魔物は敵ではないだろう。
だけど、私が居らず、そして気を抜いている時に不意打ちを食らうことがあるかもしれない。
彼の集中力でそんなことはないと思うが備えていて損はないだろう。
「いいじゃないか、ためしにパーティ組んでみろよ」
「そうそう、マコトは、もっと冒険者同士で交流したほうがいいわよ」
「マコト、仲間は大事だぞ」
だんだんと断れない雰囲気になってくる。
これって強制加入イベントだ。とマコトくんは小声で言った。
そして、ついに
「はぁ……、よろしく」
「こちらこそ!」
ルーシーさんが、マコトくんの仲間になった。
今回は初めての(人間の)仲間が加入した回でした。
ルーシーいいですよね。書籍版のTam-U先生のイラストがとてもいいです。
ちなみに、トーカが収められている鞘はマコトがふじやんに頼んで作ってもらいました。