藤原ミチヲさん。
彼は私と同じ異世界人であり、マコトくんの元クラスメイトだ。
戦闘向きではない、しかし有用なスキルを持っていた彼は商人としてその才覚を現している。
『収納魔法:超級』『鑑定スキル:超級』という商売には強力なスキルを持っていた彼の率いる「フジワラ商会」はいま最も勢いのある商会として有名らしい。
だが彼の真価はそれではない。
それは彼の持つ『ギャルゲープレイヤー』というスキルにある。
『ギャルゲープレイヤー』スキル。話によるとそれは最初、会話の記録をゲームのようにログで確認ができるスキルだったらしい。
誰かとの会話の内容を忘れることがないというそれだけでも有用なスキルなのだがそれの熟練度を上げたときなんと
何それ、反則でしょ。
それを聞いた私そんなことを思った。
読心能力なんて異能バトルでは強キャラが使うような能力だ。使い方次第では世界征服すらできそうなスキルである。
彼はそんなスキルを持っていることからマコトくん以外でたった一人、私の正体を知っている人だ。
彼と会ったのは私がこの町に来て最初の方だった。
マコトくんが私を収める鞘を手に入れるためマッカレンで商人をしているところを訪ねた時に彼と互いに自己紹介したのだ。
喋る武器、しかも異世界人で転生者である私のことをとっても驚いていたが、さすがはマコトくんの親友。ピッタリの鞘を見繕ってくれて、さらには私の存在を言いふらさないでいてくれている。
商人としても成功しており、性格も良い。そんな非の打ち所のない人間なのだ。
そんなわけで私にとって、彼は友人であり、少し尊敬している人であるのだった。
◇
今日の昼ごろ、冒険者ギルドの食堂スペースで、ルーシーさんと昼食をとっていたマコトくんのところに、藤原さんのお店の兎獣人の店員さんやってきた。
何回かお店で見たことがある。確か名前はニナさんだったかな。
彼女は藤原さんからマコトくん宛ての伝言を持ってきた。
どうやら彼はマコトくんと会って食事がしたいらしい。
最初、美人がマコトくんに話しかけてきて、不満そうにしていたルーシーさんもフジワラ商会の名前が出てきて興奮している。
「ねぇねぇ」
「なんだよ」
「フジワラ商店の店主って、異世界から来たやり手の商人でしょ? まことの友達だったのね!」
「ああ、ルーシー知ってるの?」
「何いってるのよ! フジワラ商店の店主って言えば、1年で数々の商売を成功させて、マッカレンの領主ともつながりがあるって噂よ。敵対する商人の弱みを次々に握って黙らせ、この街の裏の世界まで知り尽くしているとか。この街で逆らってはいけない人ランキング上位の大物よ!」
「へぇ……」
マコトくん、なんで知らないんですか?ギルドで話を聞いてるだけの私でも知っているほど有名な話ですよ。友人のことぐらい知っていましょうよ。
まあそんなわけでマコトくんは久しぶりに藤原さんと会うことにした。
◇
「「「「かんぱーい」」」」
夕刻に、酒場『猫耳亭』にて、マコトくんと藤原さん、「よろしければ、お仲間のルーシーさんもご一緒にどうぞ」といわれたのでついてきたルーシーさん、そして昼間のニナさん、後おまけで私も一緒に席を囲んでいた。
目の前には美味しそうな料理とお酒が並べられている。
「は、はじめまして。魔法使いのルーシーです」
「はじめましてですぞ。拙者は、藤原と申します。タッキー殿と同じくふじやんと気軽に呼んでくだされ」
ルーシーさんは緊張している。そりゃそうだ、比喩抜きでこの町一番の商人に自己紹介するんだもんね。
「私はニナでス。フジワラ商店で雇われてまして、冒険者もやってまして一応、シルバーです」
と銀バッジを見せられた。
「凄いですね」
「いやいや、そんなことないですよ」
ニナさんとルーシーさんは打ち解けるのが早い、やはり同じ女性だからだろう。
「いやー、しかしタッキー殿もやりますな。こんな美しいエルフの魔法使いを仲間にするとは」
「ささ、どうぞ。ルーシー様」
「ええ? あ、ありがとう」
藤原さんがヨイショして、ニナさんが酒を注ぐ。ルーシーさんは、勧められるがままだ。
あー、これはすぐに潰されるな。
「まことはさ! ストイック過ぎるのよ!毎日毎日、飽きもせずに修行ばっかりだし。そのくせして、マリーさんには言い寄られてるし」
「後半は関係なくない?」
結局、ルーシーさんは酔ってしまった。今回は荒れるパターンらしい。
「でも、お二人の噂は聞いてますよ。ブロンズランクでグリフォン討伐は凄いですよ。私でも一人では勝てませんネ」
「あれはただのラッキーですよ。俺は火傷しただけだし」
「火傷!? この世界のグリフォンは火を吐くのですか」
「そうだよ。怖いね」
「まこと~、うそ言わないで」
みんな適度に酔いが回って砕けた雰囲気になっている。最近の出来事などを雑談するようになった。
そんな中、ルーシーさんは酔って眠ってしまった。ニナさんが彼女を快方している。
そんな感じで楽しく談笑していたのだが、マコトくんが最近仲が良いジャンとかエミリーの話になるとふじやんの表情がだんだん、険しくなっていった。
ぐいっと、エールを空にする藤原さん。
「……」
無言である。
「ふじやん?」
マコトさんも口数が少なくなった友人に気づき、話かける。
「タッキー殿!」
藤原さんが急に大きな声を出す。ドンっと空のグラスがテーブルに叩きつけられる。
「は、はい」
「なんで、拙者をパーティーに誘ってくださらないのですか!?」
「え?」
予想外のことを言い出した彼にマコトさんは面食らった。
「ずっと待ってたんですぞ! 強くなったらパーティーを組んでもらえると言ってたではないですか!」
「そ、そうだったかな……」
「マスターは、そろそろタッキー殿が来てくれる筈だと、いつもそわそわしてましたからね」
あちゃあ。それは、悪いことしたね、マコトくん。
「寂しいでは無いですか。この街で、最初にお誘いしたのに」
さすがにかわいそうになってきたので、私は助け舟を出す。
(藤原さん、藤原さん)
(ん?おお、トーカ殿!急にどうしたんでござるか)
念話で話しかけたら藤原さんはすぐに反応してきた。
(あまり、マコトくんを責めないでやってください。最近は色々なことが起こりすぎて彼もあなたとの約束を忘れてしまっていただけなのです)
私を拾ったり、ルーシーさんがパーティーに加入したり、グリフォンと戦ったり最近の彼は非常にバタバタとしていた。
(あなたとの友情をないがしろにしていたわけではないのです。彼を許してやってください)
彼には読心がある。誠意を見せてくれればきっとわかってくれるはずだ。
「そうですね.....タッキー殿も最近は大変でしたでしょうから約束を忘れていても仕方ありませんね」
どうやらわかってくれたらしい。
マコトくんがありがとうと小声で言ってきた。
今度からは約束は忘れないでくださいね。
「ゴメン、ふじやん。もう少しレベル上げしてからって思ったんだけど」
「高月様のレベルなら、簡単なダンジョンなら問題ないですヨ」
「そうだよな。なんだかんだ、経験値を積んできたんだし.......。ふじやん、よろしく頼むよ。元A組コンビで、パーティーを組もう」
「おお! その言葉を待ってましたぞ!」
そうして藤原さんとマコトさんは一時的にパーティーを組むことになった。
あれ?ルーシーさんに許可取ってないけどいいのかな?
ふじやんはスキルの都合上、剣が主人公であることは知っていることになっています。
マコトがふじやんには隠すことはできないなということで彼女のことを紹介して、そこで主人公とお互いに面識を持ったという感じです。
マコト以外では彼女のことを知っている唯一の人です。
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