◇高月マコトの視点◇
翌朝、ふじやんと約束した場所に向かう。
「頭痛い……」
ルーシーは二日酔いで頭を抱えていた。今日は休むか聞いたのだが。
「いやよ! そうやって私をのけ者にして、ふじやんさんやニナさんとパーティー組んじゃうんでしょ! そしたら、私は捨てられるのよ!」とか言って付いてきた。
いや、俺がルーシーを捨てることはないから。仲間なんだし。逆はあるかもしれないけど。
「じゃあ、行くぞ」
「あうー……」
ゾンビみたいな歩き方のルーシーと集合場所に向かった。
街の南門前に行くと、もうふじやんは到着していた。
「タッキー殿、こちらですぞ」
「こんにちはー、高月様、ルーシー様。本日はよろしくお願いしまス」
ふじやんと一緒にニナさんが待っていた。どうやら彼女もいっしょに冒険に行くらしい。
ふじやんは、いつもの商人の格好だが、ニナさんは軽装な鎧をつけている。ただ、気になる点が。
「ニナさんは、武器は持たないんですか?」
「ニナ殿は、格闘家ですぞ。手足が武器ですな」
なるほど。獣人は身体能力が優れていて、素手でも強いとか聞いたな
「二人はいつも通りの格好ですな」
ふじやんは俺の格好を見てそういった。
二人というのは腰に差したトーカさんのことも含めてだろう。
知らない人が端から聞いていたら俺とルーシーのことだと思うだろうが。
「今日はよろしくお願いします」
「……しますー」
ルーシーはテンションが低い。
「じゃあ、みなさん出発しましょウ」
ニナさんの言葉で、歩き出した。
◇
「ニナさんは、火の国の出身なんですね」
「はい、そうなんでス。そこでご主人様と運命的な出会いを」
「ギャンブルで負けて、闘技場で闘士をしてましてな。奴隷として」
「ちょっと、ご主人様!その話はしない約束ジャ!?」
(ギャンブルって......)
南の森を俺たちは歩いていた。道中、雑談をしながら進む。
「ニナさんって……」
ふじやんの話を聞いて、ルーシーが残念な人を見る目になる。
「で、それを見たウサギ耳好きのふじやんは、ニナさんを買ったわけか」
「いやー、でも本当にあの時は助かりましたヨ。火の国の奴隷の扱いは雑ですからね」
「藤原さんは、どうしてニナさんにしたの?あの国は獣人の奴隷なんていっぱいいるでしょ?」
そうなのか。俺は、火の国に詳しくないので、知らなかった。
「そうなんですよネ。ほとんど初対面の私を、一目で気に入ってくださって。私の何が良かったのか教えてくれないんですよね。私はご主人様に買ってもらって闘技場から解放されたときは、一生ついて行こうと思いましたヨ」
「まあまあ、偶然ですぞ」
ふじやんは、ニナさんの疑問に曖昧に言葉を濁している。
(きっと、ニナさんの心を読んだのね。)
だろうね。便利だな、『ギャルゲープレイヤー』スキル。
「ところでふじやん。俺たちはどこに向かってるの?」
「驚きますぞ!実は、最近発見されたダンジョンがありましてな!」
「えっ!マッカレンの近くにまだ未発見ダンジョンなんてあったの?」
ルーシーが驚きの声を上げる。
「それって珍しいの?」
「だってマッカレンって、水の神殿の近くにあることやお酒が美味しい街ってことで新人からベテランまで、冒険者が多いことで有名なのよ。近場のダンジョンなんて、狩りつくされたって言われてるのに」
「へえ、そうなんだ。ふじやんは、よく発見できたね」
「ええ、それが南の森を調べるといいことがあるという夢を見ましてな」
「夢?それを信じて調べたの?」
「商人になってからは、直感や気になったことは必ず調べることにしてましてな。まあ、外れることも多いのですが今回は当たりでしたな」
ドヤ顔のふじやん。でも、それで未発見のダンジョンを見つけるだなんてすごいな。
「でも、誰も入ったことが無いダンジョンなら難易度が不明だし危険じゃないの?」
「そこは大丈夫ですヨ。私が事前に下見をしましたから」
「ニナさんが?」
「ええ、ご主人様の命令でダンジョン探索をしておきました。それほど強い魔物はいなかったので、ブロンズ級のお二人でも大丈夫だと思いますよ」
「いたれりつくせりだね」
すごいな、ふじやんと一緒だと冒険がヌルゲ―になってしまう。
「まあ、たまにはヌルゲーもよいでしょう。苦労してたようですし」
おっと、心を読んだな。
(まあ、こういう冒険もいいじゃないですか、マコトくんは最近は事件に遭遇してばっかりでしたし)
トーカさんからもこう言われた。
「そうだね。最近は、いきなりオーガの相手することになったり、グリフォンに急に襲われたり大変だったからなぁ」
今回は、楽させてもらうか。
そんなことを話しているうちについにダンジョンに着いた。
「おそらく昔の魔法使いが、研究用に作った施設か何かでしょウ。持ち主は不在のようですが、施設は生きていてそこに魔物がすみついたようですヨ」
ニナさんが説明してくれる。
(研究施設かー。今思えば私もダンジョンの中で転生したんだなー)
え?そうなの!
(うん、魔法武器の研究してたところの最深部で目覚めたんだよ。ボスみたいな魔物もいたし)
そうなのか。知らなかった。
でもまあダンジョン経験者がいるのはありがたい。
じゃあ、トーカさん頼りすぎないようにしますが、危なかったらお願いします。
(任せんしゃい!!)
◇
「研究施設みたいだね」
ダンジョンを攻略して最奥に着いた俺たちは最深部の部屋を探索していた。
道中はニナさんの活躍がすさまじく、会った魔物を魔法闘技で一撃で倒していく様はとてもかっこよかった。
魔力を闘気として纏うことで特定の動作をすると、自動で魔法が発動するようにする魔法闘技。
物理攻撃と魔法発動を同時に行う技術であり習得難易度は魔法の比ではないそれを使えるニナさんはさすがシルバーランク冒険者というべき実力だろう。
魔法闘技か.....
俺の素の魔力量じゃ闘気として使ってしまうと5分くらいでガス欠になるが、トーカさんと一緒なら使えるんじゃないだろうか。
(帰ったら、特訓してみますか?)
そうですね。
もしかしたら、諦めてしまった憧れの魔法剣士になれるかもしれないし。
(ふふふ、よかったですね)
俺は将来のことを考えて気分が良くなった。
最深部の部屋は、古びた棚やら良く分らない機械がぽつぽつとあった。どれも錆びていたり、風化してボロボロになっており、期待していた財宝の山が! みたいな展開ではなかった。
「なんだ、つまらないー」ルーシーが文句をたれる。
「まあまあ、案外掘り出し物があるかもしれませんヨ。ご主人様いかがですか?」
「うーむ、ぱっと見ではそれほど価値のあるものはありませんな」
おそらく鑑定スキルを使っているはずだ。ふじやんがきょろきょろとあたりを見渡している。
どうやらハズレだったらしい。まあ、たまたま発見したダンジョンで金銀財宝、なんてうまいことがあるわけないか。
「ねぇねぇ、さらに奥があるわよ」
研究施設に興味ないルーシーが、一人で奥を探索したようだ。
「おい、一人でいくなよ。危ないだろ」
「大丈夫よ。門番倒したんだから、こんなところに魔物は居ないでしょ」
「そういう台詞を言うやつが、真っ先にやられるんだ。映画とかだと」
「映画?」
今度ルーシーには、死亡フラグの重要性を教えてやろう。
「おー、ここはダンジョンの動力室のようですね」
一人でふらふらしているルーシーを心配したのか、ニナさんもついて行ってくれたようだ。
「ほう! 動力室ですか! 1000年の間稼動していた人工ダンジョンの動力となれば相当なエネルギーのはず」
ふじやんが興奮したように叫ぶ。
「ご主人様ー。すごいでっかい魔石がありますよ」
ニナさんは、きちんとレポートしてくれる。ふじやんといいコンビだなぁ。
(魔石?)
魔石と聞いてそれを使って進化するトーカさんも興味を持ったようだ。俺も気になったのでルーシーの行った部屋に向かってみる。
「す、すごいですぞ! こんな巨大な魔石があるとは! マッカレンの街で使われるエネルギーをすべてまかなえそうな量ですぞ!」
「すごーい、こんな大きい魔石エルフの里でも見たことないわ。あ、なんかピリッとした」
「る、ルーシー様? あまり不用意に触らないほうが……」
「ふぉぉ、これを持ち帰ればマッカレンの街が生まれ変わりますぞ。しかし、どうやったらこんな巨大な天然の魔石が…………、わぁあああああああああ」
「ご主人様!?」
「ふじやんさん! どうしたの?」
え? 何があった。
(どうしたのかしら、藤原さんたち)
「ふじやん、どうした! って、これは凄いな」
奥の部屋に入ると大きな、七色に輝く魔石がゆっくりと
............動く.....?
なんで石が動くんだ?
「は、はやく逃げますぞ! 我々はとんでもないものを起こしてしまいました!」
ふじやんが真っ青な顔をしている。
「何これどうなってるの!」
ルーシーは、いつものようにパニックになっている。
「……」
ニナさんは、ふじやんを守るように構えている。
(何なの、この魔力!?)
何かを感じたトーカさんも焦っている。
俺も3人の近くまで駆け寄った。
「や、やばいですぞ。これは、やばいですぞ……」
「ふじやん?」
目の前の七色の魔石はゆっくりと上へ伸びていき、そしてぐねぐねと波打ちながら形を変えていった。
――じろりと、大きな目がこちらを見下ろす。
七色の魔石は、巨大な人型に形を変えてしまった。
前に戦ったオーガを一回り大きくしたような、光り輝く巨人がこちらをみて「にたぁ」と笑う。
あ……これ、あかんやつや。
秘技、展開同じなら描写を飛ばしてしまえの術。
また、飛ばしてしまいました。マコトたちのダンジョン攻略を詳しく知りたい方は原作を読んでください。
次回で書籍版一巻の時系列が終わると思います。
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なにとぞ、よろしくお願いします。