邪神の使徒と行く異世界"剣"生活   作:エセ未来人

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結局めっちゃ長くなってしまいました。これにて一巻はおしまいです。


14話 剣咲刀華はその足で立つ

 

 

 誰?

 

 

 その声を聴いたときに私が思ったのはそんなことだった。

 

 

「......女神さま?」「……この御声、ノアお嬢様ですか?」

 

 

 どうやらマコトくんと巨人はこの声の正体が分かるらしい。

 

 

 

「じい、やめなさい。その子は私の信者よ」

 

「……おお。……そうであったか。……すまなかったな」

 

 声が巨人に言った瞬間いきなり手を離された。

 

「痛て」

 

 数メートルを落下したせいで、マコトくんは無様に尻餅をついた。

 

 

 

 

 私はずっと混乱しっぱなしだった。

 

 とんでもない強さの巨人の封印が解かれたと思ったら、そいつと戦うことになって、それによって絶体絶命になったら謎の声が降ってきて助けてくれた。

 

 いろんなことが起こりすぎて何が何やら全く分からない。

 

 

 

(えっと、あの。マコトくんこれは一体......?)

 

「ああうん、そのまあ、説明するよ」

 

 そうして欲しい、今の状況は何が何やら全く分からない。

 

 

 

 

「俺の信仰している女神さまのことなんだけど――」

 

 そうして彼の信仰している女神の話が始まった。

 

 その話によると....

 

 彼は邪神を信仰しているらしい。

 

 邪神、つまり今世界で幅を利かせている聖神族(オリュンポス)ではなく古神族(ティターン)を彼は信仰しているのだ。

 

 それを聞いたときの私の驚愕はすごかった。

 

 でも、同時に納得もした。

 

 『精霊使い』なんて珍しいスキルを与え、あの短剣のような凄まじいマジックアイテムを下賜されるなんてどんな強力な力を持った神を信仰しているのか謎だったのだ。

 

 それが邪神だったというのは何となくしっくり来た。

 

 

 ん?ということはこの天の声って....

 

「そうよ、その女神さまが話かけているの、剣咲刀華ちゃん」

 

 私が考えに行きつくと同時に天からまたあの声が降ってきた。

 

 鈴を転がすような、聞いているだけで魅了されそうになる声。

 

 この声を出しているのががマコトくんの言う女神さま。

 

 

 

 

 女神さま、いやノア様でしたか。今回は私たちを助けてくれてありがとうございます。

 

 まずは感謝の言葉を彼女に伝える。

 

 

「ふふっ。感謝しなさい。まこと、あなたが私の信者でよかったわね」

 

「えーと、それは一体」

 

 マコトくんは彼女の言葉の意味が分かっていなかった。

 

「……我々、タイタン族はティターン神族に仕えている。ノアお嬢様の信者であれば、我の家族も同然だ」

 

「……そ、そうですか」

 

 その疑問には巨人さんが答えてくれた。

 

 急な話で私たちはついていけていないが、この巨人は、タイタン族という種族で女神様の仲間らしい。

 

 なので、女神様の一言で彼はおとなしくなったようだ。

 

 と言うか彼、神様だったのか。いや、藤原さんも鑑定で巨神であるって出た、と言っていたし気づくべきだった。

 

 

「まこともびびりねー。タイタン族は、大地から生まれた物しか食べないわよ。人間なんて食べるわけないじゃない」

 

「え? そうなんですか」

 

「……うむ。……我は肉は食わんな」

 

 

 うそ、その見た目で採食主義者(ベジタリアン)なの!?

 

 いやでも、それならこちらを見て腹が減ったなんて言わないで欲しい。

 

 どうやら久しぶりに封印から出てお腹が空いていたそうだけど、あれで食べられると思って攻撃してしまったのだ。

 

 

(すみません....勘違いで攻撃してしまいました)

 

「何、気に病むな。こちらも悪かった。なかなかに良い攻撃だったぞ」

 

 

「でも、ニナさんを吹っ飛ばしたのはなぜです?」

 

「……急に攻撃してきたので、驚いてな。……軽く押したつもりだったのだが」

 

 それであの威力か。シルバーランクが、反応できずに一撃でダウンしていた。

 

 この巨神さんは、相当規格外のようだ。

 

 

「あー、まこと、じい、トーカちゃん。私は時間切れみたい。じゃあ、あとはよろしくね」

 

 女神様は、そういい残して行こうとする。

 

 

(待ってください、ノア様)

 

 それを私は呼び止める。

 

 

(何かしら?)

 

(えっと、先ほどのこと以外にももう一つあなたに感謝しなければならないことがあります。)

 

(もう一つ?)

 

(はい。あのダンジョンから出るとき、キマイラを倒したときのあの短剣。あれって今、()()()()()()()()()()()()()ですよね?)

 

 今、思い出した。彼の持っている短剣に見覚えがあるなと思っていたのだ。

 

 記憶を遡ってみたら。私が転生したダンジョンを出るためにキマイラを貫いたあの短剣、あれはその時の短剣と瓜二つだった。

 

 

 彼は短剣を貰った時、目が覚めたら枕元に前触れなくあったものらしい。

 

 そんな風に私のところへとあの短剣を届けてくれたのではないだろうか?

 

 

 

「そんなこともあったかしらね。まあ、ただの気まぐれよ」

 

(それでも、ありがとうございました。)

 

 

 助けられたら感謝を伝える。それが人としての礼儀だ。

 

 

 そして.....

 

(女神ノア様)

 

(何?)

 

(あなたはマコトくんに危害は加えませんか?)

 

 聞きたいことは聞いておくべきだろう。

 

 

 

 邪神というのは勝者である聖神族が敗者である彼らを呼ぶ呼び方だ。

 

 そのためその字面通りの意味で彼らが本当に邪悪な存在であるかどうかは名前だけでは判断できないだろう。

 

 

 

 だけど、この世界で忌避される古い神々が異世界人であるマコトくんを勧誘して強力なマジックアイテムを与える。

 

 そんな状況に怪しいと思わないほど、私は頭が回らないわけではない。

 

 

 マコトくんには恩がある。

 

 私を森の中で見つけて友達になってくれたこと、私を連れ出し街まで連れてきてくれたこと、私のわがままを聞いてくれていること。

 

 友人で、契約者である彼がこの先傷つくことが起こるかも知れない。そんなことはなるべく避けるべきだろう。

 

 

 

「...................まことは私にとってたった1人の信者よ。彼のことは私も大事に思っているわ」

 

(...わかりました。それを信じます)

 

 

 彼女の答えに今は納得する。

 

 ノア様にとってもマコトくんは一人だけの大事な信者だ。大切にしてくれるだろう。

 

 

 

「じゃ、私はもう本当に行くわ。地上に直接声を届けたらなんて知られたら聖神族に罰を増やされちゃうし」

 

 

 そう言って今度こそ本当に彼女はここから去った。

 

 

 

「えっと......」

 

「............」

 

(どうしましょう、この空気)

 

 

 残された私たちと巨神さんの間には気まずい沈黙が漂っていた。

 

 さっきまで戦っていたような空気はもうなくお互いにお互いを観察している。

 

 

 

「おーい、タッキー殿!」

 

「ちょっと! 巨人! まことから離れなさい」

 

 そんな気まずい中逃げていたはずのルーシーと藤原さんが戻って来た。

 

 

「た、高月様!? 巨人の指を落としたのですか!」

 

 ニナさんが驚愕の声を上げている。

 

 

「えーと、スイマセン。指を切ってしまって……。これってくっつけたりできますか?」

 

「……かまわん。……1万年もすれば生えてくる」

 

「そ、それは、よかった」

 

 マコトくんは巨神さんと話し始めた。どうやら切ってしまった指に関しては許してくれるらしい。

 

 

 

「「「……」」」

 

 巨人と普通に会話する彼に、みんなが固まる。

 

 

 

「みんな大丈夫。この巨人は仲間だったよ」

 

 

 マコトくん、いきなりそんなこと言われたら混乱しちゃいますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 驚くみんなに、マコトくんは女神さまと巨神さんの関係、あと私のことについても説明した。

 

 

 

「なんと、このかたはタッキー殿の信仰する女神様のお仲間でしたか」

 

「ちょっと、まこと。私聞いてないんだけど、まことが邪神の信者なんて!」

 

「る、ルーシー様? そのように目の前で言うのは……」

 

「ていうか、その剣ってマコトと同じ異世界人なの!?異世界には喋る剣もいるのね......」

 

 みんな驚いている。

 

 ルーシーさんの異世界への認識がおかしなことになっている。違いますからね!この世界に来てから私は剣になったんですから。

 

 

 

「……我々タイタン族は、ティターン神族の守護者だ。……しかし、我らが主が戦争に負け、我々を含む巨神族が主をお助けするために神界に挑んだ」

 

「ギガントマキアですネ」

 

「なるほど、聖神様と戦った神族だったので邪悪な、と表現されたんですな」

 

 あっちでは巨神さんが藤原さんとニナさんと神話の時代の話をしている。

 

 

 気になるが、私はルーシーさんと話していた

 

 

(私はマコトくんに森の中で拾ってもらって、その縁で)

 

「そうなの?」

 

(ええ、私の存在は面倒事を招くだろうと、周りには秘密にしていたんです)

 

「なるほどね。だから私にも言わなかったんだ。」

 

(すみません、あなたのことは剣として振舞っている間ずっと見ていました。あなたの隠していることも、マコトさんに話しているのを聞いてしまって.....)

 

「ん~、まあいいわよ。あなたなら周りに言いふらすことはないでしょうし」

 

(......ありがとうございます。優しいんですね)

 

 

 自分にその気はなかったがマコトくんとの会話を盗聴していたようなものだ。

 

 そのことについて謝れば、彼女は許してくれるという。優しい人だ。

 

 

 

「そういえば、空腹と言ってましたよね?」

 

 巨神さんにマコトさんが言う。そういえばもなにも、そのことで私たちは彼に攻撃してしまったのだ。

 

 

「ふじやん、パンとか果物ってないかな?」

 

「お、おお。ありますぞ」

 

 藤原さんに頼んで、収納魔法に入っている適当な食べ物を出してもらう。

 

 

「……おお、懐かしい。……再び、大地の恵みを口にすることができるとは」

 

 巨神さんは、パンやら林檎を嬉しそうに食べている。ワインも、美味そうに飲んでいた。

 

 

 

「……礼をせねばならんな」

 

 身体のサイズからすると、まだ食べ足りないんじゃないかと思ったが、満足したらしい。

 

 

 

「……獣族の娘よ。……先ほどはすまなかったな」

 

「い、いえ! 先に攻撃したのは私ですかラ!」

 

 ニナさんは巨神さんに意識を向けられ慌てている。

 

「……そなたには大地の巨神の加護を」

 

「え?」

 

 ぽわっと、ニナさんが一瞬光に包まれる。

 

 

 

「ぉおお、何やら力が沸いてきますネ……」

 

 ニナさんは、自分の身体を確認している。

 

 

 

「どれどれ……よっ!」

 

 ニナさんが、近くにある岩を軽く蹴った。

 

 ずぉぉお! とニナさんに蹴られた岩が、一瞬で大岩に姿を変え、周りの木々をなぎ倒しながら進んでいった。

 

 

 

「うわー、凄い」

 

「どうやったのですかな? ニナ殿」

 

「い、いや。ちょっと、試してみるつもりだったのですが。これは凄いですね」

 

 ぶんぶんと、回し蹴りを空中で放っている。あ、着地と同時に地面にクレーターができた。

 

 ニナさん自身も、自分の足技にびっくりしているようだ。

 

 

 

「……次は、食べ物を捧げてくれたそなたか」

 

 次は藤原さんの番のようだ。

 

「それでしたら、巨神様! その切られた指をいただけませんか?」

 

 彼は、切り落とされた巨人の指が良いらしい。

 

 .......少し趣味が悪いかな......。

 

 どうやら同じことを二人も思ったようで、ルーシーさんとニナさんは微妙な表情をしている。

 

 

「……そんなものでよいなら、やろう」

 

「感謝しますぞ!」

 

 藤原さんは収納魔法に虹色の魔石を入れた。

 

 

 

「……次は、エルフの娘か」

 

「……は、はい」

 

 ルーシーさんは緊張した面持ちだ。まだ少し彼のことが怖いのだろう。

 

 

「……そなた、魔法をコントロールできておらんな」

 

「わ、わかるの?」

 

「……その、暴風のような魔力をみればな」

 

 

 魔力が荒々しい。巨神さんはルーシーさんの姿を見てそう言った。

 

 確かに彼女はその体質のせいで、大量の魔力に対して魔法を使うのが苦手だ。

 

 

「……杖を貸すがよい」

 

「これ?」

 

 ルーシーさんがいつも使っている木の杖を巨神さんに渡す。

 

 彼は、自分の髪を一本引き抜くと杖に絡み付けた。髪は一瞬で光の文字のようになり、杖に吸い込まれる。

 

 

 

「……返そう。……これで土魔法が使いやすくなるはずだ」

 

「へ、へぇ」

 

 ルーシーさんは恐る恐る、呪文を唱える。

 

「土魔法・岩弾」

 

 さっきのニナさんに負けないくらいの、大岩が杖から飛び出し、ニナさんの真横を通り過ぎる。

 

「うひゃぁ」

 

 ニナさんは悲鳴を上げる。

 

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 ノーコンは直らないらしい。だけど魔力の制御に苦労していたルーシーさんが簡単に魔法を使えるようになった。

 

 さすがは神様だ。

 

 

「ふわぁぁぁ……」

 

 ルーシーさんは、わなわな震えながら杖を見つめている。感動してるみたいだ。

 

 

 

 

「では、命の剣の娘。」

 

「は、はい」

 

 どうやら次は私の番みたいだ。命の剣ってインテリジェンス・ウェポンのことかな?

 

 

「鞘を貸してみよ」

 

 私は念動で鞘を持ち上げ彼に渡した。

 

 

 巨神さんはそれをつまみ上げ、ふう~と息を吹きかける。すると魔法文字のようなものが鞘に吸い込まれていった。

 

 

「使ってみろ」

 

「はい」

 

 鞘に収まってみるとなんだか魔力のとおりがよくなったような気がした。

 

 

「魔法の増幅効果と魔力の制御を補助してくれる、そしてスキルを一つ付与しておいた」

 

「スキルですか?」

 

「ああ、転化の術というものだ、使ってみろ」

 

 

 私は鞘に魔力を流し込んで、スキルを発動させた。

 

 

 

 その瞬間、目の前が真っ白になり、そして視界が戻った時に私は()()していた。

 

 目線が高くなり、体の感触と感覚が変わっている。

 

 なに?何が起きたのか?

 

 

えっと.....」

 

 私は何が起こったか分からず声を出してしまった。.................声?

 

 

「へー、こりゃ驚いたな」

 

「びっくりですぞ!」

 

「何それ!?」

 

「これは、凄いですネ」

 

 周りの人たちは私のことを見て驚愕している。

 

 私はどうしたのか聞こうとして、気が付いた、()()()()()()()()

 

 

 もしかして.....

 

 

 私はスキルで自分の姿を見下ろすように視点を飛ばす。

 

 

 

 

 そこには白い髪と緑がかった黒い眼の女の子がいた。

 

 私である。

 

 前世の面影がありつつも、美少女になった私の姿がそこにあった。

 

 

 え?え?え?

 

 

 

「もともと、人間だったらしいのでな。ヒトの姿になれるようにした」

 

 鞘に魔法をかけた巨神さんが言う。

 

「その鞘であれば剣の姿とヒトの姿どちらにもなれる」

 

 

え?あ、はい。ありがとうございます

 

 前世を含めても初めて喉を使ったせいか声をうまく出せずに音量が小さくなってしまった。

 

 

 

 

 衝撃的なことが起こりすぎて情報を処理しきれない。

 

 人間に戻った?いやでもまだ剣のままで、でも念動じゃなくて自分の足で立っていて?????

 

 

 

 

 

 

「……さて、以上か」

 

「え?」

 

 私が混乱している間に巨神さんは仕事を終えたと行こうとした。

 

 それに自分だけ何も貰っていないマコトくんが抗議の声を上げる。

 

「ちょっと! まことが一番大変だったでしょ!」

 

 ルーシーさんも怒る。

 

 マコトくんだけ、何も貰えないのは不公平だろう。

 

 

 

 

「……ノアお嬢様の加護を得て、神器までもらい、まだ望むか。……過ぎた欲望は身を滅ぼすが……」

 

 巨神さんにそういわれてマコトくんは納得してしまい、黙ってしまった。

 

 でもさすがに何もないのは.......

 

 

「……助けが必要なときにノアお嬢様を通じて呼ぶとよい。一度だけ、助けよう」

 

 どうやら、一度だけ彼の力を借りることができる権利を貰えたらしい。

 

 

 

「では、ノア様を海底神殿から助けることはできませんか?」

 

 マコトくんはすぐさまその権利を使うようだ。思いっきりがいい。

 

 

 

「……それはできぬ。……ノアお嬢様が力を取り戻すには、信者が海底神殿までたどり着く必要がある。……我がお助けしても力は戻らぬ」

 

 どうやら、なんでもできるわけではないらしい。その声には謝意が感じられる。

 

 それを聞いたマコトくんはちょっとがっかりしていた。

 

 

 

「……自分の望みより、主のことを願うとは良い心がけだ。……ひとつ助言しよう」

 

「助言ですか」

 

「……キサマの精霊語。あれは神の言葉だ。やめよ」

 

 願いをかなえてくれなかった代わりにマコトくんは巨神さんから助言を貰った。内容は彼の使う精霊魔法について。

 

 

「……精霊語はティターン神族が使ってこそ意味がある。ヒトの身で精霊の力を使いたいのであれば、精霊を見て、精霊と会話し、精霊と親しくなれ」

 

「えっと、その....見えないんですけど」

 

 

「……見よ」

 

 急に彼はマコトくんの頭を掴み、魔力を流し込んだ。あれは、同調だろうか。七色のすさまじいオーラが巨神さんから漂っている。

 

 

「え?......これって...」

 

「……見えたか?」

 

「は、はい」

 

どうやら、マコトくんに精霊の姿を見せたようだ。マコトくんはどんなものを見たのか、少し呆然としている。

 

 

「……才能が無いものには、見えぬ。……そなたは精霊に好かれているようだ」

「……精霊語は、ティターン神族から精霊への命令だ。……精霊は命令されることを好まぬ」

「……精霊を見て、話し、親しくなれ」

「……精進せよ」

 

「ありがとうございます」

 

 色々とためになったようだ。マコトくんは巨神さんにお礼を言った。

 

 

 

 

 

「……では、さらばだ」

 

 

 

 巨神さんは地面の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「行っちゃった」

 

 ルーシーさんは力が抜けたのか疲れた顔をしている。

 

「いやー、タッキー殿! あの女神様のお仲間は、素晴らしいかたですな」

 

 藤原さんは魔石を貰えてテンションが高い。

 

 

「そーいえば、ご主人様はなんで巨人の指などを貰ったのですカ?」

 

 ニナさんが気になっていたことを訪ねる。

 

 

「ふふふ、この巨神の指は、とんでもないエネルギーを秘めた魔石ですぞ。このエネルギーだけで、兵器として使えば国ひとつ滅ぼせますな」

 

「え? ちょっと! それ危険じゃないの?」

 

 ルーシーが、さっと距離を取る。

 

 

「拙者は、そんなことには使いませんぞ。いやー、しかし収穫が多い冒険でしたな!」

 

「そうですねー、私も凄い加護がもらえましたし」

 

 藤原さんとニナさんは、ニコニコして嬉しそうだ。

 

 

 

「ふふふふっ」

 

 ルーシーさんは、改造してもらった杖を大事そうに抱えている。さきほど、何度か土魔法を試してみたのだが、相当強力な武器になっているようだ。

 

 とりあえず、魔力を込めれば魔法が発動するらしい。

 

 燃費は悪いらしいが、魔力があり余っている彼女とは相性抜群である。

 

 そんな風に雑談しながら街の方へと足を進める。

 

 

 

 そして、私はよろけながらなんとかみんなに合わせて()()()()()

 

 

「難しい........、バランス取れない.......」

 

「肩貸すよ」

 

 

 転びそうになった私をマコトくんが支える。

 

 ありがとう。

 

 

 だが、貧弱なステータスのせいで彼もろとも一緒に倒れそうになり結局ニナさんに支えてもらった。

 

 

 ヒト形態になった私はこのまま街に行くことにした。

 

 私がみんなと一緒に歩いてみたかったからである。

 

 慣れない感触でもう何回も転びそうになっている。というか転んだ。

 

 

 しかし、高いステータスのお陰か街に近づくころには何とか違和感なく歩けるようになった。

 

 やっぱり、ベット生活だったとはいえ前世の人間だったときの記憶のお陰かな?

 

 まだ、走ったりは無理だがこの調子ならすぐにできるようになるだろう。

 

 

 

「トーカ殿の身分証は某に任せてくだされ、色々なところに顔が利きますからな」

 

「恩に着るよ、ふじやん」

 

 

 人形態の戸籍は藤原さんが容易してくれるらしい、ありがたい。彼にはよくしてもらっている。

 

 

 

「ねえ、トーカ!今度一緒に服見に行かない?あなたに似合いそうな服があるの!!」

 

 ルーシーさんは遊びに誘ってくれる。彼女も優しい。人になれるようになったし、盗聴の件の謝罪もかねてお金が稼げるようになったら何かプレゼントをしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 前世、病弱だった私は今世では「剣」になり、邪神の信者が使い手となった。

 

 波乱万丈な日常だけど、前世よりも刺激的で楽しい。

 

 ああ、生きるのって最高だ!!!!

 

 私はみんなの顔を見ながらそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

◇高月マコトの視点◇

 

 

 俺は女神様の短剣を見つめる。

 

 

(なんか、今回の件は女神様らしくなかったな……)

 

 

 

 いつも頭の中に声を響かせ危険なことに注意してくることが多い彼女が、今回は事前に話をしなかった。

 

 

 見計らったようなタイミングで直接、介入してきた。しかも、ダンジョンの奥にいたのは、女神様の仲間だ。

 

 どうも作為的なものを感じる。

 

 

 

 

 

 俺は女神様のたったひとりの信者である。

 

 

 これは、最近知ったことだ。

 

 女神様の姿が見え会話ができる、そんな存在を『使徒』と呼ぶらしい。

 

 

 聖神教の巫女も使徒の一種だ。

 

 しかし、彼女らは声しか聞けない。

 

 

 

 使徒は、神の姿が見え、

 

 使徒は、神の声が聞こえ、

 

 使徒が悩めば、神が助言をくれ、

 

 使徒が迷えば、神が道を示してくれ、

 

 使徒が祈れば、『加護』を与えてくれる。

 

 

 

 いいこと尽くめだ。

 

 

 

 ただし、――使徒は、神の命令に逆らえない。

 

 

 

『神託』がおりれば、使徒は抗えない。

 

 命をかけて、神の命令を遂行しないといけない。

 

 

 

 そういう決まりだそうだ。

 

 

 

 女神様は言った。

 

 

 

「強くなりなさい」

 

「死んだら許さないわよ」

 

「精進しなさい」

 

 

 

 これは、『お願い』らしい。

 

 今の俺では女神様の命令が遂行できないのだろう。

 

 俺は弱い。

 

 なんせ、魔法使い見習いだ。

 

 ふじやんみたいなスキルはないし、トーカさんみたいに進化はできない、ルーシーのような大魔法を連発できるような魔力もない。最強の異世界人の桜井君(光の勇者)とは比べるのもおこがましい。

 

 

 

 だが、女神さまは俺を選んだ。弱い俺を選んだのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 いずれはっきりするはずだ。

 

 

――女神様の本当の『お願い(命令)』が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

◇巨神■■■■■■の視点◇

 

 

 ヒトの子らと別れ、地脈に沿って移動する。 

 

 1500万年ぶりの自由。実に、心地よい。

 

 

 

 のそりと、地上へ出た。

 

 ここは、大陸の西あたりだろうか。どこまでも豊かな森が広がっている。

 

 だが。

 

 

 

「……気に入らん」

 

 

 

 精霊たちは息を潜め、活気が無い。我々、タイタン族が地上を闊歩していた時代では考えられぬ。代わりに感じるのは、天から見下ろしてくるやつらの気配だ。

 

 

 

 精霊たちから聞いていたが、今の地上は変わってしまった。

 

 

 

(本当に忌々しいわね)

 

 

 

「……ノアお嬢様」

 

 我々の仕えるティターン神族の末っ子。他のティターン神族は奴らに捕らえられ、ただ一人地上に取り残された哀れな御方だ。

 

 

 

(哀れとか、言わないでくれる?)

 

 

 

 これはこれは。とんだ無礼を。

 

 

 

「……この度は、長き封印から目覚めることができました。……しかし、神族の封印を見抜く眼を持ったものが、都合よくあらわれたものですな」

 

 

 

 普通の人間には、見抜けるようなものではなかったはずだ。

 

 あの場所も、見つけづらい魔法がかかっていた。

 

 

 

(そんな都合いいことがあるわけないでしょ。 私が呼んだのよ。あの商人くんには、私の短剣を通して一時的に『神力』を与えたのよ。もう、効果は切れちゃったけどね)

 

 

 

 おお、そうでしたか。しかし、彼はノアお嬢様の信者ではなかったはず。

 

 信者の高月マコトへ『神力』を与えればよかったのでは?

 

 

 

(駄目よ、()()あの子はまだ弱いもの)

 

 

 

 ほう……。確かにあの剣の少女がいなければ彼はこの世の最下層の実力でしょう

 

 

 しかし、彼はノアお嬢様の『使徒』でしょう?ノアお嬢様を、お救いすると張り切っておりましたぞ。

 

 

 

(うーん、そうねぇ。でも、あの子自身の魔力見た? 初級魔法を1、2回で魔力切れ起こすのよ? 精霊使いのスキルを与えたけど、全然使いこなせてないし)

 

 

 

(しかも、あの子、弱いのにすぐ強い敵に突っ込んでいくのよ! 見てられないのよ!)

 

 

 

 ぷりぷりと、怒っている。

 

 ノアお嬢様が、信者の行動に文句を言うのは珍しい。本来、ティターン神族は自由を愛する神々だ。

 

 神々自身も、その信者へも。

 

 

 

 今の神界の支配者どもは、管理するのが好きなようで、信者に祈りやお布施を強いていると聞くが。ノアお嬢様も、聖神族やつらに染まってしまったのだろうか。

 

 

 

(あいつらの影響なんて受けてないから)

 

 

 

 であれば、よいですが……。

 

 にしても、あの純粋な少年に無理をさせるのは、感心しませんな。

 

 1000年前は、ノアお嬢様が信者を使って世界に混乱を招いていたようですし。うまくいかなかったようですが。

 

 

 

(……よく、知ってるわね)

 

 

 

 石化の封印をされていても、世界の動きは精霊に聞いておりました。

 

 唯一のティターン神族であるノア様は、いろいろと画策されていたようですが、結果はあまりよくない。

 

 

 

(『千年前(前回)』は失敗したわ。カイン(あの子)がやりすぎちゃってね。でも、今回は慎重にやるわよ。オリュンポスのクソ共……、見てなさい)

 

 

 

 その声には、暗い復讐の影が見え隠れする。

 

 そのような憎々しげな声を……。あの可愛らしかったノアお嬢様が、歪んでしまわれた。

 

 

 

(ふん、私は今でも可愛いわよ)

 

 

 

 そうでしょうとも。

 

 ティターン神族、随一の美姫神と謳われたノアお嬢様です。

 

 その御姿を見れば、()()()()()()()()()()()()()()()()()ことでしょう。

 

 あの少年も信者になるときに、お姿を見たとあっては()()()()()()()()()()()()()

 

 きっと、ノアお嬢様のことしか考えられないほど魅了されているはずだ。

 

 

 

(……そうね)

 

 

 

「……どうされましたかな? ノアお嬢様?」

 

 

 

(何でもないわ。ところで、じいはこれからどうするの?)

 

 

 

 我はこれから世界を巡り、封印されている仲間を探します。

 

 

 

(ええ、それが良いわ。オリュンポス神族に戦争をしかけるにしても、数が必要だから)

 

 

 

 やはり、まだ諦めておられないか。

 

 しかし、現状は、たった一人の信者を動かすことしかできない。

 

 あの()()()()()()()()()()()()()()()()ようですが、それも大したことはできないだろう。

 

 

 

 そういえば、あの少年の仲間を強くしろ、というのがノアお嬢様の命令でした。

 

 さきほど、封印から解かれたときにこっそり、指示を受けていた。

 

 

 

(そうよ。よくやったわ、じいや。あの子は勝手に暴走して死にかけるから、仲間を強くしとかないと危なっかしいのよ)

 

 

 

 正直、その命令の目的もよくわからない。

 

 肝心のあの信者には、何も命令をしていないのでしょう?

 

 一応、ノアお嬢様の居る海底神殿を目指しているようですが。実際のところ、彼では到達できないのでは……。

 

 

 

(いいのよ、私に考えがあるから。ふふふっ)

 

 

 

 どうやら、なにかしら深慮遠謀があるご様子。  

 

 我はそれに従うだけだ。

 

 

 

「……御元気で、ノアお嬢様」

 

 

 

(慎重に動くのよ。あいつらに悟られないように) 

 

 

 

 そう言って、ノアお嬢様の声は聞こえなくなった。

 

 では、我も仲間を探しに出るとしよう。

 

 そうして、私は世界を回る旅を始めた。

 

 

 




 人外転生の場合、主人公が人化するかしないかで好みが分かれます。今作も人化するかしないか悩みましたが最終的にダイスで決めました。とりあえずこのまま話を進めます。


 次回はマコトの女神さまのノアの視点です。



 そいらて様、高評価ありがとうございます。これからも頑張ります。



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