◇高月マコトの視点◇
さーさんは俺の前の世界での友人だ。
本名は佐々木あやで、数少ないクラスで仲が良かった彼女と話すようになった切っ掛けは、ゲームのことだった。
中学時代の昼休み、学校の隅でゲームをしていた俺に彼女が声をかけてきて、そこから交流が始まったのだ。
それから、放課後に一緒に俺の家に来てゲームで遊ぶようになった。
彼女は女子にしては珍しくゲームが趣味で周りに話が合う子が居らず、俺に声をかけてきたそうだ。
俺の家なら両親が遅くまで帰ってこず、長い時間ゲームを遊べる。
「女子のゲーマーって少ないんだよー」とは彼女の談。
「高月くんの家ってゲームいっぱいあるよね。」
「私んちは弟が多くてさー、どのゲームをするか、誰がするかでいっつも喧嘩になるの」
「ねえ、今度はこっちやろうよー」
そうこうしているうちに彼女と関わるようになって、気づけば長い時間が過ぎた。
高校に上がっても、彼女と俺の関係はだらだらと続き、放課後に部屋に集まってゲームをしている。
たぶん、俺は彼女のことが好きだったんだと思う。
それで、クリスマスに告白でもするかなーとか思っていた時、あのバスの事故が起きて.........
俺は異世界に来た。
最初、この世界に来た時、俺は彼女のことを探した。
でも、さーさんは俺たちと一緒に来てはいなかったらしい。
他にも何人かいないクラスメイトがいたらしいから、さーさんもそれなのだろう。
そうして、彼女とはこの世界に来てから一度も会っていない。
「ねー、高月くんってRPG好きだよねー」
「まあね」
「私はアクションゲームの方が好きだなー」
「分かった、分かった。これが終わったら。一緒にモン狩しよう」
「やったー」
俺の部屋でゆるい雰囲気でお互いの好きなゲームをする。この時間が好きだった。
飛行船の中で目を覚ます。
久しぶりにさーさんの夢を見た。頬を涙が伝っている。
もう会えない友人を思い出して俺は憂鬱になった。
◇剣咲刀華の視点◇
迷宮の町に到着し、私たちは飛行船から降りることとなった。
「俺たちはギルドに顔を出そうか」
「そうね、色々情報を仕入れたいし」
「どのような依頼があるのか見ておきたいです」
「そうですか。拙者は、取引がありますから別行動ですな」
「私はご主人様の護衛ですネー」
私たちはそれぞれの行動を話し合う。
どうやら別々の用事があるみたいなのでここで藤原さんたちとは別行動だ。
「タッキー殿、それでは夕刻に英雄酒場という店で落ち合いましょう。町で一番大きな酒場なので、すぐにわかると思いますぞ」
「わかった。じゃあ、あとで」
私たちはギルドに向かう。
「う~ん、気持ち悪いな」
マコトくんは二日酔いで頭を押さえる。
聞けば、昨日、寝ていたら目がさえてしまい、藤原さんと一緒にお酒を飲んでいたそうだ。
迷宮に行く前日に酒盛りするなんて、豪胆というべきなのだろうか?
「こっちに来てください、解毒魔法をかけます」
「ありがとう」
私は魔力を練り上げる。
『太陽魔法・浄化』
「ああー。すっきりした。ありがとう」
「どういたしまして」
どうやらマコトくんはかなり楽になったらしい。表情がだいぶ改善された。
魔法闘技の修行中にわかったことだが私は日属性と金属性に適正があるらしい。
魔法の属性は全部で八個。
火・水・木・金・土・日。そして月。
月は闇の力であるため忌み嫌われ、使い手は少ないそうだ。
他には魔力には属性以外に色と呼ばれる性質があるらしい。
『黒』なら暴力、『紫』なら毒、『白』なら回復っといった感じだ。
私はその色をすべて持っているらしく基本どの系統の魔法でも使えるそうだ。
「さすがは、異世界の方ですネ.....」とニナさんは言っていた。どうやら相当レアなようだ。
回復したマコトさんと一緒に私たちは街の中を進む。
「わぁー、あの服可愛い」
ルーシーは、キョロキョロと露店に近寄っては商品をひやかしている。
「おーい、先にギルドを探そうよ」
「ええー、ちょっとは観光しましょうよ」
途中、寄り道をしながらギルドに向かう。ギルド本部は町の中心にあってすぐに見つかった。
「こりゃ、凄いな」
「大きいですね」
「すごい人」
簡素な建物が多いこの町で、冒険者ギルドは異彩を放っていた。まるで、砦だ。
中も、人で溢れていた。ダンジョン間近のギルドだから、持ち込まれる魔物が多いんだろう。
「えーと、高月まことさん、ルーシー・J・ウォーカーさん、剣咲刀華さんの3人のパーティーですね。全員、アイアンランクと」
受付の人は、綺麗なのだけどやや愛想が無い。あと、若干疲れている感じがする。
忙しいのだろうか。
忙しいんだろうな。
「はい、では迷宮の町ギルドの登録が終わりました。冒険の事前申請は要りません。ラビュリントスを自由に探索していただいて結構です。討伐した魔物の買取はこちらのギルドで行います。何か質問は、ありますか?」
「大丈夫です。お二人ははどうですか?」
「問題ないわ! さあ、行きましょう、まこと!」
「ああ、行こうぜ」
ルーシーさんは張り切っている。マコトさんもそわそわとしていた。
実は私もだ。初めてこんなに大きいダンジョンに潜るのだ。ワクワクしている。
とはいえ。
「先に泊まる場所を探そう」
マコトくんがそう言った。確かにそうだ。
こんなに人が多いのだ。宿を先に取っておかないと疲れた体で帰って来た時、街中で野宿をすることになりかねない。
「えぇー、そんなのあとでいいわよ。先にダンジョンを見てみましょう!」
「おいおい、そんな無計画じゃ……」
ルーシーさんはすぐにダンジョンに行きたいようだ。
そんな彼女をマコトさんが嗜めようとしたとき。
「よぉ、ねーちゃん。刺激的な格好だな」
「そっちの嬢ちゃんもなかなかの美人じゃねえか」
「ダンジョンに行きたいなら、そんなガキじゃなくて俺たちが連れてってやるよ」
「一晩いくらだぁ?」
後ろから、下種な声をかけられる。
振り向くと、ニヤニヤとした粗暴そうな冒険者が立っていた。
どうやら、私たちは絡まれてしまったらしい。
いつも見ていたので忘れていたが、ルーシーさんはなかなかに目に毒な格好をしているのだった。
そして私も客観的に見て整った容姿をしている。
彼らは私たちが気弱そうなマコトくんと一緒にいるのを見て声をかけたのだろう。
どうするべきだろうか。
前半は、マコトくんがちょっとしっとりしてしまいました。
さすがは原作者からヒロインの中で一番マコトからの好感度が高いと言わしめた子。
魔法の設定は原作と同作者の「攻撃力ゼロから始める剣聖譚」の要素も入っています。マコトくんと同じ世界の話でこれも面白いですよ。
太陽魔法は『日』属性に分類されます。
『金』属性の魔法で代表的なのは運命魔法という、テレポートや未来占いといったことができる魔法です。
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