高い調理器具が欲しいのですが、飽きっぽい性格なので一回使ったら、棚の肥やしになるだろうなと買うのを躊躇しています。
◇高月マコトの視点◇
「おい、返事してくれよ嬢ちゃんたち」
「エロい格好してんなぁ」
「坊主、おまえに大迷宮はまだは早ぇよ。おうちに帰りな」
絡まれてしまったな。
この迷宮の町には1万人を超える冒険者がいるらしい。当然、ガラの悪い輩もいるわけで。
ルーカスさんからは「お前らみたいな若いパーティーは絶対絡まれるぞー」って脅されたっけ。
これを見るとマッカレンの冒険者ギルドは、みんないい人だったなぁ。
変な二つ名をつけるくらいで。
とはいえ、こういう時の対処はとにかく卑屈にならないことだ。
俺は、アイアンランクの冒険者。堂々としよう。
何か言い返してやろうと、『明鏡止水』スキルを99%に設定して、大きく息を吸い込み。
「はぁ? 何言ってるの! 私たちはマッカレンでグリフォンも討伐した冒険者よ! あんたらみたいな雑魚に興味はないの! あっち行って、しっしっ」
「私もあなたたちのような、低俗なことしか考えてないような輩は嫌いですね。自分たちのことを客観視した方がいいですよ」
おお、パンチライン。
こういう時のルーシーは頼りになる。とにかく態度だけは、誰よりでかい。
トーカさんも毒を吐いて彼らを牽制した。
だけど、ちょっと挑発し過ぎじゃないかな。
「ああん?」
案の定、正面のいかつい男の顔が険しくなる。
腰の剣を引き抜いた。おいおい、短気すぎだろう。
「誰が雑魚だって? えぇ?」
「おまえらがグリフォン? もう少しマシな嘘つけよ」
「生意気なガキだなぁ」
ニヤニヤとした、チンピラ達に囲まれる。
ギルド内がざわつき始める。
多分、しばらくすればギルドの職員が止めてくれると思うけど。なんか、それだと今後なめられそうな気もするんだよな。
普通はこんなのでいきなり切りかかってくるような馬鹿はいない。
たぶん、若い冒険者に生意気な口をたたかれて引けなくなっちゃったんだな。
二人を守るように、一歩前に出る。
目の前には、抜き身の剣が光っている。物騒だなぁ。
「なかなかいい剣ですね」
「はっ! 当たり前だろう。 これは
チンピラ冒険者が得意になって解説しようとしたところを
――シャラン、と短剣を引き抜き
「うりゃ」と切りつけた。
バターみたいにさっくり切れた。
――カランコロン、と涼しげな音を立てて刃が床に落ちる。
先日の巨神の指を切った経験から、分かっていたが本当にイカれた切れ味だな。マジックアイテムであろう剣をなんの抵抗もなく切れるなんて。
「あああああああああああっ、俺のミスリルの魔法剣がぁあああああっ!」
チンピラ冒険者が悲鳴を上げた。
げっ、ミスリル素材だったのか。
さすがに悪いことしたかな。いや、でも先に絡んできたのはあっちだ。
ミスリル製の武器は、めちゃくちゃ高い。
でも、ここはマウントを取らせてもらおう。
「質の悪い剣を使ってるな。こんな短剣に切られる粗悪品とは呆れるね」
なるべく嫌味な感じで告げる。
「て、てめぇ……」
「先に絡んできたのはお前らだろ? 俺たちはマッカレンのルーカス・ダルモアの弟子だ。俺たちにケンカ売るってことは、ルーカス師匠にケンカ売るってことだな」
「げ、竜狩りのルーカスかよ……」
ルーカスさんの弟子ってのは、嘘だ。
あの人は剣士で、俺は魔法使いだし。
ルーカスさんは、大迷宮ではそれなりに名が売れてるらしい。
ここに来る前にそのことを言ったら、不良な冒険者に絡まれた時名前を使っていいと言われた。
「っち、おい、お前ら行くぞ」
「くそが」
チンピラたちは去っていった。
おおー、ルーカスさんの名前はさすがだな。
はぁー、緊張した。
「まことってルーカスさんの弟子だったの?」
「あとで、説明するよ。行こう」
「え? ちょっと、ひっぱらないでよー」
二人を連れて、冒険者ギルドを離れた。
◇
グオォォォォォ
絶叫が当たりに響き渡る。目の前には斧を構えた牛頭の怪物がいる。
あの後、迷宮に入った俺たちは軽く迷宮を見るために、探索され尽くしているという上層をマップを見ながら歩いていた。
この程度のレベルの魔物であれば俺たちなら楽勝で勝てる。
唯一、下の階層への道を守るガーディアンのミノタウロスは怖いが既定の場所から動かないらしいので大丈夫だろう。
そんなことを考えていたのがいけなかったのか、俺たちは今、そのミノタウロスと対峙していた。
「ダンジョンの奥にしか、居ないんじゃなかったの!?」
「はぐれでしょうか。もしくは、なにかの影響を受けているのか」
ルーシーはここにいないはずの魔物の姿に慌てている。
トーカさんはさすがだな。これよりも強い魔物と戦ったことがあるから、冷静に観察して分析している。
「ね、ねえ! もうミノタウロスが近くにいるわよ! 岩石弾!」
ルーシーが近づいてくるミノタウロスにびびって魔法を放つ。
猛スピードの岩石はミノタウロスを直撃して、砕け散った。ただ、あまり効果はなさそうだ。
「う、うそ」
ルーシーがつぶやくが、いつもの隕石落としよりはるかに小さい岩だった。
周りの被害に配慮しすぎて手加減し過ぎたな。
「グォォォオオオオオ!」
ミノタウロスが怒りの声をあげ、こちらに近づいてくるスピードを上げる。
「私が対処します!」
「待って」
走り出そうとするトーカさんを呼び止める。
「折角だから、強くなった精霊魔法を試そう」
このレベルの魔物で、俺が今一人でどれだけ戦えるかを確認するのもいいかもしれない。
俺はそう言い、前に出た。
短剣を構え、スキルであたりを見渡す。
RPGプレイヤー視点では、周りを青い光が無数に漂っている。
うん、いっぱい
「こんにちは、精霊さん」と光たちに呼びかける。
大迷宮の精霊たちは、会って間もない。印象を良くするには、挨拶を元気よくしないと。
ミノタウロスが怒りの声をあげ、斧を振り上げ飛びかかってくる。
あと数秒で、大斧に頭をかち割られるかもしれない。
「ねぇ! まことぉ!」
ルーシーは涙目だ。
トーカさんに至っては今にも飛び出しそうである。
そろそろいいかな。
「水魔法・大水牢」
「グォ?」
俺の足元を中心に、水が吹き上がる。
あっという間に通路中が水に満たされ、ミノタウロスと俺が水中に放りだされた。
「グオ! ゴボッ! ガボッ!」
ミノタウロスが、水牢から逃れようともがいている。
まあ、無理だろうけどね。
(水魔法・水流)
「ほい、ほい」
指をくるくる回す。
イメージするのは洗濯機だ。水の渦に巻き込まれミノタウロスはきりもみ回転した。
巨大な牛の魔物は、目を回してそのまま静かになった。
呼び出した水を捌けさせて、精霊にお礼を言う。
うーん、まあまあってところかな。トーカさんの力を借りなくても、今みたいな状況なら俺でもこいつ程度には勝てるらしい。
「ねえ、凄いじゃない! さっきの上級魔法でしょ?」
一人今の戦いを分析していると、ルーシーが近寄ってきた。
上級魔法を俺一人で使ったことに驚いているようだ。
「ああ、うまくいったな」
「どうしたのよ! 上級魔法が使えるようになったの?」
「.....もしかして、精霊魔法ですか?」
トーカさんが指摘する。
「そ、あれは精霊に手伝ってもらったんだ。精霊は無限の魔力があるらしいから、あの程度の魔法は朝飯前らしいよ。細かいコントロールができないのが厄介だけどね」
一体何回、練習の時に自分も発動した魔法に巻き込まれたことか。
トーカさんで他人から借りた魔力を使うことに慣れていて助かった。
「ところでこいつをどうしようかね」
倒したミノタウロスを見下ろす。折角倒した、大物なのだが。
「運べないわよね」
「これは持つのも一苦労しそうです」
「こういう時に、収納魔法が欲しいな」
ふじやんがいないのが悔やまれる。
「おーい、おまえら。ミノタウロスを倒したのか!」
「た、助かった……」
「ありがとう、ありがとう!」
ミノタウロスをどうしようかと悩んでいるとなんだかボロボロの冒険者が出てきた。
聞くところによると彼らは、不意に遭遇したミノタウロスから逃げる途中、ルーシーをみてターゲットを変えたことで命拾いしたらしい。
赤色に反応したんだろうか?
「ルーシー、本当に魔物に好かれるな」
「全然、うれしく無いんだけど……」
「なあ、この魔物を運ぶので困ってるなら手伝うよ」
おお! それは助かるな。ついでに、色々と迷宮のことを教わりながら帰路についた。
「じゃあ、みなさんは大迷宮に来て半年経つんですね」
「ああ、俺たちはアイアンランクに成り立てだから、上層でじっくり修行をしてるんだ」
「でも、最近は魔物が活発化してなぁ」
「ああ、すこし様子が変だよな」
「噂によると、下層には忌龍が現われたとか」
彼らと話していると気になる単語が出る。
「忌龍?」
「忌まわしき龍。千年前に大魔王が従えてた邪龍よ。身体から瘴気を放ち、口から呪いを吐く。近づくものは命を吸い取られるとか。本当に出たの?」
ルーシーが説明してくれた。
「俺たちみたいな、中級冒険者には関係ない話だからな。詳しくは知らないよ」
「しかし、きみらは凄いな。まさかこんな少人数ででミノタウロスをあっさり倒してしまって」
「シルバーランクか? まさか、その若さでゴールドとか?」
「いえいえ、俺たちもアイアンランクですよ」
「へぇ! そりゃ将来有望だな!」
わいわい話しながら、出口まで戻った。
入り口のギルド職員に戻ったことを伝え、魔物を引き渡す。倒した獲物の査定結果は、あとでギルドで教えてもらえるらしい。
それより、気になることが。
「なんか、騒がしいな」
「何かあったのかしら」
「ええっと......、なんでも太陽の国ハイランドの軍が来てるらしいね」
周りに聞き耳を立ててたトーカさんが教えてくれる。
「へぇ、太陽の国ってことは
「やっぱり忌龍討伐かな」
「しかし、冒険者の町に軍がでしゃばるってのは、どうなんだ?」
「しかも、他国のな」
一緒にいた冒険者の人たちも気になるらしい。
「見に行くか」
「行きましょう!」
俺たちはぞろぞろと、町の入り口へ向かった。
「これが太陽の騎士団か……」
町の入り口付近の森が伐採され、軍の駐屯地になっており、数多くのテントが張られている。
その周りには、軍馬と飛龍が少し離れて繋がれていた。
騎士団と呼ばれているが、騎士、戦士、弓士、魔法使い、僧侶、その他様々な職業がいる巨大なパーティーのようだ。
彼らの胸には、大きな太陽とフェニックスの紋章が輝いている。
皆、強そうだ。
冒険者の町の人々も気になるようで、見物客はどんどん増えている。
「キャー! 見て光の勇者様よ!」
「ああ、凛々しい……」
女の冒険者から声が上がる。
「凄い! あれが光の勇者! 初めてみたわ!」
「あれが、千年前、世界を救ったという救世主と同じスキルを持った勇者さまですか.......」
二人もなんだかテンションが高い。
なんだかなぁ。
そこにいたのは、1年半ほど前に別れたクラスメイトの桜井くんだった。
隣には、同じくクラスメイトの横山さんがいる。
二人とも、周りの人たちと比べて着ているものが数段立派で、高価そうだ。
チートステータスとスキルを貰って、順調そうだね。
別に、羨ましくはないからな。
女神様、まさか良い出会いってこれじゃないですよね。
ほとんど、原作とは変わりませんでした。
マコトくんはトーカちゃんがいるおかげで、魔法の熟練度が原作よりも少し高いです。
まあ、最終的にそれが誤差になるくらい彼は強くなるので、今のうちに盛っておきます。
最後になりますが、お気に入り登録、感想、高評価を貰えると励みになります。
なにとぞ、よろしくお願いします。