光の勇者と出会うって書いてあるけど、書き終わってみたら、トーカと桜井くんが二人で話しているところがない..........
「ねぇ、どうして行っちゃうの? 知り合いなんでしょう。会って話さないの?」
「そうです、挨拶くらいはしてもいいんじゃないですか?」
「そんなに親しくないよ。向こうは俺のことをもう忘れてるんじゃないかな」
「そうなの?」
「ああ」
迷宮の探索を終えた私たちは、この町に『光の勇者』が来ていると知って見に来たのだ。
遠くから見た光の勇者はなかなかのイケメンだった。周りの戦士や魔法使いたちも美形ぞろいだったので周りの人たちのアピールもかねて姿を見せているのだろう。
マコトくんは光の勇者の姿を一目見るなりもういいやとそこを離れる。
何やら、少し機嫌が悪い。
光の勇者とは、仲が悪かったのだろうか。彼はクラスメイトの中で一番才能がなかったらしいから。
いや、彼が不機嫌になったのは勇者を見てからではない。彼の周りにいる人に目を向けてからのような気がする。
誰か、因縁のある人でもいたのでろうか。
「ねぇねぇ、見た? 豪勢な面子だったわよね。王女様までいたし!」
「……そうだな」
「なんか、反応悪いわねー。太陽の国の第一王位継承者、ノエル王女。オーラがあったわねー」
「え? そんな人いた?」
「何言ってるの! すごい目立ってたじゃない」
どうやら、周りが見えてないほどだったらしい。
彼はそんな人いたか、と聞いていたが、あんな目立つ人を見落とすなんて一体何があったんだ。
「まあ、いいわ。私たちには関係ないし。待ち合わせの酒場に行きましょう!」
「その前に宿を探しませんか?結局、ドタバタして今日の寝床をどこにするか決めていません」
「そんなのあとよ! おなかが空いたわ!」
「へいへい。わかったよ」
ルーシーさんが話題を変える。
よかった。どれが地雷か分からなかったから、触れずらかったのだ。
そうして、私たちは藤原さんと待ち合わせている酒場へと向かった。
◇
「そういえば、桜井殿がこちらの町に来てるらしいですぞ」
大きな骨付き肉にかぶりつきながら、藤原さんがそんなことを言ってくる。
集合場所の『英雄酒場』で私たちは食事を取りながら私たちは今日の進捗を話していた。
そんな中、藤原さんが太陽の騎士団がこの町に来ていることを話す。
「さっき見たよ。なんか高価そうな鎧着てた」
「おお! 噂の『光の勇者』様ですカ! ご主人様と高月様はお知り合いなのですよネ!」
ニナさんは、有名な光の勇者の話を聞いて目を輝かせている。
「みんな、なんでそんなに勇者が好きなのかねぇ。」
マコトくんが不思議そうに言う。
「タッキー殿。勇者も確かに人気のあるスキルですが、桜井殿が有名なのは『光の勇者』だからですぞ」
「他の勇者と何がちがうの?」
え?知らないの?この世界で人との付き合い歴が短い私でも知っていることなんだけど。
「まこと、本気で言ってる?」
「高月様、それは世間知らず過ぎますヨ」
彼の言葉にルーシーさんとニナさんが突っ込む。
彼は時々、おかしなときがある。
「勇者のスキル持ちは、基本的に国に属しております。
「勇者スキル持ちは、だいたい各国に1名くらいいて、最高待遇を受けてるわ」
「ふーん、うらやましいね」
みんなに続いて私も知っている情報を話す。
「だけどね、『光の勇者』ってのは今まで一人しかいなかったらしいの」
「うん?」
「『救世主アベル』。彼のみが持っていたスキル。それが『光の勇者』なの。あの人が現れるまで救世主アベル様以来、千年間誰も持っていなかったんだって」
「はぁ……なるほど」
私の情報を更に藤原さんが補足する。
「もともと、我々が異世界に迷い込んだ時『光の勇者』の所有権は水の国が主張したそうですぞ。最初に保護した神殿は水の国の所属だったわけですから。それを太陽の国ハイランドが、圧力をかけて奪っていったとか」
「へぇ、そんなことが裏でおきてたんだ。ふじやんは、よくそんなこと知ってるね」
「商人になってから、後で知ったことですぞ。
さすがはマッカレン一の商人。私たちの知らないことを知っている。
「おかげで太陽の国の元々の勇者である『稲妻の勇者』は、立場が悪くなってるって話よ」
「今や、勇者桜井様は、ノエル王女の婚約者ですからネ」
「え? まじ?」
へ~。そんなことになっているんだ。
「しかも水の巫女ソフィア様とも、仲が噂されてるわよ」
「はあ?」
おっと、水の巫女の話をした途端、マコトくんの機嫌が悪くなった。
地雷はこれか?もしかして、保護されたという水の神殿で何かあったのだろうか?
「はんっ! この世界の主人公は桜井くんだな」
嫉妬にかられた彼は、2杯目のエールをあおった。
「そんな良いことばかりではないようですぞ」
藤原さんが苦笑いしながら、フォローを入れる。
「ハイランドの王子たちには、命を狙われてるとか。噂ですけド」
「暗殺者を仕向けられたという話も聞きますね」
「まあ、いきなり現われたやつに王の座を奪われたらねー」
「ああ、そっか。そりゃ、権力争いとか多そう」
「クラスメイトの横山氏や川本氏も苦労してるみたいですなぁ」
誰だろうそれは?
マコトくんが「ああ、桜井くんの取り巻きの女たちか。」と言った。
なるほど、あの容姿だ。この世界に来る前からファンクラブみたいなものがあってもおかしくないか。
「今回の忌龍討伐も、アンチ光の勇者派閥の陰謀との噂ですな」
「そんな噂どこで聞くの?」
「ふじやんは、情報が早すぎるよ」
さすがの情報網だ。一体どこからそんな情報を仕入れてくるのか?
それから、水のダンジョンでミノタウロスとどう戦ったとか。
むかし、ニナさんは大迷宮の中層まで行ったとか。
実は、『英雄酒場』の酒は、フジワラ商店が大量に酒を卸しているとか。
私たちは大いに楽しんだ。
お酒も少しだけ飲んだ。やっぱり美味しいものだと思えなかったけど。
酔いが回ってきて覚ますために水をすすっていたら。
「ここの席いいかな?」
ふっと、風のようにその男は現われた。
風鈴のように、爽やかな声。
「「「え?」」」
思わず間抜けな声が出た。いやでも仕方ないだろう
「これは、驚きましたな」と藤原さんが言う。
「ちょうど、噂してたところだよ」とマコトくんは落ち着いた声で言った。
いや、何落ち着いているんですか。
「久しぶりだね、高月くん、藤原くん」
現われたのは、大陸中の注目の的である『光の勇者』桜井りょうすけだった。
◇
「ひさしぶりだね」
こちらの了承は得ずに、空いている席に座る桜井さん。
その服装は、先ほど遠めに見た騎士然とした鎧姿とは違って質素な庶民の服装になっていた。
ただ、しわ一つない上品な服装は、薄汚れた冒険者が多いこの酒場では少し浮いている。
「ひ、光のゆうしっ……もが」
ルーシーさんの口を慌ててふさぐ。
こんなうるさい大衆酒場に光の勇者がいるなんて知られたら、大騒ぎになる。
「は、はじめましテ……お会いできて光栄でス」
珍しくニナさんまで、緊張で声がうわずっていた。当然か。
「ひさしぶりだね」
私たちがプチパニックになっていてもマコトさんは平常運転だ。
自然体でいる今の姿は大物というべきか、もう少し緊張しろというべきか。
いや、クラスメイトという感覚が抜けていないのかもしれない。
「よく我々がここにいるとわかりましたな」
藤原さんが、疑問を口にする。
「フジワラ商店の店主が、僕らの騎士団に大量の差し入れをしてくれたと報告があってね」
「ふじやん、そんなことまでしてたのか」
「ただの賄賂ですよ。太陽の騎士団は、大陸最大の軍隊ですからな。仲良くして損はありませんよ」
笑いながら言うが、賄賂って……。前から疑問だったけど、彼って本当に同年代?
「マッカレン産の火酒ウイスキーは、団員にもファンが多いんだ。差し入れはありがたいよ。それに高月くんまでいるなんて、時間を作って来てよかったよ」
「あ、ああ、久しぶり。元気そうだね」
おい、ちょっと待て!あなた、さっき「あんまり親しくない」って言ってませんでしたか?
どうやら、あなたに会いに来たみたいじゃないですか。
「なんか忌龍ってのを討伐に来たんだって?」
「ああ、そうなんだ。新人の騎士だから、厄介ごとを押し付けられちゃって」
「桜井くんなら余裕だろ?」
「そんなことないよ。僕は今日来たばっかりだし。そうだ! 高月くんが大迷宮に詳しいなら、案内してもらえないかな?」
「俺たちも今日来たばっかりなんだ。悪いけど力になれそうにないな」
「そうかぁ、残念」
そのまま、彼と桜井さんは親しげに話していた。
いや、どちらかというと桜井さんが一方的に信頼を感じている?
その後、桜井さんの勇者としての苦労話を、ふじやんが商人のヒアリングテクニックで引き出していた。
時間にして15分ほどだったか。
最後は「じゃあ、このあと予定があるから」と去っていった。
本当に世間話をしにきただけ?
「いやぁ、震えましたネ」
緊張でガチガチだった、ニナさんが口を開く。
「何が覚えてないかもよ! めちゃくちゃ親しいじゃない!」
彼らがいる間、私に口を押えられたままだったルーシーさんは、大興奮してマコトくんに詰め寄っている。
そうだよ!!マコトくん、あれって一体どういうこと?
「いやはや、びっくりしましたなぁ」
「ふじやんは、桜井くんと仲良かったっけ?」
「いえ、全然ですぞ。彼はタッキー殿と親しいのでは?」
「んな訳ないだろ」
いや、あなたに会いに来ていましたよ。
どうやら、二人とも思い当たることはないらしい。
「まこと! 迷宮の案内をどうして断ったのよ! もったいない」
「あほか。あいつらの目的は下層の龍退治だぞ。俺たちが案内できるわけないだろ。本気にするなよ」
「桜井殿は、本気っぽかったですがなぁ」
「ご主人様が言うと、説得力がありますネ」
え、藤原さんが言うってことは本気だったてこと?
「まあ、なんかよくわからなかったけど飲みなおそう」
そう言って、マコトくんは冷えたフライドポテトをかじった。
「なんで、そんな冷静なのよ……」とルーシーさん。
そうだよ、いくら何でも冷静すぎだ。『明鏡止水』のスキルを使ってるんじゃないのか。
「あ、しまった。今日泊まるところ決めてないや」
「それなら心配ないですぞ。 お二人の宿泊場所は予約済みですぞ」
「いつも悪いね」
どうやら、今日の寝床は決まったらしい。
それよりも、桜井さんとの関係を聞きたい。
彼はルーシーさんのアプローチをスルーしていることから分かる通り、人の気持ちに鈍いところがある。
私も
桜井さんとの間に何かがあっても、彼なら大したことではないと言いそうだ。
そうして、私たちの飲み会は盛り上がった。
宿のふわふわの布団には、たっぷりの羽毛が入っていた。異世界にも羽毛布団があるとは。
次の日の朝、起きた時二日酔いで頭が痛かった。
どうやら、私の迷宮の町の二日目は解毒魔法から始まるようだ。
書きたいことを書くと長くなってしまう。
トーカちゃんは人の感情を伺うのが得意です。
前世の病院で、退屈を紛らわすのために、人と会話をなるべく長引かせるテクニックを身につけました。その時の経験で、彼女は相手の顔色と地雷を見つけるのが得意になりました。
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なにとぞ、よろしくお願いします。