◇藤原ミチヲの視点◇
タッキー殿たちが、大迷宮から一晩経っても戻ってこない。
「ご主人様、そんなに心配でしたら私が大迷宮に潜りますヨ」
ニナ殿が、提案してくれる。
「ううむ……、しかし上層にドラゴンが出現したという発表がありましたからな。いくらニナ殿とはいえ、お一人でドラゴンの相手は無理でしょう」
「逃げるだけなら何とかなりますヨ」
悩ましい。
昨日、冒険者ギルドから上層にドラゴンが出たという発表があり、冒険者の町は騒然となった。
通常は、数名の行方不明者リストが昨日は、1日で数十人更新されたのだ。
友人のタッキー殿とルーシー殿、トーカ殿の名前を行方不明者リストに発見した時は、愕然とした。
商談を進める心の余裕がなくなり、今日の予定は全てキャンセルしてしまった。
しかし、一向に友人たちは戻ってこない。
「ドラゴンが上層に現われたのは、『忌竜』の影響でしょうカ?」
「そういう噂ですな……」
大迷宮の中に、『忌竜』と呼ばれる存在が生まれた。
ドラゴンですら、避けるという邪悪な魔物。
千年前の大魔王が、使役したと言われている伝説の存在。
そいつのせいで、大迷宮の魔物たちの行動がおかしくなったと冒険者たちが話している。
「タッキー殿が、ドラゴンに出会ってなければいいのですが」
「ドラゴンの出現位置は、大瀑布のあたりと聞いてますネ。昨晩、大瀑布に向かうと高月様が言っていたような」
「確かに聞き覚えが……」
ああ、心配ですぞ。
「でも、高月様は強力な魔物相手でも、冷静に対処されるお方。きっと大丈夫ですヨ!それにトーカ様もいまス。」
「そうですな。しかし、待っているばかりでは落ち着きませんなぁ」
「では、もう一度ギルドに行きま……、ご主人様! 高月様の声が聞こえます!」
「なんですと!」
◇剣咲刀華の視点◇
「な、なんと! 佐々木殿ではないですか!」
藤原さんが驚きの声を上げる。
私たちが返ってくると藤原さんがこちらに駆け寄って来た。
どうやら私たちが迷宮で過ごしていた間、外は大騒ぎになっていたようだ。表層に本来出ないドラゴンが出現し、ギルドはパニックに陥り、情報もろくに入ってこないほどだったそうだ。
彼はそれを聞き、帰ってこない私たちのことを心配していたみたいだ。なんでも、昨日からずっと待っていてくれていたらしい。
そうして、私たちが再開を喜んでいる時に藤原さんは知己を見つけ、それに驚く。
「藤原くんは、すぐに気づいたのになぁ。高月くんは、気づかなかったなぁ」
「そーいうこと、言わない」
「彼も疲れていましたから」
佐々木さんはマコトくんを見て愚痴をこぼす。
た、たぶん、徹夜で戦って頭が朦朧としてたんだよ.......
◇
「なんと……そのようなことが」
「佐々木様……。大変な目に合われたのですネ」
佐々木さんの話を聞いて、藤原さんとニナさんが涙ぐんでいる。
良い人たちだ。彼女の話を聞いて悲しんでくれている。
「で、さーさん。これからどうする?」
マコトくんが彼女に聞く。まあでも、聞くまでもないだろう。
「家族の敵を討つ」
強い決意を感じる声だ。その目には強い意志が宿っている。
「しかし、たったお一人では……」
ニナさんが、何か言いたげに藤原さんのほうを見る。
私とルーシーさんも、マコトくんの方を見た。
「ふじやん、攻略方法を検討しよう」
「ふむ、そのためにまずは情報収集ですな」
マコトくんと藤原さんはニヤリと笑いあった。
「あら、ノリノリね。まこと」
「私も微力ながらお手伝いします。」
「当たり前だろ。困ってるクラスメイトは助けなきゃ」
「ありがとう、高月くん、藤原くん、みんな……」
「しかし、ハーピーの親玉。かなりの強敵のようですヨ」
ニナさんが取ってきた冒険者ギルドの手配書を見せてきた。
『大迷宮ラビュリントス:中層。ハーピーの女王と子供たち――報酬:300万G (災害指定候補)』
「これって強いんですか?」
「うーん、群れ全体を相手にするならグリフォンよりやっかいですネ」
「あれより強いんだ……」
「関係ないわ。ただのハーピーなら私が一撃で倒せるから」
「空中戦になるなら、剣形態の方がいいですかね」
「ところで、ふじやん。さーさんって、本当にただのラミアなのかな?」
「え? どーいうこと?」
マコトくんが不意に疑問を口に出した。それに佐々木さんが反応する。
「普通のラミアより随分、強い気がするんだけど」
「それは拙者も気になっておりますな。佐々木殿のお話ですと、一度死んだと思ったら、生きていたなど不思議なチカラを感じますな。そこでこれを使いましょう」
藤原さんは懐から新品の『
「どうぞ、佐々木殿。この冊子を持ってくだされ」
「うん、これなに?」
「さーさんのステータスとスキルがわかるんだよ」
言っている間に、魂書が光を放つ。ステータスとスキルが判明したようだ。
「うーん、どうやって見ればいいの?」
「貸して」
マコトくんが魂書を借りてみんなで覗き込んだ。
種族:ラミア
名前:佐々木あや
レベル:34
ステータス:xxxxxx
スキル:xxxxxx
凄っ!高ッ!!
「レベル30以上!?」
「うわっ! 何これ。ステータスもバカみたいに高いわよ」
「私、負けてますネ……」
「ええ~、私よりも筋力と速さが高いんだけど.........」
私のステータス、この世界でも相当上位のものなのに。
「さーさんも、異世界特典を受けてるってことか」
「これって凄いの?」
「凄いなんてものじゃないですよ」
彼女は、小首を傾げている。
いや、凄いんですよ。こんなに高いのは。
「ステータスは凄まじいですが、スキルも面白いですぞ」
「えーと、固有スキルは『
「あら? これって」
「これは......」
そこには、『アクションゲームプレイヤー』スキルと書かれてあった。
「アクションゲームプレイヤー?」
これってまるでマコトくんの.......
「まことのスキルに名前が似てるわね」とルーシーさん。
「ご主人様のスキルもですネ」とニナさん。
「どれどれ、もう少し詳しく見てみましょうか」
藤原さんが、佐々木さんの魂書を手に取る。
「基本動作として『ダッシュ』『溜め攻撃』『空中ジャンプ』が使える……。佐々木殿、使えるんですかな?」
「えーと、確かに走る速さが急に速くなることがあるわ。あれって、スキルってやつだったのね」
「ダッシュは、通常のスピードの3倍!?」
「そんなに上がるんですか!」
「佐々木様のステータスの3倍となると、相当強力なスキルになりますね」
強い。シンプルかつ強力なスキルだ。
「さーさん、大当たりだね」
「ふぅん、そうなんだ……」
マコトくんがそういうが、佐々木さんはぴんと来てないような顔をしている。
「いえ、このスキルの一番とんでもないところはここですぞ」
そう言って、藤原さんは魂書の一部分を指さした。
「これって……」
スキル名『残機:4/5』※レベル30以上で発動。
その言葉の意味が分かった私たち異世界組は言葉を失う。
「佐々木殿が、ハーピーの親玉から生き残れた理由がわかりましたな」
藤原さんが、ため息をつきながら言う。
「え? これってどういうスキルなの?」
「ご主人様、説明してくださイ」
「ねえ、高月くん。どういう意味?」
いや、佐々木さんもわからないんかい。
「いや、さーさんは、わかれよ!」とマコトくんもつっこんだ。
「残機というのは、異世界の使われている言葉でね。まあ......要点だけ話すと『その回数はやり直せる』という意味なの」
私はわかっていない人たちに残機の説明をする。
「やり直せる?」
ルーシーさんは、まだぴんときてないらしい。
「多分だけど『残機:5』ってのは、5回までは死んでも生き返るよ、って意味じゃないかな」
「あー、だから4に減ってるのね」
佐々木さんは、どうやら理解してくれたようだ。
しかし、ルーシーとニナさんはぽかんとしている。
「い、生き返る?」
「つまり、光の聖級魔法『蘇生』と同じ効果って、ことでしょうカ?」
「まあ……おそらく」とマコトくん。
「「ひぃええええ!」」
意味を理解した二人が悲鳴とも驚きとも取れる声を上げる。
気持ちは分かるよ。
「蘇生なんて、教会に依頼したら何百万Gかかることか……」
「自分を蘇生させるなんてのは、もはや神器クラスですネ……」
やっぱり、異世界人の力は反則だ。
伝説のスキルを持っていたり、相手の心を読めたり、命が五個もあったり、魔石を取り込んでどんどん強くなったり。
あれ?最後は私か。確かに自分でもこれは強いと思っているからね......
「さーさんの反則的な強さとスキルもわかったことだし、一回休もう。眠さが限界だ」
「疲れが溜まって、倒れそうです......」
「うん、ふらふら」
「そうですな。まずは、ゆっくり休んでから作戦を立てましょう」
そうして、その日は解散して私たちは宿に戻った。
はぁ~。羽毛布団が気持ち良い~。
最近、無職転生を読み返しています。やっぱり名作やで。
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