邪神の使徒と行く異世界"剣"生活   作:エセ未来人

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前に1話投稿しています。読んでない人は
そちらを読んでください。

今回は原作主人公の高月マコトサイドのお話です。まだここら辺は原作と変わらないので原作読んだことのある人は最後のほうをちょろっとだけ読んでくれたらいいですよ。


4話 女神さまのお願い

 高月マコトは異世界人である。

 

 都立東品川高校の一年生だった彼は、スキー合宿の帰りのバスが災害に見舞われ崖下に転落。それによりクラスメイトとともに生死の境をさまよった末にこの世界へと転移してきた。

 

 異世界に転移する直前、崖から落ちたバスの中でみんながもう駄目だと絶望する中、死ぬ前には好きなゲームをしておきたいと隠し持っていたゲームをピコピコするほどのゲーム中毒者(ジャンキー)な彼はこの世界に来た時、期待した。自分の才能はどんなものだろうと。

 

 しかし、彼はすぐに躓くことになった。

 

 彼が異世界から来るときに手に入れたスキルは『水魔法使い・初級』『明鏡止水』『RPGプレイヤー』というスキルだった。

 

 八属性最弱の水魔法の初級に、珍しいが心を落ち着かせる効果しかない精神系スキル、最後のスキルに関してみれば<360度視点(視点切り替え)>に<地図(マッピング)>といった雑事には使えそうだが戦闘には使い物にならなそうな機能しかないスキル。

 

 ステータスもそこらの子供並み。2,3発初級魔法を撃ったら枯渇する魔力量、短剣より重いものを持つことができない貧弱な体力。

 

 彼のステータスを見た教会の神父は本当に異世界人かどうかを疑うほどの壊滅的なステータスに困惑したそうだ。

 

 異世界人はそのステータスの高さから国や大きな組織からのスカウト合戦となるのだが彼はどの国も持て余し結局どこも引き取ってはくれなかった。

 

 そんな中、高月マコトは考える。

 

 せっかく異世界に来たんだ、なら楽しまなきゃ損だな。

 

 どこまでもマイペースにしかし前向きに彼は考えていた。

 

 自分の寿命は後10年、コツコツとポイントを稼いでいこう。

 

 この世界の人間の寿命は神に「貢献」することで増やしていくことができる。人を苦しめる魔物を狩ったり、町の手助けをしたり。といった世間一般にいいことと称される行為をすれば寿命が延びていくのだ。

 

 異世界人であるマコトはポイントがなく、あと10年で寿命を迎えてしまうがポイントをためれば寿命を延ばすことができる。

 

「寿命を延ばすには、お金を教会に寄付するか人助けをすれば良いって神父様言ってたな。」

 

 だが寿命を数年伸ばすほどの寄付となると莫大な金額が必要で、この方法は現実的ではないと彼は言っていた。

 

 となれば.....

 

「冒険者になるか」

 

 と彼は将来の計画を立て始めた。

 

 となれば.....

 

 この世界の一般人よりも貧弱な自分がすることは

 

「修行だな。」

 

 そういうと彼は魔法の修行を始めるのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「心読めるなら、俺の不信感もわかりますよね? 今日のところは、あきらめていただけると」

 

「いやー!! 千年ぶりの信者獲得のチャンスなんだから、絶対に信者になってもらうのー!」

 

 寝転がって足をばたばたさせ始めた女神を見ながらマコトは考える。

 

 女神、その存在は聞き覚えがあった。

 

 

 あれは、異世界に来てすぐの頃。

 

 水の神殿に『巫女』を名乗る人物が現れた。

 

 

 

 巫女とは、この国の聖職者の中でも特別な存在だ。

 

 いわく、巫女は()()()()を聞くことができる。

 

 そのため巫女の言葉は、神の言葉と同義とされる。

 

 

 

 普段は王都の教会に居るが、今回は異世界人に会いに来たそうだ。

 

 目的はスカウト。

 

 巫女は、信者になったものに女神の加護を与える力を持っている。

 

 異世界人の強力なステータスとレアなスキルは、魅力的なのだろう。

 

 

 

 俺たちの前に現れたのは『ソフィア・ローゼス』という水の巫女だった。

 

 彼女は、水の国(ローゼス)の王女でもある。

 

 

 

 要人中の要人。

 

 国の最重要人物だ。

 

 そんな人物が直接来るくらい、1年A組のクラスメイトのスキルは際立っていたのだろう。

 

 

 

「あなたは超級魔法使いですか。素晴らしいですね。水の女神の加護を授けましょう。そのためには、我々の信奉する女神の信者になってくださいますね?」

 

「あら、あなたは黄金騎士のスキルをお持ちですね。水の女神の加護を授けましょう。そのためには女神の信者に……」

 

 

 

 こんな感じで、クラスメイト達を、どんどん勧誘していた。

 

 主に、レアなスキルを持っている人を中心に。

 

 

 

 そして、俺のステータスを見た時。

 

 

 

「あなたは、水魔法……初級ですか。頑張ってくださいね」

 

 微笑みながら、通り過ぎた。

 

 

 

 え?

 

 

 

「そ、それだけですか?」

 

「おい、巫女様は忙しいのだ!」

 

 詰め寄ろうとすると、騎士っぽい男に阻まれた。

 

 あとで知ったが、巫女の守護騎士という存在らしい。

 

 

 

「水の女神様の信者になります! だから、加護をいただけませんか!」

 

 

 

 当時の俺は、弱いスキルしか貰えなかった焦りから、何とかしようと四苦八苦していた。

 

 女神の加護を受けると、ステータスが上がり、スキルが貰える。

 

 なんとしても、水の女神の加護が欲しい。

 

 俺は必死だった。

 

 

 

 しかし、巫女の態度は冷淡だった。

 

「あなたは、もう少し修行が必要なようです。また、次の機会に」

 

 水の巫女ソフィアは、振り返りもせずそういって去って行った。

 

 その後、どれだけ修行しようと加護がもらえることはなかった。

 

 クラスメイトはもちろん、神殿にいる人たちからも可哀想な目で見られ、俺は涙で枕を濡らした。

 

 

 

 俺はそれ以来、水の巫女と教会が大っ嫌いになり、そいつが信仰しているという女神も嫌いになった。

 

 苦い思い出だ。

 

 女神と聞くとどうしてもそのことを思い出す。

 

 

 目の前の女神を名乗る存在は寝ている自分の意識の中に姿を現し、そして話をしてきたのだ。

 

「あなたを私の眷属に迎えましょう」

 

 だが....

 

(怪しい.....)

 

 この世界の神様には名前がある。

 

クラスメイトだった『光の勇者』桜井君は、『太陽の女神アルテナの寵愛』という加護をもらって、戦闘に関するステータスが倍になるというチートな加護を得ているらしい。

 

 そんな風に有名な女神であれば加護も期待できる、そのため彼女に名前を聞いてみたのだが、

 

「ふふっ、私はマイナーな女神なので、知らないと思いますよ」

 

「そうは、言いましても、信仰する女神様の名前は知りたいですよ」

 

「では、いずれお教えしますね」

 

 誤魔化された。

 

 しまいには、魅了魔法を使って色仕掛けまでしてきた。

 

 心を読めるという技能を持っていることから女神様には違いないんだろうがそれにしたって他の要素が怪しすぎる。

 

 RPGゲームで、序盤にこういう一見良さそうな選択肢は、安易に『YES』を選択すると、後で何か裏があることが多い。ゲーマーの勘がそう告げている。しかもゲームと違ってリセットはできないのだ。

 

 よし、保留だな。

 

 

「持ち帰って、検討します」

 

「え!?」

 

 女神様はそれまでの優雅な仕草がなくなり、急に慌てた表情になった。

 

 そうして会話は冒頭まで戻る。

 

「スカートの中を見せたら、信者になってくれる?」

 

「なんてことを言うんですか」

 

 ついにはなりふり構わなくなってきた。

 

 

「お願いお願いお願い! 信者になってください。お願いします!」

 

 肩をつかまれ揺さぶられた。

 

 だから、近いですって。

 

 どうしよう……?

 

 

 

 正直、相手の意図はわからない。

 

 だが『本気度』は伝わる。

 

 どの道、この大陸ではメジャーな六大女神を信仰する気はなかった。

 

 水の巫女のせいで。

 

 

 

 これだけ、言ってくれるのだ。

 

 悪い扱いは受けないと期待しよう。

 

『RPGプレイヤー』スキルが選択肢を表示してくる。

 

 

 

 

 

 

 

『女神様の信者になりますか?』

 

 はい ←

 いいえ

 

 

 

 

 

 

 

「わかりました。あなたの信者になります」

 

「えっ、本当? や、やったー」

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、あなたの『魂書(ソウルブック)*1を貸してもらえる?」

 

 夢の中でも持っているだろうか。

 

 探してみると服の内ポケットに入っていた。

 

 

 

「どうぞ」

 

「はーい、どれどれ」

 

 女神様が魂書を指でなぞる。

 

 ふっと、紙が一瞬光った気がした。

 

 契約の書面を見ると、『女神の一人目の信者』と書かれてある。

 

 

 

「僕の他にいないんですか?」

 

「そうよ! あなたが一人目なんだから! 光栄に思いなさい!」

 

 不安が増す。

 

 マイナー過ぎる。

 

 どんだけ人気の無い女神なんだ。

 

 やはり心配だ。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 前の世界からの友人であり、今は商人となっているふじやんと再会し話の流れで女神の眷属になったことを話した。

 

「ふーむ、たしかに『女神の眷属』と出ておりますが、名前が無いのは妙ですな」

 

「そうなんだよね。これじゃ信者を増やすこともできないし」

 

「その女神様、大丈夫ですかな?」

 

 ふじやんは転移ボーナスで鑑定スキルをもらっている。それによって俺のステータスを確認したんだろう。心配そうに聞いてくる。久しぶりに会った友人が、怪しい宗教に入ってしまった感じか。うん、それは心配だな。

 

「そういえば、信者になった女神様に短剣を貰ったんだ。ふじやん、鑑定してもらえないかな」

 

「ほう! 女神様の短剣! 凄そうですな。是非、見せて下され」

 

 その短剣は女神様の眷属になった時、起きたら枕元に置いてあったものだ。抜き身の短剣が起きたら目の前にあったので驚いたのを覚えている。

 

 ここに来るまでの道中でその切れ味には助けられた。

 

 ふじやんに鑑定してもらえば短剣の詳しい性能が分かるかもしれない。

 

(あ、ちょっ、やば)

 

 頭の中で声が聞こえた。

 

 なんだ?

 

「ふじやん、これなんだけど」

 

「ふおおお! シンプルながらも美しい装飾。一見ミスリルにも見えますが、見たことのない金属ですな。明らかに魔力を帯びたレアな素材! これはかなりの業物!!」

 

「どうやら、鑑定阻害魔法がかかってるみたいで」

 

「無駄無駄ぁ! 拙者の鑑定スキルは鍛えて研ぎ澄ましてますぞ!」

 

 楽しそうだなー。

 

 ふじやんが興奮気味に、ナイフを眺めている。

 

 しばらく、鼻息荒く眺めていたが、しばらくして、ぴたっと固まった。

 

 急に何も言わなくなり、短剣を凝視している。

 

 いつもニコニコしているふじやんの目が見開いている。

 

 ちょっと怖い。

「ふじやん? どうしたの?」

 

「う、うむ。タッキー殿。この短剣は女神様にもらったと言ってましたな?」

 

「うん、そうだけど」

 

 なんだ?

 

 どんな鑑定結果だったんだ?

 

「ふじやん? 結果を知りたいんだけど」

 

 非常に言いづらそうな顔で、ふじやんが口を開いた。

 

 

 

 

「タッキー殿の短剣。『邪神ノアの短剣』と鑑定されましたぞ……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 どうやら、俺は邪神の信者になってしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 世界の頂点にいる神界の支配者。

 

 

 

 神話によると過去に3回、支配者が変わっている。

 

 世界を造った『創造神』。

 

 創造神は、いつしかこの世界を去っていった。

 

 

 

 次の支配者は創造神の息子、娘たちだ。

 

 彼らは『古い神族』『旧支配者』と呼ばれる。

 

 その支配は長く続いた。

 

 やがて『古い神族』は傲慢になり、自分たち以外を下等な生き物と見下し、ぞんざいに扱った。

 

 それに反発したのが、現在の支配者『聖神族』である。

 

 

 

 その後、『古い神族』と現在の神王ユピテルを頂点とする『聖神族』の間で戦争が起きた。

 

 神界戦争『ティタノマキア』。

 

 

 

 激しい戦いの末、『聖神族』側が勝利した。

 

 彼らが、現在の神界の支配者である。

 

 そして、『古い神族』は、邪神と呼ばれている。

 

 

 

 

そんな神話を水の神殿では習った。

 

 

「どうやら俺が信者になった女神様は『古い神族』だったみたいだね。『古い神族』は、今もどこかに幽閉されていて、神界の奪還を狙い続けている、だっけ?」

 

「タッキー殿が契約した女神様は、そのお一人のようですな」

 

「まいったな」

 

 そんな危ない女神様だったのか。

 

 

「タッキー殿。その女神様の信者は続けるのですかな?」

 

 ふじやんが心配そうに言ってくる。

 

 

 

「うーん……」

 

 正直、まだ混乱中なんだよな。

 

 なんとも言えず、黙っているとふじやんが話題を変えてくれた。

 

 

 

「ところでこの短剣は凄いですぞ! 武器の名前以外に武器の能力も鑑定しましてな!」

 

 そうなのか。

 

 たしかに凄い切れ味だった。

 

 武器屋では、きちんと鑑定して貰えなかったからな。

「ちなみに、どんな能力?」

 

「素材は伝説の金属アダマンタイトですな。耐久は神級です。神様の力で様々な能力が付与されており『神撃』『不壊』『斬魔』『マナ共鳴』『精霊共鳴』……聞いたことない効果も多いですな。そのほかに………………」

 

「お、おお……」

 

 

 

 ふじやんは、詳しく短剣の能力ついての説明をしてくれた。

 

 え? これチート武器なの?

 

 

 

「これって、もしかして凄い?」

 

「凄いですぞ! 今まで拙者が店で扱ってきた武器の中で圧倒的に最強ですぞ! 国宝扱いを受けてもいい武器ですぞ!」

 

「へえ」

 

 ふーむ、どうやら神器と言っていたのは本当らしい。

 

 この世界にきて、初のチートが手に入った。

 

 邪神との契約が引き換えだが。

 

 

 

「女神様。良い物をありがとうございました」

 

 両手を合わせてお祈りする。

 

 

 

「邪神であったことはよいんですかな?」

 

「それは……問い詰めないとね」

 

「しかし、会うのは難しいでしょう」

 

「どうかな、案外この会話も見られているかもしれない」

 

「まじですか」

 

 きょろきょろと、ふじやんが周りを見渡す。

 

 

 

 いつも見てますって言ってたからな。

 

 見てますか、女神様。

 

 

 

(…………)

 

 

 

 返事はない。

 

 まあ、いいや。

 

 

 

「信者を続けるかどうかは、ゆっくり考えるよ」

 

「そうですか。何か力になれることは……無いかもしれませんが、相談してくだされ」

 

「ありがとう」

 

 

 

 ここでふじやんが、エールを飲干した。

 

 ちなみに、3杯目だ。

 

 そして店員さんに、火酒のロックを頼んでいる。

 

 

 

「ふじやん、酒強いね」

 

 俺はまだ、最初の一杯目が半分くらい残っている。

 

「商人なんて、飲まされてばかりですぞ」

 

 苦笑するふじやんの顔は、経験者のそれだ。

 

 

 

「俺じゃ、商人になれないな」

 

 そんなに飲めない。

 

 

 

「のんびり冒険者をやるよ」

 

 グラスのお酒をちびっとだけ飲んだ。

 

 

 

「ところでこんな話は聞いてますかな。数年以内に大魔王が復活するらしいと」

 

 初耳だ。

 

 

 

「知らなかった。本当?」

 

「そういう噂が広まってますぞ。国は否定しておりますが。月を除く6属性の女神の巫女全員が神託を受けたとか」

 

「初めて知ったよ。そうなると、勇者に選ばれた連中は大変だね」

 

 光の勇者の桜井くんとか。

 

 

 

 それにしても魔王か。

 

 俺がもっと強かったら挑んでみたいけど。

 

 

 

「ここだけの話、我々が異世界に呼ばれたのは魔王と戦わせるためではという噂もありますな」

 

 ふじやんが小声で言ってくる。

 

 

 

「ありがちだけど、それなら俺はもっと強いスキルがよかったなあ」

 

「いやいや、拙者は戦いは苦手ですぞ。商人が合ってますな」

 

「そっか。ふじやんは、自分に合ったスキルみたいでよかったね」

 

 俺はもう少し戦闘が強くなるスキルが欲しい。

 

 

 

「今は、各国が魔王との戦いに向けて、戦力を集めてるそうですな」

 

「あー、だから水の神殿には色んな国からスカウトが来てたのか」

 

 ふじやんは、情報通だ。助かる。

 

 

 

「ところで、今後はタッキー殿はどうするんですかな?」

 

「しばらくは冒険者をしてレベルを上げるよ。」

 

「よかったら拙者とパーティを組みませんかな?」

 

「ふじやんと?」

 

 商人って戦えるのか。

 

 さっき戦いは、苦手だと言ってなかったけ?

 

 

 

 話を聞いてみると、商人は戦えないが冒険者を雇ってダンジョンの探索とかはするらしい。

 

 昼に会った店員さんはシルバーランクの冒険者だと言うし。

 

 ふじやんのお金で雇った戦力と一緒に安全に冒険できる。

 

 魅力的だ。

 

 だけどなぁ。

 

 それじゃあ、甘え過ぎな気がする。

 

 

 

「ありがたいけど、まずは単独ソロで頑張ってみるよ。そのために神殿で修行してきたし」

 

「そうですか、残念ですが困ったらいつでも声をかけてくだされ」

 

 ありがたいことを言ってくれる。

 

 持つべきは、クラスメイトの友人だな。

 

 

 

 その後は、前の世界の思い出話や、こっちの世界で楽しかったことなどの話題に花を咲かせた。

 

 前の世界の思い出は何と言ってもゲームの話だ。

 

 一年も経っているので、きっと色々なタイトルを逃してるんだろう。

 

 

 

 こちらの世界で、ふじやんは大陸中の食べ物を食べたようだが、意外にレベルが高いと、褒めていた。

 

 ただし、この世界にラーメンが無いことが不満らしい。

 

 なので、いずれラーメンチェーンを展開すると、意気込んでいる。

 

 

 

 おれはハンバーガーが食べたいな。

 

 昔はゲームをしながらチーズバーガーと、ポテトと、コーラがあれば生きていけた。

 

 懐かしい。

 

 

 

「タッキー殿は不健康過ぎますぞ。ハンバーガーとポテトで3日間徹夜はやばいでしょう」

 

「朝ごはんにラーメンやカレーを食べるふじやんには言われたくないけど」

 

「最近は出来ませんな」

 

「こっちの世界は、健康的になるね。神殿の食事は薄味の野菜スープとか、雑炊とかでさ」

 

「あれは味気なかったですな。今度、商業の国キャメロンに来るといいですぞ。あそこは金持ちの国なので食べ物が美味いですからな」

 

 夜遅くまで、語り明かした。

 

 

 

 解散したのは深夜を回っていたと思う。

 

 ふじやんの家に泊まっていかないかと、再三誘われたが、甘えすぎるのもよくないと思って断った。

 

 お店のお金は全て出してもらったし。

 

 今度おごり返そう。

 

 

 

 

 

 俺は冒険者ギルドにある、冒険者用の休憩室の大部屋の隅っこで毛布に包まり、初めて冒険者としての夜を過ごした。

 

 他の冒険者のいびきやら寝言でうるさかったが、疲れていたのですぐに眠れた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 その晩、再び夢を見た。

 

 

 

 何もない空間だ。

 

 あの夢の中だろう。

 

 

「……何をやってるんですか? 女神様?」

 

 

 

 女神様が土下座していた。

 

 

 

 背筋をぴんと伸ばし、手を八の字に。後頭部を相手に見せるのは、相手に降伏を示すとか示さないとか。さりげなく見えるうなじが色っぽい。違う、そうじゃない。

 

 

 

「ノア様」

 

 

 

 やさしく呼びかける。女神様の肩がびくん、と震えた。

 

 

 

「女神様のお名前ですよね?」

 

「………………………………………………はぃ」

 

 か細い声で返事がきた。

 

 

 

「邪神だったんですか?」

 

「………………」

 

 返事はない。

 

 

 

「とりあえず、顔を見せてください。土下座をされっぱなしだと落ち着きません」

 

「信者を辞めないでくれますか?」

 

「…………」

 

「無言はヤメテ!」

 

 がばっと、顔を上げて、立ち上がり肩をつかまれた。

 

 

 

「ごめんなさい! 騙すつもりはなかったの。言わなかっただけで」

 

 それを詐欺と言うのでは?

 

 

 

「詐欺じゃないし! あと、女神なのは間違いないから!」

 

「でも『古い神族』なんですよね?」

 

「古いっていうのもちょっとさー。嫌な表現よねー。私はティターン神族の中じゃ、若い方だし」

 

 拗ねたように、空中を蹴る仕草をする。

 

 相変わらず、可愛い。

 

 

 

 あ、ニヤっと笑った。心が読めるんだったな。

 

 

 

「可愛い女神様。俺が信者じゃなくても大丈夫そうですね」

 

 女神様の顔が引きつる。

 

 

 

「無理無理無理! 一人信者を作るのに1000年待ったのよ! 信者がいなければ神の力は弱いままだし。私は邪神扱いされているから、信者なんてできないし。異世界人くらいしか勧誘できないんだから!」

 

 その異世界人もほとんど、6大女神に抑えられてましたね。

 

 

 

「ね、ねえ、その短剣よかったでしょ?」

 

「これですか?」

 

 腰の短剣に目をやる。ふじやんの話だと、確かに凄まじい武器だった。きっと、まともにこの世界で冒険して手に入るものではなかったはずだ。

 

 

 

「でも、鑑定で邪神ってばれてしまうのは少し迂闊でしたね」

 

「ちがうのよ! 並の鑑定じゃ、ばれないはずだったの!」

 

 ふじやんのスキルが並じゃなかったということか。

 

 

 

 さすが『鑑定・超級』。てか、騙す気満々じゃないですか。

 

 

 

「いや、でもね。えーとね」

 

 女神様はもじもじしている。うまい言い訳が、思いつかないようだ。

 

 だが、まあ邪神っていうのは隠されたが、もらった武器の性能は本物だった。水の神殿では武器は貰えなかったし、この短剣が有るのと無いのではずいぶん違う。

 

 ならば、言うべきは。

 

 

 

「ノア様。この短剣はありがとうございます。大事に扱います」

 

「気に入ってもらえたならよかったわ」

 

 にっこり笑う。

 こうしてみると邪神にはとても見えない。

 

 

 

「いや、邪神っていうのは『聖神族』の連中が勝手に言ってるだけだから。私も女神だから」

 

 唇を尖らせてそんなことを言ってきた。

 

 

 

 うーむ……そうだなぁ。

 

 確かに、初対面で邪神って言われたら間違いなく断ってた。信者になって、今の所悪い事は起きてない。俺は小さく、ため息をついた。

 

 

 

「いいですよ。信者のままで」

 

「ほ、ほんと!?」

 

「ええ」

 

 正直、嬉しかったのだ。

 

 この世界に来て、「期待してる」と言ってくれたのは、女神様だけだった。

 

 

 

 他の人には、ばかにされるか、同情されるか、心配されるか、だけだった。

 

 

 

 あー、でも心の中読まれてるからなー。やっぱり、同情なのかな?そんなことを考えていると、急に女神様が近づいてきた。

 

 

 

「マコト」

 

 抱きしめられた。

 

 

 

「あなたは大切な私の信者よ。期待してるから、ゆっくり強くなりなさい」

 

 

 

 

 

 

「さすがにわざとらし過ぎて胡散臭いですよ」

 

「ひ、酷い! 頑張ったのに!」

 

 頭をぽかぽか叩かれた。

 

 

 

 すいませんね。『明鏡止水』スキルと『RPGプレイヤー』スキルでそういう色仕掛けの類には耐性があるので。

 

 

 

 だが、なんにせよ契約は継続である。女神ノア様の信者として、頑張ろう。

 

 

 

「ところで、あらためて女神様からの指示はないんですか?」

 

「なんで、そんなに神託を欲しがるの?」

 

「せっかくなので」

 

 大抵は、魔王を倒せとか、無茶を言われるものだと思う。RPGのお約束的に。

 

 

 

「変な信者ねー」

 

 困った顔で女神様が言う。

 

 

 

「じゃあ、こんなのはどう? 私は現在『聖神族』の連中に逆らった罪で監禁中なんだけど、私を助けに来てくれるっていうのは」

 

 おお! いいじゃん!

 

 王道だ。

 

 

 

 囚われの女神様を救う。憧れのシチュエーションだ。そうそう、そういうのが欲しかったのだ。

 

 

 

「『古い神族』が囚われているという場所ですね」

 

「あー、それは違う場所ね。『古い神々』が幽閉されているのは『タルタロス』。人間じゃまず行けないんだけど、私はまだ若い神だから別の所なの。ぎりぎり人間でも見つけられる場所よ」

 

 そうなのか。神話だけでは知らないこともいっぱいありそうだな。

 

 

 

「私が居るのはね、深海の海底神殿」

 

 

 

「え? 今なんて」

 

「深海の深淵。この世で最も深いと言われるダンジョン。その最終地点に在る海底神殿」

 

 

 

 女神ノア様が告げたのは、この世界の上位三つの最難関迷宮ダンジョン。その一つだった。

 

 ()()()()()()()()()()なんですが。

 

 

 

「あはは、やっぱりやめとく?」

 

 女神様はにこやかに聞いてくる。

 

 

 

「行きますよ。そこを目指しますから。短剣のお礼に助け出します」

 

「短剣は、信者になってくれたお礼だから、気にしなくていいけどね。毎日、お祈りしてくれたらそのうち加護や、追加のスキルが得られるかもしれないから、信者は続けたほうがお得よー」

 

 新聞の勧誘のようなことを言われた。

 

「あとはそうね....ああ、忘れるところだったわ!」

 

 女神様は思い出した思い出したといいながらお告げを告げた。

 

 年寄り臭いと思ったら怒られるかな。やべっ睨まれた。

 

「ゴホンッ、では。高月マコト、あなたは今度見つける"竜"に関するクエストを受けなさい。さすれば汝に良い出会いがあるでしょう」

 

 具体的な指示が来た。

 

「えっと、あのさすがに竜はまだ俺には厳しいんじゃないですかね?」

 

「だから、"関する依頼"って言ったでしょ。大丈夫よ、マコトにそんな危ない橋は渡らせないから。」

 

 そうか、それなら安心だ。

 

 

 

「じゃあ、そろそろ目覚めなさい」

 

 意識がぼんやりしてきた。

 

 

 

「気が向いたら、私を助けに来てね。気長に待つから」

 

 ニコニコしたノア様が手を振っている。

 

 

 

 俺の寿命はあと10年なんだけど。

 

 とりあえず、レベル上げと寿命稼ぎするか。

 

 

 

「私を解放してくれたら、何でも言うこと聞くわよー」

 

 そんな声が聞こえた。

 

 

 

 また、適当なこと言ってませんか? 女神様。

*1
スキルとステータスを判別するためのアイテム。この世界では俗にいう鑑定系のスキルが貴重な為これを使っている。身分証代わりにもなり、自分の寿命すらもわかる。これがないと自分のステータスすらわからない




原作主人公Profiel
高月マコト
種族:人間
 生粋のゲーム中毒者(ジャンキー)。クラス転移により異世界へとやってきたが才能がなく、勇者候補としてどの国も取ることがなかった。ステータスは子供並みでスキルも戦闘に役に立たないものばかり。しかし彼は持ち前の集中力と精神性、そして突飛なことを思いつく発想力でどんどんと強敵たちを倒していく。
 彼の強さの根幹はその狂気的なまでの徹底性と集中力である。自分の才能がないとわかった時、つまり異世界転移初日からずっと毎日欠かさず10時間オーバー、日によっては20時間オーバーの魔法の修行を続けている。その精神性は狂っていながらも、小市民的。異世界人の中で最も努力型といえる。
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