シナリオ崩壊しても知らねぇぞ! 作:名無しのマスター
(評価、コメント、ありがとうございます)
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Wジャンヌという光景に黒幕のジル・ド・レェは燃やされながらも滅茶苦茶良い笑顔で昇天し、邪ンぬは最後までクリ殴りアタッカーとして暴れ回っていた。特異点が特異点、U所長とアンデル先生とのバフの相乗効果で、新参ながらもその最高峰の
「ファヴニールまで溶けた……」
「極まった火力というものを見たわ。サーヴァントってステータスが尖るとあそこまで行けるのね……」
瞬間火力を見ればジャンヌ・オルタは全サーヴァント中最高峰と言ってもいい。適切なサポーターが揃って囲えば間違いなくエースに化けるだろう。まぁ、その可能性はどのアタッカーサーヴァントにも言えることだが。
「いやーお帰りお帰り! 順調すぎて怖くなってきたくらいだ! 半日で特異点修正が終わっちゃったね!」
「ちょっと霊脈地に行って、後はオルレアンに直進しただけだったものね。正直肩透かしというか、まだまだ余力があるわ」
「じゃあもう一個行っときます?」
「「……え?」」
◆ ◇ ◆
第三特異点、セプテム。
西暦60年の古代ローマ──エトナ火山にて。
「事故るか! 神回か! 地獄のガチャタイム開催です!!」
「なぜ自ら地獄に? 気でも狂ったのかね、マスター?」
「放っておけアーチャー。人類最後のマスターなんぞ、偶に正気でも失わなければやってられんのさ。さ、良いネタを一つ頼む」
「作家というものはこれだから……」
今回の召喚の見届け人を務めてくれるのはマシュ、アズさん、アンデル先生と、オルレアン帰還後、カルデアで呼んだばかりの赤いアーチャー、エミヤだった。これで明日からの食堂の彩りが増えること間違いなし。
「幸運Eを配置することによって逆に幸運を呼び込む……! これが逆張り式の神ガチャ確定召喚システム……!」
「なんだその理論は」
『……そういえば所長とマシュ以外は皆幸運Eだっけ。戦力とのギャップが凄まじいな……』
「第一投、いっきまーす!」
召喚サークルを通り過ぎないよう地味な注意を払いながら聖晶石を投入する。
現地召喚は一回と決めている。課金で石を増やせない以上、無闇に
光れ! 光る! さぁ来い三重線──!!
「……概念礼装だな」
「サーヴァントが来るまでガチャは続けてもいい法律を今設定しました」
「ゼロの
「童話作家、言霊という概念を知っているか? そういう事を言うと──大穴に落ちるぞ」
「虹演出だああああああ!!」
「せ、先輩、大ジャンプです! 新記録です!」
勢い余って反復横跳びまでしそうになるが気持ちを落ち着ける。無駄な体力消耗はよくない。
でも仕方がない。リアルになっても、いやなってからというもの、サーヴァント召喚がたまらなく楽しくて仕方がない。別に召喚事故を期待してものではなく──単純に、画面の向こうにいた彼ら彼女らと実際に会えるのが、とびきりに嬉しいのだ。
さぁ! そんなワケで本日──三人目の新人は!!
「うむ、本命はもちろん余である! 余である! 嫁セイバー、ネロ・ブライド! 装い新たに再・登・場!!」
「再登場どころか初見の方ですが……」
「あれ?」
エミヤと先生が本気で頭痛を覚え始めた顔をする。お前か。お前たちの縁か。だが許す。可愛いはいつだってジャスティスですからね。
でも月には行ってないんだよねこの子……ややこしい。
現れたのは嫁セイバー、白い花嫁衣装でありながら戦闘装束を両立させるとかいう何者かのフェチを反映させたかのような姿のネロ・クラウディウスだった。約二名の頭痛はともかく、バッファーとして優秀なので大当たりには違いない。
「NP配布人材か……執筆速度が上がりそうですね先生」
「やめろ、作家を前に出すな。そこはアーチャーにあえるものだろう!」
「おかずか何かか」
『あれ? ちょっと待った。召喚システムがまだ起動してる──聖晶石の余剰魔力で誰かが呼び出されそうになってるぞぉ!?』
嫁ネロの背後、召喚サークルを見ればまた召喚の気配が起きそうな光を放っていた。
「あったんだ……伝説のおまけ召喚システム!!」
「おお、なにかよくわからないが凄いぞ! 余にまったく心当たりはないが!」
『完全にノリで生きてるわね、こいつら……』
それはそうと現在、U所長は管制室にいるのだった。いるだけで気配が凄いですからね。ローマにはレフの気配があるということで、気取られても面倒なので一時お留守番であった。フランスMVPの邪ンヌも今はカルデアで休んでもらっている。
わーい、誰かな誰かなー、と嫁ネロと並んでわくわくしながら見守っていると、やがて三本線がくるくるしてサーヴァントが現れる。
「なんと、美少年!」
「え゛」
「……はあ? ……あー、そういうコト?」
『んんん? なんだ? 何のクラスのサーヴァントを呼び出したんだ、明楽ちゃん? 霊基のパターンが特定できない……既存のどのデータにも当てはまらないぞ? 未知のクラスでも召喚しちゃったりした?』
召喚陣の光から現れたのは、一人のサーヴァント。
それは蝶のような大きな羽を持ち、王冠を被った、童話から出てきたような光の王子。
「──サーヴァント・オベロン。妖精王オベロン。このとおり、お飾りの王様だけど……喚ばれたからには力になってみるよ」
そして完璧な笑顔でにっこり笑った。
「よろしくね?」
◆ ◇ ◆
きっ……気まずいよ!!
相手が相手なもんで出会いのワクワク感も彼方の向こうまで吹っ飛んでしまった。なぜだ──初手U所長という例外をやらかしていたのに、なぜ忘れていたのか私は!! いや無意識に考えないようにしていたのか──異聞帯サーヴァント
「宝具バフ、NPチャージ、全体攻撃宝具……どう足掻いても今めちゃくちゃ欲しかったバスターサポーターだ、今日からお前はサポーター環境の王となれっ……!!」
「謙遜する者ほど有能な人材が多いな、この職場は」
「アーチャー、なぜ俺の方を見る? 何度も言うが俺は肉体労働など断固反対派だ! お役御免になれば即引きこもらせてもらうぞ!」
霊基解析の結果、オベロンの性能はマジオベロンだった。
当の本人は現在、嫁ネロと共に、カルデアから送られてきた種火漬けにして若干目を回しているが。
「これぞローマの究極! 地上でもっとも美しく華やかな花嫁戦闘衣装である!」
「いきなりこんな豪華な食事で歓迎されるなんて思わなかったなぁ……あ、妖精王レベルアップ完了だよ。ここまでしてくれたからには、誠心誠意、お役に立ってみせるとも!」
「サーヴァントの鑑のようなサーヴァントだな……貴様も見習ったらどうだ、童話作家」
「……、ふん。殊勝なことだ」
一瞬のアイコンタクトでアンデル先生とオベロンが何か通じ合っている……いやお互いに何かしらを察しているような雰囲気出してる……さっきの邪ンヌといい、君らサバフェスでもやるつもりかね?
「ヘイ、ヘイ妖精王くん。君の第三スキルについて質問があるんだけど」
「うん? なんだい?」
「このデメリット踏み倒せない?」
「あはは~無理だよ~~」
クッ……無理か……無理かぁ~……
オベロンのスキル、最大の特色にして特徴、第三スキル「夢のおわり」。
味方単体のバスターバフと宝具威力バフに多大な恩恵をもたらすオベロンの本体そのものといっていいスキルだ。しかしその代わり、ターン終了時に全バフ剥がれて、完全置物状態と化す。
このデメリット、ゲーム時代は一戦闘が終了するごとに状態がリセットされて解除されていたが、このリアル環境では「一度使えば死」レベルのものだろう、これ。
だって説明文が不穏すぎるんだもん!
〔永久睡眠〕状態ってコレ、基本解除不可能なんだぜ!? ゲームみたいにホイホイ使えないよ!
「──サーヴァントであれば誰であれ、その程度は克服できるだろう」
「!?」
「おわっ、アズさん。克服って?」
簡単な話だ、とアズライールさんは真顔で言う。
「我々サーヴァントには使命がある。人理の異常を解決に導き、またこれを成さんとする者に協力するという使命が。一時、夢を喪った程度で現実に永遠に帰還できない者などいるものか」
「……つまり皆、気合で目覚めるってこと?」
「……いやそんな馬鹿な」
「我々の本質は境界記録帯だぞ。信仰、想念で成立した存在。地球上でかつて記録された『現象』だ。
「そっか~。じゃあガンガン使わせてもらうね~」
「ああ、そうするといい。修練の合間の休息にはちょうどいい」
「……」
オベロンがめちゃくちゃ何か言いたそうな顔をしてるが何も言ってこない。ゲーム時代も皆そうやって気合で起床してたんだろうか? まあ、少なくともこのデメリットが戦闘中限定ということに変わりはなさそうだ。
人の心?
そんなもんを今さら求められたとてな……
◆ ◇ ◆
「おや? 見ない顔だな。サーヴァントのようだが、連合軍の連中でもないようだな……」
「歴史の歪みを正しにカルデアから来ました。こちらは頼れる後輩のマシュ」
「先輩!?」
「歴史の歪み……なるほど、異なる時代からの来訪者か。私はアサシン、
「呼んだか!?」
にゅっ、と横から嫁ネロが顔を出した途端、荊軻もその隣にいるバーサーカー、呂布も困惑した空気で固まった。
「ん……ネ、ネロ……? にしては衣装が違う気が……」
「あ、こちらはカルデアで呼んだネロ陛下です。ローマにいる皇帝とは別人です」
「どう見ても同一人物だが……そ、そうか。そういう事もあるのか、カルデアでは」
「はい(重みのある肯定)」
「先輩、この空気は先ほどのフランスの時と同じものを感じます……!」
本日二度目の召喚事故──いやまだ同一人物同士が鉢合っていないのでギリセーフだろう。ギリセーフって言え。
「私たちは特別遠征軍。ネロの命令で偵察を任されて来たんだ」
「偵察……そういえばさっき連合軍がどうとかって」
「むぅ? なんだそれは? 余の治世でそのような勢力があった覚えはないが……」
「つまり、それがこの時代の歪みの原因──」
「──連合帝国首都。
◆ ◇ ◆
「カリギュラ! カエサル! ロムルス!! 奴らを潰せ──!」
「オベロン宝具で」
「やあ、そういうわけだ。ちょっと眠っててくれるかな? “
「なんだそのサーヴァントは!? っ、起きろ貴様らァ──!!」
「ところでレフ教授、なんのために人類を滅ぼしたんです?」
「──フン。そのように問われたところで答える道理も権利も私にはない。今さら貴様たちが何をしたところで結末は確定している。まったく無意味な足掻きだ。貴様たちでは既にどうにもならない!」
「──そう。もはや話し合いの余地もなく、貴方には何を訊いても無駄ということね、レフ」
「……? この声、この魔力……? 待て、なんだソレは。どういう事だ!? なんだってそんな事になっている──ッ!?」
「ねぇマシュ、『そんなのこっちが訊きてぇ』って言ったら怒られるかな……?」
「大丈夫です先輩。この混迷した事態、誰でも同じ疑問を呈するものと私は思います!」
そんなことを言っている間に、バチバチと雷霆みたいな稲妻魔力を放つU-オルガマリーがレフ教授の前に参上する。
ここで彼女が出てきた目的はただ一つ──
「よくもやってくれたわね、レフ・ライノール!! とりあえず──一発殴らせなさい!」
「オルガマリー!? オルガッ……オルガマリーだと!? 生きて──馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿なァッ!? 生きている道理がないだろう!? 狂ったのかカルデアァッ!?」
「オベロン、バフ全部あげちゃってー」
「はいはーい、頑張ってー」
「行くわよ!! 大統領パーンチ!!」
身の危険を感じたらしいレフが魔神柱の姿をとるが、それも大盛りバフをもらったU所長の前では紙装甲同然。
一瞬で禍々しい悪魔の姿は消し飛び、元の人の姿に戻ったレフが倒れ込む。
「ふぅ、すっきりした……かも? あれ、なんか急激な眠気が──」
「……」
「──って寝てられるか! さぁ明楽、マシュ、聖杯を回収よ!」
「えー……マジかよ……」
間違いなく「夢のおわり」まで掛かっていたのに、大統領は踏みとどまって現世に戻ってきた。大統領だからこそ成せる技なのか、サーヴァントだからなのか、その真相と検証は今後の課題だろう。さすが地球大統領。
「くっ……なんだこのふざけた幕切れは……だが聖杯はまだ此方の手にある! ここで七つの人理定礎、その一つを破壊する!! 来たれ! 破壊の大英雄アルテラよ──!!」
「強力なサーヴァントの反応……! 先輩、来ます!」
「オベロンとネロをオダチェン。ネロ、エミヤにバフ全部あげてー。で、エミヤに令呪で魔力装填ね。ハイ、自分でバフ盛ったら宝具いってみよう!」
「華々しくいこうではないかっ!」
「えげつない判断速度だな、マスター! “
一瞬で全ての風景がエミヤの固有結界に取り込まれ、刹那に顕現したアルテラに無限数の剣が叩き込まれる。向こうの対軍宝具が起動する兆しはあったが──それすらまともに発動することなく、荒野の風景の固有結界の中でその存在は瞬殺された。
第三特異点セプテム、その人理定礎の復元完了だった。
『ほ、本当に一日で二つ特異点を修正した……』
一日で二つ聖杯ゲット! やったね!