シナリオ崩壊しても知らねぇぞ!   作:名無しのマスター

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 ラスボスが自ら巻きに入りに来てくれたようだ! やったぁ! 早く完結させてくれ!!
(評価、コメント、ありがとうございます)


なんか恨みでもあんのか、あぁ!?

「人類最後のマスターの仕事が早すぎる!!」

 

 ──そんなワケで逆にカルデア職員の仕事が追いつけないという問題が発生し始めたらしく、強制休暇という名目でしばしの休み期間が設けられた。

 

 確かにちょっと生き急ぎ過ぎたかもしれんな……

 でも七つ特異点を修正するまではラスボスも慢心してくれるだろうし……

 

 どんなに事態が早く動いたとて、いきなり魔術王がカルデアに乗り込んでくるような展開はないだろう。特定のトリガーが引かれなければ絶対的な不死性を誇るのだから、「その時」までは自らの野望に邁進するはずだ。

 

 マシュ、U所長、アズライール、アンデルセン、邪ンヌ、エミヤ、嫁ネロ、オベロン。

 

 ゲームメタ視点で見れば第七特異点どころか最新章に到達する戦力として充分というか過剰なんじゃないかという面子だが、それでも相手が本気になる可能性は極めて低い。

 

 霊基の質が違うのだ。

 冠位持ちが一騎いようが、霊基自体は普通のサーヴァント。向こうからすれば雑魚の寄せ集めに過ぎないのだ。自分の陣地に飛び込んでくるまで奴は玉座から腰を上げない。

 

 そのまま慢心し続けてくれ。

 ちゃんと殺しにいくから……

 

「茶を淹れてみたぞ、マスター」

 

「え、ありがとうございます」

 

 マイルームで机に向かっていたら、いつもの気配の無さで現れたアズライールさんがお茶とお菓子を出してくれた。おいしー!

 

「功労者には然るべき報酬があるべきだ。今はこの程度しか出せないが」

 

「いえいえ、心が潤います。良い香り~」

 

 

 

 ──そんなマスターをマイルームの扉の隙間から見る影があった。

 

「マ、マズイ……あいつ(巌窟王)ッ……早く来ないと出遅れる! 出遅れるわよ! マスターちゃんが珈琲派になる前にお茶派になったらどうするのっ……!!」

 

 わなわなと震えるジャンヌ・オルタは明後日の方向に、いつか来る同僚の心配をしていた。

 まったく以って要らぬ心配である。

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

 第四特異点、ロンドン──西暦1888年。

 ヘンリー・ジキル氏のアパルトメントにて。

 

「ふはははは! 私を召喚するとは奇特なマスターもいたものだネ! クラスはアーチャー、真名はまぁ、追々明かすとしようじゃないか! なぁに、私の強さは保証するとも!」

 

「よろしくアーチャー。こっちはルーラーのモリアーティ」

 

「…………、おや?」

 

「マスター!! ここに僕は告発しよう、コイツの真名はモリアーティ! 悪のジェームズ・モリアーティだ!!」

 

『また召喚事故を起こしてる……今度は犯罪界のナポレオンときたかぁ……』

 

『何? 英霊ってそんなにバリエーション豊富なの?』

 

 少ない方です。

 わるわる教授は若い方とアラフィフ紳士のと、二パターンしかないからね。

 

 ちなみにルーラー、若いモリアーティはセプテムから帰ってきた後、カルデアで召喚したサーヴァントである。彼を横にロンドンで地元召喚したら、案の定な結果が出てしまったということだ。

 

 我々はロンドンに着くなり、ルーラーモリアーティの提案のもと、まずは魔術協会地下を探索。そこで苦虫噛み潰した顔で彼が然るべき情報を回収したのち、街中を歩く不明の怪機械(ヘスタースケルター)を片付けつつ、ロンドンの警視庁に行って情報収集。そこで襲撃しに来たPとジャックを屠ったところで、モードレッドと合流し、アパルトメントという拠点をゲットした。

 

 ──後は魔本事件を解決したり、オベロンがシェイクスピアを助走つけて殴ったり、色々あった。

 

「ほほう。異常な魔霧けぶるロンドン! 第四の聖杯探索となる特異点か! 若い時分の己との共闘とはまた奇妙な初陣だが、面白くなりそうじゃないか!」

 

「おいカルデアのマスター。外野が口出しすることじゃないが、こいつとの契約はやめとけ。母上やマーリンのクズ野郎にも勝るとも劣らぬ嫌な気配がするぞ」

 

 と、言うのは現地協力者であるはぐれサーヴァントのセイバー、モードレッドだった。

 その所感は直感スキルによるものだろうか? 残念ながら当然の忠告だ。

 

「そうだぞマスター! カルデアのジェームズ・モリアーティは一人でいい! もう枠いっぱいだ! 老人は帰りたまえ!」

 

「超面白いから採用します」

 

「マスタァ──!!」

 

『っていうかジェームズ・モリアーティがいるってことは、やっぱり()()シャーロック・ホームズも実在するってことが逆説的に証明されたようなものだよね? そのうち出てくるのかなぁ、ボクわくわくしてきたぞぉ!』

 

「「わくわくすんな!!」」

 

 ダブルMからの猛抗議であった。通信先のロマニのメンタルが危ぶまれる。

 

「さて、警視庁(ヤード)で敵方の『P』やらアサシンは潰した。フランのお陰で『B』とかいうロンドンの治安をロボまみれにしていた首魁の一人も倒せた。──後は地下に潜む『M』と名乗る黒幕の一人だけだ」

 

 瞬間、その場にいた全員──マシュ、エミヤ、邪ルタ、オベロン(ミニマム)、モードレッド、ジキル、フラン、現地産アンデルセン、シェイクスピア──の目がモリアーティズに向けられた。

 

 若い方も老いてる方も物凄い滝汗を流し始める。

 

「……いやいやいや。いやいやいや!? 絶対違う、違うもんネ! 冤罪冤罪! こんなロンドン中を霧まみれにして大気汚染も真っ青な計画、私はやりませーん!! スマートじゃないしぃ!」

 

「そう言われても……」

 

「『M』って……」

 

「これまでの召喚事故の法則性を考えたら……」

 

「どうする? 燃やしておきましょうか?」

 

「待った待った! 私だったらこう……『騙すならまず味方から! いやむしろ自分から!』みたいな計画にすると思うヨ!? なぁ私!?」

 

「巻き込むな!! ここまで築いてきた僕たちの信頼関係をパァにするつもりか──!」

 

「まぁ、地下にいるらしい元凶を叩けば自ずと疑いも晴れるでしょ」

 

 Wモリズが凄まじいやる気を見せ始めた。アラフィフの方はまず種火食ってくださいね。

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

 地下にいたのはマキリを名乗る青い髪の魔術師だった。

 

 皆で「あっモリアーティじゃねぇ! 誰!?」となる中、出てきたのは魔神柱──バルバトス。ドロップ品はまさかの虚影の塵一個とかいう渋っぷりに内心マジギレしそうになる中、瀕死のマキリが雷霆神話──ニコラ・テスラをバーサーク召喚。その召喚の衝撃波で吹っ飛ばされたり、バッキンガム宮殿上空を目指して移動を始めたテスラを追跡、連鎖召喚されてきた坂田金時や玉藻の前の協力を得てようやく倒し切ったところで、更に出てきたランサー、アルトリア・オルタとの決戦というラスボスラッシュを経て──

 

「────理解できん」

 

 現在、英霊はマシュ以外全滅していた。

 二人のモリアーティも、ジャンヌ・オルタも、エミヤも、オベロンも、現地で知り合ったアンデルセン、シェイクスピア、坂田金時、玉藻の前、モードレッド──全員、この時代に集っていた英霊全員がたった一騎のサーヴァント、否、魔術王によって全滅した。

 

 ちょっとギャグにすることもできない窮地だった。

 

 ……まぁそうだよなぁ、そうなるよなぁー……

 

 カルデアで召喚したサーヴァントは基地に戻っただけだが、この時代、このロンドンで出会った協力サーヴァントたちとはもう会えない。記憶を持ち越す事は、運が良ければあるだろうが、それは今考えることではない。

 

 魔術王が来ることは予想できていた。

 だからU所長もアズライールも連れてくることはしなかった。……レフとU所長が顔を合わせている以上、というか千里眼EX持ちに隠匿なんて無駄なことだが、今回の探索メンバーを伝えた時、オルガマリーもアズライールも何も言わなかった。

 

 ここは道筋を無理に変えるべき場面ではない──万が一にでも、相手にこちらが脅威になりうると、欠片でも思わせてはならない。

 

 後はこのままなんとか、気まぐれで来ただけの彼にお帰り願うだけだ。

 なのだが。

 が──

 

「──理解できん。何をどうしたらそんな始末になっている、()()()()()()()()()。ただ我々の行いに無駄に足掻くのならまだいい。愚かしいが真っ当な人間だ。だというのに──」

 

 なんか。

 ソロモンが予想外の、或いは()()()ともいえるリアクションを見せていた。

 

……あー……千里眼でなんか見えたかなぁ、これぇ……

 

 そうとしか思えない反応だった。ソロモン(ゲーティア)が見せているのは動揺であり、困惑であり、混乱であり、此方に向けてくるのはエイリアンでも見るような目だった。それは、

 

「……先、輩……?」

 

「──うん。マシュ、私は正気だ。あいつに何と言われようと、私は君のマスターだ。その自負と誇りを持ってここまでやってきたつもりだ。()()()()()()()()()()

 

「──、──有り得ん。貴様は──」

 

「なんだ、()()()()()()()()()()。世界に例外は付き物だ。まさか、それを、他ならぬお前が知らないわけがないだろう」

 

「────────」

 

 ソロモンは。

 それ以上、何も言うことはなかった。絶句、とはこういう事を言うのだろう。

 

 ……そんなにショックかなー……?

 ちょっと人理焼却と人理漂白を解決できるだけの人材が、その知識を持つ人間がいるってだけなのに……

 

「……マリスビリーめ……」

 

「え?」

 

 ここでその名前、出すの!?

 

『え? なんだって? なんでそこで前所長の名前が出てくるんだ……!?』

 

 ホラ通信繋がってるからカルデアにも伝わってるし!

 なに? ここで第一部のみならず、第二部のネタバレ会でも始めるつもりかね!?

 

「……何も知らんのか。それとも忘れているのか。まったく嘆かわしい。総ての歪みの原因は貴様らカルデアにあるというのに」

 

「え……!?」

 

『な……なんだって……?』

 

 それだいぶ第二部のネタバレじゃないかね──!?

 い、今の口調、話しぶりからして、こ、こいつ……ロマニの正体──

 

 し……知らんぞ! シナリオ壊れても知らないからな私は──!!

 

「……まあいい」

 

 よくねぇよッ!?

 

「どの道、既に我が偉業は──人理焼却は成された。これを覆さない限り、おまえたちに未来はない」

 

 それはそうだけども……

 なんだこいつ、ネタバレちょっとカマしたら涼し気にラスボス気取り直しやがって……

 

「……なぜ戦う。なぜまだ生き続けようと縋る。おまえたちの未来には、何一つ救いがないと気付きながら」

 

「……っ──」

 

 その問いに、マシュは答えられない。

 今の彼女には、それにぶつけられる答えがない。だけど、

 

「……あのな……」

 

「せ、先輩?」

 

 マシュの盾に守られている位置から、前に一歩踏み出す。

 

人間(こっち)はお前と違って忙しいの。超忙しいの。そんなに理解できないなら、()()()()。魔術王ソロモン」

 

『──はい!? 明楽ちゃん、ちょっと、何を言ってるんだい!?』

 

「うるさぁい! 勝手に世界滅ぼしやがって、こっちは大迷惑だ! まだ見たいテレビとかゲームとかあったんだぞ! 老い先短い人生、やりたいこととか楽しみたいこととか一杯あったのに!」

 

「──、」

 

 絶句しているのはマシュである。

 ひぇぇぇぇ、とカルデアの通信からはロマニの声にならない悲鳴が聞こえる。

 

『お、老い先短いってまだ若いだろう明楽ちゃん!? ああいやそういう話じゃなくて!』

 

 ロマニのツッコミや嘆きは無視する。役に立たん!

 

「もう一度言うぞ! 人間の人生はやる事いっぱいあって忙しいの! そこに世界滅亡とかいうタスクを勝手に置いていくな! ()()()()()()()()()()()()()()!! なんか恨みでもあんのか、あぁ!?」

 

「せ、先輩! そこまでに、そこまでに!!」

 

『お、押さえるんだマシュ! 明楽ちゃんを黙らせられるのはキミしかいない!!』

 

「全知全能なのに問題を増やすことしかできないのかこのバッ──」

 

 横からマシュに峰打ちされた。

 ぐえっ。きゅぅ。

 

「すみません先輩……すみません先輩……!!」

 

「……帰る」

 

「えっ。えぇっ!? ま、魔術王ソロモンを名乗る敵性体、撤退……しました……えぇ……?」

 

『えっ帰った!? いきなり!? あれ──!?』

 

 なにかねこれ。峰打ちされ損じゃないかね、私?

 

 そんな感じで第四特異点、ロンドンの定礎復元は完了した。

 

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