シナリオ崩壊しても知らねぇぞ! 作:名無しのマスター
(評価、コメント、ありがとうございます)
二十一世紀の日本、オガワハイムを攻略したと思ったマスターがカルデアで眠りにつくと、そこは見知らぬ監獄塔の中だった……
「──と思ったけどハイテンションな案内人を倒したら脱出できたぜ。おはガチャァア!!」
「我こそは復讐者、巌窟王モンテ・クリスト伯爵──」
「霊基間違えてねぇか!?!?」
「──復讐の化身。エクストラクラス、アヴェンジャーである」
今なんか一瞬黒い炎をまとったような貴族服バージョンが見えた気がしたが一瞬で見慣れたマント姿に切り替わった。
どういう事なの? それって切り替えられるようなものだったっけ? とか様々な疑問がよぎったが、まあ、見なかったことにしよう! 誰にだってミスはあるさ!
「あーびっくりした。よろしく巌窟王……おや?」
「……余剰魔力が新たな召喚を引き起こそうとしているな」
「おまけ召喚だ!!」
「さて。鬼が出るか蛇が出るか……」
君の幸運ランクいくつだっけ? そう思っている中、召喚サークルはサーヴァントを示す反応を見せ、光の中からその姿が現れる。
「こんにちは! アルトリア・キャスターです! 難事件発生と聞いてやってきました!」
「……」
「……」
「詳しい事情は分かりませんが、どーんと任せて──」
「……なぜ水着」
「えっ」
「いや、確かに次、海の特異点だけどね?」
目の前のアルトリア・キャスターを名乗るバーサーカーが目を点にして、きょろきょろしたあと、──二百面相ぐらいしたところで、霊基がパッと変わった。
「ごめんなさい間違えた!! わたしってば浮かれすぎ! あ、改めましてこんにちは! キャスター、アルトリアと申します! 魔術なんかでお役に立てるなら遠慮なくお使いください!」
君がそんなコトを言ったら休みという概念が消し飛んでしまうぞ──!
伝説のサポーター、ここに降臨。軽く手元のタブレットで霊基解析されたステータスやスキルを確認するが、おぉう、カルデアに身を粉にして働きにきたとしか思えねぇスキルと宝具だァ……エミヤと若モリの宝具がぐんぐん回るよー! システム周回環境、見えてきたな……
タブレットから視線をあげる。
目が合う。
可愛い。
「!?」
さすがは戦術という根底が覆る革命児である。人権とかいうレベルじゃない。インフラ。もはや生きるために必要。カルデアを回す血液そのもの。グランドキャスターを越えた何か。とりあえず引いとけ。周回、高難易度、特異点修復、「全て」で仕事がある最優秀キャスター。
「ひぇ……」
しかし可愛いな。
「ひぇぇ」
再びタブレットに視線を戻す。
「NP30%攻撃バフ全体配布単体NP20%配布全体NP獲得量最大30%バフ単体アーツ50%バフ無敵と脅威特攻付与に宝具で攻撃バフと弱体解除のOC分回数対粛正防御……!」
「……なんの高速詠唱だ?」
「
「──あっ、オベロン!?」
「げっ」
召喚室を通りすがった妖精王がスピードスターになって逃げていく。「先に来てたの!? ずるー!」と言いながらキャストリア──いや本人の前ではアルキャスの方がいいか。ともあれアルキャスが逃げたオベロンに向かって声をあげている。仲がよろしいようで。
まだ一人目。
アルトリアはまだ飽和してない。まだ。
実は弊カルデア、何度も出てくるドラ娘もきよひーもいないので割と平和なようなやや寂しいような職場環境である。
でも召喚陣から出てきた覚えのない個体が偶に発見されるので、そういった霊基は容赦なくアズライールさんが対処してダ・ヴィンチ工房で霊基変換されている。契約したいなら
「……マスター、アレはなんだ」
「ん?」
巌窟王の声に廊下の方を見やれば、アズライールさんが何かを引きずって歩いていた。
それはどう見ても花の魔術師と思しきサーヴァントだった。
「カルデアに侵入したサーヴァントだね。私の召喚以外でココに来るとああなるよ」
「やぁやぁそこのキミ! ちょっとこの堅物なお兄さんに口添えしてくれないかなー、私はちょっと燃料を入れに来ただけであってイタタタタ」
「今度はちゃんと召喚されてくださいね」
召喚室前を通り過ぎる傍ら、アズライールさんが巌窟王とアルキャスを視界に認めて頷き、無言で去っていく。お仕事お疲れ様です。
◆ ◇ ◆
第五特異点──オケアノス。
西暦1573年、大航海時代とも呼ばれるその年代にレイシフトすると、そこは一面の大海原だった。
「──海賊船の制圧、完了しましたマスター」
「お疲れ様マシュ。皆」
「世界を救う旅だってのに行動が初手蛮族すぎないか……?」
そう言いつつ片手でナイフを弄る
とは思いつつ手すりに近付き、青い海原を前にする。
「他人の船であびる潮風は気持ちいいなー!」
『開き直るのが早いね明楽ちゃん』
「……海賊船とは言うが、悪くない船だな」
「なに、伊達男。船とか詳しいタイプ?」
「……」
式ちゃんの軽い追及に巌窟王が黙り込む。
黙秘することでもないだろう。
「エドモン・ダンテスは船乗りだったからね」
「へえ。海の男ってやつか。よく知ってるなマスター」
「実は読書感想文で入賞したことがあります」
「!?」
「い、意外な経歴です! その辺りを詳しく!」
転生者として人生二周目ヒャッハーしてた頃のことだからなぁ。ってよく考えてみたらアレ、英霊として現界した奴らって大体セカンドライフ状態なのでは……?
「げ!! あの海賊旗は……黒髭! 黒髭だ! エドワード・ティーチだ! 逃げろ皆、身ぐるみどころか首まで全部持ってかれるぞー!!」
と、船の持ち主である一般海賊からそんな報告があがった。
……まだドレイク船長とも会ってないのにナー……
RTAの影響で色々と事象が知識より前後している。ポセイドンの気配がないらしい辺り、もう撃破自体はされているらしいのは不幸中の幸いか。
「黒髭……サーヴァントか」
『サーヴァント反応多数! 一、二……五騎はいるぞ!』
「うーん、じゃあまず水着アルキャスの宝具ぶち込んでみるかー」
『開幕宝具がすっかり板に付いちゃったね……』
「結局水着になるのぉ!?」
そっちの方が早いですからね。
効率性を求めると人は宝具周回に辿り着く……
──船に乗り込んだ後、巌窟王の開幕全体宝具でエイリークが座に還り、アルトリアの単体宝具でありながら味方全体に対粛正防御とかいう最高峰の防御バフを与える混沌特攻攻撃でアンメアを屠り、両儀式が残ったヘクトールの霊核を一撃で即死させてからは早かった。
後はカードチェイン組んで孤立無援となった黒髭をガッツが尽きるまで殴るだけ。以上。
「敵、エドワード・ティーチ。戦闘不能状態です!」
「降伏する?」
「するする。超する。でもこの通り拙者、何も持ってない一般サーヴァントだからね!」
「この
ピピー、アルトリアセンサーに反応あり。
黒髭が絶句し、その背後にアズライールが立った。
「さ、真実を吐かないとそこのクビキリサーヴァントが牙を剥くぞ」
「物凄い天敵の予感!!!! 逸話的に!!」
「聖杯とか持ってる?」
「……持ってますぅ……しくしく」
『短い
オケアノス、定礎復元完了!!
◆ ◇ ◆
第六特異点──西暦1783年のアメリカ。イ・プルーリバス・ウナム。
今回ばかりはどうやってもRTAできる要素などない。聖杯の力で無限増殖してくるケルト軍はキリがないし、戦力を整えて狂える王クー・フーリンと女王メイヴの暗殺に挑戦したとて、聖杯の加護を受けた狂戦士クー・フーリンは単純に強敵な上、伏兵としてアルジュナまでいる──
そんな風に考えていた時期もありました。
「ハイ大統領宝具いってみよう。アルキャス、アンデルセンで続けて打ってね」
「地球の大統領なんてわたし一人でいいのよ!!」
「もう何度目の幕開け~」
「脱稿! 脱稿!! そして脱稿の時だ──!!」
「くっ……! 差し込む隙がない、守りが堅すぎる……!」
「ハイ、スキル戻ってきたので大統領バフ配ってね。アルキャスも先生も大統領にバフ全部あげていいから。では大統領、BAA!」
「ダメージが一向に通らねぇ──」
「これが無限回復バフループコンボです」
「聖杯のバックアップもないのにどういう理屈!?」
アタッカーの大統領をひたすら対粛正防御と回復で援護しながら戦うだけの戦法です。
ちなみにアルキャスの所有礼装は「救済を願いし者(完凸)」で4回だけ宝具使用時にOCを二段階上げることができる。なので素で打ってもOC3、対粛正が全体に3枚張れる。それを4回。対粛自体は3ターンの効果期限時間があるが、その切れ目にまた張りつつ、アンデルセンの防御バフや回復バフを重ねまくって、大統領が殴ったり全員でアーツコンボ組んでひたすら戦うというものだ。
これでビーストも屠れる無限ループ戦法。
礼装の切れ目が勝機の切れ目──ということもなく、10ターンもいかないくらいでアルジュナが、メイヴが大統領の火力の前に倒れ、残ったクー・フーリンの攻撃をひたすら耐えながら削り続ける作業に入る。
実際にやると戦士の誇りも感動もクソもねぇな……
でも出来ちゃったんだから仕方ない。人理修復の旅では、偶に人の心を忘れることも大切なのだ。優しさだけで世界が救えたら苦労はしねぇ。助けられる命はなるべく助けるけれど。
ちなみにアルキャスかアンデルセンが倒れたところで後続のマシュが出てくる。
大統領が倒れても後ろにオベロンやジャンぬを控えさせている。
アーツ戦法がバスター戦法に変わるだけだ。地道なバフとゴリゴリの火力、それを両立させて──遂にクー・フーリンの現界が崩れ、魔神柱ハルファスが召喚される。
同じ戦法で数ターンかからずに討伐。もっとドロップ素材を改修してくれます? せめてレイド戦仕様に。
あっさりと聖杯が回収され、この特異点の修正が確定する。
そんな折、控えで霊体化していたオベロンが実体化し、乾いた拍手をしてくる。
「いや~、流石だねマスター。サーヴァントの連携もお手の物。コレ必勝っていいぐらいの戦術じゃない?」
「そうだねー。バフ剥がしてくる敵とか行動不能系とかのデバフ叩き込んでくるクソ敵が出てこない限りは大体これかなー」
「あはははは。そんな敵いるかなぁ?」
おめぇだよ!!
──という
どういう気持ちでサーヴァントやってんだこいつ……?
永遠の謎である。そして私は別に名探偵でもないので永遠にわからないんだろう。他人の内心なんてそんなもんだ。
オベロンについては考えれば考えるだけ暗くなるからやめよ~っと。どうせオチもなく永遠に考え続けることになる~。
「……、ところで現地で召喚はしなくていいのかい? オケアノスでもすぐに探索終わっちゃったし、土地
「んー、そうだな。ドクター、近くに霊脈地ってある?」
『レイポイントかい? ははは、そんなの探すまでもないよ! ここは敵の拠点だったんだから、霊脈地に決まってるじゃないか!』
「言われてみればそうだ……」
ちょっと落ち込む。RTAできても、こういう
久々に一般人の自覚を得る。
やれやれ、私なんて魔術王にクレーム入れただけの一般人ですよ……
「さ、クリア記念のガチャいっとくか。マシュー、サークルの確立お願いー」
「了解しました。どんな方が来るんでしょうね!」
「だから英霊召喚をガチャ呼ばわりやめなさいよ……いや気持ちはわかるけど……そんなこと言ってたら確率が減るわよ!」
「今さら減ったとて……」
一瞬、前世の
大丈夫、これは現実だ。この石は使っても預金が減ることはないんだ……!
そんなことを考えている内に召喚サークルの設置が完了したので聖晶石を握り直す。
「スターズ、コスモス、ゴッズ、アニムス、アントルム、アンバース……」
「えっ、ちょ、なんで私の詠唱なの!?」
「──以下略ゥ!! Foo!!」
「そこまで言ったんだから略すなぁ──!」
問答無用で聖晶石を投げ入れる。サークルが起動する。
来い、サーヴァントッ……!!
「──サーヴァント、ランサー」
そして光の中から顕現したのは──緑の麗人だった。
「真名、エルキドゥ。君の思うまま、自在に、無慈悲に使ってほしいな。マスター」
……最強の、採集決戦兵器……!!
なんてことを思わず考えてしまったが、設定上でも明らかな最強兵器だ。というかなぜアメリカで召喚できたんだ。アレか?
しかしこの先、
「来てくれてありがとう。──ところで今来て大丈夫だったんですか?」
次の特異点、バビロニアなんですけどッ!?