シナリオ崩壊しても知らねぇぞ! 作:名無しのマスター
完結が近い。
最低限、エルキドゥのマスターを務める人間としてはお認めの言葉を賜ったものの、結局、ギルガメッシュ王はカルデアの助けを跳ね除けた。
「この時代の問題はこの時代の人間が解決するもの。貴様らの出番は『その後』だ」
始まるウルク生活!
設立されるカルデア大使館!
銀狼姿でジグラットを徘徊するエルキドゥ!
そうとは知らず可愛がる兵士さんや役人さんたち!
ウルクに戻ってきたマーリンを蹴り飛ばすフォウ君! あとこんにちはアナさん!
そして!
「やってみるか……召喚事故……!」
「なんでやる前から事故が約束されているんだい? アルトリアの聖剣かな?」
「聖剣は勝利だけを約束してください」
召喚サークルが設置された拠点──カルデア大使館と名付けられた建物で、夜、そろそろやっておかなくっちゃな……という
「──間違っても水着ビーストとか来ませんようにッ……!!」
「言霊って知ってる?」
「絶対に気まずい空気感の中でそれでも戦いたいなら来てもいいけどね」
『フラグの逆張りだ! これは高度な試合内容になりそうだよ……!』
「英霊召喚って試合だったっけ??」
人の心が分からない夢魔め。ガチャはなぁ、勝つか負けるか! 進むか撤退するかの二択なんだよ!! いつも!!
「はぁ、はぁ、はぁ……ウッ、具合悪くなってきた」
「先輩、果実水を!」
「いいや大丈夫さ……絶好調だ──!!」
『い、いった──! 来るか!? 来るか!? 来ないのか──!?』
「英霊の召喚ってこんなにやかましいものなんですか……?」
カルデア式だけです。ご安心を。
うわー、大変そうだなあ、と余裕ぶっこいて眺めるマーリン。その脛を蹴るフォウ君。対岸のテーブルで呆れた眼差しで見てくるローブの少女アナちゃん。背中をさすってくれるマシュ。そんな面子の前で現れたガチャ結果は──
「──やぁやぁ、こんにちは。皆の妹、楽園からやってきたレディ・アヴァロンだ。もちろん真名だとも。しばらくの間よろしくね?」
「ブフォーウ!?」
「フォウ、フォォア──!?」
「マーリンさん、盛大に椅子から転げ落ちました! フォウさん、ぐるぐると駆け回らないで……! 落ち着いてください!」
「……マーリンが増えました……悪夢です……」
そうそう、召喚事故ってこういうことよ。
◆ ◇ ◆
南の密林地帯を調査せよ!
さてウルク滞在から一週間後。予想より早い段階で王様の命のもと、マーリンズ&アナと私、マシュ、ほか同行サーヴァントで樹海探索に行くことになった。
ちなみにエルキドゥはウルクにお留守番。今朝も銀狼姿でジグラットに来る役人さんらにモフられていた。せっかくの里帰りだしゆっくりしておいでと言ったら足元をぐるぐるされた。ははは、どういう意味? まったく分からん。
ともあれ──固有結界並の異世界、と称されるほどの濃いエーテルで満たされた密林はものすっっっごく暑かった。語るのが大好きなマーリンたちさえも口を閉じるほどに。
やがて毛皮の奴が現れた。
「ニャはははははははははは!! ここで会ったが百年目、よく来たな平野のヘナチョコども! スキップしたい? RTAしたい? だがそんなコトはこのジャガーマンの目が黒い内は許さねぇ──!! ここで理不尽選択肢→タイガー改めジャガー道場にホールインワン!! 再走必至の恐怖を味わうがいい──!!」
「──ほう。他所でも変わらず戦士としての気概に溢れているな、ジャガー。オレの眷属ならそれでこそだ。しかし一つ、口にせざるを得ない疑問がある。──なぜオマエがここにいる?」
「ニャ?」
ジャガーマンが死に際に発するようなしわがれ声を出した。
今回カルデアからの同行サーヴァントは金の長髪に黒スーツ、サングラスと全方位に物騒な感じの兄貴、アサシン・テスカトリポカ神である。
「ば、バカニャ──!? 色々と反則まみれなカルデアのマスターよ、汝の召喚事故にテスカんは含まれていなかったハズでは──!?」
「あ、いや、こちら、特に事故なくカルデアで召喚されたテスカトリポカ神です」
「因果が事故っとるぅぅ──!! あ、ちなみにアタシはいるの?」
「いないっす。どうやらまだ運命力が足りないようで……」
「足りすぎてるが故に、かッ……!? テスカんだけズルくない!? フーラーイーンーグー!!」
「何がフライングだ。むしろオレが足早に来るのは当然だ」
ポン、とテス神の片手が此方の頭に乗せられてくる。
──凄まじい危機感を覚える。戦慄!
「誰よりも早く『終わり』のために戦う戦士を、オレが放っておくわけがないだろう?」
そこでジャガーマンがギャグ顔を消し、アステカコントが停止した。
ちなみに嵐のような勢いとテンポなので、会話に参加している面子以外は若干置いてかれ気味である。
「あのぅ……つかぬ質問ですが、覚悟ガンギマッてます?」
「なにを今さら言ってるんだこのジャガーは?」
「愚問でした。すみません。でも大体分かりました。このジャガーこれより傘下に入りましょう。それでは皆さんをククルんのトコにごあんなーい!」
「息を吸うように仲間に入ってきたなこいつ……」
流石ジャガー。やはりタイガー。そこまでにしておけよ。
◆ ◇ ◆
「ハァーイ! こんにちは、初めまして! 特に顔を合わせたこともないのに、私の太陽神殿に一直線とかトキメキマース! 実に私好みの勇ましさ! ──けど」
明るく出迎えてくれた密林の女神──ケツァル・コアトルの目付きに鋭さが帯びる。
理由など言うまでもない。
「テスカトリポカ。なぜアナタがここに? 彼女たちに私のことを伝えなかったのですか?」
「いいや? オレたち全員、オマエがいると分かった上で足を運んだぜ? オレとしても、折角だからオマエの顔を見ておこうと思ってな。ここから殺し合いに発展するか否かは──マスター次第さ」
いきなり試練を与えないでくれますか?
……といってもな。
「うーん……私としては密林の調査をするつもりだっただけで、なんか勝手に出てきたUMAについていったら女神様が待ち構えていて、かといってここで引き返しても味方に撃ち殺されそうで迷うなぁ……」
「アレ? アレレ? 地獄への道は善意で舗装されていた……ってコト!?」
青ざめ始めるジャガーマン。
マーリンズは揃って既に成り行きに任せる構えを取っている。マシュとアナは愕然としている。私は私でリカバリーを超高速で組み立ててている。
おのれジャガー。
ノリに任せたらダメだな人生って。
「どうしよう……ここまで来てノー挨拶っていうのも礼儀知らずだろうし、しかし貴重な戦力と殺し合うのもな……」
「ノープラン!? ノープランで突入してしまったのねアナタ!?」
「ちょっと仲間内で話し合いたいのでタイム貰ってもいいですか?」
「ど……どうぞ」
良し、許可を得たので一瞬で皆で顔を突き合わせて話し合いを始める。
「さぁ! どうする!! ちなみに私はどうにかコアトルさんを仲間に引き入れたいです以上!!」
「正気かマスター? オレとヤツの気の合わなさには察しぐらいつくだろう? このまま戦いに入れば間違いなく死者が出るぞ」
「向こうの神格の高さの元は間違いなく、あっちにある神殿によるものだろう。誰かが階段をあがって、ケツァル・コアトルの力の源を破壊するしか撃破方法はないと思うよ?」
「それこそ来た意味がない。納得してもらわないと……」
「……そもそもなぜケツァル・コアトルのライバルであるテスカトリポカ神を連れてきたんですか。エレシュキガルからの情報提供で、真名は知り得ていたはずでは?」
アナの疑問はもっともだ。
しかしだね……
「いや、宿敵と契約してるのを黙ったまま仲間になってとか、なんか詐欺くさいし。気が引けるし」
「……」
うーん、会議が行き詰まってしまった。
別にここから戦闘に入ってもどうにかなるだろうけど、その場合、間違いなく誰か犠牲に……うごごご。
「……だ、そうだぞトリ公。どうだ、仲間になりたくなってきたか?」
「くっ……! ア、アナタ、さては分かっていてついて来ましたね!? 私への嫌がらせに余念がない!! これだから……!!」
「ああ。オマエのドストライクゾーンだろ、こいつ。かといってオマエは話し合いで
「……もう空を飛ぶしか……でもなぁ、二番煎じは芸人としてどうかと思うんだよなぁ……」
「ははははは! 凝り性もここまでくると難儀だな。いいだろう、手を貸してやる。その命、オレに預ける覚悟はあるか?」
……どうやらテスニキには策があるらしい。
ならば迷う必要はない。
「良し、わかった。何をすればいい?」
「──!? ちょ、アナタ本気ですか!?」
驚愕するコアトルさんを尻目に、ひそひそとポカニキから作戦を伝えられる。
うーん、確かに決意と勇気がいる一戦だ! だが乗った!
「オッケー、それで。カモン、サーヴァント! 嫁ネロ! ジャンヌ先生!」
「余の出番だな! 承った!」
「くっ……締め切りが近いのに……!」
「理性あるジャガーは流石にツッコまざるを得ない。あの、そこのお姉さん。なんで水着なの?」
「
「……私の権能を潜り抜けるサーヴァントを選抜していましたか。随分と彼女に肩入れするのね、テスカトリポカ?」
「こればかりはカルデアに召喚されたサーヴァントにしか分からんよ」
「?」
なんか今の一言、妙なニュアンスが含まれていた気がしたが──まあいい。とにかく、今はケツァル・コアトルさんをどうにかすることに注力するのみッ……!!
◆ ◇ ◆
「──
いや、ただのRTA走者です。
あとマジで今回は命懸けでした。
無事ウルクに戻ってくると、ロケットみたいに飛んできた銀狼ドゥを受け止めながら王様への報告会が始まる。
ところで向こうの天井で鎖でぐるぐる巻きにされている女神はなんです? 何? 気にしなくていい? はい。わかりました。スルーしますね(歴戦のマスター)。
遠征の土産は、ケツァル・コアトルの太陽神殿近くにぶっ刺さっていたマルドゥークのでかすぎる斧、そして三女神同盟が一柱、ケツァル・コアトルという戦力だ。
「テスカトリポカ神の作戦だったとはいえ、肝が冷えました……まさかマスターがケツァル・コアトルさんに背後から組み付き、そこを私たちで集中砲火するなんて……」
「オレとしては納得がいかん。なんで当たらねぇんだ、一発も……」
「最後はマシュ嬢の突貫との合わせ技だったねぇ。実に見事なバックドロップだった……」
組み付きというか、私はずっと振り落とされないようしがみついていただけだ。
かなり本気で斬りかかってくるネロとジャンぬとアナ!
明後日の方向に飛ぶ弾丸!
大盾を振りかぶってくるマシュの威圧感!
人間大好きお姉さんコアトルさんは私を守らんと奮戦!
ずっと一人楽しそうなテスカトリポカ神!
敵も味方もトラウマモノ。ここが地獄か。
そんな中、マシュ突貫の一撃! ──その衝撃で勢い余って決め技。……まさか女神にあんな技を仕掛けることになろうとは。
そこまでいったところで、ケツァル・コアトルさんが音を上げた。「決意も覚悟も分かったので降参デース……!」と。
ちなみにテスニキはバンバン銃を撃っていたが掠りもしなかった。クソエイムは健在です。
「……早いな。戦力が揃うのが……
玉座で王様が悩み始めている。たぶんその未来、外れるよ。
◆ ◇ ◆
ウルク北壁の向こう。ニップル市に取り残された民間人の救援作戦。
原作においては作戦が始まる昨夜の内に、全ての市民がキングゥ率いる魔獣たちによって拉致されてしまったが、その前に市民たちをウルクへと避難させることができた。
「大統領ビーム!!」
「いやー、盛大だねぇ。魔獣たちが雷撃を恐れ始めた。まさに地球上の環境トップの大統領、だ」
「つべこべ言ってないで手と足を動かしなさい! キャスターは私に魔力を回すのよ!」
「私、プリテンダーだけどね。はいはい、
「宝具、張ります! 皆さんは早く安全地帯に!」
戦線では主に大統領とテスニキを主軸に、避難民に近付く魔獣の処理が行われている。
U所長はまぁ、聖杯転臨の恩恵もあってか自分で魔力を生成しての広範囲雷撃が。もう一人の主力のテスカトリポカは、レディ・アヴァロンとアルキャスによるお馴染みのアーツバフNP回転スタイルで宝具を連発していた。頼もしい。アルキャスもアルキャスで対粛正防御で市民を守っている。
「……普段の戦闘スタイルとだいぶ違うから不安だったけど……このカルデア、かなり過剰戦力?」
「あはは。そりゃあ聖杯をもらった子が何人もいるからねぇ」
「まさか古代メソポタミアにまで駆り出されるとは思わなかったぞ……なんだあの夢火とかいうものは! 作家を休ませる気がないのかないんだなこの鬼め!!」
「カルデアで唯一聖杯20個食った奴がなんか言ってるよ」
「食わせたの間違いだろうッッ!!」
キレながら
「さて、こっちから来る連中は大体片付けたぜマスター。──で、オレの勘では今日が踏ん張りどころと見たが」
テスカトリポカニキの言う通り。
今日──今日で、この第七特異点の人理定礎を修復する。初日にキングゥを撃破できなかった甘さのツケを今日支払う。あの日、少しでもウルクを楽しみたい、などという欲がなければ、もう第七特異点は修正されていた。
だから早く。一日でも早く。
特異点での犠牲者が悪戯に増える前に、感動的なドラマも伏線も、全てを踏み倒して駆け抜ける──
「先輩! こちらの避難誘導、完了しました!」
「お疲れ、マシュ。……さて、それじゃあ作戦は大体終わったが──」
「フォゥウ──!!」
「……来たか」
フォウ君の危機察知により、この戦線に出てくる相手を察する。
空から飛来してきたのは──エルキドゥと瓜二つの存在、キングゥだ。
「……まったく、小賢しいにも程がある。まさかこの時代に来て数日で三女神同盟を破却させ、この市の住民まで避難させるなんて。こんなことなら出会ったあの日、たとえ刺し違えてでも殺しておくべきだったな」
その紫の瞳が戦場を一瞥する。
「あの同位体は? まさか、どこぞで魔獣の餌にでもなったとか?」
「ああ、呼べば来るよ。続き、やる?」
「……へえ。随分と自信があるんだね。カルデア式の霊基強化か……多くの特異点を踏破してきた実績を誇示しているつもりかな。残念だけど、そんな足掻きは母さんが目覚めれば水泡に帰す。今のうちに降伏を推奨するよ。そうすれば悪いようには──、ッ!?」
「おお、派手にカッ飛んでいったな。あっ」
『ス──イ──シ──ダ──ッ!?』
遥か遠方。
大斧が空を横切っていったかと思えば、ケツァル・コアトルの大絶叫が聞こえてきた。
ポカニキも片手で目を覆っている。悲しい事件だ……マーリンに罪ありき……
「レディ・アヴァロンさん、弁護側の主張は?」
「特にないかな! でも私に飛び火したら守ってね、お姉ちゃん!」
「努力はします……」
あと姉ではない。
「──待て。キミたち──キミたちは、まさか陽動──!?」
「まぁね。絶賛ただ今、別動隊のアサシンズがそっちの大元を殺ってます」
「ッ──!!」
実際のところは陽動にして本命だ。
魔獣戦線動くところにキングゥあり。そしてこの時代を乱す聖杯はキングゥが持っている。
鮮血神殿に向かったのは、マーリンとアナ、それにカルデアから召喚したアズライールさんと、霊基がムーンキャンサー化した両儀さんだ。
軽くパーティメンバーの限界数を突破しているが、そこはカルデアの電力で賄ってもらっている。これぐらいの無茶を通さなきゃ不可能は踏破できん。優秀なカルデアスタッフに敬意を。
向こうは両儀さんが宝具を二、三発撃てばなんとか追い込めるだろう。トドメにはやはり、アナの存在が必要不可欠だろうが。
しかし化物は人間に倒されるのが摂理。
だからもしかしたら向こうの暗殺作戦は失敗するかもしれない。だが、少なくとも此方で片を付けるまでの時間を稼げればいい。
──タイムは命より重い。RTAの原則にして鉄則である。
ここまで来たんだから全速でいかせてもらうッ……!!
「パーティメンバー交代。後衛をアルキャス、オベロン、大統領。前衛にマシュ、アンデルセン、そして──エルキドゥ」
令呪が熱を持ち、カルデア式の召喚術が起動する。
パーティから外れた面子はカルデアへ送還。後衛には霊体化したメンバーが、前衛には実体化し、一瞬で召喚されたメンバーが並び立つ。
「おまえたち……!!」
「悪いが、足止めを食らっている暇も、君の成長を待つ時間もないんだ」
正面、敵を見据える。
数多の微小特異点に赴き、万端に準備してきたのはこのためだ。
人理が懸かっている。そしてそれ以上に、人の命がかかっている。
確かにこれだけの戦力なら正面から
あの悲劇を。あの災害を。この大地の蹂躙を、許すワケにはいかない。
知っている者ならば。
「ウルクの地を、滅ぼさせはしない」
──それがこの第七特異点に来たカルデアのマスターとして、私が成すべきことだ。