かなり久々なのでクオリティお察しです。
―――sideカナタ―――
翌日。現在時刻、午前8時8分。
昨晩、織斑先生から伝えられた8時10分ギリギリに職員室前に無事にたどりつくことができた。
……無事に、というのは、結局2人とも道を忘れて迷ったからだ。昨日職員室の場所を聞かれたときに「一応分かる」と答えたが、結局二人して忘れてしまっていた。おかげで校内をさまよう羽目に。
……おかげというのも、おかしい気はするが。
「良かった、なんとか間に合ったね……」
シャルルがホッとした表情を浮かべてこちらを見る。
「ああ、ホントだぜ……安全策で早めに出てきてホントに正解だった……」
安全マージンはゲームじゃなくても大切だなと改めて痛感。
「地図とかあるといいんけどなぁ……」
「あ、それは確かに欲しいな。後で織斑先生に聞いてみるか」
「そうだね~、そうしてみようか」
……というような雑談をシャルルと続けること暫し。職員室の扉が開いて織斑先生が……
「……あれ?」
シャルルが予想外、といった声をあげる。俺も全く持って同感だ。何故なら、職員室から出てきたのは、織斑先生ではなく、別の女性だったからだ。
「えっと……貴方達が東雲君とデュノア君ですね?」
「あ、はい、そうですけど……」
その女性…..緑髪で胸が大きいということは今は置いておこう……とにかくその女性は、俺達のことを知っているらしい。まぁ学園の関係者だから知っていて当然か。
……それよりも、だ。
「……ね、ねぇカナタ……なんでこの人、僕達を見て満足そうな顔してるんだろう……?」
シャルルが小声で聞いてくる。……そうなのだ。この女性、なんか俺達を見た途端、大きく頷いて、満足そうな表情を浮かべているのだ。そのままトリップしている様子。
そして俺の中で膨れ上がるいやな予感。
「……いや、まさか……な」
「? 何か予想でもついたの?」
「いんや全く」
とりあえず誤魔化しておく。それにそろそろこの女性が誰か知りたいからな。トリップしてるとこ悪いが、現世に帰還していただくとしよう。
「それで、貴女は?」
「……あ、はい! 私は貴方たちの所属する1-1の副担任の山田 麻耶といいます。これからよろしくお願いしますね」
「あ、副担任の方だったんですね! こちらこそよろしくお願いします。……ほら、カナタも挨拶」
「お前は俺のおかんか! ……よろしくっす」
ちょっと遅れたら注意されてしまった、何故だ。
「はい! お願いしますね~。では、案内しますのでついてきて下さいね」
「わかりました。…..カナタ? どうしたの行くよ?」
「ん? おお…..」
ふっと山田先生の名前が回文だなということを思いついてたら、その間に置いて行かれかけてた。急いでシャルルの横に追いつく。
「危ねぇ……」
「突然ぼーっとするからだよー」
「まぁちと考え事をな…..」
(あまりにくだらなすぎて話す気はあまりおきないがな)
「そっかー。……ねぇカナタ? さっきの『おかん』ってどういう意味なの? 知らない単語なんだけど……」
ありがたいことにシャルルは深くは突っ込まず、話題を変えてくれた。まぁ確かに「おかん」は外国にはない単語かもしれないな。
「それはな、『母さん』って意味だ」
ま、家族関係の言葉なんてくそくらえだが。そう言ってふと横を見やると、シャルルがいない。
「……おう?」
振り返ると、俺のすぐ後方で驚いたまま固まってるのが見えた。
「……シャルル?」
「………………」
「……おーい? シャルルー?」
「……あ、カナタ?」
「どうかしたか?」
「え!? ど、どうもしてないよっ?」
「いや、そうは見えな……」
「……二人ともどうかしましたか~~?」
俺達が立ち止っているのに気付いたのだろう、山田先生が少し前方から声をかけてきた。
「ほ、ほら、山田先生も呼んでるし、行こっ」
「あ、ああ……」
(母さんに反応したのか……?)
何やらシャルルの琴線に触れたみたいだった。
-ーーーーー
「……と、いうわけで教室前です」
「誰に向かって喋ってるのカナタ?」
気にするな、とシャルルに告げて教室のドアのほうを向く。まぁさっきの空気感のぶっ壊しを狙ったが、シャルルは何もなかったかのような反応を見せた。
現在、山田先生が教室の中に入って少し話をしているところだ。合図があったら入るように、と言われて要る俺達は絶賛待機中というわけだ。
「んー……」
「どうしたの? 緊張でもしてる?」
「いんや、そういうわけじゃないんだがな……」
というか今更命の危険がないこんなことで緊張することはない。よっぽどキュウビやらタカシを相手どったときの方がヤバいに決まってるからな。まぁそんなことは言えないけども。
「そっか。……でも、教室に入ったらカナタも緊張すると思うなぁ」
「どうしてだ?」
「入ればわかるよ。それ以上は秘密~♪」
そう言うとシャルルは含み笑いを残して、強制的に話題を終わらせてしまった。
「なんだよそれー」
中にヤバい奴でもいるってのか? 織斑先生以外にも。
……ないな、ないない。
『……そして今日はですね、なんと転校生がいます! しかも2人も!!』
山田先生の声に続き、教室から漏れ聞こえてくるどよめき。
「……お、来たか?」
「そうみたいだね」
『はい、それでは入ってくださーい』
よっしゃこういうのは初見の印象が大切だからちゃんとやんないとな。
教室のドアを開け、中に顔を向け……
(……う)
思わずドアを閉めそうになった。なんとか我慢して、そそくさと教卓の脇に立つ。
俺を出迎えたのは、こちらを見つめる視線の数々。好奇の視線、興味の視線、不信の視線、敵意の視線......たくさんの視線が俺達に注がれていた。
(シャルルの言ってたことが何となく分かったぜ……)
緊張とはなんとなく違うが、この視線の数には気圧されるものがある。
「はい、それでは東雲君から自己紹介をお願いしますね~」
(げ、俺からかよ……って弱気になってんなよ俺!)
自分に喝を入れる。緊張はしてない。アがってもいなさそう。
(よし、これなら……)
「……しにょっ」
「「「「「………………」」」」」
クラス内が凍り付いた。
……落ち着け俺ほら平然を取り繕え、まだだたかがメインカメラをやられただけだ、違うたかが一回噛んだだけだ……っ!!
「……し、東雲カナタです。IS学園が開発した新型じn……えーと、新型ISのテストパイロットになりました! 男女問わず……って男ほぼいないんだっけな……まぁとにかく仲良くしてくれるとうれしいです、よろしくお願いします!!」
そう言い切り頭を下げる。……うん、焦って一瞬ボロが出掛けたが、まぁセーフだろう。え、噛んだ? 何それおいしいの!?(必死)
「はい、東雲くんありがとうございました。では続いてデュノア君お願いしますね~」
続いてシャルルが自己紹介をする。
「えっと、シャルル・デュノアです。フランスから来ました。こちらに僕と同じ男性操縦者がいると聞いて、本国より転入したんですけど、僕も含めて3人になってるとは......。ま、まぁ、カナタ……東雲君とも同じく仲良くしてくれるとうれしいです。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げるシャルル。
「はい、デュノア君もありがとうございました。では……」
「せ、先生……」
「はい、どうしましたか鷹月さん?」
鷹月と呼ばれた女子生徒がおずおずと手を挙げ、恐る恐るといった様子で疑問を口にする。
「あの、男……? しかも2人も……?」
まぁやっぱ男子、ってだけで驚かれるんだな….と思う俺の脇で山田先生が爆弾を落とす。
「はい、2人とも男子です! ……そして、デュノア君は待望の総受け候補です!!」
「しまった、こいつやっぱ腐ってやがった!!!!」
山田先生、笑顔でサムズアップ。見事に俺の嫌な予感が的中した。
「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉぉ………………」
「そこどよめくところか!? このクラス多いのか腐女子!!!」
「か、カナタ......総受けって……?」
「それ絶対知らない方がいいやつだから!」
「あ、デュノア君、総受けというのはですね......」
「言わせねぇよ!? ......ってどっから片づけりゃいいんだよこれ!!!」
我○家風のツッコミを入れたところでやっとボケが止まる。いきなり俺のキャパシティを超える量をぶっこまれてもうどうしたものかさっぱりだ。
(ってかそもそもボケじゃなくて素なのかもしれないという……)
いきなり腐女子降臨なさったせいで初っ端からカオスすぎて笑えません。しかも、織斑が「またか」とでも言いたげな呆れの表情を浮かべているところを見ると、ちょいちょいあることなのかもしれない。
......是非、俺をネタにするのはやめていただきたいところだ。織斑を差し出すから。
「….カナ×シャル?」
「いや逆でしょ。ああ見えてデュノア君が実は肉食….いい!!」
「えー私は一×カナがいいと思うよー」
「いやいや、一×シャルこそスタンダードで至高……」
「シャル×一じゃない?」
「「「「それもまたよし」」」」
「こ、これどういう状況……?」
「いきなりネタにされまくってんなぁ俺ら!!!!」
手遅れだった。あとごめんシャルル、もうお前の問いに答える気力もねぇ……。
「はい、みなさんお静かに~。ちなみに私はカナ×一がいいと思いますよ。それでは……」
「ちょ、ちょっと待ってください先生!!」
え、まとめそれなの? とつっこむ気力もない俺の真正面で織斑が立ち上がる。
よし是非この状況を打開してくれ……
「男子が二人も入ったってことは部屋割りどうなるんですか!?」
(そっちかい)
見事に当ては外れた。
「順当に東雲君とデュノア君が同じ部屋になっていますよ?」
「うわ、マジかよ……」
頭を抱える織斑。男子3人で俺とシャルルが同じ部屋ってことは、織斑はどっかの女子と同室、ってことだもんな。いろいろ大変なんだろうなぁとか適当に思っておく。ラノベ主人公属性め、苦労しやがれ。あ、カナ×シャルが捗るわぁ~、とか言ってるやつは放置の方向で。
そういやさっきから窓際の黒髪ポニーテールの女子が織斑の方をガッツリ睨んでるんだが、あいつが織斑の同居人なのかね?
(ま、俺には関係のないことだ)
人の関係にはあんま踏み込まないのが俺の考えなのでね。
……え? ギル? あれはほっといたら無謀にもルフス・カリギュラに一人で吶喊してただろうが。止められる人の死は止めとかねぇと。
しばらくして顔をあげた織斑の目はなんか必死だった、そこそこ追い込まれているらしい。
「そ、そうだ、千冬姉に直談判して……」
ガラッ ビュン!! ガツン!!
「頭がぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!???」
「織斑先生と呼べと何度も言っているだろう、馬鹿者が」
パシッ、っと出席簿をキャッチしながら織斑先生が教室に入ってきた。
……あ、ありのまま起こったことを話すぜ!!突然教室の前方のドアが開いたかと思ったら、そこから出席簿が飛んできて織斑の頭に直撃。その後ブーメランのように入ってきたドアの方に帰っていく出席簿を何時の間にかあらわれた織斑先生がキャッチしつつ部屋に入ってきやがった!! な、何を言ってるか分からねーと思うが、俺も何が起こったか分からな……もういいかこのネタ。ありのままでレリゴーでもよかったかな。
「すいません山田先生、またHRをやってもらって。まさか朝一でもう一人の転校生が来るとは......」
「あ、それで職員室にいらっしゃらなかったんですね……って転校生!? もう一人も今日来たんですか!?」
「来てしまったので仕方ないでしょう……同時に3人は前代未聞ですが」
織斑先生の言葉を聞いて教室中がざわめく。どうやら相当珍しいことのようだ。
「静かに!! ……まぁタイミングもいいし、ここでついでに紹介させてしまう。入れ、ボーデヴィッヒ!」
「はっ、教官!!」
「「「「「教官????」」」」」
クラス中を疑問符が飛び交った。もちろん俺とシャルルの頭の上にも疑問符が湧いた。
そしてドアから入ってきたのは、
(……また濃ゆい奴が来たもんだ......)
まだ少女といえる外見をもった子。銀髪赤眼、小柄な体躯。ここまでなら少女らしいといえるが、左目には眼帯をつけており、制服はターミナルで作成可能だった、古式の軍人風の、ボトムを腿の部分が膨らんだニッカ―というタイプに改造している。リンドウさんがあんなのをはいていた記憶がある。引締められた表情は「可愛げのかの字もない。そして何よりも彼女の纏う、その鋭利で冷たい気配。……明らかに軍人、といったその少女。確かに教官とか言いそうな雰囲気ではあるが……さて、教官とは?
「……教官はやめろと言っただろう。もう私は教官でもないし、お前も一般生徒だ」
「はっ、申し訳ありません!」
織斑先生が教官っぽいな、分からんけど。そしてボーデウィッヒは織斑先生に敬礼をした後、クラスの方に向き直って一言。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「「「「「............」」」」」
「………………」
「「「「「……………………」」」」」
「..................」
「……あ、あの、他には……?」
「ない」
「そ、そうですか......」
山田先生、轟沈。発言の続きを待っていたが、全く意味のないことだった。ボーデヴィッヒはそれを意に介した様子も見せない。そして何を思ったか、織斑にツカツカと歩み寄り、その席の前に立った。
「……貴様が、織斑教官の弟か?」
「あ、ああ……そうだg」
パァン!!
「う?」
ボーデヴィッヒが、織斑の頬をビンタした。
「なっ......」「え!?」「ほぅ……?」「……はぁ……」
最後は織斑先生のため息だ。
「私は認めない……貴様が、あの人の弟であるなど、認めるものか!!」
(……ふむ? 織斑に恨みでもあるのか?)
「……は?」
だが、織斑はぽかんとした表情を浮かべている。あいつにもビンタされた理由が分からないようだ。しばらくして正気を取り戻したのか、ボーデヴィッヒに食って掛かった。
「……い、いきなり何するんだよ!!」
「ふん!」
織斑をガン無視し、勝手に空いた席に座るボーデヴィッヒ。……あそこまですごいコミュ障見たことねぇぞ。死初対面で人殴るとか、俺には真似できませんわー。
そこへ織斑先生が着席するよう促してきたので、俺とシャルルも空いてる席に座る。まあ隣だ、助かった。俺達が着席したのを確認して先生が口を開く。
「あーまぁ、今のは忘れろ。さて、今日から本格的な実践訓練を開始する。訓練機ではあるが、ISを使用しての授業だ。各自、気を引き締めるように! また、ISスーツは各自のものが届くまでは学校指定の物を使用すること。忘れたものは指定水着で受けてもらうぞ。それもないものは……下着で構わんだろう」
全くもってよくねぇよ。男3人いるだろうが。ほぼ全員そう思っただろうな。
「おっと、言い忘れたが、今日は2組と合同授業だ。遅れないようにしろよ。あと、織斑は東雲とデュノアの面倒を見てやれ。では、解散!!」
そう言って織斑先生が手を叩く。……んじゃ、とりあえず先生が作ってくれた機会を利用して織斑に近づいてみますかね……
「東雲、デュノア、急いでここを出るぞ!」
……と思ってたら向こうから話しかけてきてくれた。
「自己紹介くらいさせてくれよ。俺は......」
「女子が着替え始めるんだよ!!」
「……それは気になrいただけないな」
「本音漏れてるぞ……とにかく急げ!!」
「わ、分かったよっ」「うぃー」
織斑に先導されて急いで教室を飛び出す。しかし、やけに焦っているように見えるな……何かまずいことでもあるのか?
「……あ、転校生発見!!」
「しかも男子3人一緒にまとまってる!!」
「きゃー!!ワイルド系!!」
「金髪の子可愛い……!!」
「者ども!! 出会え出会えぃ!!!」
「……なんぞこれ」
「しまった、見つかったか!!」
なんか突然進行方向に人が立ちふさがった。しかもたくさん。
「いいか、あれに捕まると質問攻めにあって授業に遅刻した挙句、千冬姉の出席簿ブーメランの餌食だ! なんとしても突破するぞ!!」
あれ出席簿ブーメランっていうのか。まんまだな。閑話休題。
とりあえず突破か……俺一人なら余裕だが、2人をどうするべきか。
「織斑!! シャルルだけならなんとかできるか!?」
「あ、ああ!! けど、東雲はどうすんだ!?」
愚問。ゴッドイーターなめんな。言えないけど。
「こうすんだ……よ、っと!!」
「な、う、上!?」
全身のばねを使って驚く女子達の上を飛ぶ。……だがそれだけでは飛距離が明らかに足りない。
……と、いうわけで……
「三角飛びの要領で、と……」
左側の壁を右足でひねりをかけながら蹴りつけてさらに飛ぶ。……だが、まだわずかに足らない。なんでこいつらこんなに来てるの授業はどうした? と思わなくもないが、突破が先決だ。
あともう一個残ってる足場……天井に左足をかけて全力で蹴りつける。さっき壁を蹴った時にひねりを加えたのは、ここで天井に足をつけられるようにするためだ。
「「「「「嘘ぉ!!!???」」」」」
(まぁ身体強化されてるからこれくらいはな)
女子達の壁のないところに降りる。これで俺の突破は成功だ。
「織斑!! 下で待ってる!!」
だが返事がない。
「あ、何時の間にか窓の下に!!」
「え、じゃあ灰色の髪の子は囮!?」
「誰か見てなかったのー!?」
……どうやら、うまく逃げたようだ。まぁ良しとしよう。それよりも早く織斑に追いつかねば。そう思って再びダッシュする。出席簿ブーメラン食らいたくはないしな。
(……あ、俺よく考えたらISスーツ持ってねぇわ。……どうすりゃいいんだ?)
……例え遅刻しなくても、あの痛い奴を食らいそうな気がしてきた……。
近況報告はブラブレのほうでしたいと思います。
まだ書けてないですけどね……。
では次は実習からです。
感想、指摘等ありましたらよろしくお願いします。