衛宮士郎モドキは英雄にしかなれなかった 作:曇らせはいつかガンにも効くようになる
「ここが、ブラックマーケット…………」
「わあ☆すごい賑わってますね?」
ブラックマーケットに手掛かりを求めた対策委員会。彼女らと共に、オレとマスターはブラックマーケットに訪れていた。
「本当に。小さい市場を想像していたけど、街ひとつぐらいの規模なんて。連邦生徒会の手が及ばないエリアが、ここまで巨大化しているとは思わなかった」
「場所によっては、ここ以上に大規模なブラックマーケットも存在している。それだけ、居場所のない生徒は多いということだな」
「うへ~そうんだね。やっぱ学区外には、色々あるんだね~」
『皆さん、油断しないでください。そこは違法な武器や兵器が取引される場所です。何が起こるか分からないんですよ。何かあったら私が………きゃあっ!?』
辺りに銃声が響く。恐らく、前方で戦闘か何かが起こっているのだろう。
様子を見ようと、銃声が鳴った方に進んでみると――――――――
「待て!!」
「う、うわああ!まずっ、まずいですー!つ、ついてこないでくださいー!!」
白い制服の生徒が、不良たちに追われている場面に出くわす。
あの制服は………三大高の一つ、トリニティのものだろう。
「わわわっ、そこどいてくださいー!!」
トリニティ生が、勢い余ってシロコと衝突する。
「い、いたた………ご、ごめんなさい!」
「大丈夫?」
転んでしまった彼女に、シロコが手を差し伸べる。
「なわけないか、追われてるみたいだし」
「そ、それが…………」
「何だおまえらは。どけ!アタシたちはそこのトリニティの生徒に用がある」
「あ、あうう………わ、私の方は特に用はないのですけど…………」
『思い出しました、その制服……キヴォトスいちのマンモス校のひとつトリニティ総合学園です!』
「そう、そしてキヴォトスで一番金を持っている学校でもある!だから拉致って身代金をたんまり頂こうってわけさ!」
聞いてもいないのに、意気揚々と計画を語り始めるチンピラ。
「拉致って交渉!なかなかの財テクだろう?くくくくっ」
「どうだ、おまえらも興味があるなら計画に乗るか?身代金の分け前は…………ん?」
チンピラの話が終わる前に、ノノミとシロコが持ってくる銃でチンピラを殴り倒す。
「うぎゃあっ!」
「悪人は懲らしめないとです☆」
「うん」
「あ…………え?え?」
突然のことに困惑しているトリニティ生。
落ち着きを取り戻し、こちらに礼を言う。
「あ、ありがとうございました。みなさんがいなかったら、学校に迷惑をかけるところでした…」
「話の前に、ここを離れるとしよう。マーケットガードが嗅ぎ付けてくるかもしれない」
「あっ!それもそうですね!一旦、ここを離れましょう!!」
「「???」」
ブラックマーケットに詳しくない対策委員会と先生は頭に疑問符を浮かべている。
それにしても、マーケットガードのことも知っているとは……この少女、ヒフミは、随分ブラックマーケットに詳しいようだ。そうは見えないが、ブラックマーケットに入り浸っている不良生徒なのかもしれない。
一度その場を離れ、会話を続ける。
「えっとー、ヒフミちゃんだっけ?それにしても、トリニティのお嬢様が何でこんな危ない場所に来たの?」
「あ、あはは……それはですね………実は、探し物がありまして…………もう販売されていないので買うこともできない物なのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて…」
「もしかして………戦車?」
「もしくは違法な火器?」
「化学兵器とかですか?」
「えっ!?い、いいえ………えっとですね、ペロロ様の限定グッズなんです」
「ペロロ?」 「現状グッズ?」
あまりにも予想と反した探し物に、疑問を浮かべるセリカとシロコ。
「はい!?これです。ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定のぬいぐるみ!限定製品で100体しか作られてないグッズなんですよ。ね?可愛いでしょう?」
説明しながら、スマホの画面をこちらに見せる。
そこには、口にアイスクリームを突っ込まれた、鳥のようなキャラクターのぬいぐるみが。
な、なんだ……これは?今時の子は、こんなおぞましいものが好きなのか…………!?
「わあ☆モモフレンズですね!私も大好きです!ペロロちゃん可愛いですよねえ!私はミスター・ニコライが好きなんです」
「分かります!!ニコライさんも哲学的なところがカッコ良くて――――――」
仲睦まじく、お互いの推しについて語るノノミとヒフミ。
「………いやぁー何の話だか、おじさんにはさっぱりだなー」
「うん……私もよくわかんないなー。キヴォトスではこういうのが流行ってるの?」
「いや……オレにもさっぱり…………」
最近の流行についていけない3名。
「というわけで、グッズを買いに来たのですが、先ほどの人たちに絡まれて………みなさんがいなかったら今頃どうなってことやら。…………ところで、アビドスのみなさんは、なぜこちらに?」
「私たちも似たようなもんだよ。今は流通してないものを探しててさ~」
「そういえば、マーケットガードっていうのは?」
「ブラックマーケットの治安機関です。争いごとがあると、すぐに駆けつけてきて制圧するんです。だから、騒ぎを起こしたら、まず身を潜めるべきです」
「警察………みたいなものってこと!?そ、それはもちろん、認可されてないものなのよね!?」
「はい………そうです」
「ふ~ん、ヒフミちゃん、ここのことに意外と詳しいんだねー」
そう言って、何かを思いついたようにニヤリと笑うホシノ。
「えっ?そうですか?危険な場所なので、事前調査をしっかりしたせいでしょうか………」
「よし、決めたー」
「………?」
「助けてあげたお礼に、私たちの探し物が手に入るまで一緒に行動してもらうねー♪」
「えっ?ええっ?」
「わあ☆いいアイデアですね!」
「なるほど、誘拐だね」
「はいっ!?」
これ、やっていることさっきのチンピラとそんなに変わらないんじゃないか…………?
シロウは訝しんだ。
「誘拐じゃなくて、案内をお願いしたいだけでしょ?もちろん、ヒフミさんが良ければ、だけど」
「あ、あうう………私なんかでお役に立てるかわわかりませんが………アビドスのみなさんにはお世話になりましたし、喜んで引き受けます」
「よーし。それじゃあ、ちょっとだけ同行頼むねー」
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便利屋68事務所にて
電話の着信音がけたたましく鳴っている。
それを前に、険しい顔で立ち尽くすアル。
「アルちゃん、何してんの?電話に出ないの?」
「表情が暗い………もしかしてクライアント…………?」
「うわ、そりゃそんな顔にもなるわ。失敗したって報告しないとじゃん?」
苦悶の表情を浮かべながらも、ついに電話を手にとるアル。
「はい………便利屋68です」
そして、クライアントにアビドス襲撃作戦の失敗を伝える。
『ふむ、興味深い話だ。………ここまでの練習は拝見したよ。で、実戦はいつだ?』
「……うえ?あれが実戦だったんです………が…………。あ、いえ、何でもありません。も、もちろん実戦は直ぐにでも………という感じで………あ、えっと、一週間以内には…………はい」
もちろん、先日の襲撃が練習などという事実は無い。しかし、引けなくなったアルは、目を泳がせ、どんどん顔色を悪くしながら、一週間以内には実戦を行うと大口をたたく。
「!?」 「!!」
「ふふっ。はい、そうです。………お任せください」
そう締めて、電話を切る。
「………はあ」
「やつれたねぇ、アルちゃん」
「社長、一体どういうこと………?まさか、また戦うの?」
「………このクライアントは、私も詳しく知らないけど、超大物なのよ。………この依頼、失敗するわけにはいかないわ」
「だけどアビドスの連中、思ったより強かったじゃん。それに、あの「シャーレ」の先生に、シロウくんまでいるんだよ?私たちだけじゃ無理だよ。お金も全部使っちゃったしね。どう戦うのさ?」
「………融資を受けるわ」
「は?アルちゃんはブラックリスト入りしてるでしょ」
「違うわよ!私は指名手配されて口座が凍結しているだけ!」
「そうだっけ?…………あ、そうだった。風紀委員会にやられたんだよね」
「くっ、風紀委員会め…………ここまで締め付けられるとは思わなかったわ」
「中央銀行も、行ったところで門前払いだろーね」
「うるさい!他にも方法はあるんだから!」
そう言って、事務所を飛び出して行くアル。
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「はあ…………しんど」
「もう数時間は歩きましたよね…………」
「私ももう歩けないよぉ~」
「先生は、何時もの運動不足が祟っているんじゃないか?」
「う、うるさーい!」
図星をつかれたようだ。まぁ、普段のあの業務量だと、なかなか運動時間を捻出するのも難しいから仕方がないと言えば仕方ないが…………。
「あら!あそこにたい焼き屋さんが!」
「あれ、ホントだー。こんなところに屋台があるなんてね」
「あそこでちょっと一休みしましょうか?たい焼き、私がご馳走します!」
「えっ!?ノノミ先輩、またカード使うの!?」
「先生の「大人のカード」もあるよ~」
「えっ!?」
ナチュラルにマスターに奢らせようとするホシノ。さすがのマスターも、突然の支出の危機にギョッとする。
「ううん、私が食べたいからいいんですよ☆みんなで食べましょう、ねっ?」
「いや、オレは―――――――」
「それじゃあ、買って来ますねー!」
制止する暇もなく、屋台に走っていくノノミ。
オレは娯楽として食事を楽しむことは出来ないから*1、断ろうかと思ったんだが…………。
「もぐもぐ…………おいしい!」
「うう…………カロリーの固まり…………いや、今日はたくさん運動したからセーフッ!セーフだからッ!…………おいしい!」
「いやぁ、ちょうど甘いモノが欲しかったところだったんだー」
「あはは…………いただきます」
「ん。はい、衛宮も食べて」
「ああ、ありがたく頂こう」
若干一名、明日の体重計を恐れながらも、仲良く甘味を楽しむ。
「アヤネちゃんには、戻ったらちゃんとご馳走しますね。私たちだけでごめんなさい」
『あはは。大丈夫ですよ、ノノミ先輩。私はここでお菓子とかつまんでますし…………』
「しばしブレイクタイムだねー」
たい焼きを食べ終え、一度話し合うこととなった。
「ここまで情報がないなんてありえません…………妙ですね。お探しの戦車の情報………。
絶対どこかにあるはずなのに、探しても探しても出てきませんね………。販売ルート、保管記録……すべて何者かが意図的に隠しているような、そんな気がします。いくらここを牛耳っている企業でも、ここまで徹底してブラックマーケットを統制することは不可能なはず…………」
「そんなに異常なことなの?」
「異常というよりは………普通ここまでやりますか?という感じですね……。ここに集まっている企業は、ある意味開き直って悪さをしていますから、逆に変に隠したりしないんです」
………となると、そもそもあの戦車は
裏で糸を引いている者が独自に所有していたものを渡した、という可能性が高い。
それなら、販売ルートも保管記録も見つからないのにも説明がつく。
『お取込み中、失礼します!そちらに武装した集団が接近中!』
「!!」
アヤネの声で、思考を中断させる。
武装した集団?……マーケットガードか?
『気づかれた様子はありませんが……まずは身を潜めた方がいいと思います』
アヤネの忠言に従い、物陰に隠れて様子を伺う。
「………パトロール?護衛中のようですが…………」
「トラックを輸送している…………現金輸送車だね」
「あれ…………あっちは…………」
現金輸送車は、ブラックマーケットの金融機関、闇銀行に入っていく。
「………見てください……あの人……」
「あれ……?な、何で!?あいつは毎月うちに来て利息を受け取っている銀行員…………?」
「あれ、ホントだ」
「………どういうこと?」
『ほ、本当ですね!車もカイザーローンのものです!今日の午前中に、利息を支払った時と同じようですが…………なぜそれがブラックマーケットに…………!?』
「か、カイザーローンですか!?」
「ヒフミちゃん、知ってるの?」
「カイザーローンと言えば………かの有名なカイザーコーポレーションが運営する高利金融業者です…………」
カイザーコーポレーション……生前から、何かとグレーな企業ではあった。カイザーローンについては、あまり知らなかったが……やはり怪しい企業だったか。
「アヤネちゃん、さっき入ってきた現金輸送車の走行ルート、調べられる?」
『少々お待ちください。…………ダメですね。すべてのデータをオフラインで管理しているようです。全然ヒットしません』
「だろうねー」
「そういえば、いつも返済は現金だけでしたよね。それはつまり………」
「私たちが支払った現金が、ブラックマーケットの闇銀行に流れていた………?」
「じゃあ何?私たちはブラックマーケットに、犯罪資金を提供してたってこと!?」
対策委員会の間に、緊張した空気が流れる。
『ま、まだそうハッキリとは……証拠もありませんし。あの輸送車の動線を把握するまでは……』
「………あ!さっきサインしてた集金確認の書類……。それを見れば証拠になりませんか?」
「さすが」
「おお、そりゃナイスアイデアだねー、ヒフミちゃん」
「しかし、書類は既に銀行の中だ。どうやって確認する?」
「確かに……それじゃあ、他に輸送車の集金ルートを確認する方法は………ええっと、うーん」
「うん、他に方法はないよ」
何かを決意したような表情で、そう言うシロコ。
「えっ?」
「ホシノ先輩、ここは例の方法しか」
「なるほど、あれかー。あれなのかあー」
「……ええっ?」
「あ………!!そうですね、あの方法なら!」
「何?どういうこと?………まさか、あれ?まさか、私が思っているあの方法じゃないよね?」
この前の対策委員会の会議を思い起こす。
………この状況を覆す作戦がひとつあった。だが……それしかないのか…………!?
というか、ホントにやるのか!?
「う、嘘っ!?本気で!?」
「………あ、あのう。全然話が見えてこないんですけど………「あの方法」って何ですか?」
「残された方法はたったひとつ――――――――」
「銀行を襲う」
そうであって欲しくは…………なかったよ。
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おまけ:サーヴァントについて勉強しよう~バーサーカー編~
「いよいよ最後のクラス、バーサーカーについてだ」
「おおっ、ついに!」
「バーサーカーのクラススキルは狂化。理性と引き換えに各種ステータスを上昇させるものだ。このスキルがあるが故に、制御が難しいサーヴァントと言える」
「ふむふむ。まさにバーサーカーだね」
「配属条件は、発狂した逸話がある、狂気的ともいえる在り方や行動をとっている、といったものだ。バーサーカーは、言葉が通じない、あるいは、話が通じないといった理由で、対話が不可能な場合が多い」
「なるほど…………?」
「前者は言葉の通り。後者は、特定の事象に対して制御不能なほどの異常性を持っているといった感じだろうか」
「んー、例えば?」
「清姫伝説の清姫。彼女は基本的には穏やかな人物と言えるが、好きになった相手には狂気じみたほど嫉妬ぶかくなったり、その相手を安珍であると誤認したりする。また、生前の経験から嘘を嫌っており、嘘をついていると分かると殺しにかかる場合もある」
「ひ、ひぇ~、凄い子だねー」
「ああ、マスターも、ヤンデレには気をつけろよ?」
「う、うん……」