衛宮士郎モドキは英雄にしかなれなかった   作:曇らせはいつかガンにも効くようになる

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投票の結果も鑑みて、先生の性別は女性に決まりました。
投票して下さった方、ありがとうございました!!


先生と英霊

色彩との戦いの後、死亡したオレはキヴォトスにおける英霊の座に近い所に召し上げられたようだ。そして今、彼女に召喚された。彼女の右手に浮かび上がる赤い紋様、これが令呪と見て間違いないだろう。魔力の繋がりも感じられる。

 

これが、抑止の守護者としての召喚なのか?だが、彼女の令呪と魔力の繋がりが、彼女がオレのマスターであることを雄弁に語っている。それに…………受肉している、のか?

 

オレの知る抑止の守護者としての召喚とも、聖杯戦争におけるサーヴァントの召喚とも異なる。

これが、イレギュラーによるものなのか、はたまたキヴォトスにおける英霊召喚の特徴なのかは分からない。

 

そんな抑止の守護者としての初めての召喚。オレは………目の前の書類と格闘することとなった。

 

「ひとまず、優先順位をつけるぞマスター」

 

「うん!」

 

「オレは一通り書類に目を通しながら、書類を整理していく。最優先に処理すべきものを回すから、マスターはそれを処理していってくれ」

 

「わかった!!」

 

マスターの返事を聞き流し、書類に目を通し始める。

書類の内容から見て、ここがキヴォトスであるのは確かなようだ。

キヴォトスでは基本的に見ることの無いヘイローの無い生身の人間。それも、機械の肉体でもない大人の女性。初めはキヴォトスかどうかすら怪しいものだったが、書類に記されている見覚えのある学校の名、銃や兵器などの物騒な内容。これらが、ここがキヴォトスであることを証明している。

 

だが、分からないのはこの大人(マスター)だ。

一体何者なんだ?ヘイローの無い大人というだけでキヴォトスでは物珍しいものだが、書類の内容から見るにここは連邦生徒会だろう。そうでもなければ、ここまで多様な学園についての書類が集まるとは思えない。

 

いや、こんなことを考える前に書類をかたずけるか。オレの疑問は、マスターに直接聞けばいい。

思考を切り替え、書類と格闘すること2時間。

 

「ひとまず休憩といこう、マスター。優先すべきものは粗方終わらせることができたからな」

 

「ふへぇ~~~~。疲れたぁ…………」

 

情けない声を出しながら、デスクに突っ伏すマスター。

いや、情けないのは初めからだったが。初対面の相手に泣きついて、書類仕事を手伝ってもらう成人女性。それも、相手は未成年だぞ(享年17)………サーヴァントではあるが。

 

「マスター…………お互い、色々聞きたいことがにあるだろう?休憩ついでに話でもしようじゃないか」

 

「うん!そうだったよ!そもそも、貴方は誰なの!?」

 

この様子から見て、意図的な召喚という訳ではなさそうだな。初めから予想はついていたが。

 

「オレはプリテンダーのサーヴァントだ。手の甲を見てみろ」

 

「うわ!!なんか赤いタトゥーが!?」

 

「気づいていなかったのか………。それは令呪といってサーヴァントに対する―――――」

 

「あの……サーヴァントって?」

 

ああ、そうか。まずサーヴァントすら知らないんだったな。そこから説明しなければな。

 

「英雄や偉人が死後人々に祀り上げられ英霊となった者。それを召喚し使い魔として使役したものをサーヴァントと言う」

 

「じゃあ、貴方も偉人ってこと?」

 

「いや、オレの場合は少々事情が異なる。そもそも、キヴォトスにサーヴァントという概念は存在していなかったからな。…………説明を続けるぞ?」

 

さて、どこまで説明すべきか…………。

今オレと魔力の繋がりがあるものは3つ。一つは無論マスター。

二つ目は、机の上に置かれたタブレットのようなもの。

三つ目は、マスターの懐にある…………これは、聖杯か?…………いや、それとはやや異なるようだが、願望機に近しい能力を有しているのかもしれない。

 

この状況から見て、聖杯戦争によって召喚された訳ではないだろう。マスターが意図的に召喚した訳でも無い。となると、連邦生徒会長の仕業と見るのが妥当だろう。

 

「英雄となるような強い自我と力を持った英霊を、一個人が従えるのは難しい。そこで、サーヴァントを縛る鎖となるのが3画の令呪、君の右手にあるそれだな。令呪はサーヴァントに対する絶対命令権。それを消費することで、あらゆる命令を強制させることができる他、一時的な強化などにも使用できる」

 

「なんでも…………命令できちゃうの?」

 

「考えなしに使うなよ?3回しか使用できず、基本的に回復もしないからな?」

 

「そっかぁ…………残念」

 

まさか、令呪で仕事をやってもらおうとか考えていたんじゃないだろうな?この大人。

 

「そう言えば、ぷりてんだーとか言ってたけど、それは?」

 

「サーヴァントは一つの()()()を持って召喚される。剣士(セイバー)弓兵(アーチャー)槍兵(ランサー)を三騎士。騎兵(ライダー)魔術師(キャスター)暗殺者(アサシン)狂戦士(バーサーカー)を四騎士とし、総じて基本7クラスとされる。オレはそれらに属さないエクストラクラス、役を羽織る者、詐称者たるプリテンダーのクラスを有している」

 

「はえ~~」

 

宇宙を背負った猫のような顔をしているマスター。これは、ほとんど理解できていないな。まぁ、聖杯戦争という訳でも無いようだから、そこらへんが理解できていなくても問題ないだろう。

 

「オレに関してはこの程度で良いだろう。今度は、オレの方から質問してもいいかな?マスター」

 

「うん。なんでも聞いて」

 

「先ずは…………君は、何者なのかな?基本的に、キヴォトスにおいてヘイローの無い生身の人間なんてものは有り得ない。ヘイローの無いか弱い肉体では、とても暮らせないような世界だからね。そんな君が、どうしてここにいるのかな?」

 

ヘイローの無い大人。そう考えて真っ先に思い浮かぶのはあの異形の連中。

彼女がそれに属しているとは考えづらいが、その可能性は否定できない。あの連中とは協力関係にあったものの、奴らは信用ならない者たちだ。奴らの精神性は、生粋の魔術師に近しい。目的のためなら手段は問わない、そんな連中だ。

 

……………………オレも、人のことは言えないがな…………。

 

「私はキヴォトスの先生だよ。連邦生徒会長?って人に呼ばれたみたいなんだよね」

 

やはり、彼女の仕業か。マスターをキヴォトスに招いたのが彼女なら、オレがここに召喚されたのも必然なのだろう。

 

マスターこそが、オレではない()()なのか?

 

かつて、死の間際に願った……キヴォトスを救うことの出来る者。

それがマスターのことなのかは、まだ分からない。

しかし、あの連邦生徒会長が呼んだ大人なら――――――――。

 

「そうか――――――――。マスター、オレのことは一丁の銃だとでも思って扱うといい。君がキヴォトスの味方なら、喜んで指示に従おう」

 

「うん、ありがとう。でも…………銃と思って扱うのは、ちょっと嫌かな」

 

「そうか、好きなようにするといい」

 

「それと…………貴方の名前を聞いてもいいかな?」

 

「プリテンダー、とでも呼んでくれればいいが」

 

「それは、貴方の役職みたいなものなんでしょ?私は名前で呼びたいな」

 

本来、サーヴァントにとって真名は迂闊に明かすべきものではない。だが、聖杯戦争という訳でも無し、そもそもオレは真名が分かっていようがいまいが対策できるような類のサーヴァントでは無い。真名を明かしても問題ないだろう。

 

「衛宮士郎だ。衛宮でも士郎でも、好きなように呼べ」

 

「わかった。シロウだね、よろしくシロウ」

 

そう言って、手を差し出すマスター。

 

「ああ、よろしく頼む。マスター」

 

差し出された手を握り返す。

これで、契約成立といったところかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

___________________________________________

 

おまけ:最初のメモロビに挟まる男

 

今日も今日とて、書類と格闘する日々。これが、本来一人である先生に充てられる仕事量か?いくら連邦生徒会がいっぱいいっぱいだと言っても、この量は余裕で過労死するぞ。

 

先生の立場については、ある程度理解した。

連邦捜査部「シャーレ」の顧問。シャーレとは、あらゆる学園のあらゆる生徒を無制限に入部させることが可能な部活であり、各学園の自治区での戦闘にも制限がかからないという絶大な権限を持った組織。

 

そんな組織の顧問にマスターを任命した、連邦生徒会長は現在行方不明だという。

それにより、治安は大荒れ。出所のわからない武器の不法流通の2000%増加というふざけているとしか思えないような状況らしい。

 

そんな訳で、オレとマスターは仕事に忙殺されている訳だ。

全く…………三つ目の死因が過労死など、冗談にもならないぞ。

 

そうして、殺人的な仕事量に悲鳴を上げていると、マスターのタブレットから通知音が響いた。

 

「追加の仕事かな?マスター」

 

モモトーク、キヴォトスにおけるコミュニケーション用のSNS。それによるやり取りを終えたマスターにそう尋ねた。

 

「いや違うよ…………いや、違くもないか。ユウカ、生徒が一人シャーレに来るって」

 

モモトークでやり取りしたり、連邦生徒会の生徒と会話しているのはよく目にするが、外部の生徒が訪ねてくるというのは初めてのことだな。*1

エミヤ(おかん)ではないが、紅茶か何か用意しておくか。

 

 

 

後日、昼食時にて――――――――

 

「こんにちは、先生。この間お話した請求書のひな型を持ってきました。お手すきの際にご確認ください」

 

「あれ?あなたは?」

 

彼女が、以前マスターの言っていたユウカか。確か、ミレニアムの生徒なんだったな。

 

「初めまして。オレは衛宮シロウ。連邦捜査部「シャーレ」の部長を担うことになった。よろしく頼む」

 

召喚され、何故か受肉したのはいいものの、学籍なんてものが存在しないオレのためにマスターが、シャーレの部長という身分を与えてくれたのだ。

 

「えっと、私はミレニアムサイエンススクール、セミナー所属の早瀬ユウカです」

(男性!?それも、シャーレの部長!?そんな人がいるなんて、聞いてないんだけど!?)

 

「なんでも、請求書の件で来たんだったな。オレは書類仕事については門外漢だからね。マスターに色々教えてもらえると助かる。せっかく来たんだ、オレは紅茶でも用意するとしよう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

ユウカに一言断ってから、席を離れる。

エミヤ(おかん)ほどの腕前は無いが、最近は紅茶やコーヒーを淹れるのを練習しているからな。辛うじて、人に出せる程度の味にはなっているだろう。

 

そう言えば、ミルクと砂糖がいるか聞いていなかったな。

 

「ユウカ!紅茶に砂糖とミルクは――――――――――」

 

「先生!!なんですか!?この領収書は!?」

 

おっと、どうやら間が悪かったらしい。

 

「限定版・変身ロボット、10万円!?おもちゃのために食事を抜いたんですか!?」

 

「うぅ~~…………だって、限定版だよぉ………こんなにカッコいいし、仕方ないとは思わない?」

 

「思いません!!………まったく、衛宮さんも止めなかったんですか?」

 

「止めはしたんだがね。聞く耳を持たなかったので、放置した」

 

そう弁解しながら、紅茶を手渡す。

 

「あっどうも。…………おいしい」

 

「そう言って貰えると、こちらも淹れた甲斐がある。…………砂糖か何か、必要なら持ってくるが」

 

「いえ、大丈夫です。…………あの、先生の家計簿ってありますか?」

 

「いや、そもそも家計簿を付けているのを見た覚えが無いな」

 

オレがそう答えると、ユウカは背に般若を背負って先生に向き直る。

 

「せーんーせーいー? いい年して、家計簿すら付けて無いなんて言語道断です!!

レシートとか、全部出してください!!ちゃんと、整理しますよ!! 衛宮さんも、手伝ってください!!」

 

こうして、マスターの支出の記録とお説教が始まった。

とても教師とは思えない姿だな、これは。レシートを漁りながら、そう思う。

 

「食費を削ってまで、娯楽にお金を費やすなんて不健全ですよ! これからは私が管理しますからっ。衛宮さんも、これからはしっかり止めてあげてくださいね」

 

「はーい」   「ああ、肝に銘じよう」

 

これでは、どちらが大人か分からないな。

ユウカの小言を聞きながら、そう苦笑した。

 

 

 

 

 

 

___________________________________________

おまけ2:サーヴァントについて勉強しよう!!~基礎知識編~

 

シャーレにて…………

 

「ねぇ、シロウ?」

 

「なんだ? マスター」

 

「サーヴァントのこととか、もうちょっと詳しく知りたいなぁって思って」

 

「そうか、勤勉なことだ。では、せっかくの休憩時間だが、サーヴァントについての勉強会を開くとしよう」

 

「やった~!」

 

「サーヴァントは、死後の英雄、偉人を召喚したものだというのは覚えているね?」

 

「はい!せんせー!」

 

「先生は君だろう…………。まぁいい。サーヴァントは召喚にあたって、その英霊の一側面を英霊の座という場所から呼び出す」

 

「一側面って?」

 

「サーヴァントに限った話ではないが、英霊というのは様々な側面を持つ。戦で活躍した傑物であれば、味方からは祖国を守った英雄として語られる一方、敵からは残酷な殺戮者として語られることもある……と言ったようにな」

 

「なるほど」

 

「そのため、サーヴァントは召喚の際、いずれかのクラスに当てはまる側面が召喚される」

 

「へーー………たしか、シロウはプリテンダーだっけ?」

 

「その通りだ。クラスについては、また別の機会にでも話そう。ほら、十分休憩は取れただろう。仕事を再開するとしよう」

 

「はーーい」

*1
一応、主人公がシャーレに訪れる前に、ユウカがシャーレに来たことはあります。




このシロウくん、実は味覚をほぼ失ってます。なので、紅茶やコーヒーを淹れる練習をする際は、嗅覚と先生の反応を見て練習しています。また、先生の食生活(ユウカのメモロビにて、昼食がコッペパンのみだった)を見て、衛宮士郎の記憶を頼りに料理に手を出そうと考えたりしています。

紅閻魔という偉大な先人を知っているので、味覚が無い程度で料理を諦めたりできない、と決意を固めることができたんですね。衛宮士郎の生前使ってた包丁を投影して、憑依経験で料理の腕を再現! とか、出来るのかな?
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