衛宮士郎モドキは英雄にしかなれなかった 作:曇らせはいつかガンにも効くようになる
頑なにマスター呼びを続けるのは、マスター呼びに憧れがあったからです。
その辺の感性は、割と年相応だったりします。
「いらっしゃいませ!紫関ラーメンで………。わわっ!!」
「あの~☆5人なんですけど~!」
「あ、あはは…………セリカちゃん、お疲れ………」
「お疲れ」
オレたちは、セリカのバイト先である紫関ラーメンに訪れていた。
「み、みんな…………どうしてここを…………!?」
「うへ~やっぱここだと思った」
「どうも」
「先生まで…………やっぱストーカー!?」
「すまないな。気を悪くしたなら、後でオレが説教しておく」
「うぇ!?」
突然予想外のことを言われたような反応をするマスター。
なんでその反応が出来るんだ…………?いくら先生でも、昨日会った少女のバイト先まで追いかけていくのは、確実にアウトだぞ。
「うへ、先生は悪くないよー。セリカちゃんのバイト先といえば、やっぱここしかないじゃん?だから来てみたの」
「ホシノ先輩かっ…………!!ううっ……!」
「アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそのぐらいにして、注文受けてくれな」
「あ、うう……はい、大将。それでは、広い席にご案内します……こちらへどうぞ……」
「先生、衛宮さん!席どうします?私の隣空いてますよ」
「………ん、私の隣も空いてる」
「……うーん、どうしようかな」
「オレがシロコの方に座ろう」
「そう?じゃあ、私はノノミの方に座ろーっと」
案内されたテーブル席に座って、備え付けのメニューを見る。
「……それで、注文は!?」
「「ご注意はお決まりですか」でしょー?セリカちゃーん、お客様には笑顔で親切に対応しなくちゃー?」
「あうう………ご注文は、お決まりですか………」
「私はチャーシュー麺をお願いします!」
「私は塩」
「えっと………私は味噌で………」
「私はねー、特性味噌チャーハン!炙りチャーシュートッピングで!
先生も遠慮しないで、ジャンジャン頼んでねー。この店、めちゃくちゃ美味しいんだよー!
アビドス名物、紫関ラーメン!」
「どうしようかな………」
「迷ってるなら紫関ラーメンがおすすめだよぉー」
「じゃあ、私はそれで」
「オレも同じものを」
注文を済ませて、雑談に花を咲かせていると、注文の品が届く。
「皆さん、自分のラーメンは届きましたね………それじゃあ、いただきます」
「「いただきまーす」」
そうして、それぞれ食べ始める。
__________________
「セリカちゃん、今は他にお客さんいないし、アビドスの皆のとこ行ってきな」
「で、でも…………」
「いいから、皆もセリカちゃんのこと待ってるぜ」
「は、はい…………」
__________________
「こっちのチャーシュー麺も美味しいですよ!どうです?あーん、してあげましょうか?
先生、衛宮さん?」
「ちょっと、何してんのよ!人の店で!」
バイト中のセリカがこちらに来て、会話に参加する。
あの大将の気遣いか………いい人のようだな。
「あはは、冗談ですよ、セリカちゃん☆」
「もう!いかがわしいことするなら、追い出してやるんだからね!」
「あ、あはは………はあい。……セリカちゃん、バイトのユニフォーム、とっても可愛いです☆」
「いやぁー、セリカちゃんってそっち系か。ユニフォームでバイト決めちゃうタイプ?」
「ち、ち、ち、違うって!関係ないし!こ、ここは行きつけのお店だったし………」
「ユニフォーム姿のセリカちゃん、写真撮っておけば一儲けできそうだねー。
どう?一枚買わない、先生?」
「変な副業はやめてください、先輩」
「バイトはいつから始めたの?」
「い、一週間くらい前から………」
「そうだったんですね☆時々姿を消していたのは、バイトだったということですか!」
「も、もういいでしょ!だまってラーメンすすっておきなさいよ!」
セリカが4人のいじりに耐えかねて怒鳴るのを見て、4人は笑った。
そこには、日常の団欒があった。とても平凡な、どこにでもある友達同士の会話。
ああ、眩しいな。
生前の地獄の中で、味覚なんてものは落としてしまった。
だから、このラーメンを食べても、感じるのは麺の弾力とスープの熱さ、具材の食感くらいだ。
何時もと変わらない、味のしない食事。それは、食事というより、補給に近いものだったのに。
何故だろう、今は………とても、美味しいと思った。
「………ははっ」
「「…………!!」」
マスターたちが一斉にこちらに目を向ける。
「どうした?なにかあったか?」
「い、いえ………衛宮さんってそんな風に笑うことあるんだって…………」
「そ、そうよ。あんた、ほとんど無表情だし、笑う時もなんか皮肉っぽいかんじだし」
「わ、私も、シロウのそんな顔………初めて見たよ」
「そうなんですか?勿体無い。とってもいい表情だったのに………私、キュンとしちゃいました☆」
「ん。私もそう思う」
「笑っていたか?オレが?」
そう聞くと、皆一斉にうなづいた。
いつの間にか、笑顔を浮かべてしまったらしい。
「な、なによ…………そんな顔されたら、私も怒りにくいじゃない」
「ふふっ………すっかり毒気を抜かれちゃいましたね☆セリカちゃん」
「うう………なによ、毒気が抜かれたって、元々はあんたたちのせいだからね!」
シロウの笑みに怒りを静まされ、調子を崩すセリカ。
そんなシロウの表情に、違和感を覚える二人がいた。
(今の、シロウの表情…………なんだろう?とっても穏やかなのに…………なんか、寂しそう?)
(今の笑顔……笑っていたけど、でも、なんだか笑えていないというか…………。そうか、見覚えがあったんだ、あの目に。もう取り戻せないものを見て、眩しさを感じる。見ていたいのに、目を逸らしたい………そんな感情に)
会話を続けていると、気づいた時には皆食べ終わっていた。
そして、話題は会計に移る。
「…………ところで、みんなお金は大丈夫なの?もしかして、またノノミ先輩に奢ってもらうつもり?」
「はい、私はそれでも大丈夫ですよ☆このカードなら、限度額までまだ余裕がありますし」
「いやいや、またご馳走になるわけにはいかないよー。きっと先生が奢ってくれるはず。
だよね、先生?」
「えっ!?そんなの聞いてないよ!」
「………え?初耳だって?あはは、今聞いたからいいでしょ!」
なるほど、策士だな。この状況では、マスターは断れない。
逃げようとしたマスターの腕を掴み、逃走を阻むホシノ。
「うへ~大人のカードがあるじゃん。これは出番だねー!先生としては、カワイイ生徒たちの空腹を満たしてやれる絶好のチャンスじゃーん?」
「し、シロウ~~?」
こちらに助けを求めるマスター。
「諦めろ」そう目線でマスターに伝える。
ガクっと観念したように項垂れるマスター。
すまないな、マスター。謝罪として、今度ユウカにはオレからも弁明しよう。
「……。(ボソッ)先生、こっそりこれで支払ってください」
「いや、大丈夫だよ。私は大人だからね」
漢気を見せ(女性だが)、生徒全員分の会計を済ませるマスター。律儀にオレの分まで払ってくれた。まぁ、今回はストーカーの代償だとでも思ってもらおう。
「いやぁ~!ゴチでしたー、先生!」
「ご馳走様でした」
「うん、お陰様でお腹いっぱい」
「早く出てって!二度と来ないで!仕事の邪魔だから!」
「あ、あはは………セリカちゃん、また明日ね……」
「ホント嫌い!!みんな死んじゃえー!!」
「あはは、元気そうで何よりだー」
セリカには、少し申し訳ないことをしてしまったかな…………。
今度、なにか詫びの品でも用意するか。
__________________________________________
「みんなで来るなんて………騒がしいったらありゃしない」
「人が働いているってのに、先生、衛宮ってチヤホヤしちゃって。ホント迷惑、何なのアレ」
「ホシノ先輩、昨日のことあったからってわざと先生たちを連れてきたに違いないわ!」
「…………ふざけないで。私がそう簡単に折れると思ったら大間違いなんだから」
一人、夜道を歩きながら独り言を呟くセリカ。
その言葉には、少なくない怒りが混じっていた。
__________________
「あいつか?」
「はい、そうです。アビドス対策委員会のメンバーです」
「準備はいいか?次のブロックで捕獲するぞ」
__________________
「………そういえば、この辺も結構人がいなくなったなあ。前はここまでじゃなかったのに」
「治安も悪くなったみたいだし……」
「このままじゃダメだ。私たちが頑張らないと……そして学校を立て直さないと」
「とりあえずバイト代が入ったら、利息の返済に充てて…………!?」
突然、ヘルメット団たちが現れる。
「何よ、あんたたち」
「黒見セリカ……だな?」
「……カタカタヘルメット団?あんたたち、まだこの辺をうろついてんの?」
「ちょうどよかった。虫の居所が悪かったの。二度とこの辺りに足を踏み入れられないようにしてやるわっ………!!」
そう意気込むセリカを背後からの銃弾が貫く。
「くっ、ううっ!!」
(背後にも敵!?……こいつら、最初から私を……)
「捕らえろ」
プシュウーーーーーーー!!
ドドドドドドドーン!!!
「ケホッ、ケホッ……」
(対空砲………?違う………この爆発音は、Flak41改………?
火力支援?どこから………?ち、違う、これは………まさか………
こっ、こいつら、ハンパじゃない………ヤバい…………意識が………)
意識を失い、倒れ込んむセリカ。
「続けますか?」
「いや、生かされなければ意味がない。この程度でいいだろう。車に乗せろ、ランデブーポイントへ向かう」
__________________________________________
「えっ!?セリカが行方不明!?」
「うん。家にも帰ってなくて、連絡もつかないってアヤネちゃんが」
「…………誘拐か?」
「うへぇ~、考えたくないけど、その可能性が高そうだよね」
誘拐されたとすると、タイミングはバイト帰りか。時間帯は、恐らく夕方から夜にかけて………
それなら、まだ近くにいる可能性はある。
「マスター、セリカの居場所を調べる方法はあるか?」
「………「シャーレ」の権限を使って、セントラルネットワークにアクセスすれば、位置情報が分かると思う」
「先生、それって」
「大丈夫。もしバレたら始末書ものだけど、責任は私がとるから。………少し待ってて」
そう言って、タブレットを操作し始めるマスター。
「よし、居場所が分かったよ」
「それなら、移動する前に向かうとしよう」
「うへぇ~、ありがとうね先生」
(…………?さっき、衛宮くん、先生のことマスターって呼んでなかった?)
__________________________________________
その部屋には、セリカの行方不明のことを聞いた対策委員会のメンバーが集まっていた。
「…………」
その間には、重苦しい空気が広がっている。
その空気を打ち破るように、間の抜けた声を出しながら部屋に入ってくるホシノ。
「みんな、お待たせー」
「ホシノ先輩!先生!」
「ただいま」
「先生が持っている権限を使って、連邦生徒会が管理するセントラルネットワークにアクセスできた」
「セントラルネットワークに………先生、そんな権限までお持ちなのですね」
「うへ~もちろんこっそりだけどね。バレたら始末書だよー?」
「ええっ!?だ、大丈夫なんですか、先生?」
「ふっふっふ!ばれなくちゃ、犯罪じゃないんだよ!」
そう言って、胸を張る先生。それでも教育者か?
「それ、先生が言っていいセリフなんですか…………」
「ん。バレなきゃ、犯罪じゃない…………!!」
「はいはいシロコちゃん、感化されちゃダメだよ?」
「それで、セリカちゃんの居場所は…………?」
「ここだよ」
タブレットの画面を見せ、指し示す。
「ここは…………砂漠化の進んでいる市街地の端の方ですね?」
「住民もいないし、廃墟になったエリア………治安が維持できなくて、チンピラばかり集まっている場所だね」
「このエリア、以前危険要素の分析をした際にカタカタヘルメット団の主力が集まっていると確認できた場所です。………ということは、やはカタカタヘルメット団の仕業…………!!」
「なるほどねー、帰宅途中のセリカちゃんを拉致して、自分たちのアジトに連れて行ったってことかー」
「学校を襲うくらいじゃもの足りなくて、人質を取って脅迫しようってことかな」
「考えていても仕方ありません!急いでセリカちゃんを助けに行きましょう!」
「…………そういえば、衛宮さんは何処に?」
「シロウには、先にセリカちゃんのいるところに向かってもらったよ」
「え!?大丈夫なんですか!?カタカタヘルメット団のアジトに一人でなんて…………!」
「大丈夫だと思うよ。だって、シロウは強いからね!」
__________________________________________
おまけ:サーヴァントについて勉強しよう~ランサー編~
「いよいよ三騎士の解説は最後だな」
「たしか、ランサーだったよね?」
「ああ、よく覚えていたな」
「えっへん!これでも、教師だからね!」
「それなら、普段から教師らしくして欲しいものだな」
「う、それは…………ちょっと」
「ふっ……今は説教の時間じゃないからな。これ以上はよしておこう。
まずランサーのクラススキルは、対魔力だ」
「毎度恒例だね!」
「そして、ランサーの特徴として機動力、運動性能の高い英霊が配置されること、1対1における高い白兵戦能力に秀でていることが上げられる」
「なるほど………!タイマンでの近接戦に強いってことだね!」
「その通り。該当する英霊は、有名どころだと………アイルランドの光の御子、クーフーリン。マスターの故郷の日本だと、武蔵坊弁慶あたりだな」
「弁慶!!弁慶の泣き所の人だね!!」
「そう……だが、なんというか、もっといいエピソードあっただろう?なんでわざわざそれを選んじゃうんだ」
「いや~、弁慶っていっても、泣き所くらいしかパッとは思い浮かばなくて…………」