傭兵と愉快な仲間たち   作:天上天下唯我独身

1 / 2
処女作。童貞作ではだめなんだろうか。語呂悪いから?


我等は傭兵「アヴァランチ」
「They are mercenary」


ヴァントーズ第三地区。 

連邦政府が誇る、世界最大級の都市圏。

ここでは高層ビルやホテルが建ち並び、道路や線路は複雑に絡み合っている

 

 

快晴。ビルの屋上。手すりにもたれる白髪の男は双眼鏡をゆっくりと取り出した。

 

「今六月だぜ?去年はあんな意味分からん雨が降ったのにさあ」

 

続けて独り言。

 

「あっつ...」

 

 

近年は異常気象が続いている。昨年はゲリラ豪雨まみれの湿気った一年だったが、今年は太陽が暴れている。

どちらにせよたまったもんじゃない。

 

 

 

眼下では昼の雑踏が流れている。

道路を挟んで奥の歩道。人々は忙しなく行き交い、その中を一人の男が足早に歩いていた。

 

「こんなあっついのに」

 

男の口元がわずかに緩む。

 

「サングラスにマスクなんかかけちゃってさ」

 

 

 

 

腰のベルトに付けておいた通信機を取り出し、短く呼びかける。

 

「賞金首いたよ」

 少しの間を置いて、低い男の声が返る。

 

『ほんとか?』

「まじまじ、場所も想定内、やたら怪しい服装で情報通り左足を怪我していそうな歩き方....」

 

「人違いだったらびびっちまうね」

『早いな。流石は俺らの誇る斥候だ』

「ふっ...」

 ひとりでにドヤ顔をした男__トビー・ヴァレンスは双眼鏡を首にぶら下げたまま、視線を獲物から外さない。

「たしかケツアゴなんだろ?顔は特徴的だし、結局はマスクの中次第だな....」

 

 

 

「ま、最悪人違いでも俺の顔見られなきゃなんとかなるさ」

『お前な』

「ちゃんと仮面は持ってきたよ?ひょっとこのやつね」

『...この際いい、どの辺りだ?』

 

「トラックをポイントEの...五あたりに回してくれ」

『了解。』

 その時だった。

 ドォンッ――!!

 

街の向こうで爆炎が噴き上がる。

 数秒遅れて衝撃音が街を震わせ、ビルの窓ガラスが細かく鳴った。

民衆がどよめく。

 トビーは音のした方をちらりと見る。

「...なんだ、また抗争か?」

『今の爆発音は?』

「遠いとこだよ。多分企業」

通信越しに小さくため息が聞こえた。

 

『最近多いな』

「だよなぁ……」

トビーは肩をすくめる。

企業同士の衝突か、武装組織の小競り合いか。

この街では珍しい話ではない。

民衆は武装し、自分の身は自分で守らなければならない。

トビーもその一人だった。

 

「なんというか間が悪すぎるな」

賞金首がこちらに気付く前に距離を詰める。それが優先だ。

肝心の賞金首は爆発のせいで既に駆け出している。

.(...さて)

トビーはビルの縁へ歩み寄ると、迷いなく踏み出した。

身体が宙へ躍る。

数階分を一気に落下し、向かいの建物の屋上へ軽やかに着地する。

衝撃を前転で流し、そのまま走る。

距離は...

「目測で大体300m以上はあるか」

「ま、いけるべ」

 

 トビーは通信機に向かって言う。

「D、できるだけ急いでくれよ?」

『お前こそ取りこぼすなよ、トビー』

「言われなくても」

 口角を上げる。

 次の瞬間、トビーの姿が弾かれたように“加速“した。

 一歩。

 二歩。

 三歩目には、屋上からその姿が消えていた。

 

風が心地良い。

屋上を蹴ったトビーの身体は、目にもとまらぬ速さで進んでいく。

 

この世界の人々はほとんどの場合「異能」を持っている。それは炎を出したり、割り箸を綺麗に割れる等様々だ。

身体機能の一部という説が一般だが、それでは説明できないものがほとんど。地球は球体だ!みたいな不確定の説である。

 

 

※地球は球体です

 

 

 

 

トビーの場合は....

異能――《加速》。

極めて単純。文字通り速度を加える。

加速可能な動きは直線運動に限るが、今この場において大した支障はない。

屋上から屋上へ駆けるトビーの速さは一瞬のうちにぐんぐん上がっていく。

文字通り『加速』なのだから、その速さは時が経つにつれ青天井に増していくのだ。

壁を蹴れば弾丸のように跳び、平地を走れば車はおろか電車や新幹線すら置き去りにする。

 

生身の身体が無事でいられるかは別だが、産まれ持った自分の能力だ。多少なりとも耐性はできる。炎を扱う異能なら熱に耐性ができるし、音に関する異能なら耳が良かったり、人によっては絶対音感だったり。

トビーの場合、それは加速によって生じる重力への耐性と、物理的に耐えうる少しだけ頑丈な体だった。

 

ただ、発動したのは2秒ほど。トビーはすぐに異能を切る。

ちらりと標的を確認。まだあそこか...

慣性でしばらくは突っ込んでいくので足にのみ『加速』を適応。

世界で一番早い男、ウサイン・ボルトもよくやる「流し」だ。加速は失われて体は徐々に減速していく

 

 

トビーは屋上の縁を踏み切る。

そのまま垂直のビル壁へ。

靴底が外壁を叩く。

タッタッタッッ 

慣性を殺しつつ壁面を駆け下り、窓枠や室外機を足場に次々と飛び移る。

 

最後は電柱ほどの高さから身をひねり、路地裏へ滑り込むように着地した。スパイダーな男よろしくヒーロー着地だ。

片手をつき、膝を軽く曲げ、衝撃を受け流す。

 

「....膝痛え」

余談だが、アレだと体に悪いらしい

 

 

「……いた」

路地の出口。

賞金首は爆発の騒ぎに乗じ、人混みへ逃げ込もうとしている。

大通りでは悲鳴が飛び交い、人々が爆発とは逆方向へ一斉に流れ始めていた。

 煙を見上げる者。

 スマートフォンを構える者。

 逃げ惑う者。

街は一瞬で混乱に包まれていく。

「……うわ」

トビーは気怠げな表情をする。

視界を人波が遮る。

だが、その姿を見失うことはない。

大通りと向こうに見える獲物だけを見据え、呼吸を整える。

「逃がすかよ」

地面を蹴った。

人混みの隙間を縫うように、トビーは一直線に大通りへと突撃した。

 

路地から影が飛び出す。歩道と車道を一瞬で通りすぎれば人混みなんて関係ない。

加速で歩道を突破し、車道にさしかかる直前に、右斜め前、二時の方向から車。トビーは飛び上がる。

丁度足下に来た車を足場に更なる大ジャンプ。

前方へ飛んでいき、車道をひとっ飛び、いやふたっ飛びで超えた。

「軽自動車で助かったッッ...と」

向こう側に着地。

 

「...やべ!」

人混みに紛れたか、逃げ出したか。

男の姿は見えなくなっていた。

 

 

 

 

___路地裏

 

「はぁ....はぁ....」

 

「...ふーっ」

 

男は息を荒げているが、落ち着いたようだ。

「あの屋上のヤツ...確実に俺に目を付けてたな」

帽子とサングラスを取ると、獣人特有の耳が飛び出す。オオカミ...?

 

「反射でバレバレだぜ....」

「マジでか」

 

後ずさり。目を声の方向に向ける。

そこにいたのは...腕を組んで壁にもたれているひょっとこの仮面。

表通りの後光で少し眩しい。

「わざわざここに来るんならお前で間違い無さそうだな」

「ぐ...」

後ずさり。しかしひょっとこの男も一歩。

 

「おいおい、この距離で逃げられると思ってんのか?」

声が少し笑っている。

 

(...多少なりとも、油断が見える)

 

獣人は腰に手をかける。

勘付くトビー。

携帯していたナイフを投げようとするも間に合わず、

「若いな!!」

煙が溢れる。スモークグレネードだ。

咳き込むトビー。

「くっそ!」

異能で前方へ加速

 

(この俺がこんなガキに捕まってたまるかよォ~!!)

獣人が駆け出したその時

ガシッッ

十字路に出た途端、力強く腕を捕まれる

「ん」

思わず目線を向けようもするも

ドゴォ!!

その前に地面に叩きつけられた。

 

獣人を掴んだガッチガチのアーマー。全身を鎧のような防護スーツで覆ったゴッツい大男はため息をついた。

右を見ながら

「危なかったな、ト」

声をかけようとした瞬間、目の前を猛烈な速度で横切る物体が見えた

 

(...ひょっとこ?)

衝突音。

 

「....」

頭から足先までアーマーで包んだこの男。名はDという。表情は見えないが、どこかあきれた様子が伝わってくる。

獣人を縄で結びながらも話す。

「ま、話はあとだ。捕まえられた訳だしな。トラックに積んで帰るぞ、トビー」

ゴミ箱に頭から突っ込んだトビーは返す

「ありがと、D。ついでに取ってくれない?」

「自分で抜け出せるだろ」

「けっ。」

 

ゴミ箱からよじでる。

「あー汚な...」

 

路地裏には荒らされたゴミ箱とアスファルトの亀裂だけが残った。

 

 

 

歩道。

縄で縛った獣人をトビーとDは軽トラックの荷台に積み込む。

「ついでにマスクも外しとくか」

「確かに顔はまじまじと見てなかったな」

額が腫れ上がっている。

 

獣人のマスクを外すD。

トビーは覗き込む。

「この傷とケツアゴ....間違いないね」

黙るD

「....難儀なもんだ」

「何が?」

「コイツがどう思ってるか知らんが。これじゃ外出するのも一苦労だろう」

マスクをそっと付けてやった。

 

 




軽い人物・設定紹介
『トビー・ヴァレンス』
個人運営の傭兵組織所属。
異能『加速』による圧倒的な速さが強み。チーム内ではよく追跡、潜入任務などを担当する。
いつも閃光弾と数本のナイフ、短剣を二つ持ち合わせているが、今回は使う機会が無かった。


『D』
全身をアーマーで包んだ男。大柄で2mはある...がアーマーでかさ増ししている部分もあるので実際の身長は分からず。
寝ているときも、運転中も、食事中もアーマーを外さない。素顔を見た者は比喩でも何でも無く本当にいないという。
食事の際は口周りのアーマーがずれ、稀に口が見える。





『ケイ・ラウンド』
捕まえられた狼の獣人。
ケツアゴ。
賞金首であり、逃げている身だが、半分誤解である。
もう半分は妥当。
経緯は単純。彼は傷とケツアゴを隠すために顔を隠して外出する。狼の獣人であり、反社的な怖い雰囲気があるのでよく誤解されている。
実際、スリや盗みなどの軽犯罪をばれずに積み重ねていた悪人ではある。
ただ、いつものように盗みをした後、事情聴取を受ける。スリとは関係なく格好が怪しいために事情聴取をされたのだが、本人視点だとスリがばれたようにしか思えない。
逃亡。当然、追われるが、獣人の身体能力でなんとか逃げ切る。
その際顔を見られる。それ自体問題ではあるが、もっと大きな問題があった。
それはケツアゴの付いた彼は現在追われている極悪人(ケツアゴが特徴的)の顔にそっくりだったこと。
逃げているうちに、知らない事件の犯人として扱われていた。
ケツアゴによって彼は賞金首になってしまったのだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。