傭兵と愉快な仲間たち   作:天上天下唯我独身

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傭兵?

 

都市部を離れた一台の軽トラックが、緩やかな坂道を走っていた。

運転席からは、誰かが話す声

荷台からは、

「うわぁ……」

という気の抜けた声が聞こえてくる。

 

「まだ臭ぇ……」

荷台の隅で胡坐をかくトビーは、自分のジャケットを鼻先まで引き上げて顔をしかめた。

先ほどまで頭から突っ込んでいたゴミ箱の臭いが、どうにも取れない。

 

運転席から呆れた声が飛ぶ。

「自業自得だ。」

「いやいや、あれは事故だって」

「狭い路地裏で視界不良なんて速く動いたらぶつかるに決まってるだろ....」

「だって逃げると思うじゃん」

「まあ逃げた」

「な?」

「お前が動けなくなってどうする」

 

「分かった分かった。ごめんって」

トビーは口を尖らせる。

荷台の中央では、縄でぐるぐる巻きにされた賞金首が黙って座っている。

逃げる気力もないらしく、耳が垂れている。

たまに恨めしそうにトビーを見るだけだ。

「そんな睨むなよ」

トビーは肩をすくめる。

「生きてるだけありがたいって」

「誰のせいだ……」

毛が逆立つ。

 

「...アイツ?」

運転席を指す

 運転席から短く返事が飛ぶ。

「トドメだけだ」

 

「ほら、恨むならあいつを恨みな」

「お前も共犯だろ」

「多分そう、部分的にそう」

 

トラックは交差点を右へ曲がる。

都市部の高層ビルは少しずつ遠ざかり、辺りは荒れ地が増えてきた。道も心なしかでこぼこに...

 

「はー。 こ  辺も整  し  く  ねえ

      の辺   備  て  れ  かな」

「そこまでは揺れてねえよ」

突っ込みをしたところで、Dのアーマーに搭載した通信機から電子音が鳴る。

ピッ。

Dは片手でボタンを押し応答。

『終わったか。』

低く落ち着いた声。

 

「ああ。」

『捕まえたか。』

「捕まえた。」

『よし』

 Dは数秒黙る。

『飯は何にする?』

「まだ渡してない。」

『....そうか。』

 

トビーは携帯していた通信を繋ぐ。

「ラース、もっと心配してよ」

『なんだ』

「第一声が飯はないだろ」

『重要だ』

「もっと『怪我はないか』とかさぁ~」

『ないだろ』

「まあ無いけど!」

『なら飯だ。お前も腹が減っただろう』

通信が切れる。

トビーはしばらく通信機を見つめたあと、大きくため息をついた

「食い物しか頭にねぇのか、あのトカゲ...」

 運転席から小さく笑い声が漏れる。

「そろそろ動物園にでも渡すか?」

「見世物小屋はちょっとなあ」

「まあな」

 

縄に縛りつけられながらも獣人は傍観していた

(抜け出せるか....?)

時折爪で切ってやろうと画策しているが、やはり縄に届かない。

(あーあ、俺はこんなやつらに....)

少し後悔が出て来た。

 

 

 

 

  ...ふと、皮肉混じりに言う。

「随分緩いやりとりだな、賞金稼ぎ共」

 

「まあ半分そうだけど」

トビーは笑う。

「傭兵だよ傭兵」

 

「ちょっと稼ぎが足りないだけだ」

と付け加えるD。

 

 

 

 

 

 

トラックは舗装された幹線道路を外れ、錆びた鉄骨やスクラップが積み上がる一帯へ入っていく。

 ここは都市の外れ――廃鉄街方面。

 

廃鉄街とは、端的に言えばゴミ山地域。

名の通り捨てられたスクラップや鉄屑、いつからあるのかも分からないデカい機械などがそのまま積み重なって出来ている。

その正体は治安の悪化によって政府が手放した無法地帯、

辺りを見渡すだけでも大企業の高層ビルが立ち並ぶ街並みとは違い、古い工場や改造車両、鉄屑の山が目立つ景観。

ただ一部区域では廃ビルが建ち並ぶ

ピ○サーのウ○ーリーみたいなのを想像すると分かりやすいだろう。

どこも見通しが悪い上に政府の手が行き届いていないところばかりなのでお尋ね者達の絶好の隠れ家でもある

 

 

トラックが細い坂道を登る。

 止まったのは、なんてことも無さそうな廃墟。

人の目もなく、廃墟だらけの廃鉄街は待ち合わせにピッタリだ。

「無茶な話だが、もっと道路ぐらい整備してくれねえかなあ」

Dは車から降りながら話す。

「そんなんしてたらそもそもここがないだろうしな」

 

(どこに行くのかと思っていたが...直接渡す訳じゃないのか...?)

獣人は正式に捕まるまでのやたらと長い時間にうんざりし、半目で二人を見ている。

「もう早く渡してくれ....」

「ああ、悪いな」

 

 

Dは荷台から獣人を肩に担ぎ、トビーは横を歩き、そのまま建物に入っていく

「いるか?」

 

カツ...カツ....

現れたのは、全身黒ずくめの男。帽子を深く被り、サングラスをかけ、スーツの先には黒い手袋。いかにも胡散臭い雰囲気だ。

「連絡が来たときまさかとは思ったが...早いな」

「俺がいるからな」

トビーは笑う。

 

「頼りになるね。さすがだ」

男も笑う。

(仕事渡してくれるのは良いが、毎回場所変わるのが少し面倒なんだよな)

Dは文句を心に秘めた。

 

「それでだノア。こいつを渡すが....お前運ぶ手段はあるのか?」

Dは辺りを見渡す。

「見たところ車も何もないが....」

割れた窓にはその辺に散らばっている鉄屑しか映っていない。

 

男__『ノア・ファスタ』は答える

「連絡が来たときに迎えを頼んだんだが、あんたらが思った以上に早くてな。」

「すぐに来るから安心しろ」

 

「それで、今回の報酬だが」

ノアは奥の方に歩き出す。

スーツケースを持ち出したようだ。

「探し出すのに時間がかかったろ?前より額が上がってな。

スーツケースを開く

「これぐらいになった」

スーツケースには札束が...結構な大金が。

 

「...ほんとにコイツが?」

Dは怪訝な顔をする

獣人も驚いた顔でいる

(ほんとに俺が....?)

 

前回のあとがきを見れば分かるが、彼はそこまで重い罪を犯していない。(窃盗はしている)ただ、別の凶悪犯と顔が似ているため指名手配犯にされてしまった。

 

「政府にも面子があるからな。向こうは必死なようだが、こっちとしてはありがたいもんだ」

「だから違うって...」

「向こうに着いたら好きなだけで話してくれ」

トビーは獣人の耳を触りながら言った

 

「...ま、くれるってんならありがたくもらうさ」

Dはスーツケースを受け取る

「まいど」

 

 

スーツケースと犯罪者の交換を終え、二人が廃墟から出ようとしたとき

「ああ、そうだ」

「?」

 

振り返る。

ノアは端末を操作していた。

「お前らも実感してるだろうが、最近は企業連中の動きがきな臭い」

トビーはビル屋上で見た爆発を思い出す

「あー...たしかに?」

 

「あんだけ派手にやってりゃボロが出そうなもんだが」

 

「その通り。しかし...そんな悪徳企業のニュースなんて流れてこない」

「どこか一社なら分かる。揉み消す力もあるだろう。だが最近は違う」

トビーは眉をひそめた。

 

「違う?」

「兵器開発、人体実験、違法異能研究。噂だけなら山ほどある。だが証拠も告発も、まるで最初から無かったみたいに消える」

「...」

 

「口封じ?」

「それもある。だが、それだけじゃ説明がつかない」

情報屋は廃墟の出口へ歩きながら、小さく笑う。

「最近は『事件そのもの』が消えるんだ」

「事件そのもの?」

「目撃者がいなくなる。証拠が無くなる。企業同士で責任を押し付け合うこともない。警察も軍も、妙に静かだ」

「...」

「だろ?」

情報屋は足を止め、都市方面を横目で見る。

「だから俺は嫌な予感がしてる。企業同士が争ってるんじゃない」

辺りは夕日で赤い。荒れた大地の先には...微かに都市部が見える

「じゃあ何だ?」

「何か一つの目的のために、裏で足並みを揃え始めてる」

遠くのビル群は黄金色に輝いていた。

「嫌な話だ」

 

 

 

 

遠くでサイレンが鳴った。

「もちろん証拠はねぇ。そこは覚えとけよ。情報屋の勘だ」

 

「勘でそんな話すんなよ...」

「俺の勘は高いぞ」

 

ノアは笑って肩をすくめる。

「ま、お前らには関係ない話かもしれん。依頼でも来ない限りはな」

「そうだといいけど」

トビーが苦笑した、その瞬間。

情報屋の表情だけが、ほんの僅かに曇った。

「……いや」

「?」

「なんでもない。ただ、受けなくても向こうからやってくるかも...なんて思っただけだ」

 

Dはため息をつく。

「勘弁してくれ」

情報屋は軽く手を振る。

「じゃあな。生きてろよ、アヴァランチ。」

 

「ああ、お前こそ死ぬんじゃねえぞ」

三人は笑う

 

 

夕日は沈みかけていた。

軽トラックは既に走り出し、スクラップの山の奥に消えていった。

ノアは縛り付けられた獣人を少し見て、頭に触れてみる

 

「....大変だな、お前も」

「分かってるならやめてくれ」

「お金には人を動かす力があるんだよ」

 

ヘリの飛ぶ音が近付いてきた。

獣人はため息をつき、半目で今度は男を見た。




ノア・ファスタ
年齢 42歳
性別 男性
職業 情報屋・仲介人
異能 :残響記録(エコーログ)
人や物に残った「情報の痕跡」を断片的に読み取る異能。
例えば、
机から「ここで誰かが地図を広げていた」
拳銃から「数時間前に撃たれた」
地面から「大人数が通過した」
といった過去の情報を拾える。
未来は分からない。
また、触れて発動する
戦闘力
拳銃とナイフが扱える程度で、異能も戦闘用ではないため
この世界ではあまり強くない
本人も
「俺は逃げるのが仕事」
と言い切る。
性格
飄々としている。金が大好きだが、人情もある。
危険な依頼は「絶対に現場へ行かない」が信条。
情報だけ渡して帰る。



アヴァランチ
トビー・D、他二人から構成される個人運営の傭兵組織。廃鉄街に拠点を置いている


廃鉄街
作者の好きが詰まった地域
基本的にはスクラップや鉄屑で地面が覆われている汚い地域だが、街なので人は住んでいる
汚いスチームパンク(スチーム抜き)
・ただガラクタが散らばっている比較的平原の地帯
・廃ビルが建ち並ぶ旧都市地帯
・中央部に近い謎の巨大機械の残骸
が主な地域構成
作中でも述べたが見通しが悪く政府の手も行き届いていないため犯罪組織の温床と化している
また、巨大機械の残骸はそれ自体が地形になっている側面もあり、唯一しっかりとした足場があるので商業が盛ん
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