「ストラトス、賞金首は受け渡したが、想定より報酬が多い」
『素晴らしい。どのぐらいですか?』
「桁が一つ違う」
『何かの手違いでは?』
「俺の考えでしかないがそうとも思えん」
『ふむ....』
時間というのは本当にあっという間に過ぎる。空は橙、赤を通り越して群青や紺というような暗い色に染まり始めた。
俺達を乗せた軽トラックは道とは言えないような道を走り続ける。どこもゴミだらけなせいで起こる小刻みな振動が少し鬱陶しい
左右には錆びたコンテナや、崩れかけた高架橋。 役目を終えた戦車の残骸だったり、元が何なのかも分からないガラクタ...
これじゃ街というよりは、終末世界
....というのは流石に過剰表現かな
どっちにしろ、まともな人間が住むようなところじゃない
俺達はまともじゃないので住む。
まともだったらこの世界で傭兵なんてしないさ
....もし傭兵じゃなかったら今頃何してたんだろうなあ
俺は補助席の窓から左手を出し、風を受ける。
「疲れたなぁ」
風に乗って鉄の匂いが流れてくる。
正直あまり良い匂いではないけど、1度慣れるとどこか心地よく感じるもんだね
「手を出しすぎるなよ」
「別に良くない?」
「若い頃それで腕をやった」
「ふっ」
「バカじゃん」
「なんだと」
時折Dと会話を交えつつもトラックでこの荒れ地を進んでいく
スクラップの平原を越え、廃ビルの森を越え、街の中央部に差し掛かる頃
やがてスクラップの山々の隙間から灯りが見え始めた。
この廃鉄街、明らかに人が住むのに向いていない土地ではあるが、人々は逞しく生きている。
屋台、酒場、溶接の火花、鉄が打たれる音。
違法改造屋の看板。
鉄屑で組まれた家々。
ここは荒れているが政府が手を出すことはほとんどない。人々は好き勝手に暮らしていた。
「相変わらずうるせぇ街」
俺はほくそ笑んだ。よどんだ空気だが、どこか賑やかなこの光景は中々好きだ
軽トラックは賑やかな地帯を抜け、さらに奥へ進む。
明かりはトラックのライトだけだ。
道路も機能していなかったが一応形だけあった舗装も消え、砂利道へ変わる。
どんどん入り組んだ鉄屑の林へつっこむ
周辺を廃れた建築物で囲まれ、日差しが悪い立地だが、まあ見つからないだろうという安心感はあるね
...俺達「アヴァランチ」の拠点は倉庫を改造しただけのシンプルなもの。
防犯対策も大型シャッターで入り口を閉めているぐらいだが、木を隠すなら森の中。そもそも誰かに見つかった時点で居住区は変えるべきだ。
なので最低限の物になっている。
夜
一応、裏口にはコンテナが積み上げられている。大体空だし運ぶこともほとんど無いけど。
Dはボタンでシャッターを起動、トラックを入れ、再び閉める。
トビーが降りる。
「ただいまー」
声は帰って来ない
「返事ぐらいしてくれよ...いや多分聞こえねえか」
Dは荷台を開け、スーツケースを取り出す。中にはたんまりと報酬が入っているから慎重な動きだ。
そう、このジジイがこの拠点を作ったんだよな。まじでなんでもできる。あのアーマースーツも多分自分で作ってるっぽいし
....そこそこ付き合いは長いが、俺はコイツの素性を知らない。
というのも俺は孤児で、このゴミ山で育ってきたチンピラだった。
こいつも物好きだよなあ。捨て子や孤児なんて割といる。
更に言えば傭兵なんて情がなさそうなのに。
駐車スペースには工具や武器が壁際に置かれている。
便利ではあるが、武器はココに置かない方が良いんじゃないかと俺は思っている。ただ多数決で決まってしまった。まあ貴重なものはちゃんとしまってあるしいいかな
ちなみにバイクも一つだけ置いてある。俺の趣味だよ。
先に両開きのドアを開けると繋がるのは中央広場。二階まで吹き抜けのクソデカ部屋だ。元が倉庫だしな。
Dと俺はそこで一端別れる。といっても金を金庫に入れに行ったんだろうけど
...さて、軽く内装を紹介しておこうかな。
今見えるのは
デカいテーブル、そこそこの大きさのテーブル、小さいテーブル、ソファにテレビ、武器ラック、幾つかのドア....
多いな。まあ順番に見ていこう
興味ない人は最後まで飛ばしてもいいぞ
こっからはあんま本筋に関係ないから
まずは照明。天井に二つ縦に並んでる。ちょっと黄色がかった色ってとこかな。他にいうことはないや
車庫から出てすぐの壁際には武器ラック。車庫に全部置くのは無理だからな。
銃。剣。槍。盾。詳細不明の武器。Dが作った試作武器。
色々置かれている。
試作といっても複雑な機構を作ろうとしてるらしく、あまり上手くはいってないらしい。
...そりゃ斧にエンジン付けたらそりゃ壊れるだろ。半分ぐらいあいつの趣味なんだと
中央奧にはデカめのテーブル。作戦会議や計画はここで練っている。壁際には地図や勢力図なんかが書かれているが、あんまり書き入れたりはしない。何度も消せるホワイトボードはよく使う。
椅子は四席なので机に対して少ない。ちょっと寂しい。
そこそこの大きさのテーブル。食事とか日常の作業とかで使うテーブルだ。テレビもこのテーブルの近くにあるのでまあニュースなんかを食べながら見る。大体使うのはここ。
奧に見えるのは書類が積もった小さいテーブル...にはスーツ姿の男が座っている。なにやら音楽を聴きながら資料を読んでいる様子。
あんまスーツ着てる状態でヘッドホン付けること無くない?
あいつはストラトス。おお、一気飲み...
待てよ、朝からずっと飲んでないか?
フルネームだとレイ・ストラトス。
俺達の中で一番まともで真面目だ。ずっと丁寧語口調で話すレベル。多分アヴァランチはこいつがいるから成立している組織ではある。
ここまでだといかにも後方支援します、って感じだけど、ゴリゴリの肉体派だ。武人ってのがイメージに近いかな?
最近は治安が特に悪いから、あいつも色々情報を探ってるんだろう。邪魔しないでおこうかな。
...ここなら別にスーツじゃなくて良いと思うんだけどな。別に聞くほどでもないので理由を聞いたことはないが、落ち着くからだと俺は勝手に思ってる。
さて、手前側...部屋に入ってすぐ右側には幾つかのドアがある。
調理室、倉庫(ガチ)、資料室の三つだ。その奧には二階へと続く階段がある
一番手前の調理室は誰かが料理している。といっても、Dは地下の金庫に、ストラトスはそこにいるので誰かは分かるが。
その料理している奴はラース。この世界でも割と希少種族の龍人だ。
...いやそこまで希少かは知らないけど。ただ今日捕まえた狼獣人とかよりは全然少ないな。
炎を出せるからあいつはよく料理をしている。といっても大体肉を焼いて食べてるだけだが、自給自足は偉いな。節約だ。
昼に電話してきた時も飯について触れてたな...やっぱ腹減ってたか。
ちなみに冷蔵庫はここにある。
中央は倉庫。この施設も倉庫を改造したものだが、これは本当の意味での倉庫。小道具なり資源なりなりがあるぞ。
ちなみに奥は地下室にも繋がる階段があって、お金とかは大体そこにある。Dもさっき入っていったし今頃報酬を入れてるだろう。
二階はまあ個人の部屋とかだ。特筆すべき物はないかな。
....さて、ストラトスは資料の確認、Dは報酬の確認、ラースは料理。
俺も書類を少し見たいしストラトスのとこに行こうかな