the other ~2番目の騎士~   作:お兄ちゃん

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明けましておめでとうございます。今年一年、去年よりもいい年でありますように。
「遅い」※1月17日時点
アニメも終わり今更な感じもしますが、今年もthe other をどうぞよろしくお願いします。
それではどうぞ!


第14話 火と水のような関係

 束は珠雫と少し会話した後、一輝とステラに相手に任せて騒ぎを起こした学生達を職員室まで連行していた。誰かが逃げ出さない様に縦一列に並ばせ、横についていく形で進んでいく。途中何度か逃げる素振りを見せた学生がいたがその都度列に戻していった。

「じゃ、後はよろしくお願いします」

「ああ。……市花、早く保健室に行ったほうがいいぞ?」

 学生達の引き継ぎを任せた男性教師は、右手で抑えられた束の傷を見て言う。止血のために鞄から出したタオルで押さえてはいるものの、既にタオルは赤黒く変色しタオル自体からちが染み込み出していた。傷の痛みも尋常ではなく、先程まで平気な顔だった束も少し顔を顰めていた。

「……そうですね、ちょっと急いで行ってきます」

 そう言い、束はその足で再び保健室へ向かった。

 

「……で、吐血の次は大怪我か。どうしてここの人は自分を大事にしないのかなあ?」

 保健室にやって来た束に呆れながらもキリコは左肩の怪我の状態を観察し始める。切り口の浅い方は血で固まって止血はしているが、深いところからの出血が止まらずキリコが傷をガーゼで押さえる度に束の肩に激痛がはしる。

「……っ!!」

「これは一回縫ってから包帯で巻く感じになるわね〜。でもここじゃ応急処置しか出来ないから後で一緒に病院に行きましょ」

「……っ、分かりました」

 後でユリーシャに事情の説明をしなくてはと束は思い電話を取り出したが、以前少しの切り傷の一つで号泣しながら救急箱十個を持ってやって来るという出来事を思い出し携帯を直した。応急処置として包帯での圧迫止血が行われ、学ランの上から包帯を巻くという形での処置となった。

「取り敢えず病院に連絡するから、荷物持って来てね。準備出来たら出発するわよ」

 携帯に番号を入力し何処かの病院に連絡を入れるキリコに従い、束は鞄を置きっぱなしで離れたあの一年生の教室に向かおうと立ち上げる。立ち上げる際、肩が痛んだが我慢してゆっくりと歩く。

「市花く〜ん、薬とって〜」

 と誰かの声が聞こえたが、薬中毒で安静が必要な患者に薬を渡してはいけないし幻聴だと割り切り歩を進めた。

 

 再び一年一組の教室に辿り着き教室のドアを開く。教室は片付き、傷がついた机や椅子が端に追いやられていたーーーだけではなかった。

 教室には三人の学生がいた、二人と一人に分かれて互いに向かい合うようにたっていた。

「……」

 二人の方はステラと一輝だった。何故か一輝を庇うようにステラが立ち、相手から遠ざけているように見えた。

 そして、それを見ている相手はそれを見て言う。

「嘘つきは泥棒の始まりですよお兄様?お兄様はいつの間にそんな風に平気で嘘をつく様になったんですか?ああ、成る程理解しました。この女のせいなんですね?この女がお兄様をこんな風にしてしまった、そうなんですよね?皇女でもなんでもこの様な事をされるのは如何な事だと思いますよ?馴れ馴れしくお兄様を呼び捨てにしてお兄様もそれを当たり前の様に女の名前を口にして……。酷い、酷すぎますお兄様。私の事を想っていたのではなかったのですか?私を愛していなかったんですか?私はお兄様が家を離れてから一度たりとも忘れた事はありませんよ?おはようからおやすみ、そして夢の中でもお兄様を考えなかった日はありません。それなのに浮気するなんて、最低です。貴方はお兄様ではありません、私が愛しているお兄様は何処にいるのです?早く教えなさい!もう、もうお兄様は私だけのお兄様なの……。お兄様を騙る偽物はーーー」

 目から光が消え虚ろになり、耳まで裂けているかのように細く鋭い笑みを浮かべ体を揺らした。そして彼女がーーー

 

「ーーーこの世から消さないとね?」

 

 教室を去る前に優しい微笑みを浮かべていた珠雫が、一輝とステラにゆっくりと迫っていた。二人は顔が真っ青になりその場から逃げようしない。よく見ると、二人の周囲に水が撒かれていた。教室を出る前はそのようなものはなかった。

「ああそうだ」

 と、何かを思い出したかのように珠雫は足を止め笑ったまま傾げるように首を倒しステラの方を向く。

「偽物の隣にいる貴女も、後でゆっくり始末してあげる。お兄様の事、洗いざらい吐いてもらうわよ」

 と、右手を真っ直ぐに伸ばしたまま静かに自分の前に翳す。その手には彼女自身の魔力が、小さな渦のように流れていた。

飛沫(しぶ)け、《宵時雨(よいしぐれ)》」

 その言葉と同時に魔力の渦からゆっくりと鋒、刀身が現れる。そして日本刀より短い刀身の後に出現した鍔と柄へと珠雫は手を伸ばし握る。

「し、珠雫!それは不味いよ!もう少し話をーーー」

 青ざめた顔になりながらも、一輝が捲したてるが珠雫はそれに耳を傾ける事はなかった。

「話はもう十分。聞く事はありません」

「……イッキ、下がって。彼女は正気じゃないわ」

 その彼女の様子に何かを決めたのか、ステラが一輝の前に出た。

「ツカムはあんな事言ってたけど……仕方ないわね。傅きなさい、《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》!」

 炎の大剣を顕現させたステラは、ゆっくりと剣先を珠雫の方へ向ける。両者の目には互いの相手のみが映り真剣さを増す。その隙に一輝は二人から離れ、教室の外にいる他の学生に離れるよう促す。

 それをドアの後ろから見ていた束はあの珠雫がここまで豹変したのをいまだ理解出来なかった。

 確か一輝と珠雫が別れたのは中学一年生の頃だったはず。家から追い出され一人になってしまった彼女を訪ね何度も家に行き、慰めた。その時はあんな風に病んではいなかった筈。

 束は、右手で頭を抱える。この事態をどう対処すべきか考えていた。丁度、教室内の学生を避難させていた加々美から事の始まりを聞き状況は把握したが、ただ止めるのは死にに行くものと同じなので対策を考えないといけない。

「いやですねステラさん。私は新入生の中で二番目に優れていてランクもBですが、この霊装には水の力があります。お分かりですか?炎の天敵ともいえる私の『宵時雨』はそう簡単に倒せるとでも思っているのですか?」

「天敵、ね。随分と貧相な霊装だけどあなたには丁度いいわね、体格的には」

「貴女の剣みたいに大きさだけで決まる物じゃないんです。無駄に大きいのは霊装だけにしていただきたいかと」

「僻みはよくないわ。だけどいいわ、寛大な心で許してあげる」

「……この雌」

 ステラと珠雫の、挑発にも意地の張り合いにも聞こえる言い合いは珠雫の呟きを最後に静かになり互いにそれぞれの武器を構える。

 二人が睨み合う中、一輝は二人から離れ廊下へと出た。そしてその直後、

「殺す!!」

 叫びにも似た大声で珠雫はステラに迫り、宵時雨で斬りかかる。《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》とぶつかり一年一組の教室が木っ端微塵にーーー吹き飛ぶ事はなかった。

「……もう一度言わないと分からないのか、もしくはそんなに怪我人に無茶させたいのかは俺にはどうでもいいが」

 珠雫とステラの間に入るように、二つの霊装を止めた者がいた。魔力を纏い左肩が赤く滲んだ左腕で宵時雨を受け、右手で《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》の刀身を握りながら静かに話す。

「片腕は炎、片腕は冷気に包まれる……か。洒落になんないな」

 焼ける痛みと冷やされる痛みの中、彼はゆっくりと珠雫の方へ顔を向ける。その額には血管が走っているかのように筋が浮かんでいた。

 

「さっき『実像形態での霊装展開はダメだ』って言ったよなあ、珠雫ぅ?」

 

 束の顔を見たからなのか、或いは束の声に恐怖を感じたのか分からないが珠雫は虚ろだった目を大きく見開き振り下ろしたまま動かなくなった。ステラも刀身を握る手と肩を凝視していた。

「ツカム!その肩……」

「全く、ここは喧嘩とか争い事をなんでも力で……しかも人を簡単に殺せるような物で解決しようとする。別に使うなとは言わないが、馬鹿と同じ事はするんじゃねえよ」

 ステラの言葉を無視し、宵時雨を受け止めた左腕に力を込め徐々に刀を珠雫の方へと押し返した。《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を握る左手も、ゆっくりと放す。

「霊装を消せ。二人とも」

 束の言葉の後、珠雫とステラはそれぞれの武器を持つ手を開き霊装を霧散させ武器を仕舞う。それを見届け束も両腕の魔力を消す。

「っふう……何とかなった、かな?」

 両手を開いたり閉じたりし、調子を確認しながら手袋を見る束。それに対し当事者の二人は終わったにも関わらず顔を俯き立っていた。

「ん、どうした二人とも?」

「いえ……その、すいませんでした」

 疑問に思う束に、珠雫は直立の姿勢から頭を下げ謝罪する。釣られてステラも遅れて頭を下げる。

「アタシもごめんなさい。止める為とはいえ霊装出しちゃって」

「二人とも、謝る相手を間違えてるぞ」

 そんな二人に束は静かに口を開く。

「俺は二人の喧嘩を止めただけ、俺には何の迷惑もかけていない。だけどこの教室の生徒はどうだ?喧嘩の種になったイツキ、加々美さん……多くの人が明日からの学校生活を送れなかったかもしれない。怒るつもりはないけど、これだけは言わせて欲しい」

 と、一度言葉を区切りステラと珠雫の頭に片手ずつ手を置く。肩から滲んだ血が上腕を伝っていたが、微笑にも似た顔で二人の顔を交互に見ながら続ける。

「周りを巻き込む事、迷惑になる事で傷つく人がいるのを忘れるな。それが今分かればそれでいいから」

 置いた手で二人の頭を軽く撫でた後、束は教室の外へと誘導する。

「今回は前のアホ共のより処分は軽いほうだろう。一応先生への説明は俺からもするけど、二人からも話してくれ」

 束は二人を見、後ろへ従え職員室へと向かった。赤く滲んだ肩を手で押さえ顔を顰めながらもゆっくりと進む。

 二度目の一年一組の騒動は終息した。また、その事件から一年生たちは自分達が持つ異能の力に対しての考えを改めるようになった。




病気もなくいい一年でありますように。
「お前正月に高熱でダウンしたからその願いは叶わない」

どうも皆さん、お兄ちゃんです。二人の喧嘩のお話は如何でしょうか。教室は木っ端微塵になったら階下に被害凄いことになるんですが……
原作長いしどこかで見たような言葉あるし(121ページ)鉤括弧の使い方なってないし……あと珠雫の台詞は頭に出てきた言葉並べただけなのでオリジナルです。
処理については次回になります。まあ真鍋くん(本編名前なし)達の方が重いですけどねー原作一切書いてないのはどうしてなのー……
あと、『メイド云々ご主人云々』『俺の腕(ry』『お風呂シーン』カットです。読んでて嫌になったので。

それではまた次回!







《作者と束の英雄譚講座》
・力を振りかざすという事
はい、今回も始まりました《作者が束に聞きたい千のこと》。
「オイ」
はい、冗談です。気を取り直して始めましょう。お題は上の通りです。
「色んな作品で魔法やら武器やら使って周りを脅したり、誇示したりっていうのがあるけど力を『振りかざす』ってどういう意味?」
そのままっていうか、要は『物持って暴れる』って事。今回の場合この作品は大人に達していない高校生ぐらいの年齢の子が自分の武器を持っている、しかもそれが普通じゃない力がある。その認識が『英雄譚』の登場人物は足りないんだよねって事。
「例えるなら包丁片手に振り回している感じか……今回の話も喧嘩の脅しや恨み?で普通に出してるしそれは賛成かな」
こういう問題って学園で問題にならない普通?
「確かにこんな事が頻繁にあったら今回みたいに止めない限り、死人が出てもおかしくないな」
そういう問題防止のために、破軍だけじゃなくすべての学園で『力を持つことの意味』を教えるべきだね。
「その話はこの作品でもしていくのか?」
んー、そういう場面になったら書くかもね。というか君に言わせる事になるけどね。
「じゃあ今回はこの辺で」
それではまた〜

※ちなみに、「傅く」の意味は1 人に仕えて大事に世話をする。2 大切に養い育てる。です。ステラの言葉をこれに置き換えると「《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》がステラを世話する』という……ちょっと意味が分からないです……
あと「英雄譚」にルビられている『キャバルリィ』。スペルは「cavalry」、意味は「騎兵隊」……タイトルと合わせると『落第騎士の騎兵隊』……え?
さらにアニメの英文ルビは「a tale of worst one」日本語で「一番下の物語」……ん?
あとDVDの箱出したらキャラクターの服引ん剝いた差分て……それ原作でもしてますよね……。

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