それでは続きをどうぞ!
第5話 「3000度は太陽の半分だコラ!」
「……で、何で僕達が捕まえられてここに連れてこられているんですか?」
「当たり前だろ。変質者が出たとの通報、そして警備員に対しての詰問。連行の理由には十分だと思うが?」
束と一輝は三人の警備員に理事長室へと連行されていた。
警備員に束が質問しようとした直後、突然三、四人に増えた警備員が現れ取り押さえられた。
「部屋の外に不審者がいる」という通報のもと駆けつけたのだそうだ。
「その通報よりも『他人の部屋を本人の許可なく使用している』というのがそもそもおかしいのではないですか?」
「……それについては謝ろう、許可したのは私だからな。だが断ろうにも断われない相手だったんだ」
「誰ですか、そんな傍若無人な人は?」
「君が質問攻めしていたあの女の子だ。彼女は魔導騎士界では超VIPなんだぞ?」
「もしかして……ヴァーミリオン皇女ですか!?」
一輝が驚きの声を上げる。
「誰だそれ?」
初めて聞く人名に束は首をかしげる。そんな名前を聞いたことがなかった。
「誰って、この人だよ!ステラ・ヴァーミリオン!君も会っただろ?」
と、束の目の前にスマートフォンがかざされる。その画面には『十年に一度の「皇女」騎士、来日』という見出しと共に、豪華なドレスを着た赤い髪の少女が載った新聞記事が映し出されていた。
「ふーん」
「いやそこは驚くところなんだけど……」
呆れ顔になりながらも一輝は幾つかの記事を見せる。ヨーロッパの小国の一つであるヴァーミリオン皇国の第二皇女であること、破軍学園に歴代最高成績での首席入学をすることなどが書かれていた。
「今は平成だろ。なんで皇国があるんだよ……」
記事を読みつつ、束は誰にも聞こえないように小言を言う。束が知っている国は大抵首相や大統領が治めており、皇帝が治めているなんて聞いた事がなかった。この世界では当たり前に存在しているのだが。
「にしても皇女様が来るなんて、すごいですね」
スマートフォン画面を眺めながら、一輝は学長ー破軍学園理事長、
「ああ、しかも能力もずば抜けている。全ての能力、特に
にやけた顔で一輝を見る黒乃。それに対して一輝は申し訳ないように眉を寄せる。しかし、
「進級しようと思えば出来ましたよね?そうしたのは貴女ですよ、学長」
束は腕を組み学長を睨む。目を少し細めた鋭い目線だった。
「おお、怖い怖い。一輝君の相方を怒らせると大変だ。さて、話を戻そう」
にやけ顏のまま束を見、軽く降参のポーズで腕を上げていすを前向きに直す。
「その皇女様絡みでトラブルが起こったとなれば、下手をすると国際問題になりかねない。君達に非はないが謝罪はすべきだ。特に男なら、な」
「分かりました」
「……男だからって都合がいいことで」
「束君、返事」
「はい、はい」
二人がそれぞれ返事を返す。納得がいかない束は文句を言いつつも返事をした。
束の気の抜けた返事と同時に外からドアが四回ノックされる。
「どうぞ」
黒乃が入るよう促すとドアがゆっくりと開く。
「…………失礼します」
ドアをこちらから見えないように斜め立ちで閉め、室内で学長に頭を下げる。
先程と同じ破軍学園の制服を着たステラその人だった。
「あら、二人揃っているじゃない。逃げなかったのは賢明ねこのストーカー」
顔を強り、二人を貶す発言をするステラ。
「ストーカーではありません。しかし、皇女様に誤解を招くような事をしたのは事実です。申し訳ありませんでした」
「僕もそうです。誤解されてしまった以上責任は僕らにあります。ごめんなさい」
束と一輝はステラに頭を下げ謝る。部屋の前に居た、勝手に部屋に入られたとはいえ謝るべきはこちらだと二人は思った。
「……潔いのね、あなた達。日本の侍の心意気ってやつかしら」
強ばった顔を和らげ、微笑むステラ。
「来日していきなりストーカーに遭うとは思わなかったわ。どれだけ罪を被せてやろうかと……だけどここまでされたらこっちが申し訳ないわね。あなた達がきちんと謝ってくれたのだから、私も皇族として寛大な心で応じます」
そう言うと二人に浅く頭を下げる。それを聞いた一輝と束は顔を上げ、見合わせる。
「良かった……ありがとうございます」
「そんなあなた達に免じて……そうねえ」
と、ステラは腕を組み考える。二人はあまり気にしていないが腕組みにより胸元の膨らみが強調される。
数秒して何かを閃いたと言わんばかりに手を軽く打ち、
「侍らしく、腹切りで許してあげるわ!」
と言い放った。
「…………は?」
「いやちょっと待って。え、大負けで切腹なの!?」
「確かにやり過ぎかもしれない。あなた達が部屋の前に居ただけっていう主張も認めるわ。でももしアタシが部屋に入った最初からずーっと居たとしたらどう?」
「ランニング帰りだったんだが……」
「着替えもバスタイムも見ているかもしれない!」
「そんな体力は残っていないよ……」
「そういうことをしていた可能性があるとしての判断よ。本当は国民全員で石打ちするところよ?今回は特別」
「覗きと誤解されて切腹ね……まあ大丈夫だろ」
ステラの言い分にやり過ぎだと意見する二人、それをまさに他人事として聞く黒乃と違う反応をする。
「まったく、たかが部屋の前に居ただけで何で切腹しなきゃあかんのだ」
「た、たかがですって!?」
束の呆れ文句にステラの逆鱗に触れ、怒りを露わにする。
「ちょっと束君それはー」
「信じられない!せっかく許してあげようとしたのに何よその態度!?」
「そりゃそうだろ。部屋を貸した理事長もだが、お前も部屋を使ったことに何か言うことはないのか?」
「いいじゃない、これから使う部屋なんだから!」
「これから使う?理事長、どういう事です?」
束が黒乃に問い掛ける。机に肘を立て、顔の前で手を組み黒乃は言う。
「あとで話すつもりだったんだが。黒鉄、ヴァーミリオン両名は今年度から同じ部屋で寮生活をして貰う。皇女 様には先に部屋の確認をと思ったんだが……いやいや、まさかこんなことになるとはね……」
黒乃にとって意地悪で黙っていたのだが、当事者達が言い争うとは思っていなかった。大変な事をしてしまったと心の中で反省する。
「……なるほどね。だから部屋に入れたってことか。だけど、事情を説明すれば済んだ事。皇女様も知っていたはず」
「……何よさっきからその言い方!ムカつくわね!」
ステラの髪が炎のように揺らめく。熱が束達にも伝えるように揺らめきが大きくなっていた。
「なんだ?寛大な心で応じるんじゃなかったのか?」
「責任を取ると言ったのはそっちよ!」
「まあまあステラ皇女、落ち着いて」
「申し訳ありませんが理事長先生、邪魔しないでください」
と、右手の平から赤い燐光を散らし始める。
「炎みたいな髪にその性格……まさに炎だな」
我慢していた鬱憤が爆発したのか、束は挑発が止まらない。
「……潔いという言葉は撤回するわ。所詮アタシに許されたい一心の謝罪だったのね、無礼者。もう許さないから」
ゆっくりと光を放った右手を束にかざす。ステラの髪は逆立ちながら揺らめきを増やしていく。
「傅きなさい!《
光が球となり、形を変える。球は棒状になりステラはその棒を手に取った。
その直後、棒は炎を纏い黒い持ち手で橙の大剣が姿を現した。
「覚悟しなさい。アタシに歯向かった事、後悔させてあげるわ!」
右脚で地面を蹴り、一気に束の方へと加速。両腕で《
「来てくれ《
一輝が束の前に立ちはだかり、自身の
直後、刃同士がぶつかり金属の快音が響く。触れた部分が火花を散らしながらお互いが拮抗する。しかしステラは止まられたにも関わらずニヤリと笑った。
「浅はかねっ!」
その言葉の後、《
「熱っ!?」
一輝は堪らず陰鉄で《
「当然よ!アタシの
「アホかお前は」
それは一瞬の出来事だった。ステラの発言の直後に束は一気にステラの目の前に現れ、黒い靄に包まれた右手を振り上げる。
右手は手刀にし、そのままステラの頭に振り下ろす。
「っ…………!?」
痛みで顔をしかめ、頭に手を当てる。目に少し涙が浮かんでいた。
「いったいわね!何よ!」
「アホかといったんだよ。3000度は太陽の半分だコラ!そんなんが炎出して服焦がすだけじゃ済むか!人間なら蒸発は確実、寧ろこの学園無くなるわ!精々800度と言え!」
束には譲れないものがある。それは束の考えの一つであるが、どんな目に遭おうと変わらない。
「俺はそういう間違ったことが大嫌いだ」
えーお色気シーンは全カットしオリジナルにしました。期待していた方申し訳ありません。でも普通はああいう部屋の鍵開けっぱなしや理事長室で惚気が起こることはないかな?というのが作者の考えです。
でもまあ、こんな可愛い子だったらあり得るのかな?
因みに、3000度は太陽の半分だと書きましたが同じ温度だと原爆の爆心地がそうだったようです。人間だと骨どころか蒸発します。まったくステラさんは嘘をついているということですね……
感想、批評募集中です。お待ちしています。
※6月8日 3000度のくだりを修正しました。