the other ~2番目の騎士~   作:お兄ちゃん

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読んでいただく前に2つ作者から話を。
1 やっと戦闘シーンです。楽しんでくれれば幸いです。
2 1話で完結させると、一万超えてしまうペースになる恐れがあったので、前後で分けました。ごめんなさい。


それでは、どうぞ!


第8話 炎と修羅(前編)

 第8話 炎と修羅

 

 黒乃の宣言と同時に、ステラは右脚を踏み抜き一輝に向かって加速した。

 直後、体の横に先を下に向け構えていた《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を背中に回し、学長室の時と同じ振り下ろしの構えをとり、さらに加速する。

 突進し、間合いを詰めていくステラに対し一輝はその場に留まり斜めに刀を上げーー左柳に構える。

 この構えは相手の攻撃を受けつつ、勢いを殺して反撃に移ることが出来る構えだ。

 だが《陰鉄》で《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》の振り下ろしを受け止めることは一輝はしない。

 ただ、迫るステラを見つめるだけだ。

「ハァッ!」

 《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》の間合いまで近づいたステラは左脚を前に出し、上段から右袈裟に大剣を振り下ろす。

 《陰鉄》が《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》に触れた瞬間、一輝は右脚を下げ体を後ろに下げることで攻撃を空振りさせる。勢いある攻撃はそのままの勢いで、

 闘技場の地面に亀裂を走らせながら剣先を地面に刺したまま止まる。

 それを見た一輝は下げた右脚を前へ出し、右袈裟にステラを斬りかかる。

 大剣は破壊力のある武器だが、刀身を含めた剣自体は相当重い。剣が刺さっている状態からの反撃は不可能、そこを攻撃すれば決まりだ。一輝はそう思った。

 が、刀は届かない。

「!?」

 陰鉄の刀身が《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》に当たり、止まっていた。

 一輝の攻撃に、ステラが咄嗟に斜めに刺さっていた刀身が垂直に立て、一輝の攻撃を防いだのだった。

 一輝はバックステップで後ろへ下がり、正眼に構え直す。

「いい動きね。空振りした直後に狙ってたなんて」

「まさか防がれるとはね……」

「私は能力だけの伐刀者じゃない。剣術だってすごいのよ!」

 刺さった《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を片手で引き抜き体の横に脇構えし、ステラは再び突撃する。

 それを見た一輝は突撃を右に避けるべく、左足に力を込め踏み抜き加速する。

 ステラの《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》に対して一輝の《陰鉄》には打ち合うほど頑丈さはない。しかも相手は武器は大剣、速度では一輝の方が速く動ける。

(ここは空振りを誘ってスタミナ切れを狙う!)

 ステラは加速しながら真っ直ぐ進んでくるのを、一輝も同じく真っ直ぐ走り寄る。距離は互いの間合いに近づいていく。と、一輝は踏み出した右脚をブレーキにし、右へ方向転換する。

(フェイントを掛ければすれ違いで攻撃できる!)

 空振りの隙を作ろうとする一輝。

 それをステラは、

「避けるなんて失礼じゃない?」

 足底に自身の魔力を纏わせ、一瞬前まで一輝がいた場所の直前で同じように急ブレーキをかけることで前から左へ直角に進路を強制的に変えた。髪を炎のようにうねらせながら徐々に距離を詰めていく。

「急な方向転換を誘って、隙を作ろうとしていたようね」

「……!」

 一輝に追いつき、《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を一輝の眼前に振り下ろし足止めする。剣先が埋まった《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を再び引き抜き、一輝に剣先を向ける。

「舐められたものね。魔力は纏うことで攻撃や防御、能力の上昇が出来る。さっきみたいに足底に集めるようにね。しかもアタシの魔力はそこらの伐刀者とは質も量も多い。あなた達みたいに残りの魔力を気にせずに戦うことができるのよ!」

 一旦剣を引き、そこから《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》の突きを繰り出す。《陰鉄》で弾くにも力が強く、刀身を耳障りな音を立てながら擦られる。両手に力を込めようやく剣を弾き、一輝も反撃する。

 

 

(これが、Aランク伐刀者の戦いか……)

 束は二人の戦いを見ながら思った。剣戟は絶えず快音を響かせ、火花を散らしながらも続いている。

 ステラの魔力は、伐刀者の平均魔力の三十倍の量がある。しかも触れるだけで火傷を負う程に熱を帯びた炎の(つるぎ)は本人が意図せずとも相手を牽制し続ける。近距離武器を使う騎士にとって、手強い相手である。それともう一つ、

(皇女さんのあの剣技……)

 ステラの剣技から舞のように美しいながらも、舞から繰り出す研ぎ澄まされた一閃の攻めを感じていた。

 観客席を見渡すと、皆ステラの剣術に魅せられ歓声を上げることなくステラに釘付けになっている。それ程に洗練されているのだ。

 魔導騎士、特に学生のなかで武道や剣術を極める者はあまり多くない。

 理由としては、成績評価にそのような項目が存在していないからというのがある。いくら武道や剣術を極めようと、成績が上がる事はない。だから大半の騎士は自身の魔法などの能力を鍛え、強くなるのが主流になっている。

 しかし、残りの騎士はそこから先へと進む。彼らは魔法を鍛えるだけでなく、その魔法に合う剣術を加えることで独自の戦い方を作り上げる。その戦い方があるからこそ彼らは強い。

 強さへの渇望がある故に。

 ステラが《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を使う振るい、一輝を追い立てる。自分に襲い掛かる大剣を、《陰鉄》の日本刀という細い刀身ながらも一輝は防ぐ。

 その一輝の防御を見て、束は顎に右手を当て薄笑いを浮かべる。

(始まったか。さて、そこからどうする?イツキ)

 

 

(さっきからおかしい)

 炎の剣を相手に斬りつけ防がれても攻撃を緩めずに攻めるステラは、攻め始めからの違和感を感じ続けていた。

 《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》の一撃は大剣の攻撃力と炎の熱、この二つが合わさることで強大な一撃を繰り出す。

 それを防ぐことは大剣を押し返す力がない限り難しく、仮に受け止めても刀身が纏う炎に燃やされる。つまり、《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》は近接戦闘を有利に動くことが可能なのだ。現に、ステラの攻撃で一輝は片手で持つ刀を自身の前に構えて防御する。そして衝撃を殺しきれずに反動で後ろに飛ばされる。

 その時、ステラは大剣に伝わる手応えで疑問が確信に変わった。

(剣を当てた時の衝撃が弱い……攻撃を受け流してる!?)

 《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を相手に振り下ろす。その攻撃は受け止められる。

 先程と同じように、一輝は後方へと体ごと飛ばされる。それは大剣の威力によるものとステラは思っていた。

 受けたのではない。一輝は大剣の軌道上に刀を出しただけだった。大剣の衝撃を刀で受けると同時に、その力を後方へと下がる力に変えバックステップをしているのだ。

(……また!)

 パワーを受け流すだけでなく、自分の力に変える防御。それは力の加減を完璧に出来ないと行えるものではない。僅かに受ける力が強いと豪剣に腕を粉砕され、弱くすれば力が足りずに斬られる。

 力の入れ具合、刀身を当てる角度、打ち合うタイミング全てを間違えることなく行う。それを一輝は鋭い眼差しを変えることなくこなす。皇国で鍛え上げ、大会を優勝するまでに自分のものにした『皇室剣技(インペリアルアーツ)』を。

 その事実はステラのなかで感情となって現れる。

 アタシの目の前の敵を、恐るという感情がーー

 しかしステラはその感情を掻き消す。この戦いで必要のないものだ。

「逃げるだけなんて臆病なのね!」

 誤魔化すように前の振りより力を込め、剣を振り上げる。上げた剣をさらに振り下ろし攻撃を重ねる。

 それを一輝はーー何も反応しない。

 正確には『剣戟を行っているが、ステラに対して何も答えず何もしなかった』である。

 ただ言えるのは、一輝の目はステラの目を見ていない。見ているのはステラの腕や脚、そして体の動きだ。

 その目をステラは、そして束も知っている。

(アタシの剣技を…観察している?)

(なるほど、そうするか)

 束は顎に当てていた手を戻し、腕を組んでほくそ笑む。

 一輝は見切るつもりなのだ。ステラの『皇室剣技(インペリアルアーツ)』を。そして、

「アタシの剣は見切れるほど安くないわ!」

「ーーよし」

 その一言から、戦闘の流れが変化した。

 試合開始から五分、一輝が攻めへと転じた。

 刀を両手に持ち上段からの振り下ろし。その攻撃はステラに苦もなく止められる。

 

 はずだった。

 

「!?……く!」

 あまりに重い衝撃にステラの脚が地面に跡を残しながら下がる。後ろへの力を削るよう《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を地面に突き刺し停止する。

 その事実に、ステラ混乱した。

(何故!?この人の刀にこんな力はないはず!)

 ステラは大剣を引き抜きながら、今の光景を頭の中で再生した。一輝が放った剣筋をステラは知っていた。

(『皇室剣技(インペリアルアーツ)』の振り下ろしーー!)

「その顔は、まさか自分と同じ剣技を使えるなんて驚いた、って感じだね」

 右手に刀を持ち、少し腕を曲げた状態でステラに切っ先を向ける一輝。試合前の微笑を浮かべて。「ステラさんの剣技はもう見切った。そして、僕はそれを超える」

 自分の体に刀を戻し、両手で右腰だめに構える。そして一輝は前に出した左足に力を込め、走り出した。

 ステラが刃先を上にし防御の姿勢をとったのと同時に、《陰鉄》の左斜めの斬り上げが《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》の刀身を打つ。

「っ!?」

 大剣を持つ両手がこの戦いで小刻みに震えるぐらいに重い力だった。

 だが一輝は、止まった《陰鉄》を自分に引き左肩を前に出して左の回転斬りでさらに追撃する。

「っまずい!」

 これ以上の防御は危険と判断とし、後ろへと跳躍して攻撃の勢いを軽くさせ大剣で弾く。

 両足のブレーキで止まったステラは、目を鋭くさせ一輝を睨む。

「まさか……剣術で負けるなんて……」

「ステラさんの『皇室剣技(インペリアルアーツ)』を完璧にコピーしたし、さらにそれを超える方法も見つけた。これでもう、剣術で負けることはない」

「コピーって……そんなこと簡単に出来るわけがないでしょ!」

「僕には出来る。他人の剣を盗むことでしか強くなれない人生を歩んできたからね」

「剣を、盗む?」

 一輝の言葉はステラにはすぐに理解できなかった。

 

 

 一輝は黒鉄家から見放され、何も与えられずに生きてきた。強くなる道を閉ざされた。

 どうすれば強くなれるのか?どうすれば自分の能力を伸ばせるのか?悩み続けた。

 そして一輝は、()()()()()にした。自分がその剣術を使えるようにすればいいと。剣筋、構え、刃の向き、足運び、間合い、目線、力加減、持ち手、振り方、剣のつなぎ。全てを()()

 それを自分の力にする。そうすれば、相手を超えることができる。完全上位互換も旧式も全てを。

(それが、イツキの戦い方。模倣剣技(ブレイドスティール)だ)

 束は思い出す。一輝が夢を叶えるために必死になった日々を。そして束に言ったあの言葉を。

『諦めなくていいと手を差し伸べられる大人になる。そして……』

 右手がズキズキと痛む。束は革手袋に包まれた右手を見る。

 いつの間にか、開いていた手が拳を作り震えるくらいに力を込めていた。

「……」

 それを束は少し見つめ、右手の力を抜いた。そして何事もなかったように再び戦いの場へ目をやる。

 

 

 ステラはその場で固まってしまった。自分が誇りとしていた剣術を盗まれ、自分と同じ剣を振るう相手の前で、一歩も動けなくなった。

 ほんの少しの魔力しかない、格下と見下していた黒い刀身の刀を持つ男。そんな相手にステラは

 恐怖に近い何かを持ってしまった。

(剣術で……勝てない……こんなに強いなんて!)

 《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を持つ手が震える。疑いようのない強者だと本能で感じている。それでも、ステラは諦めなかった。Aランクの騎士であり、国のためにここでやめるわけにはいかなかった。剣を持つ手に力を込める。

(いや、まだある。剣を見切られたなら、それを利用する!)

 剣先が下がった《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を上向きにする。そして、一気に右足を踏み込み前進する。

 《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を背中にまわし、打ち込みの姿勢で一輝の間合いに入る。

 瞬間、ステラはは渾身の力で打ち下ろす。

 直後に一輝は右手で《陰鉄》を振り上げる。打ち下ろしの攻撃を打ち消す、防御の軌道を読んでの行動。が、ステラはその動きを一瞬の間に見、ほくそ笑む。

(かかった!)

 打ち下ろしが当たる直前に《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を止め、後ろへ下がる。

『攻め』から『逃げ』への挙動。

 一輝が『皇室剣技(インペリアルアーツ)』を見切っているなら、それを逆手にとって隙を作る。打ち下ろしを相手の右脇腹に薙ぎ払いをかけて勝利する。

 それがステラの狙いだった。

 ステラから見て、左下から右上へと斬り上げた《陰鉄》は空振りになり反撃は不可能。

(これで、アタシの勝ち!)

 確信をもって《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を脇腹目掛け振るう。その刃は一輝に近づき、

 

 左柳の構えから脇腹を守るように縦一文字になった《陰鉄》に当たり、止まる。

 

 攻め手を変え、裏をかいた一撃が届かなかった。

 ステラの狙いは一輝には通じない。剣術をコピーし、相手以上に使いこなしているからこそ相手の攻め方を読める。

(……)

 束は二人を見ているだけで何もしない。そして一輝は、

「剣術の裏をかいて隙を作り、止めをさすという慢心。それが君の敗因だ。戦いの場でそんなことを思うならーー足元を掬われるよ?」

 左回りに大きく刀を振るように刀身に《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》を滑らせつつ弾き、

「ハァァ!!」

 《陰鉄》をステラの右脇腹を薙ぎ払う。

 

 同時に闘技場内の音が、全て消えた。

 




(・8・)

どうも皆さん、お兄ちゃんです。
一ヶ月近く待たせてしまい、申し訳ありません。もうね、テストやら課題やらアニメやら映画やらで全然書く時間が作れないという(アニメや映画に時間を削る?なにを言ってるんだ?)事態に追われてました。
あとは戦闘描写があまりにも難しく進まないのもありました。
動きはできるだけこんな感じで動くという風に書いたのですが……どうでしょうか?

さて、昨日久しぶりにログインしたんですけど……3000超えてるんです。
あれ?前回2000記念だった気が……
まさかこんなに読んでいただけるなんて作者感激です。ありがとうございます!

さて次回はいよいよ決着。ご期待ください。

それでは、また次回!

7.4. お兄ちゃん

七夕の願い事 世界平穏

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