ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件。せっかくなので鬱フラグをへし折って殺されるはずだった女の子たちを助けます― 作:哀原正十
「やぁ。光津キョウくん」
「……やぁ、アキラか」
光津キョウは食堂にいた。カレーライスをもぐもぐと食っていた。僕は今日は牛丼を頼んで光津キョウと同席した。
並んで食事を食べる。食べながら、会話を交わす。
「元気ないね」
「そりゃぁ、ハルカが死んだ後だからな」
「……人が死ぬのは、哀しいよね」
「ああ、哀しい。やりきれないよ……」
「……もしもだよ」
「ん」
「もしもハルカちゃんが死ぬ代わりに他の人が死ぬけどハルカちゃんを助けられるとしたら、キョウくんはどうする? 助ける?」
「悪趣味な質問だな」
「……そうだね。ごめん」
「……答えなんて決まってる」
「え?」
「その時の全力を尽くすだ。両方助かる道だってあるかもしれないだろ。だから、全力で両方とも助ける道を探すよ。例えその果てに両方死ぬことになったって、全力で助けてやるんだ。それが俺の答えだ……」
「……キョウくん」
その明朗な答えは。
ようやくの迷いからの脱却を僕に与えてくれたように思えた。
「ハルカは死んだ。それでも俺はその時の全力を尽くした。そうだ。それが答えなんだ……ありがとうアキラ。ようやく少し迷いの森から抜け出せたような気がするよ。偶然の問答だったけど。それでもだ」
「あ、ああ、うん。僕も、ちょっと悩みが晴れたよ。こちらこそありがとう」
「うん。としたらこうしちゃいられないな」
光津キョウくんはカレーをバクバクと食べて、そして立ち上がった。僕は問うてみる。
「どうしたの急に」
「特訓だ。今より強くなる。こうしちゃいられない」
「……あのさ。良かったらだけど」
僕もまた牛丼をかっこみ、立ち上がって、光津キョウ君に告げた。
「僕と模擬戦訓練しない? 全力で相手するよ」
【模擬戦闘室】
「……アキラ、君、こんなに強かったのか」
「うん。これでも1%も本気は出してないよ」
「マジか」
「大マジ。さぁ、キョウくん」
僕は魔力覚醒によって魔力を帯びた体で、武装覚醒で生み出した黒い刀を手にして、キョウ君に告げた。
「いくらでもかかってきなよ。全力で君を鍛え上げてあげるから」
「う、うおおおおおおおおおおおおおおおお!」
キョウくんは光の剣を手に僕に向かってくる。僕はもう何十度目か分からないその突進を迎え撃つべく、キョウ君に向かい合うのだった。
……そうだ。僕のせいでキョウ君は弱くなった。
これからも僕のせいで成長の機会を奪われる。
ならば。
僕がその成長の機会をあげればいい。
ヒロインのハルカは死んだ。どちらにしろもう原作通りのストーリーラインに戻る事は二度とない。原作と同じことをやったってもう駄目だ。
だが、それでも。
今出来る全力を尽くすことはできる。
光津キョウ君を鍛えることはできる。
それが僕の結論だ。
幸い、光津キョウに何が出来て何が出来ないのかその全てを僕は知っている。
ならば先んじて出来ることを叩き込み、広げていけば。
強さという点ではあるいは原作以上に出来るかもしれない。
現実逃避気味な思考かもしれない。だが、僕はもう決めた。
これからも助けられる人は助ける。
そして、キョウ君も成長させる。
両方に全力を尽くす。
覚悟は決めた。
あとは。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「遅い! 光の剣のポテンシャルはそんなものじゃない!」
全力で決めた事をやるだけだ。