ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件。せっかくなので鬱フラグをへし折って殺されるはずだった女の子たちを助けます―   作:哀原正十

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第14話 決戦

「……覚悟はよろしいですか?」

 

 5年A組。

 

 神宮司ルナが通うクラス。

 

 そのクラスには現在複数人の死者があった。

 

 魔人の襲来による犠牲者だ。

 

 5年A組に来襲した魔人がニヤリと笑う。

 

「君は強くなり過ぎた。鏡の魔術士よ。生かしておけば我らが魔族が覇を握る障害となる。この先もっと強くなるだろう。だから、今この場で命を摘み取る」

 

「できるものならやってみなさい。クラスメイトを殺されて私は既にカンカンです」

 

「ならば、遠慮なく」

 

「ッ!」

 

 魔人が疾駆する。その凄まじき速さにルナは両手で攻撃をガードするので精一杯だった。激音。

 

 パリィインン!

 

 窓ガラスが割れ、ルナは校舎外へと弾き飛ばされた。中空で姿勢を整え、5階という高さから落ちたにも関わらず鮮やかに地面へと着地する。果たしてその着地した場所は――。

 

「体育館の屋上、ですか」

 

「そこが君の墓場だよ」

 

 魔人も当たり前のように体育館の屋上へと着地する。ツタツタとルナへと歩を進める。

 

 ――金色の頭髪、眉目秀麗な容貌。内側の赤い黒いマントを羽織り、タキシードのような服を纏っている。美しい。魔人と言われなければ人間と見間違うほどに。しかし、それは油断を誘う特徴とはならない。

 

 ――魔人は人に近しい個体程強い。つまり人と見間違う容姿をしたこの魔人は先日倒した鬼の魔人メイキス・トライオーガとは比べ物にならぬほどの強者ということになる。

 

 魔人が恭しい動作で一礼する。そして、名乗りを上げた。

 

「一応自己紹介しておこう。私は魔人イルミナティ。君を殺す者の名だ」

 

「私はヴァルハラ学園生徒会長神宮司ルナ。あなたを討滅する者の名です」

 

「ふっ、負けん気の強い美女は嫌いじゃない。殺す対象でなければデートに誘っていたものを、残念だ」

 

「世迷言を。人殺しめ! 武装覚醒! 魔力覚醒!」

 

 神宮司ルナの手に鏡が現れる。その身に白きオーラを纏う。そして――。

 

「魔境覚醒――神鏡弧極(しんきょうこごく)

 

 世界を塗り替える結界が張られる。鏡が無数に浮遊する特殊な空間が顕現する。魔人イルミナティは笑みで答えた。

 

「その程度、こちらも。武装覚醒。魔力覚醒」

 

 その手に禍々しい杖が現れる。赤黒いオーラを纏う。そして、

 

「魔境覚醒――腐敗天獄(ジェノロスタァ)

 

 世界を塗り替える闇色の結界が魔人の側からも張られる。それはルナの結界を外側から埋め尽くし、尚広がった。

 

「ッ! 私より上位の結界!」

 

「魔力の差が出たねぇ。さぁどうする」

 

「くっ! まだ結界は生きている! 戦う術はある!」

 

「ないさ。君の負けは必定なのだよ」

 

 ルナが力を振るう。宙に浮く鏡が合わせ鏡の形を取った。

 

「無限張力!」

 

 合わせ鏡の中央に光の弾が灯っていく。魔人イルミナティが嗤った。

 

「無駄だよ」

 

「なっ!」

 

 鏡が腐敗していく。そして跡形もなく崩れ落ちた。絶句するルナにイルミナティが語る。

 

「君の奥義無限張力は合わせ鏡から無限の力を引き出して相手にぶつける、無限のエネルギーを取り出すという理論上どんな相手をも倒し得る強力な技だ。だが、そもそも鏡自体を腐敗させてしまえばその攻撃も使えまい」

 

「な、腐敗……!?」

 

「ああ。君の持つ鏡反射の魔法は相手が強力な攻撃を繰り出せば繰り出す程その攻撃を反射してカウンターを決めてしまう理不尽な仕様を持つ。メイキス如きの脳筋にはさぞ効果的に作用したことだろう。だが、僕の持つ腐敗の魔法は結界内の対象に腐敗という結果をもたらす概念魔法だ。反射する対象がなければカウンターのしようもあるまい?」

 

「な、そんな理不尽な魔法が、ガハッ!」

 

 ルナが血を吐く。地に膝をつく。イルミナティが語る。

 

「君の体も少しずつ腐敗していく。毒のように少しずつね。チェックメイトって奴だよ。君と僕の相性は最悪だ。だからこそ僕がここに派遣された。魔王様から直々にね」

 

「! 魔王、やはり、誕生していたのか……!」

 

「ああ。まだ不完全な状態だけどね。だからこそ僕ら七賢魔(セブンスターズ)がいる。君のような厄介な魔術士を殺すためにね」

 

「な、私はまだやれ、ガハッ!」

 

 ルナがまた血を吐く。体がガクガクと揺れる。イルミナティは首をやれやれと横に振った。

 

「君の魔力が私を上回っていればまた違う結果になったろうがね。相性も悪くて、結界も侵食されたとなればもう勝ち目はないさ。大人しく諦めるがいい。今とどめをさしてやろう。このコラプション・ロッドで直に刺してね。直は早いよ。腐敗がね」

 

「く、私はまだ、やれ――る、ん、だ……!」

 

「何。くっ!」

 

 イルミナティの服が腐敗していく。イルミナティは慌てて距離を取った。額の汗を掻き、嘆息する。

 

「まさか概念ごと腐敗を反射した……? そんな理不尽な魔法が、あるようだな……!」

 

「はぁ、はぁ、生徒たちは私が守る……!」

 

「油断ならない相手だよ君は。敬意を表して我が奥義で屠ってやろう。奥義。ラストインパクト!」

 

 イルミナティが杖をルナに向ける。その杖から巨大な腐敗の波動がルナに向かう。ルナは鏡を目の前に生成するも、

 

(ダメ、腐敗していく……!)

 

 生成する片端から腐敗し自壊していく。それでも渾身の力を籠め、鏡を生成し、維持する。腐敗するも、イルミナティの額に冷や汗が流れる。

 

(例え私が死んでもただでは死なない。反射さえできれば、効果は相手にも及ぶ。一枚でいい。鏡よ、持ちこたえて……!)

 

 武装覚醒で生み出した鏡を目の前に突き出す。罅割れる、だが、自壊はしない。ラストインパクトが迫りくる。ルナは祈るように鏡に念を籠めた。

 

(私の命を捧げる、だから、あの攻撃を反射して――!)

 

 彼我の距離が刻一刻と埋まっていく。10メートル、5メートル、3メートル。

 

 そして――!

 

 

 

 

「アキラの奴は一体どこに行ったんだ……」

 

「この非常時にあーしら置いて逃げ出すとかマジ最悪なんですけど……」

 

「アキラは、逃げ出したりなんかしない! アキラは!」

 

 迫りくる魔物を魔力を纏った特殊兵装で薙ぎ払う。戦い続けながらキサラは叫ぶ。

 

「きっとどこか別の場所で戦っている。誰かを救うために! だってあいつはそういう奴なんだもん!」

 

 再び特殊兵装を振るう。敵が感電死する。キサラは威勢よく戦い続ける。

 

 

 

 

「――こい」

 

「フシュルァアアアアアアアアア!」

 

 光津キョウにその牙の先端に武装を纏った第2段階武装覚醒に至った恐竜型魔獣が迫りくる。キョウは落ち着いてその動きに対応し、

 

「――残像だ」

 

「ルオ?」

 

 一瞬、自らの体を光と化して敵の攻撃を避けた。キョウの光の剣が持つ特殊効果、光子化。短時間自らの体を光と化する技だ。キョウはがら空きとなった魔物の側頭部に刃を振るい、

 

「――遅い」

 

「ル、オ……」

 

 魔物への強烈な特攻効果を持つ光の剣の刃で側頭部を容易く両断した。血糊を一振りで飛ばし、冷たく言い放つ。

 

「次は誰だ。いくらでもかかってこい」

 

「あ、あいつ、1年の癖に何て強さだ!」

 

「光津キョウといったか。次の生徒会役員になれる強さだな。何て野郎だ……!」

 

(アキラ。君との訓練で俺は強くなった。だが、まだまだ足りない。魔人を屠れるくらいに、どんな敵が現れても仲間を守れるようになるには、まだまだ……!)

 

 キョウは敵を屠り続ける。まるで鬼神のような強さで。心の芯に冷徹さを灯し続けながら。

 

 

 

 

「……な?」

 

 魔人イルミナティが素っ頓狂な声を出す。

 

「……え?」

 

 神宮司ルナも同じく。目の前に現れた謎の男の後姿を目にして。

 

 いや、その後ろ姿は見たことがある。謎の男ではない。ルナは震える声でその正体を言い当てた。

 

「……闇蔵アキラくん?」

 

「はい。僕です。今から」

 

 アキラはその手に握ったラストインパクトを叩き斬った黒い剣をイルミナティに向けた。

 

「先輩を助けます」

 

「ッ!?」

 

「なんて日だよ今日は全く。おい、6号。それはマジで言ってるんだな?」

 

「はい。マジで言ってます。……言葉はもういらないでしょう。さぁ、殺り合いましょうか」

 

「は、ははははは! ……楽には死ねんぞ。男には容赦せん。特に裏切り者にはな」

 

「どうぞご自由に。僕も手加減はしませんから」

 

「? ? え? え?」

 

 混乱するルナを差し置いてアキラはイルミナティと会話を交わす。そして、戦闘へと移行する。

 

「魔境覚醒――虚那琉脊界(うつろなるせかい)

 

「ッ! 第4覚醒。やはり使えたか!」

 

 アキラの展開した結界がイルミナティの展開した結界と均衡を築く。結界が重なり合う境界線で激しい唾競り合いを繰り広げる。イルミナティが叫ぶ。

 

「馬鹿な! 僕と同等の魔力だと! それはもはや人間の魔力ではない!」

 

「んー……この程度じゃないはずなんだけどな。いや、今の僕はこの程度ってことか。なるほど……強くなる余地はまだまだあるな」

 

「ッ! 何を世迷言を――」

 

「闇の剣」

 

 アキラは闇の剣をイルミナティに向ける。そして念じた。

 

「虚無で犯せ」

 

「な、にを……!?」

 

 アキラの結界が徐々にイルミナティの結界を侵食していく。ありえない光景。イルミナティは慌てて攻撃に移った。

 

「僕の攻撃は腐敗の概念。防ぐことはできない。腐敗しろ!」

 

 イルミナティが杖をアキラに向けて叫ぶ。そして、何も起きなかった。狼狽えるイルミナティに、さらにアキラは、

 

「虚無にて包み込め」

 

「ッ! こ、これは……」

 

 イルミナティの体が黒い靄のようなものに拘束される。引きはがそうとするもはがれない。アキラはイルミナティへとすたすたと近づいていく。イルミナティはその指を何とかしてアキラに向ける。だが、何も起きない。

 

「何故だ、何故私の攻撃が通じない!」

 

「第3覚醒魔力覚醒。その効果で覆った触れるものを虚無に返す魔力でお前の攻撃を無力化している。ただ、それだけの話だ」

 

「ッ!? そ、そんな馬鹿な話があるか! 私の全力をただの常時展開のオーラで防いでいるだと! 人間如きにそんな力が……!」

 

「宿っているんだから諦めろ。これが闇蔵アキラなんだよ。そして」

 

 アキラはイルミナティの前に辿り着く。そして闇の剣をイルミナティの体にズブリと刺した。

 

「さようなら。虚無の世界に飲み込まれるがいい」

 

「く、くぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 腹に刺した黒い剣を起点に虚無へ誘う次元の歪が発生する。イルミナティの体はその次元の歪に吸い込まれていく。そして、数秒の後には何もなくなっていた。ルナが口を押える。

 

「う、そ……イルミナティを倒した……?」

 

「はい。倒しました。生徒会長」

 

 アキラがルナの前に歩いてくる。そして、剣を持たない方の手をルナに向けて、微笑んだ。

 

「敵は倒しましたよ。安心してください」

 

「っ! あ、ああああああ!」

 

 ルナは泣いた。アキラの手を取って、その手に縋りつくようにして、涙が枯れるまで泣いた。

 

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