ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件。せっかくなので鬱フラグをへし折って殺されるはずだった女の子たちを助けます― 作:哀原正十
その日の放課後。
生徒会室にて。
「それではこれより闇蔵アキラくんのスパイ容疑の審議を始めます」
生徒会長神宮司ルナの一声で僕の審議は始まった。円卓上に並べられた机の中央に僕は突っ立っている。最悪の居心地だ。早く部屋に帰りたい。キサラちゃんとまたくだらない話でもして落ち着きたい
円卓に着くのは生徒会の代表的な面々。それに加えて幾人かの教師。学園長もその中にはいる。割とフルメンバーだ。僕のクラスの担任もいる。何故にこんなにマジになって僕の罪を調べようというのか。調べても何も出てこないと言いたい(嘘)。お願いだから何も出てこないで!
「闇蔵アキラ。お前にはまず簡単な質問を行う。それについて一つずつ答えろ。いいな」
「待ってください。まず私から」
教師の言葉を遮って生徒会長の神宮司ルナ先輩が口を挟む。挙手し、立ち上がり、そして堂々と言った。
「最初に私から。闇蔵アキラ君はスパイではないと思います。スパイなら私を助けるはずがありません。それに彼の人柄を私は知っています。とてもじゃありませんがスパイをするような悪辣な人柄とは思えません。よってこの審議の必要性はないと考えます」
か、会長。なんてチョロ、じゃない。なんていい人だ……!
僕が感動に震えていると、教師――僕の担任の黒沢マユミが冷たい口を挟む。
「そう思い込むのは結構だがな。実際こいつにはかなり怪しい点がある。無罪を断ずるのはその確認をしてからでも遅くはない。いいな。ルナ」
「しかし、でも……いいえ」
会長は俺の方を向き、ニコリと笑って言った。
「アキラ君なら大丈夫ですよね。何せ、無罪に決まって、あ、6ご」
あ、6ご?
会長は何かを思い出したようだ。そして冷や汗を書き出したようだ。僕の脳裏には以前会長の前で交わしたイルミナティとの会話が再現された。
【なんて日だよ今日は全く。おい、6号。それはマジで言ってるんだな?】
【はい。マジで言ってます。……言葉はもういらないでしょう。さぁ、殺り合いましょうか】
【は、ははははは! ……楽には死ねんぞ。男には容赦せん。特に裏切り者にはな】
【どうぞご自由に。僕も手加減はしませんから】
……やっべ。
急に黙り込み冷や汗を書き出した会長を不自然に思ったこの場の最高責任者である学園長の鷲塚シスイ――壮年の凄まじく鋭い眼光を持つおばあちゃん――が尋ねる。
「急にどうした。ルナ」
「あ、いえ。急に思い出したというかなんというか。いえ、なんでもないです。なんでもないです! だから、次に話を進めましょうか!」
「……」
疑いの目。会長はゴホンと咳払いし、凛々しい顔つきで言った。
「私は生徒会長神宮司ルナですよ。私を疑うのですか?」
「……いや」
そう言って。
学園長は頭を振った。
「ルナがそう言うなら何も言うまい。何せ我が校の、ひいては人類屈指の最強戦力だ。それくらいは贔屓してやろう」
「あ、ありがとうございます……!」
「……それでは改めて」
ギン、と鋭い眼光を放ち、僕を睨みながら学園長が宣言した。
「闇蔵アキラへの尋問を開始する」
とうとう審議が始まる。当然尋問を行うのは学園長だ。
「まず一つ目。闇蔵アキラ、貴殿は」
そして、一発目から中々困る質問をしてきた。
「魔人襲撃時、何故真っ先に迷うことなく神宮司ルナの元へと駆けつけた。まるで襲われることを知っているかのように迷いなく、襲撃があってからすぐにな」
……。
さて、何と答えるか。闇蔵アキラブレインが試される時だ。
果たして僕はこう答えた。
「それは、違和感があったからです」
「違和感?」
「はい。あの襲撃、かなり計画的でした。ならばそれ相応の企みがあるはず。それがあの言っちゃ悪いが単純極まりない脳筋戦法に全てを掛けるとは僕はどうしても思えなかった。そこまで考えが至った時、僕の脳裏に一つの閃きが走りました」
「閃き?」
「はい。あの状況、会長がいれば幾らでもひっくりかえせる。故にこの襲撃、別個に狙いがある。それは会長の襲撃。そう閃いた瞬間、何故か僕はそれが真実であると直感した。そして走った。会長の姿を探して。そうして辿り着いたのが」
「――体育館の屋上だったという訳か」
「はい。戦闘する姿が窓の外に見えたのですぐに居場所は分かりました。その後は駆けつけ、あとはご存じの通り。魔人を倒して終わりです。以上が僕の答弁です」
「ふむ」
「……」
……と沈黙が流れる。生徒会役員たち、そして各教師も色々考えているようだ。果たして学園長は一つ頷いてこう言った。
「そこまでの思考を一瞬で行ったと」
「はい」
「そしてその思考、というか閃き、あるいは直感に従い即座に行動したと」
「はい。僕は」
そして僕はややキメ顔で言った。
「直観が走った時はそれに従うようにしているんです。特に、緊急時程、ね」
「……なるほど、な。それが貴殿の言い分か」
「はい」
「……よかろう。では、次の質問。闇蔵アキラ。君はなぜ」
そして行われた次の質問は
「その巨大な力を何故隠していた。その目的を応えよ」
やはり答弁に窮する、非常に難しい質問だった。