ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件。せっかくなので鬱フラグをへし折って殺されるはずだった女の子たちを助けます― 作:哀原正十
貞操の危機
などということはもちろんなく。
単に2人で密室になれる状況が欲しかっただけなのだろう。2人で男子トイレの個室に入った後、6号と、僕をその名で呼んだ男はこう名乗った。
「久しいな6号。僕の名前は犯沢コロスケ。それともこう名乗った方がいいかな? 1号と」
「……コロスケでいいよ。いい名前じゃないか。コロスケ。凄くキテレツな響きだ」
「じゃあコロスケと呼ぶがいい。早速だが6号。本題に入ろう。お前は何故」
あくまで小声でコロスケは僕にこう尋ねた。
「俺たちを裏切った。何故イルミナティさまを殺した。お陰で俺たちの立場は危ういものとなった。どうしてくれる」
その問いに僕は真っ向から答える。
「そんなもの知ったこっちゃない。イルミナティは死んだ。僕たちはもう解放されたんだ。素直にそのことを喜んだらどうだ」
「……」
コロスケは沈黙した。そして僕をねめつける様ににらんだ後、息を吐いて、こう答えた。
「……分からない。お前の変化が分からない。昔のお前はそんな奴じゃなかった。何を考えているか分からない。だが、そうだな。俺たちは解放された、か。そうかもしれないな……」
「コロスケ……」
「……イルミナティは死んだ。俺たちはもう自由、か。この脳の」
コロスケは頭をピンと弾いて言った。
「腐敗爆弾を起動できる奴ももういなくなった。この爆弾があるのにどうしてお前はイルミナティを倒せたんだ」
「そんなもの虚無の魔法でとっくに解体済みだよ。こう、自分の頭に向けて魔法をちょちょっとね」
「はぁ……お前は相変わらず反則な奴だ」
「そうだね。僕もそう思う」
「他には……そうだな。お前はいつからイルミナティを裏切るつもりだったんだ?」
「……強いて言えば、生徒会長を殺すと決められた時から、かな。あの人を殺させる訳にはいかなかった」
「ああ。あの人は美人だもんな。お前昔から何気に女好きだったもんな」
「う。……そんなことはないさ」
「はは……もういい。用件は済んだ。帰るといい。俺はもう少しだけ……黄昏るよ。そうか。自由になった、か……」
「じゃあ、失礼するよ」
僕はトイレを出た。それとすれ違いに外で待っていた人物が個室に入った。そしてコロスケを見て驚いた。何か致命的な現場を見てしまったかのような目つきで僕とコロスケを高速反復して見てくる男子生徒。僕はハァ、とため息をついて、その場を後にした。コロスケとの問答を思い出しながら、
「僕たちは自由になった。そう、それは間違いないんだ。なのに、厄介な疑いをかけられたもんだよ全く……」
「ボルテック・ストライク!」
「いい踏み込みだね。でもまだ」
「あっ!」
「魔力の練りが甘い。もっと魔力と一体化するんだ。そうでなきゃ、武装覚醒の域にはまだ到達できないよ」
「くっ。まだまだぁー!」
「何回でもきなよ。幾らでも相手してあげるから」
……僕は戦闘訓練質にてキサラちゃんと訓練をしていた。ちなみにキョウくんもいる。今は壁にもたれかかってへばっている。本気で訓練しているからね。生半可な訓練はしていないのだ。
「駄目。何回やってもアキラに勝てない」
「そりゃぁそう簡単には負けてあげられないよ。強さが僕のアイデンティティーだし」
「なぁ、アキラは何でそんなに強いんだ?」
それはふとしたキョウ君の疑問。なんて事のない質問。だけど、僕は返答に一瞬窮した。少し考えて、こう答える。
「何でって言われてもなぁ……僕だからとしか言いようがないかなぁ」
「うわ。今の凄い嫌味」
「いや、そういう意図はなくて」
「分かってる。けどね、そう感じたのよ……
」
落ち込むキサラちゃんをなだめながら思う。何で闇蔵アキラがこんなに強いのか。一つはアキラが天才だから。そしてもう一つの理由は……。
「さ、訓練再開しましょ」
そこまで考えた所でキサラちゃんがそう言った。手をパンパンと払いながら、
「早くアキラに追いつかなきゃいけないんだから」
「あ、うん。再開しようか」
訓練を再開する。一抹の懸念を脳裏に張り付かせたまま。