ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件。せっかくなので鬱フラグをへし折って殺されるはずだった女の子たちを助けます―   作:哀原正十

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第20話 隠流サスケ

 翌日。

 

 僕が人気のない男子トイレの近くを歩いていると。

 

「おい、6号」

 

 顔に黒い布を巻いた露骨に怪しい男が近づいてくる。正体を隠している。だが、僕はその男が誰か知っている。ため息をついてその男の名前を言い当てた。

 

「君は……隠流サスケか」

 

「俺のことは3号と呼べ」

 

「あ、うん」

 

「ちょっとトイレの個室までこい」

 

「……」

 

 こいつらはトイレの個室意外に二人に慣れる場所を知らないのか? 思いながらも僕はついていく。

 

 男子トイレの個室に二人きりだ。

 

「それで、何の用かな」

 

「これからお前はどうするつもりだ」

 

 唐突な質問に面食らいながらも僕は尋ね返す。

 

「どうするって、どういうことだよ」

 

「お前なら俺たちを売って学園に残ることもできるだろう」

 

「……どういうこと?」

 

「とぼけるなよ。前回のイルミナティ襲撃時、俺たちは学園の重要使節を破壊した。一方お前はイルミナティを殺して学園のヒーローになった。望めば学園に居場所を創ることができるだろう。だが……俺たちは違う。裏切り者だからだ」

 

「……そうか。そういうことか」

 

 なんとなく言わんとすることは分かった。サスケは頷く。

 

「ああ。そういうことだ。俺はこの」

 

 サスケの姿が消える。そしてすぐ現れる。

 

「隠蔽の魔術で学園外の協力者である書店勤務の爆破の魔術師である爆咲ハナビ――4号を重要警備がなされた学園の重要施設――対魔結界起動装置と対魔波動砲のある場所に案内し、時限爆弾を仕掛けた。そしてその罪を学園側に疑われている。尋問は口八丁で誤魔化したが正直誤魔化しきれたとは言えない。深い疑いを学園は俺に持っているだろう。だから俺は学園から逃げる」

 

「逃げる、と」

 

「ああ。逃げる。隠蔽の魔術師の俺なら楽勝だ。他の奴らがどうなるかは知らないがな。犯沢コロスケと袖下キキョウの奴らは今回の犯行には加担していない。だが、人類の裏切り者である魔人のスパイであった事実は間違いない。その内罪は暴かれて極刑に処されるだろう」

 

「そうか。そうなるのか……ところで」

 

「なんだ」

 

「5号は誰なんだ」

 

「何を言っている5号の真似本(まねもと)サンタロウは訓練の最中死んだだろ。だから6号のお前が最後だ」

 

「あ、ああ。そうだったか」

 

 言われて思い出す。確かに5号は死んだんだった。サスケはどこか呆れたようにため息をつきつつ話を続ける。

 

「……その内あいつらも逃げる支度を整えるだろう。学園から逃げられるか知らんがな」

 

「そうか。少し、可哀そうだな……」

 

「はっ。可哀そうだと。あの闇蔵アキラの口からそんな言葉が出るとはな。驚きだ」

 

「驚くなよ」

 

「驚くさ」

 

 驚くらしい。僕は釈然としない気持ちを覚えながらも尋ねてみる。

 

「……それで、結論は何。何でそんな話を僕にしにきたの?」

 

「何。簡単なことだ。少しでも罪を軽くしたいなら犯沢コロスケ、袖下キキョウ、そして爆咲ハナビの事を売るんだな。それがお前が生き残る道だ」

 

「は?」

 

「何を驚く。お前にも疑いはかかっているんだぞ。時間の問題だ。学園から逃げる気がないならその内罪は暴かれるだけだ」

 

「そうかなぁ……上手く誤魔化しといたけど」

 

「ふっ。学園を甘く見るな。表向き納得しただけだ。裏では今も俺たちの背後関係を調べている事だろうよ」

 

「そうかなぁ」

 

「ああ。仲間を打って自首するか、学園から逃げるかの2つに一つだ。俺は後者をおすすめする。協力してやる」

 

「……一つ疑問なんだけど」

 

「なんだ」

 

 僕は変な会話だなと思いながら頬を掻きつつ答えた。

 

「何でそんな話をわざわざ僕に?」

 

「お前には恩がある。昔受けた、忘れ得ぬ恩がな」

 

「!」

 

 唐突に思い出す。確かにサスケは僕に恩がある。具体的に語る暇はないので詳細は省くが確かに恩がある。さらにサスケは言う。

 

「だから恩返しに俺が学園から逃がしてやろうとそう言っているんだ。分かったか」

 

「分かったよ。だけど、僕には君の手は取れない」

 

「何故だ」

 

「僕にはこの学園に大事な人たちがいる。この学園は大事な居場所なんだ。だから、逃げる訳にはいかない」

 

「……そうか。意外な発言だがお前がそう思うなら好きにしろ。忠告はしておいた」

 

「ああ」

 

「ならば俺はもう行くぞ。いつ学園の手が俺にも伸びるか分からん。逃げるのは早い方が吉だ」

 

「あ、うん」

 

 サスケはトイレの個室から出ていった。それからしばらくトイレの個室でサスケとの会話について考えていると、ふと気付いた。

 

「あ、よく考えたらあいつ普通にテロリストじゃん。逃がしたら駄目じゃん」

 

 そう言う訳でサスケを捕まえようとトイレから出ようとしたその時、外で騒ぎ声が聞こえた。

 

「くっ! 逃げるのが遅れたか! 学園の手がここまで早いとは。ふっ、情に絆された自分が情けない……」

 

「生徒会だ。大人しくしろ。お前に魔人と繋がりが会ったことは既に判明している。仲間がいることもな。素直に吐いてもらうぞ」

 

「ふっ。素直に吐くと思うか。この俺が。ふ、ふっはっははっははっは!」

 

 ……サスケが生徒会役員に掴まり補導されていく様子がトイレの入り口辺りから見えた。そう言えば奴は隠蔽の腕は一人前だが戦闘能力の方はからきしだった。僕は一抹の不安を覚えながらその様子を見届けることしかできなかった。

 

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