ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件。せっかくなので鬱フラグをへし折って殺されるはずだった女の子たちを助けます― 作:哀原正十
プロローグ 魔人ガルティア
魔人ガルティア。
それは
その戦闘力は第4段階魔境覚醒止まりの魔人ながら第5段階神淵覚醒に至った魔術師ともやり合えるレベル。魔物と人間の理不尽なまでの魔力の差が成し遂げられる所業だ。暴力的なまでの強さを誇るガルティアの魔人ランクはSランクながら実質SSランクみたいなものだ。魔人イルミナティよりは確実に格上の魔人だろう。そんな魔人と僕はサシでやり合わねばならない。
……いや、理不尽じゃない? 無理とは言わないが、半分死刑くらいのノリで決めただろ僕の刑。絶対に。いいだろういいだろう。人類会議がそうくるならば僕はその理不尽を覆すだけだ。
魔人ガルティア、ぶっ殺してやろうじゃねぇか。
幸い相性は悪くないはず。やってやれなくはないはず。どちらにしろやるしかないんだ。殺ってやろうじゃないか!
……正直、内心不安です。魔人ガルティア。それは物語終盤11巻にて唯一生き残った第5覚醒深淵覚醒に至った魔術士と第4覚醒魔境覚醒に至ったキョウくんがタッグを組んで倒す魔人。こんな序盤にやり合っていい魔人じゃない。それでもやるしかない。もうこれはとにかく、
「虚無の魔法を撃ち消す光の魔法の使い手である光津キョウくん以外には攻略不可能と言われた闇蔵アキラの力を素直に信じるしかないか……」
決戦の時は近い。僕はもう何度目かもわからない覚悟を決めても、それでもやはりこの状況のやりきれなさにため息をつくのだった。
「やはり納得できません。魔人ガルティアの討伐には私もついていきます!」
生徒会会議。生徒会の重役と教師が集う会議の場にて生徒会長の神宮司ルナがそう言った。学園長の鷲塚シスイが首を横に振る。
「人類会議で既に決まったことだ。決定は覆らん」
「しかし、このままでは私を倒せる魔人をも妥当する力を持った闇蔵アキラくんを無暗に失うことになるかもしれません。それこそ人類の損失ではありませんか」
「それは」
学園長が押し黙る。人類会議で決定したこととはいえ、学園長自信にも思う所はあったのだろう。生徒会長は更にまくしたてる。
「もし許可を得られないとならば私が独断でアキラ君についていきます。魔力の残量的にも一人は無茶があります」
「それは、そうだが……人類会議で決まったことだ。覆らないと知れ」
「ならば私が直接人類会議と掛け合います。こんな理不尽、罷り通ってはなりません! このような横暴を働くのが人類会議ならば今後私は人類会議には協力しません。それが私の決意です」
「……分かった」
学園長は。
観念した、という風に両手を上げて、それから生徒会長にこう言った。
「もう一度だけ掛け合ってみよう。ルナ、今のお前の価値を思えば、その意向はそれ程無下には出来ないはずだ。譲歩を引き出せる可能性はある」
「学園長!」
「掛け合ってみるだけだ。譲歩を引き出せるとは限らん。だが、今度は私も本気で掛け合ってみよう。せっかく我が校に現れた貴重な大戦力をみすみす死なすのは私も複雑な思いを抱いていた所だ」
「ありがとうございます!」
生徒会長が礼を言う。僕が口を挟む間がなかったその日の生徒会会議はそれで終わりになった。そして人類会議と掛け合った結果がどうなったかと言うと、
「闇蔵アキラの魔人ガルティアに5名の討伐者の同行を許可する、か。これで無謀な突撃からまともな作戦になったかな」
翌日の生徒会会議。学園長の鷲塚シスイの報告に場は湧いた。喜んでいる者ばかりではなかったが、喜んでいるものの方が多かった。生徒会役員の一人が学園長に尋ねる。
「どうやって譲歩を引き出したんですか? 俺、てっきり人類会議の決定は絶対かと」
「神宮司ルナの存在は人類会議にとって非常に重要視されるものらしい。現状でも3人の神淵覚醒に至ったものに匹敵すると言われる戦力。それが神淵覚醒に至ったらどうなるか、その可能性に多大な期待を掛けている。そのルナの反発は私にも予想外の効果をもたらしたらしい。ルナ、お前は人類会議から相当大事にされているぞ」
「あまり嬉しくありませんね……それに、その理屈で言うと私を倒せた魔人を倒したアキラくんは私以上に重用されるべきではありませんか? おかしくありませんか?」
「……」
場が沈黙した。生徒会長が戸惑う。学園長が厳かな声で言った。
「そこが微妙な所なんだ。人類会議としても闇蔵アキラという戦力は欲しい。だが魔人の元スパイと言う不穏分子はいらない。ならばどうするか。その線引きが魔人ガルティアを単独撃破できる戦力と言うラインだったんだろう。そうでなければ死んだ方が予後がいいと判断したんだろう」
「なんだか人を信頼しない組織ですね。人類会議って」
「まぁな。このご時世だ。シビアな考え方にもなるさ」
「はぁ」
「それで同行する討伐者の選抜だ。誰を選ぶか。これは死地に向かい、帰ってこれないかもしれない選択肢だ。当然選抜者にも拒否権はある。その上で選ぼうと思うのだが」
生徒会長が手を上げた。その場にいる全ての者が悟った。学園長が尋ねる。
「なんだ。神宮司ルナ」
「私が同行します。」
「……神宮司ルナ。これはとても危険な任務だ。お前を出す訳には」
「危険だからこそ最高戦力たる私が行くのです。それが一番勝率が高い。違いますか」
「確かにそうだが、これはリスク管理の問題で」
「学園長」
生徒会長は。
その眼を見開き、断固たる口調で言った。
「私が行くと言っているんです」
「!」
この学園で最強戦力たる生徒会長の権力はあるいは学園長を凌駕するかもしれない。数瞬、見つめ合った後、学園長はため息をついた。
「分かった。同行を許可する。ただし必ず魔人ガルティアを撃滅せよ」
「はい。もちろんです。ね、アキラくん」
「あ、はい」
生徒会長がついてきてくれるのは頼もしい。それに魔人ガルティアをぶっ殺すのは規定事項だ。だから僕は素直に頷いた。学園長が悩む。
「あとは誰を連れて行くかだが……アキラ、連れて行きたい人物に候補はあるか」
「はい、学園長」
僕は挙手した。そして自分の考えを述べる。
「連れて行きたい人物がいるのですが……」