ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件。せっかくなので鬱フラグをへし折って殺されるはずだった女の子たちを助けます― 作:哀原正十
翌日。
戦闘訓練室にて。
「それで僕、か」
光津キョウ君は戸惑ったように答えた。事実戸惑っているのだろう。だが、僕は自分の考えを譲らなかった。
「うん。連れて行く。君の成長のためにね」
「成長のため、か。はは、スパルタだな」
「大丈夫。魔人ガルティアは僕と生徒会長で倒すから。君は道中の雑魚をひたすら倒してくれればいい」
「……分かった。僕は強くならなければならないんだ。アキラとの訓練だけでは実戦経験が足りないからな。この実戦を糧にしてもっと強くなってやる」
「うん。その意気」
少し不安だが僕は光津キョウ君を連れて行くことにした。現状キョウ君には実戦経験が足りない。だからこそそれを補うために連れて行こうと考えた訳だ。
それに、もうそこらの雑魚程度なら相手にならないくらい、キョウ君は十分に強い。
そして僕が選んだもう一人は。
「俺がまさかこんな短期間で出所できるとはな。ふっ、条件つきだがな……」
彼は僕に恩があるし、とても義理堅い奴だ。魔人相手にも義理立てするくらいには。
とはいえ学園側としては信頼できなかったらしく、彼は頭に爆弾を埋め込まれている。裏切ったら爆破されるらしい。裏切らなかったら晴れて自由の身になるとか。僕と同じで今後の進退がかかっている。裏切る可能性はまずないだろう。
そして残りの2人は生徒会長が指名した。
「へっ、会長の使命とあらば仕方ねぇなぁ。全力でやってやるよ」
一人は剣ヶ丘ケン。メイキス・トライオーガを討滅する際、僕たちのBグループの隊長を務めた男だ。純粋な戦闘能力に優れた魔術士でそれが故に今回の作戦に抜擢された。ちなみに会長に惚れている。
そしてもう一人は、
「……まぁ、やるしかないわね。会長を死なせる訳にはいかないもの」
正直僕の選んだメンバーが足を引っ張っている気がしなくもない。だが、僕は僕でベストメンバーを選んだつもりだ。そもそも。
僕と会長がいれば戦力的には十分なのだ。後はいかに魔人ガルティア戦までに力を温存するか。その観点で行けばサスケは最善のメンバーと言える。後はキョウくんだが、彼を鍛えないことにはストーリーが詰むのだ(多分)。この機会を逃す訳にはいかない(多分)。うん。
うん。
「それでは6人でコンビネーションの訓練をしましょうか。出発は3日後。暇はありませんよ」
会長の号令で僕たちは訓練を始める。3日後の魔人ガルティア討伐作戦のために。
その日の夜。
「本当に行くのね。魔人ガルティアの討伐に」
「うん。言って、ぶっ殺してくるよ」
「その表現気に入ってるわね……」
キサラちゃんといつものように会話を交わす。話題は当然3日後の魔人ガルティア討伐。キサラちゃんも僕が話したので大方の事情は知っている。
「あーあ、私も生徒会に入れるくらい強かったらな。アキラの力になれたのに」
「あはは……気持ちは嬉しいよ。ありがとう」
「にしても、光津キョウはメンバーに加えたのね。なんで?」
「ん? ああ、彼は……特別だからね」
「……学園もさ、彼はちょっと特別扱いしてる感あるわよね。何で?」
「それは伝承のせいだよ」
「伝承?」
首を傾げるキサラちゃんに解説する。
「うん。光の魔力を纏いしもの、蘇りし大いなる魔王を打ち砕くであろうって感じの伝承。それを教師方は知ってるからちょっと特別扱いしてる訳。もしかしてあいつが伝承の男じゃないかって」
「ふーん……それって本当なのかしら」
うん、と答えることもできたが、僕の状況でそこまで知っているのは不自然なので適当に濁しておく。
「さぁね。ただ、事実彼は光の魔法と言う魔族に対する特攻みたいな魔法を操り、他の魔法に比べて格段に協力な力を持っていることは確かだ。もしかすると、かもね」
「ふーん……なんか凄い奴、ぐらいに思ってたけど、想像以上に凄い奴なのかもね」
「まぁね」
「そんなあいつに、そしてあなたに平凡な私が追いつくためには」
そしてキサラちゃんは天井を見つめながら言った。
「もっと、うんと努力しなきゃならないわねー……」
「……」
正直彼女の力は未知数だ。しかし、雷の魔法は魔法の中では強力な部類に入る。もしかしたら成長したら生徒会に入る未来もあるかもしれない。いや、順当に行けば間違いなく入るだろう。
だから僕はこう言った。
「なれるよ。生徒会に入るくらならキサラちゃんなら余裕だよ」
「うん。ありがと……」
「……」
「……」
話題がついえた。妙な間が二人の間に生まれる。キサラちゃんはどこか焦ったように言った。
「きょ、今日はもう寝よっか!」
「うん。そだね。お休み」
「うん。お休み。あのね、アキラ」
「ん? なに?」
「……なんでもない。お休み」
「あ、うん」
キサラちゃんがなにを言おうとしたのかは分からないが切り上げた所を見ると大した用件じゃなかったのだろう。だから僕はすぐに忘れて、眠りの世界に堕ちることにした。
「お休み、アキラ」
「お休み、キサラちゃん」
最後にお休みの挨拶をもう一度交わして。