ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件。せっかくなので鬱フラグをへし折って殺されるはずだった女の子たちを助けます― 作:哀原正十
「悪い。もう限界だ」
サスケのその言葉が激闘の合図だった。隠密結界が切れる。城の中に張り巡らされた魔物たちが僕たちに気づく。真っ先に反応したのはキョウくんだった。
「光の剣よ! ハァアアアアアアアアアアア!」
1閃。2閃。3閃。こちらを視認した魔物をあっという間に死体に変える。剣ヶ丘ケンが口笛を噴いた。
「1年坊が、やるじゃねぇか。この戦いについてきただけあるぜ。おら、俺も武装覚醒――クリムゾン・エスパーダ!」
剣ヶ丘ケンの手に赤い剣が現れる。進むにつれて新たに現れた敵を剣ヶ丘ケンはその手に握った赤い剣で屠る。ルナ会長が頷く。
「道中の雑魚は相手になりませんね。雑魚の相手は任せましたよ。ケン。私とアキラくんは魔人ガルティアとの戦いに力を溜めておかねばならないので」
「おうよ、任せなぁ!」
「あー、そういう訳でキョウくん、よろしく」
「任せた。アキラ。君は必ず十全な状態で最上階まで届ける。ハァアアアアアアア!」
キョウくんと剣ヶ丘ケン、そして弾桜サクラも援護射撃をして次々に現れる敵を蹴散らしていく。頼もしい戦いぶりだった。隠流サスケも魔力を貯蔵した特殊兵装とやらでそこそこ敵を倒していた。
「そろそろ次の階への階段がある大広間ですね。……気を引き締めていきましょう」
ルナ会長の言葉にキョウ君たちが表情を改める。このガルティア城は階層毎にいわゆる“中ボス”が居座る構造になっている。その中ボス戦が間近に迫っているからだ。次の階層までの大広間に、やがて僕たちは辿り着いた。
2階層の門番。
デビルボア。全身から赤いオーラを発して、鼻っ柱に武装覚醒で生み出した鋭い牙を装着した、全長5メートルを超える象の如き巨体の猪だ。
そのデビルボアが階段の前に立ちはだかっている。どうやら倒さないことには通れそうにない。僕が闇の剣を産み出そうとしたその時、
「大丈夫だ、アキラ」
キョウ君がデビルボアを睨みながら言う。
「僕たちだけで倒せる。この程度の敵、倒せなくてどうする」
「キョウ君……」
思わぬ強気な言動。その言動を受けて、剣ヶ丘ケンがへっと鼻を鳴らす。
「へっ、そうだぜ。1年坊、お前気に入った。俺の舎弟にしてやるよ」
「それは、今考えることではありません。今はただ、あの敵を倒すことに集中するのみです」
「確かにな。いいかぁサクラ。戦闘の準備は!」
「とっくにできてるわよ。魔人でもないただの魔獣に負けてたまるものですか」
「という訳だ。お前らはそこでよく見とけ」
そういう訳で僕と生徒会長は戦いを眺めることとなった。デビルボアが雄叫びを上げる。そして猛烈な勢いで突進してくる。戦いが始まる――。
そして割とあっさりと決着がついたのだった。
決め手となったのはキョウ君の光の剣を伸長させて敵を切る技【ライト・ブロード】。足を散々狙われて動きが緩慢になったデビルボアの隙を狙いすました一撃だった。その一撃でデビルボアの首は落ち決着と相成った。キョウ君が僕に拳を上げる。僕もまた、拳を上げてそのジェスチャーに答えた。
戦い終わった剣ヶ丘ケンがキョウ君の戦いぶりに舌を巻く。
「ひゃー、強ぇーな一年坊。流石光の魔法の使い手と言ったところか」
「ありがとうございます。でも、僕はもっと強くなります。魔人を単騎で相手取れるようになるくらい」
「いい心がけだ。お前、最高にイカしてるぜ」
「どうも」
「キョウくん」
抱きっ。
戦い終わった弾桜サクラがキョウ君に抱き着く。そして頭を撫でる。キョウ君は慌てて離れようとするが先輩魔術士だけあって力が強い。
「いい戦いぶりだった。惚れそうだよ」
「ど、どうも。そ、それより離れてください。女性がそう気安く人に肌を触れさせるもんじゃありません」
「……ジュルリ。いいね。その反応。ますます惚れそうだよ……」
「サクラ!」
生徒会長が怒る。そして、次階層への階段を指差してこう言った。
「時間は有限です。魔物たちが集まってくる前にさっさと次の階層にいきますよ」
「は、はい。すいません……」
弾桜サクラは素直に謝った。そして僕たちは次の階層へと走り進む。次の階層を阻む敵の元へと。
次の階層の門番は魔人だった。
蝙蝠の魔人ヘルバット。
空を飛び回り、超音波を飛ばしてくる強敵だった。
ここで活躍したのが弾桜サクラ先輩だった。遠距離攻撃を主軸にした攻撃は空を飛び回る蝙蝠の魔人を執拗に追いかけ回し、そして捉えた。
「ギャッ!」
翼を撃ち抜かれた魔人が転落する。後はこちらのペースだった。キョウくんと剣ヶ丘ケンも攻撃に加わり、あとはあっという間に勝負がついた。
「楽勝だったね」
弾桜サクラ先輩がそのポニーテールを掻き上げながら言う。結構調子屋らしい。しかし、この戦いのMVPは間違いなく彼女だった。頼りになる先輩だった。
「よし、油断せず次にいきましょう。次の敵はこの階より強力なはずですから」
ルナ生徒会長が皆の気を引き締める。僕たちは次の階へと足を進めた。道中の雑魚を蹴散らしながら。
次の階層――4階の敵は強敵だった。
階を塞ぐのは筋肉の魔人マッスル。
ガルティアの配下らしい、フィジカルに異常に優れた筋骨隆々の魔人だった。
劒ヶ丘ケン先輩が戦いを主導し頑張った。キョウ君も健闘した。弾桜サクラ先輩も弾を撃ちまくった。しかし、中々倒せなかった。だから、僕が少し手を貸した。
「虚無の世界に誘われろ」
「ぐ? ぐおおおおおおおおおおっ!」
……闇の剣で刺し、念じる。それだけでマッスルの固い防御力を透過し、虚無の世界へと誘ってしまう。我ながら反則染みた力だ。先輩たちも呆れたように言う。
「……俺たちの助力、もしかしていらなかったか?」
「いえ。この力は少々燃費が悪いんです。道中の雑魚を相手にしてもらって非常に助かってます」
「そうか。なら、もう一張り切りするとするか」
雑魚敵の掃討は本当に助かっている。僕たちは再び次の階へと走り出した。
いよいよ次の階は魔人ガルティアの住まう最上階だ。その前にもう一人倒さなければいけない敵がいる。
最上階への階段を阻む最後の門番。
そいつは異形の、しかし人型の魔人だった。
黒光りする肌。幾重にも重なりながら収納された両翼。頭に生えた触角。
生理的な嫌悪感を喚起する見た目。ルナ会長がうっとえづく。僕も同じ気持ちだった。何故ならそいつは、
「我はゴキブリの魔人コックローチ。ここを通りたくば我を倒してから通るがいい」
――ゴキブリの魔人だったのだから。しかし油断はできない。何せ魔人コックローチの魔人ランクはAランク。Sランクの魔人には及ばないまでも強力な魔人だ。Aランクの魔人の中では最上位クラス。ちなみにさっきの筋肉の魔人もAランク。だがコックローチより下位の準Aランクと言った所。蝙蝠の魔人はBランクだ。キョウくんが光の剣を構える。
「魔人コックローチ。有名な魔人だな。果たして今の僕に敵う相手か……考えてる場合じゃないな。敵なら倒すだけだ」
「おう、その通りだぜ。クリムゾン・エスパーダ、踊ろうじゃねぇか……」
「会長たちは見ててください。私たちだけで倒して見せます。ね、ガンスリンガー・ストラトス」
果たして、運命の戦いが始まるのだった。