ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件。せっかくなので鬱フラグをへし折って殺されるはずだった女の子たちを助けます― 作:哀原正十
「糞! 攻撃が当たらねぇ!」
「なんて早さなんだ! 捉えられない!」
「ただ早いだけじゃない。初速が異常なのよ! だからすぐ方向転換できるし、こっちの反射神経が追いつかない。ゲッ、こっちにきた」
「サクラ!」
「くそっ! スプレッド・ナパーム!」
サクラ先輩がその手に持つ武装解放で生み出した銃から広範囲に広がる弾幕弾を発射する。コックローチは一瞬で方向転換し横に疾駆し、弾幕弾の射程外に逃れる。それから又すぐ方向転換しこちらに向かってくる。狙いは――キョウくん。
「光の剣よ。我が体を光と化せ! うおおおおおお!」
瞬間、光と化したキョウくんがコックローチに光の速さで対応する。コックローチは狙いを変え、弾桜サクラ先輩に突進する。
「糞、まだ充填が、あっ」
「サクラ!」
激突。
突き刺すような刺突蹴りによって吹き飛ばされ壁に激突する弾桜サクラ先輩。心配する間もなくコックローチはまたこちらに向かってくる。その二翼を羽ばたかせて。
(本当に厄介だ。なんて早さだ。攻撃を当てることができない。魔境覚醒を発動するか? いや、しかしあれは魔力消耗が激しい。なんとしてでも魔人ガルティア戦まで取っておかないと)
僕が悩んでいると、先にルナ会長が動いた。
「……ここまでですね。私も戦います」
「会長! くっ、お願いします。俺たちの手には負えねぇ敵だ。くっ、おおおおおお!」
剣ヶ丘ケン先輩がコックローチの攻撃を素晴らしい反射神経で防ぐも吹き飛ばされる。残るはキョウくんと僕とルナ会長とサスケ。最後は戦力に数えないものとする。ルナ会長が詠唱する。前にキョウ君が叫ぶ。
「あと少し、あと少しで何かが掴める。光よ。僕に力を! うおおおおおおお!」
キョウ君の全身が眩く輝く。コックローチが突進し攻撃を仕掛ける。キョウ君は光のような速さでその攻撃を全て受け止めきる。どころか、反撃した。
光の速さの一閃がコックローチの触手を一本立ち切った。翻す一太刀がもう一本も切断する。痛みに呻くコックローチ。キョウ君が叫ぶ。
「うおおおおおおおおおおおお! これで終わりだァアアアアアア! シャイニング・オブ・ジ・ハード!」
「ギッ、ギギャァアアアアアアアア!」
キョウ君の極光を纏った光の剣の一撃がコックローチに炸裂する。叫ぶコックローチ。光の奔流に晒された体は赤熱化し、赤黒く光っている。だが、まだ死んでいない。ゴキブリの如く、凄まじいしぶとさ。キョウ君は力を使い果たし、隙を晒した。コックローチの目がギラリと光る。
「光の魔術士よ。貴様の未来、これで、終わりだ。死ね!」
コックローチの攻撃がキョウ君に迫る。僕は駆け出していた。それより早く、神宮司ルナ会長は行動していた。
ガギン。
コックローチの前に現れた鏡がキョウくんへの攻撃を防ぎ、攻撃の威力をコックローチに跳ね返した。コックローチが吹き飛ばされる。コックローチが驚く。
「ぐがっ! これは、鏡? 攻撃を反射された。なるほど、これが規格外戦力が一人。神宮司ルナの鏡の魔術か! ゴアッ!」
「これで終わりではありません。魔力覚醒――ミラーワールド」
会長が詠唱した途端、コックローチを包み込むように鏡の結界が広がる。コックローチが鏡の隙間から出ようとするもそれより早く鏡が隙間を閉じ、コックローチを閉じ込めるミラーボールが完成する。ルナ会長が詠唱する。
「シャイニング・パニッシュ」
鏡が内から光り出す。内部で何が起こっているのか、想像に難くない。鏡から放射されたエネルギー波を鏡反射して内部にいる敵を焼き尽くしているのだろう。その光はしばらく続いた。やがて鏡が解けたとき、そこには、
「……コックローチが死んでいる」
コックローチの死骸。完全に死亡している。生命の駆動を停止している。僕は改めて神宮司ルナ会長の凄まじい戦力に戦々恐々とした。本当にどれだけ強いのだ。この人は……。そして。
「……さぁ、行きましょうか。アキラくん。次の階層。ガルティアが住まう最上階へと」
「は、はい」
その会長と僕をもってしても勝てるか分からない魔人ガルティアはどれほど強いのだろうかと。思いながら僕と会長とサスケは歩を進める、前に。
「その前に、簡単に介抱をしていきましょうか。サクラ、立てますか?」
「うっ、なんとか」
「ケン。立てますか」
「ああ。なんとかな。体の節々が痛むがまだ戦えるぜ」
「光津キョウ。……は、限界みたいですね」
「すみま、せん。力を、使い果たしたみたいで」
「……ならばサクラ、ケン」
「はい」
「ここでキョウ君と、あとサスケさんを守っていてください。ここから先は私とアキラ君だけで向かいます。……ここまでよく頑張ってくれました。本当にありがとうございます」
会長は剣ヶ丘ケン先輩たちに頭を下げた。ケン先輩は親指を立ててニヒルに笑った。会長は微笑み、それから背を翻し、僕に言った。
「さぁ、アキラくん。行きますよ。……魔人ガルティアの元へと」
「はい。行きましょうか」
僕たちは並んで歩を進める。生死を賭けた決戦の舞台へと。