ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件。せっかくなので鬱フラグをへし折って殺されるはずだった女の子たちを助けます― 作:哀原正十
「さぁ、いきなり飛ばすぜぇ! 魔境覚醒!」
魔人ガルティアがいきなり大技を切る。濃緑色の空間が世界に広がっていく。
「暴虐無尽(ラッシュ・アワー)!」
魔人ガルティアの戦闘フィールドが展開される。僕たちも対抗して魔境覚醒を発動する。
「行きますよアキラくん! 魔境覚醒」
「はい。魔境覚醒」
そして、2つの結界を僕たちは同時に展開した。
「神鏡弧極!」
「虚那琉脊界」
見渡す限りの鏡が、闇色の空間が、世界に広がっていく。そして――。
「な!? 押し負けている! 二人分の結界ですよ!?」
「それが魔人ガルティアなんですよ。単純な魔力総量なら魔人の中でも最上位。そしてシンプルにフィジカルも強い。そして戦闘センスも天才的。その単純な力を極めたあり方から人は彼をこう呼びます」
――二人分の魔境覚醒を涼しい顔で押し返す魔人ガルティアに苦々しい思いを抱きながら僕は言った。
「暴力の魔人と」
「搦手が得意だった魔人イルミナティとは大違いですね……」
「ええ。そしておそらく、いや間違いなく魔人ガルティアは魔人イルミナティより強い」
「ごちゃごちゃ喋ってる暇があるのかな? こないならこっちから」
魔人ガルティアが地を踏みしめる。そして、踏み込んだ。
「行くぜ」
ドン!
彼我の距離を一瞬で埋める跳躍。早い。僕は闇の剣を構える。この結界の中は魔人ガルティアの支配下。ならばこちらの搦手は殆ど通じないと見ていい。何故ならば、
「闇の剣よ、侵食せよ」
「暴対圧殺(マッシュプレッシャー)」
闇の剣から迸った結界を犯す闇の波動がガルティアの拳で打ち消される。僕は舌打ちした。これがガルティアの強さを支える固有魔法。ガルティアがニヤリと笑う。
「この結界内で全ての魔法は魔力の総量比べで打ち消すことが可能となる。ちゃちな魔法は通じないと思いな。そしてがら空きだァ!」
「!」
ガルティアが回し蹴りを放つ。僕は身を引きその攻撃を交わす。ガルティアはさらに身を旋転させ今度は裏拳を放ってくる。それを躱すと今度は正拳突き。次はまた回し蹴り、と攻撃が途切れることがない。僕は舌打ちしながらガルティアの攻撃を避け続ける。
「戦闘の天才、か」
「お前も大概だがな。だが、いつまで避けれるかなぁ!
「ッ!」
攻撃を躱し続けていたがいつまでも躱し続けられるものじゃない。僅かな隙を突かれ、ガルティアの攻撃が的確に僕の急所を狙う。僕は咄嗟に闇の剣を構えて攻撃を受け止めようとした。そして、それより前にルナ会長の産み出した鏡が僕とガルティアの合間に割って入った。
「邪魔、だァ!」
パリィイイイン!
「なっ!」
鏡が高い音を立てて割れ砕ける。反射の魔法は発動しない。ルナ会長が驚く。僕は闇の剣でガルティアの攻撃を受ける。
ドガァ!
吹き飛ばされる。凄まじい威力。だが、致命打ではない。僕はすぐに起き上がる。ガルティアはへっと笑った。
「どうだい。俺の拳は。熱いだろ」
「別に熱くはないが……強い。とてつもなく」
「チッチッチッ。ノリが分からねぇ男だな。まぁいい。それだけの強さ。十分にこの戦いを楽しめそうだ。さぁ、もっとやり合おうか!」
「ッ!」
ガルティアがこちらに向かってくる。僕は虚無の魔法で範囲攻撃を仕掛ける。それは触れれば触れた箇所が虚無の世界に誘われる致死攻撃のはずだった。だが、ガルティアの前では、
「無駄だァ!」
その拳で無力化される小さな魔力の塊でしかない。僕はガルティアの厄介さに舌を巻く。
(単純な魔力総量に優れ、フィジカルにも隙はなく、戦闘センスも天才的。しかも魔法は通用しない。まさに暴力的な強さだな。でも、あいつは無敵じゃない。この闇の剣で体を切りつければそれだけで致命傷を負う。なのに)
「アキラくん!」
会長が叫ぶ。僕は再びガルティアと剣戟を繰り広げる。その強さに圧倒される。
(その一撃の何と遠いことか……!)
ガルティアとの激闘に終幕の兆しは未だ見えない。