ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件― 作:哀原正十
……僕は闇蔵アキラだ。
そう思っていた。
だけど、そうじゃないのかもしれない。
闇蔵アキラと松岡アキラの意識は混濁しながらも、別々のものとして未だ存在しているのかもしれない。それはとても危険なことだ。闇蔵アキラは危険な人物だ。ちょっと意識を取り戻しただけであれだ。そうだった。こいつは笑顔で人の彼女をレイプできるような奴だった。そんな奴がこんなに大人しい人物に収まっている訳がない。
闇蔵アキラは僕と別の所にまた別人として意識が封印されている。
そう言う状態なのかもしれない。
だからこそ僕は今後も僕としての意識を強くもっていなければならない。どうやらこの体の主導権は僕にあるらしいから。下手なことをしなければ僕の体は僕のもののままのはずだろう。
だけどもし。
もし今回みたいなピンチがまた訪れたら。
僕は再び体を開け渡して。
そうして意識が戻らなかったら。
僕はどうなってしまうのだろう。
……そうならないように僕もまたもっともっと強くなる必要がある。キョウ君だけじゃなく僕も。幸い僕にもまだ伸びしろはある。それを伸ばしていけば闇蔵アキラに頼らなくても強敵を倒せるようになるはずだ。
そう。
神淵覚醒にまで至れば。
闇蔵アキラに敵はいなくなるはず。
そうなれるように頑張ろう。いつになるか分からないけれど。
前に進む意思がある限り人は前に進めるのだから。
「……うん。内省終わり」
「? 何考えてたの?」
自室のベッドにてそんなことを考えているとキサラちゃんに尋ねられる。僕は何でもないと答えた。
「ふぅーん。まぁ、色々考えちゃうわよね。あんな激闘のあとだもんね」
「まぁね。色々考えちゃうんだよ。色々とね」
「ふーん。ね、アキラ」
「なに? キサラちゃん」
「そう言えば今度他校との交流会があるみたいよ。各クラス一人ずつ留学生がくるみたい」
「へー、どんな奴が来るんだろうね」
「分からない。でも、良い奴がくるといいわね。それと合同実習も行うみたいよ。やーよね。憂鬱」
「そだねー……実習ってようするに作戦行動だもんね。また死者が出る。大変だ」
「本当。ま、このご時世だから仕方ないけどね。対魔学園が戦わないと人類は滅亡しちゃうもんね」
「そうだねー。大変な世界だ」
キサラちゃんと他校との交流会、そして合同実習についても少し話した。その後キサラちゃんは、
「あ、それともう一つ」
「何?」
「お休み」
ふいに言われたその言葉に、僕もまた頷いて返すのだった。
「うん。お休み」
今日はもう色々あって疲れた。もう寝てしまおう。次の他校との交流会や合同実習などもあるが、今はもういい。今は、もう……。
やがて、二つの寝息が部屋に満ちた。どこまでも平凡で、そして暖かな、日常の1ページだった。
第3章 魔人ガルティア編 完