ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件― 作:哀原正十
「早速だが今日よりソドム学園との交流会が始まる」
朝のHR。
担任の黒沢マユミの第1声がそれだった。
「知っての通りソドム学園は人類圏の中にある学園の中では最大手だ。在籍する生徒の平均兵力も高い。だが、人類圏の中にあるという学園の性質上、魔物圏に近いヴァルハラ学園のような学園の生徒に比べて実戦経験に欠けるという欠点がある。その欠点を補うため、この度ヴァルハラ学園に実習をしにきた。以上が交流会の経緯だ」
「交流会というより訓練に来た感じなんすね」
クラスの中のややヤンキーっぽい雰囲気の生徒が言った。黒沢マユミが頷く。
「ああ。その認識で間違いない。と言っても全校生徒で押しかけて来た訳じゃない。特に成績優秀な各学年のトップクラスの生徒が留学に来た。その実力は人類圏の学園の生徒とはいえ侮れんぞ。各クラスに一名。当然このクラスにも留学生が来ている」
ざわ、ざわ。
留学生という言葉に色めき立つ教室。留学生が来た時のこの雰囲気はこの世界でも一緒のようだ。僕の場合は留学生と言うか転校生で慣れた雰囲気だけど。まぁ、同じようなものだろう。黒沢マユミが入室を促す。
「留学生、入れ」
その声と同時、教室のドアが開く。
ガラリ、とドアを開けて入室してきたのは。
「……どうも」
すらり、と細い体躯に、おそろしく整った容貌。しなやかな指先に尖るような顎先。艶のある黒髪に白い肌。そしてミステリアスな雰囲気。全てが完璧な采配でベストマッチしている。その留学生は一言でこう言い表せる存在だった。
「僕の名前は
美少年、と。
クラスの女子のボルテージがムワっと上がったのが感じられた。それはそうだろう。男の僕でさえ見惚れるような美少年だ。原作でもそうだったが、本物を目の当たりにすると改めて思う。美しい、と。
ざわり、ざわり、と教室がざわつく。黒沢マユミはその反応を予期していたかのように手を叩いて、
「はいはい。鎮まる。留学生、すまないな。落ち着きのない生徒たちで」
「いえ。慣れてますから。お気になさらず」
慣れているらしい。それはそうだろう。これだけの美少年、初見なら色めき立たずにはいられないはずだ。僕でさえ胸がドキドキしてきた。美しい。美し過ぎるぜ……。
「それでは黒桃煉の席は、そうだな……」
黒沢マユミは教室を見渡して一瞬僕を見た後、すぐに首を振って、こう言った。
「光津キョウの隣がいいだろう。丁度隣の生徒が死亡して空いてるしな。光津キョウ、いいか?」
「はい。僕は構いません」
再び教室がざわつく。それから
「精悍系美少年のキョウくんと耽美系美少年の煉くん? 何それ、夢のコラボ?」
「はぁ、はぁ。萌える。いや、推せるわぁ……」
「キョウ×煉、いや、煉×キョウ。想像が容易いのは前者だけどギャップ萌えの後者も捨てがたい……?」
などと腐った会話が聞こえた。再び担任の黒沢マユミが手を叩く。
「静粛に。という訳で黒桃煉。お前の席はあそこだ。いいな」
「はい。分かりました」
黒桃煉がキョウ君の隣の席に移動する。僕は安心した。原作通りの展開だ。一瞬僕の隣に来るんじゃないかと心配したのだ。キサラちゃんが隣に座っているし、流石にそんな展開にはならなかったようだ。黒沢マユミが僕を見て首を振った理由が気になるが気にしたら負けだろう。どうせこいつはないわとかそんな感じの意図が込められた首振りだろうから。
「よろしく。煉」
「よろしく。光津キョウ」
離れの席で二人が挨拶する声が聞こえる。一先ずこれで原作通りの展開になった。後は余計な事さえしなければ多分上手くいくことだろう。
「うわぁ。あの転校生すっごいイケメン、と言うかなんというか、耽美ね。美少年だわ。ねぇアキラ」
「うんうん。そうだねキサラちゃん」
そんな風に適当にキサラちゃんに相槌を打ちながら、朝のHRは終了していった