ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件― 作:哀原正十
そして昼休み。
「ねぇねぇ、黒桃煉くんってどこからきたの? あ、ソドム学園だっけ」
「本当格好いいよねー……ねぇ。私、あなたさえ良ければ付き合ってあげても……」
「耽美~。こんな格好いい男の子見たことない」
「ハァ、ハァ、たまんねぇ。私このクラスに編入されて良かった……」
黒桃煉は案の定女子たちに群がられていた。
「凄い人気。まるでアイドルね」
「アイドルか。容姿はそれ以上だけどね」
「いえてる」
キサラちゃんとそんな会話を躱しながら遠巻きに黒桃煉を見る。女子たちに対する反応も慣れたものでスマートに質問や暴投気味のリアクションに応えていく。これはモテる訳だ。原作通りの美少年仕草。僕が感心しながら見ていると、黒桃煉は不意に立ち上がり、こちらへと向かってきた。
僕の方へと。
「えっ」
「闇蔵アキラくん、だよね?」
そしてそのまま僕に話しかけてきた。何故だ。僕と彼に接点はない。話しかけてくる理由などないはず。一体何故……。
心の中に冷や汗を掻く僕に黒桃煉は言った。
「実は僕、君に興味があるんだ」
ざわ。
教室の、主に女子生徒の間で何かが波打った。こそこそと怪しい会話を交わす。そんなくだらないことを気にしている余裕など僕にはなかった。何故なら、
(それは原作でキョウ君に言うはずだった台詞! 一体どうして僕に……!)
「君の活躍は人類圏まで届いていますよ。Sランクの魔人を立て続けに2体も倒したヴァルハラ学園のホープ。その年で既に第4段階まで魔法を覚醒させているらしいですね。凄いですよ」
(ああ、そうか)
原作では同い年のキョウ君の活躍に刺激されてキョウ君に興味を持った。でも、この世界にはキョウ君が霞むぐらいの活躍をした人物がいる。
僕だ。
だから興味の対象が僕に移ったのだ。
「もしよければ僕と仲良くして欲しいな。駄目かな?」
ニコリ。
あまりにも蠱惑的な笑みで黒桃煉が言う。駄目だ。そんな笑みでそんなこと言われたら……。
「よろしく、お願いします」
「よかった」
そう返すしかないじゃないか!
隣のキサラちゃんの僕を見る目がどこか冷たい気がする。それを気のせいだと断じながら僕は考える。何とかして彼の興味の対象をキョウ君に移さなければならない。でなければキョウ君と彼の魔人相手の共闘が実現しない。そしてキョウくんが魔力覚醒に目覚めない。何とかして2人の仲を僕が取り持たなければ……。
(キョウくん。必ず僕が君と彼の仲を取り持って見せる。そうだ。僕はキューピッドになる。2人の仲を取り持つキューピッドに!)
「これからよろしくね。アキラくん」
「ああ。こちらこそ」
腹に一物を隠しながら。
僕は黒桃煉に手を差し伸べるのだった。
「よろしく。黒桃煉くん」
なんとしてでも君には光津キョウくんに興味を持ってもらう!