ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件―   作:哀原正十

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第36話 食堂って凄いよね

 そして昼食。

 

 食堂へ。

 

「……なんで俺が一緒なんだ? いや、まぁいいけど」

 

「キョウくんとはたまに食堂一緒にしてるじゃないか。たまたま今日も一緒に食べたかっただけだよ」

 

「そうか……まぁ、いいんだけどね」

 

「そうよ。まぁいいじゃない。アキラと一緒に食べられるんだから」

 

 食堂へは僕と黒桃煉、そしてキョウくんとキサラちゃんも一緒に向かうことになった。黒桃煉が僕を誘い、その僕が当然の流れとしてキョウ君を誘ったらキサラちゃんもついてくることになったのだ。

 

 4人で並んでの食事。今日の僕のメニューは久しぶりの親子丼。皆も色とりどりのメニューを頼んでいる。レパートリー豊かな食事だ。キサラちゃんが疑問を口にする。

 

「それにしてもここって魔物圏の近くなのによくこれだけバリエーション豊かな食事を用意できるわよね。なんでかしら」

 

「それは人類圏から定期的に輸送トラックで物資を運んでいるからですよ。あとは学園内で菜園や牧畜を行っているからというのもありますね」

 

「本当。留学生くん」

 

「はい。それともう一つ。魔物を狩ってその食肉を提供しているからというのもありますね。今アキラ君が食べてる親子丼もおそらく鳥型の魔物の肉が使われているのではないでしょうか」

 

「なぬ」

 

 僕が何気なく食べていた食事。それが実は魔物の肉が使われた料理だったという。僕はじっと親子丼の上の鶏肉を見つめた。

 

 ……。

 

 まぁいいか。魔物肉だろうと何だろうと美味しければ。はぐはぐ。美味美味。

 

「輸送トラックの護衛も人類圏の学園では普通に実習として行われますからね。輸送については必然的に詳しくなるんです」

 

「へー、そうなんだ。人類圏の学園も大変なのね」

 

「そうですね。でも、魔物圏の近くの学園には及びませんよ。本格的な戦闘が日常茶飯事のように行われるとか」

 

「あはは、まぁね。でも、恐ろしいと同時に良い訓練にもなるわ。それは間違いないわ。うん」

 

 キサラちゃんはコミュ力が高い。初対面の黒桃煉相手にもグイグイ会話をリードしていく。でも違うんだ。キョウ君と黒桃煉君が仲良くなって欲しいんだ。だから僕が会話をキョウくんにパスしてあげることにする。

 

「間違いないよ。ねぇキョウくん」

 

「ん。そうだな。強くなる機会には事欠かない。……俺はもっと強くなるんだ。もうあんな経験は真っ平ごめんだからな」

 

「あんな経験、というのは」

 

 黒桃煉が小首を傾げる。そんな仕草をされると思わず男の僕でもキュンとするほどかわいい。だが、キョウくんはキュンとした様子はなく、

 

「……大切な女の子を、目の前で殺されたんだ。魔物に」

 

 そう言った。

 

 一気に場の空気が重くなる。黒桃煉が謝る。

 

「それは……すいません。デリカシーを欠いた質問でした」

 

「いいんだ。もうある程度吹っ切っている。ただ、その出来事が根底にあって強さへの渇望に繋がっている。そういう側面は確かにあるんだ。それだけの話さ」

 

「強さへの渇望、ですか……」

 

 黒桃煉は。

 

 微かに微笑みながらの、それだけで十分に魅力的な笑みをキョウくんに向けながら言った。

 

「少し、分かります」

 

「! そうか。君にも何か過去にあったのかな?」

 

「まぁ、はい。昔の話、ですけどね……」

 

 憂いを帯びた笑み。その笑みにキョウ君はそれ以上質問することはできなかった。どこか拒絶の雰囲気をその笑みは帯びていたからだ。語りたくない。無言の内にそう言っているようだった。

 

(……幼いころに妹を魔物の前で殺された。その原体験が彼を強さへの渇望に駆り立てているんだよな。少し、今のキョウ君と似ているな……)

 

「なんだか君には僕に似たようなものを感じます」

 

 そう思っていると黒桃煉もキョウくんに対して僕が感じたようなことと同じようなことを感じたらしく、共感を示した。それから、ニコリと。

 

 素から浮かべた、そんな笑みを浮かべて。

 

「君とは仲良くなれそうです」

 

 僕は思わず、

 

「いよっし」

 

「アキラ?」

 

「いや、なんでもない」

 

 キサラちゃんに突っ込まれた。危ない危ない。心の声が外に漏れてしまった。幸いキョウくんも黒桃煉も僕の失言は気にせず、友好を深めていた。

 

「こちらこそ、今後ともよろしく」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 ガシッ。

 

 友情の握手。おお、僕が見たかった景色が今目の前に。二人が仲良くなれそうで僕は安心したよ。うんうん。その調子で魔物退治の実習でもタッグを組んでくれ。

 

「ところでアキラくん。放課後時間ありますか?」

 

 急に黒桃煉が僕に尋ねてくる。僕は素直に答えた。

 

「あるけど、なんで」

 

「いえ。ただ僕と模擬戦をして欲しくて」

 

「えっ」

 

 ……それも本来なら光津キョウくんに申し込む展開なんだけど。僕は少し考えて、こう答えた。

 

「いいけど、条件がある」

 

「条件?」

 

「キョウくんと先に戦って欲しい。その後なら戦ってあげるよ」

 

「ちょっと待て、アキラ」

 

 キョウ君が慌てて口を挟んでくる。何だろうか。

 

「何で僕が煉と」

 

「二人ならいい戦いになると思うんだよな。それに友情を深めるなら一度戦って見るのもいい体験になると思うんだよ。うん」

 

「うっ、それは、そうかもしれないが」

 

「僕は構いませんよ。光津キョウ。僕は」

 

 そして黒桃煉は。

 

 光津キョウに微笑みながら。

 

「僕は君にも興味がある。君ともやりたいと思っていたんです」

 

「煉……分かった」

 

 キョウ君は頷き、表情を改めた。

 

「戦おう。模擬戦をしようか。確かに他校の生徒とやるのもいい経験になるかもしれないな」

 

「うん。きっといい経験になりますよ」

 

「うんうん。きっといい経験になるなる。2人で存分にやり合うといいよ。? どうしたのキサラちゃん。鼻を抑えて」

 

「あなたたち、もう少し言葉を選びなさいよ。やるだのやらないだの……」

 

「? どこかおかしい所あった?」

 

「! なんでもない!」

 

 変なキサラちゃんだった。だが、話は上手くまとまった。僕は親子丼の最後の一口を頬張りながらうんうんと頷いた。

 

(いい戦いになりそうだ。これで原作通りにいくはず。ただ一つ懸念があるとすれば)

 

 僕は見つめあう2人の片方……精悍系美少年の光津キョウ君の横顔を見ながら思う。

 

(キョウ君の成長の具合が原作と比べてどれくらいかってことだな……)

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