ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件―   作:哀原正十

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第37話 模擬戦だから大丈夫

 そして放課後。

 

 模擬戦闘訓練室。

 

「……覚悟はいいな」

 

「はい。いつでも」

 

 キョウ君と黒桃煉が真剣な表情で向かい合っている。キョウ君の手には光の剣。そして黒桃煉の手には、

 

「闇の、剣?」

 

「ああ、うん。僕のものとはちょっとデザインが違うけどね」

 

 僕の剣が黒色の虚無の剣だとすれば彼の剣は紫色の闇の剣だ。似ているが少し違う。そしてその性能のほどは大分違う。

 

 無論僕の虚無の剣の方が勝っているという意味で。

 

「……てことは、あいつの魔力属性は」

 

「うん。そうだね。闇属性だよ」

 

 キサラちゃんの察しの通り、彼の魔力属性は闇属性だ。光と相対する闇属性。その特別感の通り、彼の原作でのポジションは特別だ。留学を切っ掛けにヴァルハラ学園へと転校し、キョウ君の相棒兼ライバルのような存在として作中で活躍し、最後は学園に新たに出来た大切な人たちを守るためS級魔人を単独で退け、代わりに死亡してしまうという散り際まで華のある美しいキャラだった。もちろんこの世界で僕は彼を死なせるつもりはない。が、彼のその見せ場が訪れるのは大分後の事なのでそれは今考えても仕方のないことだ。

 

 それより今大事なのは、彼が現時点のキョウくんとどれくらいやれるか。原作と比べてキョウ君の成長具合がどれくらいか。それを確かめる良い試金石になるということだ。さぁ、戦いが始まる。2人が接近し、油断なく武器を構え、そして――。

 

「疾ッ!」

 

「はぁッ!」

 

 キョウ君が光のような速さで剣を振るうと、黒桃煉は闇に溶け込むような動きでそれを捌く。さらに詠唱する。

 

「ブラッド・ディバイド!」

 

「!」

 

 闇の剣から血色の触手が無数に這い出る。その触手はキョウくんへとまとわりつかんとする。だがキョウくんは、

 

「光体化! うおおおおお!」

 

 シュバババババッ!

 

 っと、一瞬己の体を光と化して全ての触手を切り裂いた。さらに黒桃煉の攻撃は続く。

 

「ハッ! フッ!」

 

「くっ!」

 

 純粋な剣術の腕前は黒桃煉に軍配が上がるらしい。当たり前だ。黒桃煉は幼少期からずっと訓練をしてきた。それに比べてキョウくんは剣道部に入っていたというバックボーンはあれどこの世界で剣を用いて本格的に魔物と戦い始めたのはつい最近。むしろそれでここまでやれるキョウくんが戦いの天才なのだ。とはいえ剣術戦では向こうに一つ軍配が亜がる。となれば、

 

「シャイニング・パニッシュ!」

 

「くっ!」

 

 魔法で補うまで。光の衝撃波が黒桃煉にたたらを踏ませる。その隙にキョウくんがたたみかける。

 

「うおおおおおお!」

 

「ダークネス・ドレイン!」

 

 キョウくんの剣と黒桃煉の剣が鍔迫り合う。その瞬間、

 

「!? なんだ、魔力が抜け……!」

 

「吸ったんですよ。あなたの魔力を。これは、何と上質な魔力。流石光の魔力の使い手ですね……!」

 

「くっ!」

 

 キョウくんが一旦距離を取る。黒桃煉は当然追撃する。闇の剣に魔力を籠めて、

 

「さぁ、これはどう防ぎます? ダークネス・ハザード!」

 

 闇の剣から衝撃波が飛ぶ。キョウ君は息を一息。そして、詠唱した。

 

「シャイニング・オブ・ジ・ハード!」

 

「なに!? くぅうう!」

 

 夥しい光の奔流が闇の波動を掻き消して黒桃煉を襲う。制服の防御力を貫通し、黒桃煉の肌に火傷が生じ始める。キョウくんが追撃を加えんとする。黒桃煉も流石の魔力量。魔力防御を貫通し切るには至らなかったらしい。その程度じゃ動じないと反撃を決めようとして――!

 

「そこまで!」

 

 僕がその勝負を止めた。理由は簡単。

 

「これ以上は模擬戦じゃなくなる。いいね、二人とも」

 

「あ、ああ。つい戦いに熱が入ってしまった。煉くん。申し訳ない」

 

「いえ。保健室に行って回復魔法を受ければ治る程度の傷ですから」

 

 2人とも納得してくれたらしい。それから、互いに薫陶を始める。

 

「強かったですよ。ソドム学園にも同学年で僕とここまでやれる相手はいなかった。まだもう少し隠し玉もあったのですが……光津キョウ。いい戦いでした」

 

「ああ。僕も久しぶりに同学年の相手と互角の戦いが出来た。ありがとう。少し自信がついたよ」

 

 2人は会話と共に握手を交わす。そして、キョウくんの返答に黒桃煉くんが小首を傾げた。

 

「? 普段格上か格下としか戦っていないみたいな口ぶりですね」

 

「ああ。キサラちゃんとアキラとしか戦っていないからな。全力でやって尚アキラにはまだ遠く及ばないよ」

 

「……それは、本当に?」

 

「ああ。本当だ。日常的にしばかれてるよ。なぁ、アキラ」

 

「失礼な。しばいてるんじゃない。訓練をつけてるんだよ」

 

「……アキラ君、彼と戦ったらその後に君が戦ってくれるという話でしたね。良ければ今から模擬戦を」

 

「ああ。うん。いいよ。でもその前に」

 

 僕は2人の決着が概ね原作通りの展開になった事に上機嫌になりながら言った。

 

「保健室行ってきなよ。全力でくるといい。叩き潰してあげるよ」

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