ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件― 作:哀原正十
「……これほどとは」
「ふぅ。いい汗掻いた」
僕の力は以前闇蔵アキラの魂に体を乗っ取られた時からさらに磨きがかかった。何と言うか以前は力を使う時に噛み合わないパーツを無理やり使ったことによる軋みみたいなのがあったのが、その軋みが少し取れたみたいな感じなのだ。当時はそう感じなかったが、一皮向けた今となっては過去を振り返ってそう感じる。
その圧倒的な力を持って完膚なきまでに叩き潰した黒桃煉くんが愕然とした様子で呟く。そう。これほどの力の差が君と僕の間にはあるんだ。分かったろ。つまり、分かるね? 誰が君の隣には相応しいのか。
そう。光津キョウくんだ(断言)。
「僕は……少し自惚れていたようです。同年代にこれ程の力の持ち主がいるなんて想像もしなかった。S級魔人を2人も倒したという実績は伊達じゃなかったようですね……」
「うんうん。伊達じゃないんだ。……でも、君と光津キョウくんの力は現在互角程度と見た。どうだろう。これからも彼と模擬戦を定期的に行うというのは」
「彼と、定期的に……」
「うん。僕と戦うよりも互角の相手と戦った方が今の2人にとってはいい刺激になると思うんだ。どうだろう」
「確かに。これは力の差があり過ぎて……それはそれでいい訓練になりましたけどね。ええ、全力を出し切れてどこか清々しい気持ちです」
(あれ?)
「でも、そうですね。よりいい訓練になるのはどっちかといえば光津キョウくんの方でしょう。君とは……日に一度戦えば十分です。光津キョウくん。今後も僕と模擬戦を行ってくれますでしょうか?」
「ああ。こちらからもお願いするよ。俺はアキラとは毎日戦っているから今は君との戦いの方が得るものが多いよ。願ったり叶ったりだ」
「決まりですね。今後学園にいる間は君との模擬戦を中心に日々を過ごす。そして日に一度はアキラ君とも戦う。僕は……この学園に来てよかった。以前の僕よりもずっと強くなれそうです」
「ああ。俺もだ。今度の模擬戦では君を倒しきるよ」
「ふふ。それは僕の台詞です」
何だかいい雰囲気になる二人。概ね僕の望み通りの展開になったが、何故か僕も定期的に黒桃煉くんと戦うことになった。いや、いいんだけどね。ただ、ちょっと想定外だっただけだ。
しかし、光津キョウ君の成長具合は原作と比べても遜色はないようでよかった。むしろ勝っている気さえする。この前のガルティア城に連れていった経験がいい刺激になったようだ。やはり実戦は成長に置いて何より重要な糧となる。
だからこそ今度の課外実習授業では2人揃って強敵と戦い成長してもらう必要がある。特にキョウくんには僕をサシで倒せるくらいまで成長してもらわないといけない。うん。
……まぁ、魔境覚醒まで至れば僕ともいい勝負ができるようになるだろう。僕もまた神淵覚醒に未だ至らぬ身なのだから。彼にも彼は主人公。順当に行けばそれくらいには強くなるはずだ。
……神淵覚醒と言えば。
「そう言えばソドム学園の最上級生には神淵覚醒に至った魔術士がいたよね。彼女も来てるんだっけ」
「はい。
「マジで?」
原作ではまだチョイ役でしか登場しない最上級生。それが生徒会長と模擬戦を行うという。神宮司ルナが生き残ったことによる思わぬ原作ブレイクが僕の知らぬところで発生していた。
「……流石ですわ。神宮司ルナ。噂に違わぬお手並みで」
「ハァ、ハァ。そちらこそ。流石神淵覚醒に至った魔術士。負けるのは久々、ではないけれど、同じ魔術士に真っ向から負けるのは久々の経験です……」
神宮司ルナは目の前にいる魔術士を見上げながら言った。
「いいえ。僅差の勝ちでしたわ。私たちに匹敵するというその実力、嘘ではなかったようですわね」
「ハァ、ハァ、最近負け続きで中々そう思えませんけどね。アキラくんにも実質負けてるようなものですし」
「アキラ。ああ、例の1年生ですか。そこまでお強いのですか?」
「はい。彼は、私の今まで見た魔術士の中で最強です。何せSランク魔人を2人も倒したのですから」
「あら、私も倒したことありますわ。それに、今まで見た中で最強とは聞き捨てなりませんわね」
「あ、今のは言葉の綾で、客観的に見たらどちらが上か分からないかなって、あの、その」
「一度」
神崎焔は自信に満ちた顔つきを面白そうに歪めて、笑った。
「件の1年生ともやり合ってみたいものですわね」