ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件― 作:哀原正十
神崎焔との予期せぬ模擬戦が終了し、そして黒桃煉や光津キョウ君、そしてキサラちゃんとの充実した訓練の日々も無事終えて。
とうとう課外実習の日がやってくる。
その前に。
「今から1週間の間に課外実習を行う相手を各々選べ」
要約、4マンセルを作れ。
担任の黒沢マユミが朝のHRで発した言葉だ。細かい説明が続く。
「知っての通り1週間後留学生も含めた学園全体で大規模課外実習を行う。それまでの間にこの度の課外実習絵ペアを組んで戦う相手を選べ。そしてそのペアと組むペアをまた選べ。2ペアで4マンセルを作る形だな。いつもは固定4マンセルで実習を行うが今回は留学生がいる都合上こういう組み方になった。たまにはいつもと違う相手と組むの勉強になるだろう。対魔士たるもの組む相手を選べない時もこの先あるだろうしな。その実習だと思ってくれ」
まずペアを作って、同じくペアを組んだ相手を一組選んで4マンセルを作れ。そういうことらしい。もちろん僕が組む相手は決まっている。
「さぁ、早速今から選ぶといい。これから1周間はペアを組み、そしてペア同士のチームワークを育む週間とする。通常の授業はお休みだ。もちろんクラス外から選んでもいいぞ。ただし同学年の相手から選ぶこと。以上。さぁ、ペア選択の時間だ」
「キサラちゃん。組もうか」
「え? う、うん。アキラがいいなら。こちらからもよろしくお願いします……」
何故かもじもじとしながら、指先をツンツンとしながらキサラちゃんは顔を赤らめて言う。何だそのジェスチャー。普通に可愛いんだが。と、こうしちゃいられない。僕は他のペアを取られない内に4マンセルを組む候補に声をかける。
「本郷タケシ、夢川アユム。僕たちと組もう」
「お、おう? いつの間にか俺たちが勝手にペアにされている」
本郷タケシがその妙に写実的で濃い顔に戸惑いを浮かべながら言う。
「いや、あーしどうせこいつと組むつもりだったし、慣れた相手と連携した方が安定するしで別にいいけどね。アキラっち、あーしらに妙に積極的じゃん?」
夢川アユムがその桃色ツインテールの先っぽを弄りながら中々可愛らしいハスキーボイスで言う。僕は予め用意しておいた理由を述べた。
「もちろん。今君が言ったようにこのペア分け慣れた相手と組むのが一番だ。取られない内に声をかけようとすれば積極的にもなるよ。それだけの理由だ」
「ふーん。……ま、あーしアキラっちとキサラっちの実力は高く評価してるからこっちこそ願ったり叶ったりって感じだけどね。別にいーよ」
「俺の意思が置き去りにされている。いや、俺も別に構わないのだが……」
「よし」
僕は電光石火で本郷タケシと夢川アユムと4マンセルを組んだ。完璧なチームの出来上がりだぜ。後は光津キョウくんと黒桃煉くんだが……。
(よしよし。予定通り2人でペアを組んだようだね)
2人が握手をしている様子が目に入る。2人はこっちに来る。そして僕にこう言った。
「アキラ、良かったら僕たちと」
「ごめんね。僕はこの実習いつもの4マンセルで挑ませてもらうよ。それが最善だ」
「うっ、早いな、手が」
「何かこの事態を予期していたかのような早さですね」
「そんなこと全然ない。僕はちゃんと自分の考えで最善の選択をしたつもりだよ。このペア決め、スピード勝負だ。変な相手と組むくらいならいつもの慣れた相手と組んだ方がいい。そうだろ」
「まぁ、そうだけど。イレギュラーな相手と組む状況に晒されることも試されている感じがしたけどな俺は」
「それはそれ。これはこれ」
僕の答弁にキョウくんはガックシとしながらも気を取り直して言った。
「……まぁ、アキラが安定を取るならそれでいいよ。仕方ない。アキラと組みたかったが4マンセルは選び直しだな。さて、誰と組むのがいいか」
「この学園に来たばかりの僕にとっては痛手ですね。この数週間の間、アキラ君とキョウ君とキサラさんばかりと過ごしてきましたから人の伝手がありません。どうしたものか……」
煉君が組む相手に悩んでいる。その姿を見て目をぎらつかせた女子の群れが殺到する。
「あ、煉くん空いてる? なら私と――」
「はぁ? 煉くんは私と組むんですけど。年増(2か月差)はあっち行っときな」
「あ、あのね。煉くん。私と組んでくれたら私の事好きにしてくれても……」
「それはあんたの願望でしょうが。煉くん。私と組みましょ。これでも成績は上位の方だし。後悔はさせないわ!」
「私成績に自信はないけど容姿には自信あるわ。どっちを選ぶか……自明の理よね!」
「煉くん。私と結婚して―!」
「キョウくんも忘れないでよ! 私、煉くんより精悍なキョウ君の方がタイプなんだから!」
「キョウ×煉いいわよねー」
「はぁ!? 煉×キョウの方が――」
「あ、あの、僕たちはじっくり相手を選ぼうと思ってて、あの、その」
「……人の伝手はできましたが、どうしたものか……」
……収集がつかなくなってきた。僕は4マンセルの仲間たちとその場をこっそり離れる。煉くん、そしてキョウ君も人気者だった。僕は人気がなくてよかった。心底そう思った。
その後キョウ君と煉君も納得のいく相手を見つけて無事4マンセルを組めたらしい。良かった良かった。そして4マンセルでチームワークを育む訓練を重ねて。
「……ついにこの日がやってきたね」
魔物の生息圏での激闘――鬼の魔人メイキス・トライオーガとの激闘以来の課外実習の当日がやってくる。